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第 3 章

3.6 時間分解 PL における PL 寿命の測定エネルギー依存性

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定では図3.18に示したように、セル化したときの変換効率が高いCIGS膜においてPL寿命の 測定エネルギー依存性が見られた。本節では、77K と室温において、セル化した場合に変換効 率が高い試料と低い試料での測定エネルギー依存性を検討した。

3.6.1 PL寿命の測定エネルギー依存性

セル変換効率の異なる 2 つの試料(a)(セル効率 14.8%)、(b)(セル効率 9.9%)について、

77KにおけるPLスペクトルとPL寿命τ1の測定エネルギー依存性を図3.20に示す。(b)では PLピークが明確には分離していないが、幅の広い2つのピークが重なっているためだと思われ、と もに1.06eVの位置がDAペア発光と考えられる。それぞれのPLスペクトルにおいて、DAペア 発光のピーク付近のエネルギー位置で PL 寿命を測定したところ、(a)ではエネルギー依存性が 明確に現れ、低エネルギー側になるにしたがって PL 寿命が3ns から 40ns に約1桁増大する 現象が観測された。また、(b)においても同様にPL寿命が2nsから10nsに増大する現象が観 測された。

図3.21に室温におけるPL スペクトルとPL 寿命τ1の測定エネルギー依存性を示す。(a)、

(b)ともに1.12eV を中心にとする幅の広いひとつの発光が観測される。この発光のピーク付近の

エネルギー位置で PL 寿命を測定したところ、(a)ではエネルギー依存性が明確に現れ、低エネ ルギー側になるにしたがってPL寿命が0.5nsから1.75nsに増大する現象が観測された。しか しながら、(b)においてはPL寿命が0.6nsから0.8nsとあまり変化が見られなかった。

他の例でも同様の傾向が見られ、効率の高い試料ほど室温の PL 寿命に、測定エネルギー依 存性が見られることがわかった。その原因については、3.6.3 款で述べる。また、77K と室温では

PL 寿命が 10-20 倍異なり、室温において短くなることがわかる。この傾向はその他の例でも同

様に確認された。

61 3.6.2 測定エネルギー依存性とキャリアの局在化

ここではPL寿命の測定エネルギー依存性の原因について考察を行う。

Cu(In,Ga)Se2は CuInSe2と CuGaSe2との混晶である。その組成比は今回の試料では Ga/(In+Ga)比で30%近くであり、必然的に発生するInと Gaによる材料組成揺らぎにより、

バンドギャップが面内で揺らいでいる。77K などの低温の場合は励起されたキャリアの熱エネルギ ーが小さく、バンドギャップ揺らぎで容易にキャリアが低エネルギー領域に局在化する。局在中心 位置のキャリアは、周りからキャリアが供給されるためにPL寿命(発光寿命)が長く観測されると 考えられる。ところが室温になると、キャリアが局在エネルギーより大きな熱エネルギーを持つように

0.95 1.00 1.05 1.10 1.15 1.20 1.25 Energy(eV)

PL Intensity(a.u.)

0 10 20 30 40 50

Lifetime τ1(ns)

0.95 1.00 1.05 1.10 1.15 1.20 1.25 Energy(eV)

PL Intensity(a.u.)

0 10 20 30 40 50

Lifetimeτ1(ns)

77K 77K

(a) (b)

図3.20 77KにおけるPLスペクトルとTRPLライフタイムの測定エネルギー依存性 (a)CZ732 Eff=14.8%、(b) F2594 Eff=9.9%

0.95 1.00 1.05 1.10 1.15 1.20 1.25 Energy(eV)

PL Intensity(a.u.

0 0.25 0.5 0.75 1 1.25 1.5 1.75 2

Lifetime τ1(ns)

0.95 1.00 1.05 1.10 1.15 1.20 1.25 Energy(eV)

PL Intensity(a.u.)

0 0.25 0.5 0.75 1 1.25 1.5 1.75 2

Lifetime τ1(ns) RT RT

(a) (b)

図3.21 室温におけるPLスペクトルとTRPLライフタイムの測定エネルギー依存性 (a)CZ732 Eff=14.8%、(b) F2594 Eff=9.9%

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なり、キャリアの局在化の影響が小さくなることから、測定エネルギー依存性が小さくなる 11-12)

(図3.22参照)。また、非輻射再結合が増えるのでPL寿命(発光寿命)が短くなる。

3.6.3 セル効率とキャリアの局在化の関係

セル化したときの効率が高い試料と低い試料の測定エネルギー依存性の原因について考察す る。セル効率 14.8%の試料は77K と室温の両方において、測定エネルギー依存性が見られる。

しかし、セル9.9%の試料は77Kにおいては測定エネルギー依存性が少し見られるが、室温にお いては測定エネルギー依存性がほとんど見られない。

一般的には局在の深さが大きい試料の方が高温まで局在効果が見られるが、CIGS の場合、

局在の深さが大きいほど太陽電池効率が高いのは考えにくい。そこで、図 3.23 のように非発光 再結合中心(欠陥)の量の違いに起因するモデルを推定した。

非発光再結合中心 77Kの場合

Ec

Ev

輻射再結合

局在化でキャリアが供給され 寿命が長くなる。

室温の場合

Ec

Ev

熱励起によってキャリアの局在化の影響 は小さくなり、非輻射再結合が増え、寿 命は短くなる

非輻射再結合

図3.22 温度によるキャリアの局在化の相違

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このモデルでは、高効率の試料は非発光再結合中心(欠陥)が少なく、低温では低エネルギ ー状態にキャリアが局在する。室温においては、キャリアがバンドギャップの揺らぎを越えて移動す るが、非発光再結合中心(欠陥)が少なく再結合確率が低いため、結果的にはバンドギャップ の底付近で発光する確率が高くなる。このために低エネルギー側での再結合速度が長くなる現 象が観測されることとなる。

また、このモデルでは低効率の試料は非発光再結合中心が非常に多いため、室温のエネルギ ーでバンドギャップの揺らぎを越えて移動しているキャリアが、移動中に非発光再結合中心にトラ ップされると考えられる。このためにエネルギー依存性があまり見られなくなる推定される。

非発光再結合中心 セル化したときに高効率なサンプル

キャリアの局在化により、

ライフタイムが長くなる。

Ec

Ev

輻射再結合

非発光再結合中心 Ec

Ev

セル化したときに低効率なサンプル

非輻射再結合

図3.23 効率差による測定エネルギー依存性の説明図

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