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処理の流れ

ドキュメント内 熊本大学大学院自然科学研究科 (ページ 121-127)

4. 衛星測位の補間のための 気圧高度履歴に基づく移動経路推定

4.5. 移動経路の推定アルゴリズム

4.5.2. 処理の流れ

移動経路の候補を求めるフローチャートを図4-13に示し、以下で詳細に説明する。

なお、移動経路の推定に必要な情報は、固定局と移動局の気圧観測値、固定局におけ る現地の気温、推定する一区間のスタート地点とゴール地点の座標である。加えて、

最大移動速度の仮定および気圧観測値の校正のために気圧センサモジュールの温度 も必要である。最大の移動速度に関しては、GPS の測位結果から求めた平均の移動 速度を基に良い推定値を得られることが期待される。

4.5.2.1. 観測データの校正

SCP1000 によって観測された固定局と移動局の間における気圧の相対誤差は最大

約2 hPaである。これは標高差に約20 mの誤差をもたらすため無視できない。また、

この相対誤差はモジュール温度に依存した特性を持っている。本研究では、センサ雰 囲気を変化させながら求めたパラメータを用いて気圧の校正を行った。

4.5.2.2. 気圧高度の DEM へのフィッティング

次 に 、 校 正 さ れ た 気 圧 の 観 測 値 に 基 づ き 式(4-2)を 用 い て 気 圧 高 度 の 履 歴 (𝐻0𝑟𝑎𝑤、 𝐻1𝑟𝑎𝑤、⋯ 、𝐻𝑁−1𝑟𝑎𝑤 )を求める。この推定された気圧高度は実際の標高に対し て数mの誤差を持ち得る。

経路推定の基本は気圧高度とDEMとのマッチングであるため、気圧高度は真のパ スをDEM表面に投射した標高にフィットしていた方が都合良い。したがって、GPS の観測点における DEM の標高値によって気圧高度を補正する。補正式を式(4-4)–

(4-8)に示す。

𝐻0𝑒𝑟𝑟𝑜𝑟 = 𝐻0𝑟𝑎𝑤− 𝐸0 (4-4)

𝐻𝑁−1𝑒𝑟𝑟𝑜𝑟 = 𝐻𝑁−1𝑟𝑎𝑤− 𝐸𝑁−1 (4-5)

𝑡𝑠𝑝𝑎𝑛= 𝑡𝑁−1− 𝑡0 (4-6)

𝑡 = 𝑡𝑛− 𝑡0 (4-7)

𝐻𝑛𝑓𝑖𝑥 = 𝐻𝑛𝑟𝑎𝑤𝐻𝑁−1𝑒𝑟𝑟𝑜𝑟−𝐻0𝑒𝑟𝑟𝑜𝑟

𝑡𝑠𝑝𝑎𝑛 𝑡 − 𝐻0𝑒𝑟𝑟𝑜𝑟 (4-8)

ここで、𝐻𝑛𝑓𝑖𝑥は補正後の気圧高度を表し、𝑡𝑛は気圧高度𝐻𝑛𝑟𝑎𝑤を観測した時刻を表し、

𝐸0はスタート地点におけるDEMの高さを表し、𝐸𝑁−1はゴール地点におけるDEMの 高さを表す。また、𝐻0𝑟𝑎𝑤はスタート地点における気圧高度を表し、𝐻𝑁−1𝑟𝑎𝑤はゴール地 点における気圧高度を表し、𝑡𝑠𝑝𝑎𝑛は始点から終点に到達するまでに要した時間(s)を 表す。

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図4-13 移動経路推定アルゴリズム

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4.5.2.3. DEM の読み込み

次に、DEMを読み込む。本研究では、国土地理院が行っている基盤地図情報サー ビスから入手できるGMLフォーマットのDEMファイルを利用した(図4-14)。

10 mメッシュ分解能の1つのDEMファイルがカバーしている領域は南北方向に

約0.08333°,東西方向に0.1250°である。GMLファイルはShift_JISXMLで記述

されたテキストであり、内部に座標,メッシュ数,標高が格納されている。

通常、移動経路推定には複数のDEMファイルを要する。ただし、配布されている DEMのままではファイルの境界にわずかなギャップを生じてしまう。そこで、本研 究では一旦全てのDEMの座標データを読み込んだのちに、必要な領域をカバーする 一つのDEMを作成した。結合のイメージを図4-15に示す。

図4-14 DEMファイル

図4-15 DEMファイルの結合

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4.5.2.4. 傾斜マスクの作成

一般に、ニホンカモシカ以外の哺乳類が崖を移動経路として利用するとは考え難い。

そこで、本研究では傾斜角が一定以上であれば移動経路として選択できないものとし、

傾斜マスクを作成した。記号のメッシュ上の配置を図4-16に示す。また、図4-17に 傾斜マスクの生成過程を示す。メッシュ𝑒における傾斜角𝜃の計算には、式(4-9) –

(4-11)を用いた[20]。a~𝑖はメッシュの高さ(m)を表し、∆𝑥𝑚𝑒𝑠ℎと∆𝑦𝑚𝑒𝑠ℎはそれぞれ南

北方向と東西方向のメッシュの水平方向の大きさ(m)を表している。

Δ𝑧Δ𝑥=(𝑐+2𝑓+𝑖)−(𝑎+2𝑑+𝑔)

8∆𝑥𝑚𝑒𝑠ℎ (4-9)

Δ𝑧Δ𝑦=(𝑔+2ℎ+𝑖)−(𝑎+2𝑏+𝑐)

8∆𝑦𝑚𝑒𝑠ℎ (4-10)

𝜃 = tan−1√(Δ𝑥Δ𝑧)2+ (Δ𝑦Δ𝑧)2 (4-11)

図4-16 メッシュと記号の配置

(a) 元DEM(赤いほど標高が高い) (b) 傾斜角マップ(赤いほど急傾斜)

(c) 40°以上にマスク(赤) (d) 50°以上にマスク(赤)

図4-17 傾斜マスク生成過程

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4.5.2.5. 気圧高度と DEM の比較による移動経路推定

次に、補正された気圧高度とDEMの標高を比較しながらスタート地点とゴール地 点を結ぶ経路を見つける処理に移る。なお、スタート地点とゴール地点の座標はGPS の測位が成功した点を用いれば既知である。

一本の移動経路は高度履歴の一つ一つをスタート地点から順番に DEM との一致 や移動速度のチェックを行うことによって求められる。高度履歴へ合致するパスは1 本とは限らないため、選択する候補座標を変えながらいくつものパターンを走査する。

この時、提案アルゴリズムでは候補座標の選択をランダムとし、かつ一度確認した座 標を次に候補としないようにすることで処理の高速性を確保している。ここで候補座 標とは、ある観測時刻において次の観測までの時間に移動可能な範囲の座標の集合を 指す。座標にはDEMのメッシュで離散化した座標を用いる。なお、移動可能範囲は 最低周囲1メッシュとし、最大移動範囲は仮定した最大移動速度によって拘束される。

ところで、現実の地形はあるメッシュ内である程度の高さの幅を持っている。した がって気圧高度とDEMの標高の比較ではこれを考慮する。今、注目しているメッシ ュの DEM 高を𝐸𝐶とし、周囲のDEM 高をそれぞれ𝐸𝑁、 𝐸𝐸 𝐸𝑆 𝐸𝑊とすれば、比 較すべきDEM高の最大値𝐸𝑚𝑎𝑥と最小値𝐸𝑚𝑖𝑛は式(4-12)–(4-13)によって求められる。

𝐸𝑚𝑎𝑥=max (𝐸𝑁、 𝐸𝐸、 𝐸𝑆、 𝐸𝑊)− 𝐸𝐶

2 + 𝐸𝐶 (4-12)

𝐸𝑚𝑖𝑛 =min (𝐸𝑁、 𝐸𝐸、 𝐸𝑆、 𝐸𝑊)− 𝐸𝐶

2 + 𝐸𝐶 (4-13)

これらを用いて DEM と推定された気圧高度が一致するかどうか判定する論理式を 式(4-14) – (4-16)に示す。式(4-16)の結果が真であれば、マッチしたと判定される。

𝐻+𝑒 = 𝐻 + 𝜀𝑒 (4-14)

𝐻−𝑒 = 𝐻 − 𝜀𝑒 (4-15)

((𝐸𝑚𝑖𝑛 ≤ 𝐻+𝑒 ≤ 𝐸𝑚𝑎𝑥) or (𝐸𝑚𝑖𝑛≤ 𝐻−𝑒≤ 𝐸𝑚𝑎𝑥) or

(𝐻−𝑒≤ 𝐸𝑚𝑖𝑛 and 𝐸𝑚𝑎𝑥≤ 𝐻+𝑒) or (𝐸𝑚𝑖𝑛≤ 𝐻−𝑒 and 𝐻+𝑒 ≤ 𝐸𝑚𝑎𝑥))

(4-16)

ここで、𝜀𝑒は気圧高度の誤差と DEM のモデル誤差を合わせたものである。GPS の 測位間隔が短ければ、主に移動体の姿勢変化が支配的となる。

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4.5.2.6. 静止判定

気圧高度だけでは移動体が静止した場合と移動体が等高線に沿って移動した場合 を区別できない。ただし、山岳地帯において気圧センサの分解能である約0.1 m以下 の幅で等高線に沿って長距離を移動することはほぼ不可能と考えられるため、ある時 刻の前後一定時間において高度変化が見られない場合を静止とみなせる。本アルゴリ ズムでは、静止判断の利用を選択できる。もしある時刻において静止とみなされた場 合、メッシュ間の移動ができないものとした。

静止状態であっても、実際には気圧配置の変化などによって移動局における気圧は 変化する。そのため、実測値により閾値を検討した。気圧の変化に伴う変化率を気象 庁が所管するアメダスの10分毎の観測値より求めた結果を図4-18に示す。標準偏差

は0.0142 (hPa/min)であった。これは約0.11 (m/min)に相当する。したがって閾値

は0.22 (m/min)程度が適当と考えられる。なお、計算に用いた期間は2008年7月~

2012年6月とし、気圧観測を行っている全てのアメダスを用いた。ただし、観測点 158点中の2点のみは観測データが最近のものしかなかったため、利用できる範囲で 計算した。

図4-18 全国のアメダスで観測された気圧の変化率の割合

気圧の変化率 (hPa/min)

割合 (%)

-0.10 -0.05 0.00 0.05 0.10

0102030

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