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森林環境下における測位性能の確認

ドキュメント内 熊本大学大学院自然科学研究科 (ページ 64-70)

2. 無線ネットワークを利用した GPS テレメトリ観測システムの開発

2.9. 実験

2.9.1. 森林環境下における測位性能の確認

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オープンスカイ環境には熊本大学自然科学研究科・理学部総合研究実験棟屋上

(E130.7296, N32.8135)を選んだ。屋上環境は南および西側に仰角5°程度の障害 物があるものの、ほぼオープンスカイである。また、森林環境には熊本市立田山南斜 面(E130.7298, N32.8225)を選択した。立田山はツブラジイやカシ類が優占する常 緑照葉樹林である。実験地点は通年を通じて湿潤な樹木によって覆われているものの、

地形による測距信号の遮蔽は存在しない環境である。それぞれの上空の環境を図2-35 と図2-36に示す。

図2-35 オープンスカイ環境

図2-36 森林環境

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2.9.1.2. 測距信号の受信環境評価

まずは、オープンスカイ環境における GPS-72D 受信機の受信信号強度(C/N)を示 したスカイプロットを図2-37に示す。また、LEA-5Tによるスカイプロットを図2-38 に示す。図中において、数値が大きいほど、色が明るい緑色であるほど受信強度が大 きいことを示している。

図 2-37 より、オープンスカイ環境において、GPS-72D は最大の受信強度が

45 dBHzであり、LEA-5Tに比べてアンテナ利得に異方性が強いことが分かる。

図2-37 オープンスカイにおけるGPS-72Dの受信信号強度

図2-38 オープンスカイにおけるLEA-5Tの受信信号強度

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次に、森林環境における GPS-72D 受信機の受信信号強度(C/N)を示したスカイプ ロットを図2-39に示す。また、LEA-5Tによるスカイプロットを図2-40に示す。

図2-39を図2-37と比較すると、約8 dBHzほど信号が劣化していることが分かる。

また、図2-39と図2-40を比較すると、樹木でマスクされた部分における信号強度に

約4 dBHz前後の差が見られる。一方で、可視空間においてはLEA-5T受信機の方が

10 dBHz以上受信強度が高いことが分かる。

図2-39 森林環境におけるGPS-72Dの受信信号強度

図2-40 森林環境におけるLEA-5Tの受信信号強度

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2.9.1.3. 森林環境下における TTFF

GPSテレメトリではGPS受信機はON-OFFを繰り返すために最新のアルマナッ クを保持できない。また、実際のGPSテレメトリにおいて、GPS受信機の起動間隔 は最長6時間程度で運用されているから、エフェメリスにおいても有効期限切れが発 生する。そこで、森林環境下におけるGPS受信機のTTFFの評価のためにコールド スタート時10のTTFFを収集した。なお、本実験ではMCUからGPS-72D受信機に 対してリセットコマンドを自動的に送信することによりGPS受信機に衛星軌道情報 を破棄させ、コールドスタートを実現した。なお、リセットコマンドを送信するタイ ミングは、GPS時刻の30を法とした剰余が24~27となるように調整した。これは 一般的なGPS受信機のTTFFがオープンスカイにおいて最も小さくなるタイミング である11

コールドスタートの試行回数136回の結果を表2-8に示す。この表は2D測位12と 3D測位13の場合それぞれのTTFFを表している。TTFFの分布は正規分布とはなら ないため標準偏差は適当ではないが、ばらつきが大きいことを示すために参考値とし て掲載した。なお、後の実験によりGPS-72Dは連続したサブフレーム141と5の取 得を測位の条件としていることが分かっている。従って、本実験条件における最小の TTFFは30 sである。

表2-8より、一般的なGPS受信機のTTFFはカタログスペック上36 s以下とされ ているのに対し、森林環境下では非常に長い時間を要することが分かった。立田山の 実験場所と同様に樹高20 m程度の照葉樹が密生している場所におけるGPSテレメ トリでは、タイムアウトを 100 秒前後に設定すると良いと考えられる。また、ほぼ 平地で高さ方向の移動が考えられない追跡対象については、2D測位が完了した時点 で電源を切ることにより、最大2割の電力を削減することができると考えられる。

表2-8 森林環境下のコールドスタート時におけるTTFF

測位モード TTFF 平均 (s)

TTFF 標準偏差 (s)

2D測位 81.6 58

3D測位 101 65

10 測位計算に利用可能なアルマナックもエフェメリスを保持せず、時刻情報もない 状態での測位開始をコールドスタートという。

11 GPS受信機の起動タイミングとTTFFの関係は第3章において説明する。

12 一般的に、測位解における楕円体高を前回の測位結果と同一と仮定した場合の測 位を2D測位という。捕捉衛星数が3つの場合にこの測位計算が行われる。なお、リ セット後はメーカの設定した初期値が用いられる。

13 捕捉衛星数が4つ以上のときに行われる測位を3D測位という。

14 サブフレームは測距信号のデータ構造を表す単位である。詳細は3章で説明する。

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2.9.1.4. 測位継続が測位精度に及ぼす影響

GPS の測位はニュートン法を用いた繰り返し計算を基本とするため、一度測位解 が求まった後も収束する。本実験では、測位完了後に測位を継続することが測位精度 へ及ぼす影響について確認した。なお、本実験においても測位モードはコールドスタ ートとし、前項と同じ実験データを用いた。

測位解が求まった後も測位を続けることによって測位精度が向上することを表2-9 と図2-41に示す。2D測位においては測位精度の向上は見られなかった。従って3D 測位へ移行する見込みが立たない場合は測位完了と同時にGPS受信機の電源を切る ことができる。一方で、3D測位の場合はある程度測位を続けた方が測位精度の高ま る傾向が見られた。

表2-9 測位継続が測位精度へ及ぼす影響

観測タイミング 標準偏差 (m)

Lat. 32.822684 91

Lon. 130.72997 52

Lat. 32.822657 89

Lon. 130.729948 53

Lat. 32.822515 28

Lon. 130.729849 22

Lat. 32.822521 8.5

Lon. 130.729831 7.5

平均座標(WGS 84測地系)

2D測位完了時 2D測位完了より6秒後

3D測位完了時 3D測位完了より6秒後

図2-41 測位完了後のタイミング別による測位座標の分布

-200 -150 -100 -50 0 50 100 150 200

-200 -150 -100 -50 0 50 100 150 200

度方向変位 (m)

経度方向変位 (m) 3D測位完了時

3D測位完了より6秒後

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