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GPS の仕様

ドキュメント内 熊本大学大学院自然科学研究科 (ページ 77-86)

3. GPS 受信機の省電力な運用方法

3.2. GPS の仕様

GPS で用いられる座標系は、地球中心・地球固定直交座標系(ECEF: Earth

Centered, Earth Fixed)である。これは地球重心を座標原点に取り、北極方向にZ

軸を取り、本初子午線方向に X 軸を取り、Y 軸をこれらに直交する様に右手形で決 定する。また、X軸とY軸は地球の自転に伴い回転する。Z軸は正確には地軸に一致 しないが、地軸の平均的な中心を貫く位置に取られている[1]。座標系の様子を図3-1 に示す。

図3-1 ECEF座標系と経度

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3.2.2. 地球楕円体

地球は自転による遠心力の影響により、わずかながら赤道方向につぶれた形状をし ている。この地球の形状にフィットする様に、地球楕円体が定められている。地球の 形状に関してはVLBI(Very Long Baseline Interferometry)によって観測されてい る。

3.2.3. WGS 84 測地系

複数の観測所の座標を ECEF 座標系で表し、さらに地球楕円体を定義したものを 測地系という。GPSではWGS 84測地系が用いられている。WGS 84ではさらに大 陸移動の速度も各観測所で定めている。各観測所の座標値は大陸移動の影響を受け 徐々にずれてしまうため、数年に一度改定される。

3.2.4. 緯度・経度・楕円体高

経度は図3-1に示すように、ある地点から赤道面に対して直角に下した点と原点が なす直線とX軸との間の角度である。

緯度の定義を図3-2に示す。緯度はある地点から楕円体面に対して垂直に下した直 線と赤道面がなす角度である。

楕円体高は楕円体面からある地点まで垂直に伸ばした直線の長さである。

図3-2 緯度と楕円体高の定義

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3.2.5. 測位原理

GPSの測位原理を図3-3に示す。GPSの基本原理は三角測量である。三角測量で は座標が既知である 3 点からの距離を用いて連立方程式を解くことで測位を行うこ とができる。GPSでは測位衛星から発射される測距信号を用いて距離の計測を行い、

同様の原理を用いて測位を行う。

ただし、GPS受信機の場合はGPS受信機の内部時計の時刻誤差を解く必要がある から、測位衛星は4つ以上必要となる。図中における𝑑は衛星までの距離を表してお り、GPS 受信機内部の時計誤差の影響を受けているため擬似距離という。擬似距離 と衛星座標を含む4つ以上の方程式を最小二乗近似で解くと、GPS受信機位置座標𝑃𝑢 とGPS受信機の時刻誤差を求めることができる[2]。

図3-3 GPSの測位原理

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3.2.6. 航法メッセージの構造

GPS衛星は少なくともC/A(Coarse / Acquisition)コードとP(Precision)コー ドの2つの信号で変調された航法メッセージを送信している17。この内、GPS首輪に 搭載可能な単独測位式のGPS 受信機が利用するのは L1帯で放送されている民生用 のC/Aコードである[3]。

C/Aコードにて放送されている航法メッセージの構造を図3-4に示す。以下、特に 断らない限り、航法メッセージとは C/A コードにて放送されているものを指す。航 法メッセージはエフェメリスとアルマナックという2つの暦から構成されている。こ れらは5 つのサブフレームに分割されている。各サブフレームの時間長は 6 秒であ る。従って、航法メッセージは30秒で一巡する。

エフェメリスは放送している衛星自身の軌道情報である。軌道要素とクロック情報 を含んでいる。エフェメリスの軌道予測精度は数 m 以内である。エフェメリスはサ ブフレーム1~3 に格納されている。また放送周期は 30 秒である。有効期限は標準 でエポック18±2時間である[4]。なお、エフェメリスは2時間毎に更新される。

アルマナックはサブフレーム4~5に格納された全衛星に関する軌道情報やヘルス 情報などを含んだ信号である。全ての衛星が同じ内容を放送している。軌道予測精度 は数 kmといわれている。GPS受信機は、電源投入直後の信号捕捉時にドップラー シフト量と時間遅延量を概算するためにアルマナックを用いる。放送周期は12分30 秒である。放送周期が長いから、サブフレーム1~5を1ページとした場合、25ペー ジに渡って分割放送される。なお、アルマナックの有効期限は更新されてから通常6 日間である。

図3-4 測距信号の構造

17 Pコードは現在では秘匿されたYコードに置き換わっている。

18 パラメータの基準となる時刻

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サ ブ フ レ ー ム の 構 造 を 図 3-5 に 示 す 。 サ ブ フ レ ー ム は 信 号 同 期 用 の TLM

(TeLemetry Word)とHOW(Hand Over Word)に続いて軌道パラメータが格納 されている。HOWにはzカウントと呼ばれる、日曜日午前0時からの経過時間が格 納されている。GPS受信機は、HOWを復号することで約60~90 ms以内に時刻を 同期させることができる。

図3-5 サブフレームの構造

3.2.7. GPS 時刻と UTC の関係

図3-6 へGPS 週秒と UTC週秒の関係を示す。それぞれの時刻の刻みは一致して いるものの、GPS時刻とUTCはうるう秒𝑡𝑙(s)だけずれている。

図3-6 GPS時刻とUTCの関係

* 𝑡𝑙はうるう秒を表している19

** UTCとGPSTの時間の刻みタイミングは10 ns以内で一致している20

***うるう秒の挿入が週の途中で行われない限り、この関係は保たれる。

19 2013年5月現在のうるう秒は16秒である。

20 規定では、1 µs以内とされているが、2010年までは10 ns以内に制御されている。

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3.2.8. 航法メッセージの放送タイミング

測距信号のエフェメリスとアルマナックはそれぞれGPS時刻を基準として放送さ れている。各サブフレームと放送開始タイミングの関係を図 3-7 に示す。GPS 時刻 に対して航法メッセージの周期である30秒を法とした場合の剰余が0秒となる瞬間 が基準とされている[4]。

図3-7 サブフレームの送信タイミング

図3-8へ航法メッセージのリセットが日曜日の午前0時を基準として行われる様子 を示す。サブフレーム1~5を1ページとした場合、807ページの途中で午前0時を 迎える。このとき、放送はリセットされ、アルマナックは始めから放送される。

図3-8 GPS週秒0 sにおける、ページ番号のリセット

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3.2.9. 測位モード

単独測位のGPS受信機には、以下に示す3つの測位モードが存在する。

1) ホットスタート 2) ウォームスタート 3) コールドスタート

これらの定義はGPS受信機メーカーによって異なる場合があるものの、概ね以下の 通りである。

[ホットスタート]

ホットスタートとは、有効期限内のエフェメリスとアルマナックを4つ以上の可視 衛星について保持している状態で測位を始めるモードである。オープンスカイ21であ れば、一般的に数秒以内に測位が完了する。

[ウォームスタート]

ウォームスタートとは、有効なアルマナックはあるが有効期限内のエフェメリスを 保持していない状態での測位開始を指す。オープンスカイであれば、30 秒以内に測 位が完了する。

[コールドスタート]

有効なアルマナック,エフェメリス,時刻情報を保持していない状態での測位開始 をコールドスタートという。オープンスカイであれば、測位は30秒以内に完了する。

ただし、アルマナックを必要とするGPS受信機は12分30秒間の起動時間を要する。

21 上空に障害物がない状態をオープンスカイという。

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3.2.10. TTFF(初期位置算出時間)

GPS 受信機の電源を入れてから測位が完了するまでの時間を TTFF(初期位置算 出時間:Time To First Fix)という。TTFFの概念を図3-9に示す。一般的な1 Hz 出力のGPS受信機は、TTFF−1秒~TTFFまでの間に、TTFF−1秒時点での測位計 算を終えると、TTFFのタイミングでNMEA 0183に測位結果を反映させる。マイコ ン側は直後に出力されるNMEA 0183センテンスを解読することによってTTFFを 知ることができる。

図3-9 TTFF

なお、TTFFを調べればGPS 受信機の測位モードを判定することができる。例え ば、オープンスカイにおいてTTFFがエフェメリスの受信に必要な18秒以下であれ ば確実にホットスタートであったと判断することができる。

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3.2.11. 測位衛星の軌道

GPS衛星は軌道傾斜角55°,軌道半径約26,672 km,軌道周期11時間58分,6 軌道面にそれぞれ4~5衛星が配置されている。その幾何配置は全球で測位解に悪影 響を及ぼさないように配慮されている。

スカイプロットの例を図3-10に示す。衛星の見かけの位置は1 日で時間にして4 分ずれるが、1年で元の位置に戻るように設計されている。従って可視衛星数は事故 さえなければ1恒星日毎に同じリズムを繰り返す。なお、熊本県の緯度では、一度地 平線に沈んだ衛星が3時間ほどで再び登ってくることがある。

図3-10 熊本大学の南向きの窓にて観測したGPS衛星の見え方

緯度:32.81344,経度:130.72966

観測期間(UTC):2010年1月21日 14:12~同年1月22日5:49

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