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<単元の指導の事例 3> 

サイエンス E

4

学年

テーマ I r

科学/技術

J

と「ものの見方」

単 元 テ ー マ ( 題 目 科 学 / 技 術 」 を め ぐ る 問 題 に つ い て 自 分 の 意 見 を ま と め る 実施学年(高等学校1年) 配 当 時 間 (5時間) 実践者(金子・川中・石井・村山) 1.単元のねらい・目標

「科学/技術」に関する諸問題について、自ら課題を設定し、読書をした結果を、論理的な文章に まとめる。

以下に掲げる十冊の中から、学習者自身の興味関心に基づいて一冊の本を選び、論旨や論理の進め 方などについての意見をまとめ、これまでの学習で学んだことを活かして論理的な文章で表現する。

書名:著者

①『科学の目 科学の心』岩波新書 1999.7.19:長谷川異理子

②『科学の現在を問う』講談社現代新書2000.5.20:村上陽一郎

③『私の脳科学講義』岩波新書2001.10.19:利根川進

④『考えることの科学一推論の認知心理学への招待』中公新書2005.10:市川伸一

⑤ ~I 夜ふかし」の脳科学 子どもの心と体を壊すもの』中公新書ラクレ2005.10:神山潤

⑥『免疫・「自己」と「非自己」の科学JlN H Kブックス 2001.3.23:多田富雄

⑦『遺伝子組み換え食品を検証するJlN H Kブックス 1999.11.1:中村靖彦

③『ヒトは環境を壊す動物である』ちくま新書2004.1.10:小田亮

⑨『ヒトはなぜことばを使えるか脳と心のふしぎ』講談社現代新書 1998.11.20:山鳥重

⑩『ロボットの心一7つの哲学物語』講談社現代新書2001.12:柴田正良 2.単元の構成と特色(主題に迫る手だて など)

課題に基づいてテキストを読み、要約やまとめ、批判を行う。

同じ課題を選んだ者同士で意見交換・フィードパックを行い、内容の深化を図る。

3.本単元における評価の観点と評価方法 [評価の観点]

①「科学/技術」をめぐる問題に興味を深め、進んで理解したり表現しようとする。

②「科学/技術」のあり方について述べた文章を、具体例に則して分析的に読み取ることによって、

自分の「ものの見方」を深めたり発展させようとする。

③「科学/技術Jに関わる問題について、自分の考えを持ち、具体例に則して論理的に説明しよう とする。

[評価方法]

各時間毎の、課題に基づいて行った要約やまとめの文章を用いる。

グループ。による話し合いの過程や、発表の様子を参考にする。

2) とりわけ、「理解すべき対象」としての書物や、いわゆる「科学的なものの見方Jについて、

無条件に受け入れるのではなく、適切に「批判」を加え、自分の「ものの見方」について考える ことができた。

3)時間的な制約から、現実の「科学/技術」の持つ具体的な問題についての考察が不足しがちであ った。生徒にとって、テキストから学んだ「ものの見方Jを具体的な問題を通して活用する機会 を作り出すための、資料収集や調査に当てる時間も確保できれば望ましいと思われる。

生徒の感想例①

F

夜ふかし」の脳科学 子どもの心と体を壊すもの』

本書はなぜ睡眠が必要なのかを、実験・調査データの数値を用いて「科学的jに説明している。

所々難解な部分もあったが、勉強になる一冊であることは確かだ。が、少々引っかかりを感じる 部分もある。「睡眠は大切だJ

r

夜更しは健康によくなしリということは昔から言われており、

私たちはそういう意識をすで、に持っている。その前提をいいことに、実験結果が多少疑問が残る ものであっても「しかし別の実験結果より悪いのは明らかだ」と少々強引に結論に持って行って いる所が目につく。「きちんとした睡眠が必要だj という考えが前提にあるので、「確かにそう だろう」とは思うのだが、それでも完全には納得しきれず、胸の中にしこりが残る。

生徒の感想例②『ヒトはなぜことばを使えるか脳と心のふしぎ』

筆者は「脳の神経作用と心の働きは全く別の存在である」とする他の脳科学者や神経科学者の考 えを否定している。この、脳と心とが別のものであるという根拠は、脳の表わす神経細胞の電気 活動や神経伝達物質の移動などがいずれも物理学的現象であるのに対し、心が表わす現象は「感 情J

r

ことばJ

r

思想、Jであって電気現象や化学物質とは異質なものである、ということである。

つまり、脳の働きは観測や測定が出来るが、主観の世界の出来事である心の働きは客体として外 から見ることはできないのだ。

このような理論を否定する理由として、筆者は、「心を一つのまとまりと考えることに問題があ る。心は一つなどでは決してない。」ということを挙げている。しかし、この条件は、あくまで も筆者の考えであって、絶対的なものではないのではないだろうか。私には、どちらの条件が正 しいのかを決定することはできないが、もしも「心は実体を持った一つのまとまりであるJとい うことが確定すれば、脳と心とは別にあるとしづ理論を否定することは不可能である。心は一つ のまとまりであることが証明されてはいないので、筆者の考えも、他の学者の考えも、どちらも 正解になり得る。私には、「脳と心とが別にあるわけではなしリという筆者の主張を導く前提条 件の説明が不十分なように思われた。

7.成果と課題

1) 

r

科学/技術j にかかわる「ものの見方j を問題化する学習活動は、国語科で扱う科学的内容 の評論文読解と重なるものでもあるので、内容を深めることができた。

2) 

r

ものの見方」を問題化する学習活動の前提として、特に言葉そのものの持つ論理性について、

取り立てて指導し、理解を深めることができた。

3)同じテーマを選んだ他者との意見交換をするグループ学習を通して、言説を相対化する態度や 自身の主体を確立する姿勢を、より深めることができた。

4)本単元における各個別の科学論の内容など、サイエンスで教材として扱う内容が、伝統的な教 科内容・学習領域を超えているものもあり、指導内容や方法などについての正当性・妥当性をど のように担保するのかという問題がある。

しかし、カリキュラム編成や単元指導に取り組むなかで、より「論理的jに文章を読ませる指 導方法を研究し獲得できたことや、科学論を扱う際に生徒に提示する思考の枠組みの可能性を拡 げたり、またその限界についてもより多くの事例に基づいて提示できるようになるなど、従来の 教科指導の枠を超えての、教師としての指導力向上にも寄与した。

4.単元計画 4 .1科学/技術」をめぐる問題について自分の意見をまとめる (配当時間計 5時間)

E題目(自己当時間)

│ 

指導上の留意点・評価 1課題の設定│十冊の課題を紹介したプリントを読み、課題│この単元を通して、テキストの読解 ( 1 ) と し て あ げ ら れ た 全 体 像 を 理 解 す る と と も に 、 │ の み に と ど ま ら ず 、 「 論 理 」 の あ り

自らの興味・関心に基づいたテーマを選定す│方や「科学/技術」との向き合い方

る。

I

について考え、サイエンス Eでの学

習 の 総 ま と め と す る こ と を 指 示 す る。

評価:

・課題として取上げられた全体像を 理解し、自らのテーマを適切に選択

しているか。

2テキストを│テキストを読み、立論の趣旨をまとめた上で、卜筆者の立論の趣旨を正しく理解し 読み、「批判J

I

その方法や特徴にも注意し、立論に対する自│ているか。

的に捉える(3)

I

らの疑問・意見や批判・反論をこころみる。

I

・筆者の立論について、その内容の みにとどまらず、「論理Jの方法や 同じテーマを選んだ者同士のグループでの話│特徴について考察しているか。

し合いを通して、考えを深める │・筆者の立論について、文章の内容 や具体的な例の挙げ方に注目して、

適切な「批判jができているか。

‑筆者の立論に対して、自分の意見 を持てているか。

・グソレーブロ内での話し合いを通し、

他者の意見をも取り入れて、よりよ い「批判jができているか。

3 まとめ(1)

I

相互に発表し合い、考えを深める。

I

・様々な「科学/技術」に関する問 題について、自分の「ものの見方J

を獲得しているか。

5.指導のポイント

1)取上げる十冊の課題については、書名、著者名、出版社及び刊行年月日などとともに、各々 200 宇程度の内容紹介をつけたプリントを配布して、全体を読ませた上で、各自が取上げる書物を選 ばせる。

2)最終的なまとめをする前段階として、「中間まとめ」プリントを作成させる。①取上げた書名、

②立論の趣旨、③立論の方法、④立論の方法・特徴、④立論に対する疑問・意見・批判・反論の 各項目について、それぞれまとめさせる。

3)前の 2)で作成した「中間まとめ」プリントをもとに、同じテキストを選んだ者同士で意見交換 をさせて、互いの意見をフィードパックできるようにする。

4)最後のまとめ時間は、相互に発表し合い、異なるテーマについての意もを参考にしながら、自ら の「ものの見方」をより深めることが出来るようにする。

5)各時間毎に配付したテキストや生徒が提出したものは個人毎にファイルさせ、自らの理解や意見 の広がりや深まりを確認できるようにする。

6.カリキュラムの評価

1)生徒にとって、いわゆる「科学的なものの見方」として漠然としていたものを、個別にかつ具体 的に理解し直してゆくことで、「科学的」ということの多様性やその限界についても理解を深め ることができた。