年 11 月.
3.7 GNSS 基準局への積雪,着雪の影響調査
GAST-D
プロトタイプ設計検証の一環として積雪,着雪
リスク評価を実施している。前年度までの成果から
GNSS基準局アンテナへの着雪は電離圏空間勾配モニタ等への 誤警報要因となりうることから適切な対策が必要である ことがわかっている。平成
26年度は,積雪面からの反射に ついてマルチパス低減アンテナ(
MLA)
2式を用いた冬季 実験を実施した。
4.まとめ
ICAO NSP
作業部会で継続実施される電離圏空間勾配モ
ニタに関連した対流圏勾配による誤警報対策等の一部検 証作業は平成
27年
10月までに完了を目指しており,当研究 所もこの活動に継続参加する予定である。
GAST-D地上プ ロトタイプの長期安定性試験について,主要なリスク,イ ンテグリティモニタ以外についての長期データによる評 価や磁気低緯度地域での
GBAS運用の視点から引き続き 危険な事象が発生しないか
HMI(
Hazardous MisleadingInformation
)解析を継続することとしたい。本研究で得ら
れた成果は,今後,日本に
GAST-Dを導入する際に必要な 認証活動への参画する等の成果の活用が期待される。また,
機上評価装置の開発で得た知見を今後の新機能追加に向 けた国際標準化活動(
ICAO,
RTCA等)への積極的な参画 に活用していくことが期待できる。
掲載文献
(1) J. Burns, S. Saito et al., “Ionospheric effects on GBAS and mitigation technique”, ICAO NSP WGW, Montreal, Canada, May 2011.
(2) T. Yoshihara and S. Saito, “Japanese Research and Development Status Concerning GBAS”, ICAO NSP WGW, Montreal, Canada, May 2011.
(3) S. Saito, “Validation of ionospheric threat model with observed ionopheric gradients associated with plasma bubble”, ICAO NSP WGW, Montreal, Canada, Dec. 2011. (4) T. Yoshihara, et al., “Japanese Research and
Development Status Concerning GBAS”, ICAO NSP WGW, Montreal, Canada, Dec. 2011.
(5) T. Yoshihara, et al., “GBAS Glide Path Angle lower than 3.0”, ICAO NSP WGW, Montreal, Canada, Dec. 2011. (6) T. Yoshihara, et al., “Japanese Research and Development
Status Concerning GBAS”, ICAO NSP WGW, Montreal, Canada, May 2012.
(7) T. Yoshihara, et al., “ENRI’s GAST-D Validation Program”, ICAO NSP WGW, Montreal, Canada, May 2012.
(8) S. Saito and T. Yoshihara, “Japanese Research and Development Status Concerning GBAS”, APANPIRG CNS/MET Subgroup/16, Bangkok, Thailand, July 2012.
(9) T. Yoshihara, et al., “GAST-D validation program of ENRI”, 13th International GBAS Working Group (I-GWG/13), Langen, Germany, August 2012.
(10)
吉原ほか
, “GBASに対する積雪
,着雪リスク評価実験の 初 期 結 果
”,電 子 情 報 通 信 学 会 ソ サ イ エ テ ィ 大 会
, B-2-33,富山市
, 2012年
9月
(11) M. Steen et al., “GBAS Curved Approach Procedures:
Advantages, Challenges and Applicability”, 28th ICAS Congress, ICAS 2012-4.9.2, Brisbane, Australia, Sept. 2012.
(12) S. Saito, et al., “Absolute gradient monitoring for GAST-D with a single-frequency carrier-phase based and code-aided technique”, Proc. of ION GNSS 2012, pp.2184-2190, Nashville, TN, Sept. 2012.
(13) T. Yoshihara, et al., “GAST-D Integrity Risks of Snow Accumulation on GBAS Reference Antennas and Multipath Effects Due to Snow-surface Reflection”, Proc. of ION ITM 2013, pp.112-120, San Diego, CA, Jan. 2013.
(14) S. Saito, et al., “Area Covered by an Ephemeris Monitor”, ICAO NSP WGW, Montreal, Canada, March 2013.
(15) T. Yoshihara, et al., “Japanese GAST-D operational validation program in an ionospheric active region”, ICAO NSP WGW, Montreal, Canada, March 2013.
(16)
吉原ほか,
“カテゴリⅢ
GBAS(
GAST-D)の日本にお
けるリスク検討
”,第
13回電子航法研究所研究発表会講
演概要,
pp.9-12,
2013年
6月
(17)
星野尾ほか
, “航空用
GPS補強システム
(SBAS/GBAS)に おける安全性
”,信頼性
,vol.35,pp.307-314, 2013年
8月
(18) S. Saito et al., “ENRI GAST-D Program Update”,I-GWG/14, Everett, WA, June 2013
(19)
毛塚ほか,
“航空機の
GNSS航法の代替システムとして
の
DME/DME測位における大気伝搬遅延誤差の評価方
法に関する一検討
”,信学技報,
SANE,
Vol.113,
No.165,
pp.17-21,
2013年
7月
(20)
吉原ほか,
“積雪面上及び埋雪アンテナによる
GNSS受 信信号に対する積雪の影響評価のための冬季実験
”,信 学技報,
SANE,
Vol.113,
No.184,
pp.5-9,
2013年
8月
(21)
毛塚ほか,
“測距信号の低仰角方向への伝搬における大
気伝搬遅延誤差のレイトレーシング解析
”,電子情報通 信学会ソサイエティ大会
, B-1-2,福岡市
, 2013年
9月
(22)吉原ほか,
“超小型量子発振器の
GPS受信機における利
用
”,電子情報通信学会ソサイエティ大会
, AS-2-2,福岡 市
, 2013年
9月
(23) T. Yoshihara et al., “A Program of GAST-D Operational Validation in an Ionospheric Active Region of Japan”, International Symposium on Precision Approach and Performance Based Navigation 2013 (ISPA 2013), Session 3-4, Berlin, Germany, October 2013
(24) T. Yoshihara and S. Saito, “Status of GAST-D operational validation program in a low latitude region”, ICAO NSP WGW, Montreal, Canada, November 2013
(25) T. Yoshihara et al., “A Study on Practical Use of CSAC (Chip Scale Atomic Clock) for GBAS ground subsystem”, Proc. of ION ITM 2014, pp.657-661, San Diego, CA, January 2014
(26)
毛塚ほか,
“梅雨期における測距誤差変動の球状成層大
気モデルを用いた解析
”,電子情報通信学会総合大会,
B-1-4,
新潟市,
2014年
3月
(27)
吉原ほか,
“冬季実験データを用いた
GNSSアンテナへ の着雪による測位誤差評価
”,日本地球惑星科学連合
2014年大会,
SGD21-08,千葉市,
2014年
4月
(28) T. Yoshihara and S. Saito, “Status report of GAST-D operational validation in Japan”, ICAO NSP WGW, Montreal, Canada, May 2014
(29)
吉原ほか,
“カテゴリⅢ
GBAS(GAST-D)研究用地上装置 の開発と新石垣空港への設置
”,航空無線,
No.80,
pp.43-47,
2014年
6月
(30)
吉原ほか,
“カテゴリⅢ
GBAS地上装置のプロトタイプ 開発
”,第
14回電子航法研究所研究発表会講演概要,
pp.93-98
,
2014年
6月
(31)
齋藤ほか,
“GAST-D機上実験装置の開発と評価
”,平成 第
14回電子航法研究所研究発表会講演概要,
pp.99-104, 2014年
6月
(32) S. Saito, “GBAS Activities of ENRI”, I-GWG/15, EUROCONTROL Experimental Centre, France, June 2014 (33) S. Saito, et al., “GAST-D ground/air experimental systems
and flight experiment”, I-GWG/15, June 2014
(34) S. Saito, et al., “Effects of snow on GBAS reference stations”, I-GWG/15, June 2014
(35)
吉原ほか,
“GNSS受信データに対する積雪、着雪の影
響 評 価 に 関 す る 研 究
”, 信 学 技 報 ,
vol.114, no.194, pp.89-92,
2014年
8月
(36) S. Saito, et al., “Performance improvement of GAST-D airborne monitor algorithms under disturbed ionospheric conditions”, Proc. of ION GNSS+ 2014, pp.815-821, Tampa, FL, Sept. 2014
(37) T. Yoshihara, et al., “Status report of GAST-D operational validation in Japan”, ICAO NSP WGW, Montreal, Canada, Sept. 2014
(38) A. Kezuka, et al., “VDB coverage measurement at New Ishigaki Airport”, ICAO NSP WGW, Montreal, Canada, Sept. 2014
(39) T. Yoshihara, “GNSS Landing System in the Low Magnetic Latitude Region”,
信学技報
, vol.114, no.264, pp.51-54, 2014年
10月
(40)
吉原ほか,
“高カテゴリー
GBASの開発状況
”,平成
26年度電子航法研究所講演会,
2014年
11月
(41) T. Yoshihara, et al., “A Study on Integrity Improvement of GBAS Ground Subsystem Using CSAC (Chip Scale Atomic Clock)”, Proc. of ION ITM 2015, pp.593–599, Dana Point, CA, Jan. 2015
(42) A. Kezuka, et al., “Analysis of VDB signal strength above runway surface at New Ishigaki Airport”, ICAO NSP CSG, Ishigaki, Japan, Feb. 2015
(43) S. Saito, et al., “Tropospheric gradient observed in Ishigaki,Japan and the response of the Ionospheric Spatial Gradient Monitor”, ICAO NSP CSG, Ishigaki, Japan, Feb.
2015
GNSS
を利用した曲線経路による精密進入着陸方式等の高度な飛行方式の研究【重点研究】
担当領域 航法システム領域
担 当 者 ○福島 荘之介,齊藤 真二,森 亮太(航空交通管理領域) ,毛塚 敦,山 康博,星野尾 一明 研究期間 平成
25年度~平成
29年度
1.はじめに
GNSS
による精密進入着陸システムである
GBAS(地上 型衛星航法補強システム)は,カテゴリー
I運用の実用化 フェーズに入り,海外では現在の
ILSと同等な直線進入 による
GLS(
GBAS Landing System)運用が開始された。
一方,
ICAO(国際民間航空機関)は,ターミナル空域に おける
PBN(性能準拠型航法)の展開を推進し,
GLS進 入着陸の導入により運航の最適化を図るとともに,
GLSを活用した運航効率の向上,環境負荷の低減,空港容量 の拡大を目指している。この実現のため,現在直線に限 定されている精密進入経路を曲線化するなど
GLSの特徴 を生かした高度な飛行方式を実現する技術の開発が強く 望まれている。
2.研究の概要
本研究では,曲線精密進入等の
GLSによる高度な飛行 方式関する技術開発を実施し,国際標準策定に必要な進 入セグメントなどの定義,障害物間隔の課題を解決する ことを目的とする。
このために, (
1)機上実験装置を開発し,飛行実証を通 して
GLS曲線セグメント(
TAP)の実現方法に関する課 題を解決する。また,(
2)フライトシミュレータ実験に より,ジェット旅客機の
PBN・
GLS機能で可能な飛行方 式を実現し,我が国での有効性を検証する。さらに,(
3)
GLS誤差モデル,機体モデル,風モデルを組み込んだモ ンテカルロシミュレーションツール・人間操縦モデルを 開発し,障害物との安全間隔を評価して飛行方式を設計 する手法を確立する。
3.研究結果
(
1)
GBAS基本性能と
GLS TAPの飛行評価実験 仙台空港において,震災後復旧した
GBAS地上装置を 利用して,飛行実験を当所実験用航空機(よつば)により,
H26
年
12月と
H27年
3月の
2回,各
1週間の飛行実験を 実施した。実験は,主に
GBAS基本性能を把握するため,
GLS
進入コースの形成,所要
VDB(
VHF Data Broadcast) 覆域の計測を行い,地上
GBAS装置が予定した性能を持 つことを飛行により確認した。図
1に
VDB覆域確認のた
図1:仙台空港における
GLS飛行実験経路
めのオービット飛行,海上でのレベル飛行,
GLS経路で の進入とタッチアンドゴーの飛行経路を示す。また,仙台 空港に設定された
RNAV AR APCH経路をオーバレイし,
RNAV
経路をシミュレートする飛行を実施して
GLSデー タを計測した。さらに,
12月の実験は,
JAXAドルニエ機 との共同実験とし,当所の
GBAS地上装置から放送する 複数の
TAP経路上をオートパイロットで飛行する実証を 実施した。これらの実験は,
TAP曲線経路の設計に対する 課題を抽出することを1つの目的としているが,これまで の実験によって,
TAP方式の
RF(円弧旋回)レグと
TF(
Track to Fix)レグの不整合がみつかっており,今後,経
路設計と偏差の算出方法について検討を進める予定であ る。
(
2)ジェット旅客機を模擬したフライトシミュレータに よる
RNP to GLS方式の検証
全日本空輸(株)の所有する操縦訓練などを目的とする
B787フライトシミュレータを利用した検証実験を実施し
た。本シミュレータは,
FMSに航法データベースを設定
し,
RNPの
RF旋回を飛行する機能に加え,関西空港の
GBAS地上装置により,
GLSによる最終進入経路を飛行す
ることが模擬可能である。このため,
RNPの
RFレグと
GLSの最終進入セグメントを接続する標準的な経路をコ
ーディングして
FMSにロードし,実機と同様の動作が保
証された
AFDS(
Autopilot and Flight Director System)を利
用して,設計経路上を模擬飛行した。
図2:RNP の
RFレグと
GLS最終進入セグメントを接続す る経路の例
設計経路の一例を図2に示す。この他,実験当初は
RFレグを直接最終進入に接続する経路を設計したが,パイロ ットとの意見交換により本検証では,
RFレグの終わりに 一定高度の
TFレグを挿入し,
GLSのグライドスロープ
(
GS)に下から会合する経路を設計した。従来,
FAAの 諮 問 機 関 で あ る
PARC(
Performance based Operation Aviation Rulemaking Committee)の検討では,海面気温に よる気圧高度の変化が
GSへの会合に与える影響が大きく,
我々の検討でも
GLSのローカライザ(
LOC)と
GSのキ ャプチャがほぼ同時に起こることが課題であった。
ILSの
GSには
LOCコース外で保証がなく,先に
GSにキャプチ ャすることは認められていない。
GLSにおいては保証が あるが,現状では
ILSと同様の運航が望まれる。そこで,
本経路の設計では,海面気温を変化させた場合に設計経路 の高度プロファイルを計算可能なツールを作成した。ツー ルは大地を球面と扱い,国際標準大気モデル(
ISA)で高 度を計算する。この結果,海面気温が国内の最高気温以上
(
45℃)でも,
GS偏移指示(ポインタ)が中央より上側 に表示される(すなわち,機体が
3°の
GS面よりも下側 に入る)ことを条件とし,
RFレグの降下角を
2.4度とし た。この条件は,パイロットとの意見交換により得られた。
図3に基準気温を
ISA−
45(−
30℃)~
ISA+30(
+45℃)
まで変化させた試行の飛行高度(青実線)を示す。検証結 果の高度と計算値(マゼンタ実線)は,よく一致した。ま た,
AFDSの
LOCキャプチャは全ての試行で
WP2へ
1.0NM
位置で発生し,
GSキャプチャは気温に依存するが,
ISA
(
+15℃)~
ISA+30(
+45℃)では
WP1と
WP2間(
TFレグ上)で生じた。
ISA-30(
-15℃),
ISA-45(
-30℃)で は
WP1の先で
GSキャプチャした。
この結果,
RFレグの降下角を決定して
GSに会合可能
な経路の設計が可能となった。また,
ARINC424コーディ ングとベンダーの品質チェックに関する制約を検討する 必要があり,特に
RNP to ILSについては
RNP to GLSより 制約が強いため,今後の課題となる。
図3:海面気温を可変した場合の飛行高度(海面高)と
GLSグライドスロープの関係
(
3)モンテカルロ・シミュレーションツールと人間操縦 モデルの基本設計
GLS