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<単元の指導の事例 5> 

サイエンス

E

テーマ

E

ー②

「科学と芸術J

一視覚の世界を探究しようープラン

1 単元テーマ 視覚の世界を探究しよう

実施学年(高等学校1年) 配当時間 (5時間) 実 践 者 ( 高地秀明 )  1.単元のねらい・目標

「サイエンスプログラム」で育まれる能力や資質・態度との関係については,この学習では特に「自 然や社会の様々な事象を認知する能力J['読解力,表現力,コミュニケーション能力」の伸長につな がることを目指している。

具体的な学習のねらいとしては,視覚表現におけるものの見方・捉え方・表し方を分析的に考察す ることを通して科学的・論理的な思考力を育むことである。

2.単元の構成と特色(主題に迫る手だて など)

西洋および東洋(日本)の特徴的な視覚表現を幾っか取り上げ,鑑賞・探究・体験(表現)を通し て,視覚表現におけるものの見方・捉え方・表し方について分析的に考察し,その表現の意味に迫る。

また,視覚芸術作品と科学技術との関連やそれを生みだした人々の世界観,人間観等についても考え る。

この学習活動の柱は次の3点である。

①造形表現の背景(鑑賞)

人間は自然や社会の事象を捉えるとき,造形表現において多様なものの見方とらえ方を試みて きた。人間は何をどのように見つめ,捉え,表現しようとしたのかを探究・鑑賞する。

②体験(表現)

特徴的な視覚表現についてその手法を実際に追体験することによって表現の意味を理解する。

③美と造形表現の仕組み(分析・考察)

歴史的な造形作品を題材に,形や色,素材などの造形要素(造形言語)の仕組みについて分析 し,視覚による空間知覚とビジュアルコミュニケーションの意味を考察する。

3.本単元における評価の観点と評価方法(表1)

記 号 評価の観点 評価の方法

①  造形作品の背景にある作者の感動や夢,作品に込められた心情など ワークシート を感じ取り,分析的に表現の意味に迫ろうとする。 観察・行動分析

②  文化について,その事象を生み出した人間,社会の価値観・世界観 ワークシート

を探ろうとする。 観察・行動分析

③  多面的な視点からの情報収集や考察を試みようとする。 観察・行動分析

④  日本と諸外国,古典と現代といった多面的な視点で視覚表現作品を ワークシート 比較鑑賞し,それぞれの表現の特質,独自性や共通性について理解

することができる。

⑤  演習(表現体験)において,それぞれの表現の特質や美しさを考察 実技演習の作品 しながら自己表現や自己の意見を述べたりすることができる。 まとめのレポート

4.単元計画 「科学と芸術」ー視覚の世界を探究しようー (町当時間計 5時間) 題目(配当時間)

1.鑑賞と探究 1 (1) 

2 .

表現手法の 体験 1(1) 

3.鑑賞と探究 11  (1) 

4.表現手法の 体験 11(1) 

学 習 内 容

│ 

指導上の留意点・評価

次の二つの文化事象について比較鑑賞│く〉それぞれの作品を見て感じたこと,発 し,その表現の特質や背景を探究する。│見したこと, 興味を抱くこと,疑問に

①西洋の科学的合理主義の始まりであ│思うことを挙げてワークシートに記入さ るルネッサンス期のレオナルド・ダ│せる。

・ヴインチ「最後の晩餐J, ラファ│く〉それぞれのものの見方やとらえ方,表 エルロ「アテネの学童jなど │現手法の特徴について考えさせる。

②ピカソのキュピスムの作品「ゲルニ

1 < >

その時代に生きた人々のものの見方,

カJI卓上の静物」や 20世紀の抽象│美と造形の仕組みゃ手法,社会的背景,

絵画など │科学技術とのつながりなどについても探

究させる。

(評価:表 Iの①②について観察・行動 分析,ワークシート)

表現演習として次の2点の手法を題材│く〉表現手法を追体験することによって,

に描く。 1その時代の人々のものの見方やとらえ方

①レオナルドのパースベクティブ │を理解させる。

②ピカソのキューピスム │く〉その手法を用いて実際にスケッチをお こない,自分なりの表現活動を通して,

空 間 認 識 方 法 や 表 現 の 意 味 を 理 解 さ せ る。

(評価:表 Iの⑤について実技演習の作 日本の中世・近世の作品「源氏物語絵│く〉それぞれの作品を見て感じたこと,発 巻J, I源 頼 朝 像J,雪舟の水墨画,長│見したこと, 興味を抱くこと,疑問に 谷川等伯「松林図J,北斎「富岳三六│思うことを挙げてワークシートに記入さ 景」を比較鑑賞し,その表現の特質や│せる。

背景を探究する。 1く〉それぞれのものの見方やとらえ方,表 現手法の特徴について考えさせる。

く〉その時代に生きた人々のものの見方,

美と造形の仕組みや手法について探究さ せる。

(評価:表 Iの①②について観察・行動 分析,ワークシート)

表現演習として次の 2点の手法を題材│く〉表現手法を追体験することによって,

に描く。 1その時代の人々のものの見方やとらえ方

①「源氏物語絵巻」に見られる中世日│を理解させる。

本の並列.

i

府轍構図 │く〉その手法を用いて実際にスケッチをお

②雪舟の水墨画,長谷川等伯「松林図J

I

こない,自分なりの表現活動を通して,

などの線,濃淡による表現 │多様な表現の意味を理解させる。

(評価:表 Iの⑤について実技演習の作 品)

5.分析と考察

I @

I東洋と西洋J, Iレオナルドとピカ│く〉作品の背景にある世界観,価値観,科 (1) 

I

ソJ, I中世と近現代J, Iパースベクテ│学技術との関連など,多面的な視点で分

ィブとキューピスムj など,様々な切│析的に考察させる。

り口から比較・考察を試みて,演習の│ また,現代の,そして自分のものの見 作品とともにレポートにまとめる │方やとらえ方についても考察し,レポ‑

O

作家の生涯や業績,関連する文献や│トや作品にまとめさせる。

スケッチ・絵画などを調べ,その時代

の人々のものの考え方について考察す

I

(評価:表 Iの③④⑤についてワークシ

る。

I

ート・レポート提出)

5.指導のポイント

導入時にスライドやOHCによる作品鑑賞を解説を交えながら時間をかけて行うことによって,学 習への興味関心を抱かせる。この際,いわゆる通史的に作品を見ていくのではなく,文化理解の手が かりとなるように多面的な切り口で、幾つかの文化事象(視覚表現作品)を取り上げ比較鑑賞を行う。

例えば,レオナルドの「最後の晩餐J,ピカソの「ゲルニカ」は室内空間を場面設定として描かれ ているが,その空間認識の方法は全く異なるものである。人物をテーマとした作品であれば,ルネッ サンスのレオナルド・ダ・ピンチと鎌倉時代の源頼朝像,ピカソのキュピスムの作品を並列的に提示す る。これらは人間を描いたという共通点はあるものの,時代も地域も異なり,そのものの見方やとら え方が決定的に異質である。それぞれの文化の特質についての発見や「人間は何を見つめ,なぜこの ように表現しようとしたのかJといった疑問がこの学習の動機となるのである。

この学習活動では,鑑賞や考察だけでなくその文化の手法を体験することで文化の背景に迫ること もねらいの一つである。レオナノレドのパースベクティブの手法でスケッチを試みたり,東洋の中世の 傭轍的で並列的な図式表現で描くことや, 2 0世紀ピカソのキュピスムの概念を追体験することでそ の時代の世界観や人間観について想い考えることができる。

6.カリキュラムの評価

本項では,教材の有効性と授業実践の成果について評価する。生徒がこの授業によってどのような 力を獲得したのか,生徒がどのように変容したのかを生徒の提出したレポート,作品,自己評価シー

ト,教師による観察によって考察を試みたい。

(1 )学習活動の分析による評価

(表皿)は生徒に記述させた自己評価シートである。 1クラス (41名)を集計すると(表IV)の ようになる。

司V

学習活動を振り返って,自己評価をしてください。

:とても良くできた 4 ある程度できた 3 どちらとも言えない

2 あまりできなかった 1 できなかった 0印をつけてください↓

①この学習の主題(学習内容のねらL、)が理解できた 5‑4‑3‑2‑1 

②興味・関心を持って取り組むことができた 5‑4‑3‑2‑1 

③造形作品の背景にある作者の感動や夢,作品に込められた心情などを感じ取 5‑4‑3‑2‑1  ることができた

④日本と西洋,古典と現代,パースペクァィブとキュピスムといった多面的な 5‑4‑3‑2‑1  視点で視覚表に現考作察品を比較鑑賞し,それぞれの表現の特質,独自性や共通性

について分析的 し 理 解 す る こ と が で き た

⑤文化について,その事象を生み出した人間,社会の価値観・世界観をについ 5‑4‑3‑2‑1  て考えることができた

⑥それぞれの表現手法を体験することによって,その作品の背景にあるものの 5‑4‑3‑2‑1  見方やとらえ方・表し方について理解し 自分なりの表現をすることができた

⑦鑑賞や表現をとおして,自己の感想や意見をまとめたり述べたりすることが 5‑4‑3‑2‑1  できた

(表1V)自己評価シートの回答(%)

設問⑦ WffÆ22~~~三三一35~~~~111111111111111111128111111111111111111111胸翠露7蜜 設問⑥ W/ØØØ26~~~一一29~~~IIIIIIIIIIII11911111111111111搬総選24翠璽翠璽21

卜 i

設 問 ⑤ 匿7 9

14三ヨ1111111111111111111111111111371111111111111111111111111111僻 鰯 綿 織26搬 麟 議 議 議 滋16翠麹 卜

設問④ WÆ14~三三重20 三ヨ11111111111111111111111111111111凶211111111111111111111111111111111臨機17璽璽盤7~

卜 │

設問③ WdØYÆ27~助物徒三重量30善三三重量1111111111111111111261111111111111111111附12翠率5雪

ト │

設問② WððdØ031~0ØØØ'Æ三一三--40一一一一一一1111111113皿IIIt:,d11 密:15翠

設問①協働政仮38~~三三三三三三41 IIm8.翠9密室4~

5 4 3 2 1

この授業を始める以前の生徒の反応は文化理解といってもピンとこない。いわゆる美術鑑賞は つまらない。描く(表現)方が楽ししリというもので、あった。筆者は,この授業が成功する鍵は「導 入」にあると考え,パワーポイントによる図版提示やビデオなどの視覚的効果を工夫したプレゼンテ ーションを用意した。その結果, (表 IV)の設問②のように生徒の興味関心を喚起することができた と考える。また,設問①の「学習のねらし、」については多くの生徒が理解しているようである。しか し,設問③④⑤のように「作品に込められた心情やその背景JI社会の価値観や人間観について考え る」といったこの学習の本質の部分については,理解度や学習の深まりが不充分であると言える。

次に,生徒のレポート(表 V),表現体験の作品(図 1'"'‑'V)を分析すると,教師側の意図した学 習のねらいがある程度反映した内容になっている。共通して評価できることは,文化事象の背景を「分 析的に考察」することと表現体験することをとおして文化理解を深めるといったねらいが生徒の学習 活動の中で進行していると認められることである。「一点の絵画をとおして様々なこと読み取れるこ とが分かつた」と生徒が記述しているように,作家の表現意図を知ることによって作品への興味関心 が高まり,作品理解が進んでいくことがある。そして,自らその表現を体験をすることによって一層 理解が深まったとを記述した生徒も多くいる。しかし,どの程度理解が深まったのかは,個人差があ るのも事実であり,西洋や日本の古典美術について一面的な理解にとどまり誤解している記述もある。

これらから,この学習の目標である「視覚表現におけるものの見方・捉え方・表し方を分析的に考 察することを通して科学的・論理的な思考力を育むjをとおして「自然や社会の様々な事象を認知す

る能力JI読解力,表現力,コミュニケーション能力Jを高めることが可能であると考える。

V

(生徒のレポート:抜粋)

<視覚表現の特質についての記述>

。ノレネッサンスの人は科学に目覚めたということが美術作品をとおしてもよく分かつた。自然をあ りのままにとらえ,どうしてそうなっているのかを探究していく姿勢が科学を発展させたのだと感 じた。目に見える世界の見え方,空間の表し方を法則化しようとしたのがすごいと思う。

。/レネッサンスの人々による透視図法の発見は歴史的に大きな意味があったと思う。目に見える 3 次元の世界を 2次元の平面の紙に置き換える手法は,後世のものの表し方の標準となったというこ

とが分かつた。

0まるで斜め上から覗き込んだように描くという「源氏物語絵巻」の手法は,様々な視点からの場 面を見せてくれるということで何か お得な感じ"がした。日本のこの時代の美術は,源氏雲や末