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他 2 件

平成 26 年度は,主として以下の各項目について実施した。

○伝送路等化の調査研究

○等化アルゴリズムの実装と実験

3.研究成果

3.1

伝送路等化の調査研究

LDACS1

OFDM

方式の通信システムであり,伝送路

等化の良否が受信性能に関わってくる。等化とは受信信 号から伝送路の周波数特性を推定し補正する技術である。

OFDM

方式では一般的に伝送フレーム中にパイロット信 号を配置しこれを利用して周波数特性の推定を行う。昨

年度

LDACS1

の周波数シフト耐性について実験したと

ころ,基地局→航空機局方向(フォワードリンク)と航 空機局→基地局方向(リバースリンク)とではフォワー ドリンクの方が周波数シフトに高い耐性を持つ結果が得

られた。

LDACS1

はフォワードリンクとリバースリンク

のパイロット信号配置パターンが異なり,この差異が周 波数シフト耐性の違いとなったと考えられる。例え同じ 等化アルゴリズムであってもパイロット信号配置の違い によってビット誤り率特性等の受信性能が異なることか ら,等化アルゴリズムの違いの他,パイロット信号配置 の違いについても調査研究を行った。

3.2

等化アルゴリズムの実装と実験

リバースリンクの判定帰還型等化アルゴリズムによる 周波数シフト耐性が高々±

300Hz

程度という結果が昨年 度得られたことから,この他に内挿補間型等化アルゴリ ズムを実装し,比較検証した。図

1

に判定帰還型と内挿 補間型の特性比較結果を示す。判定帰還型(緑色,白抜 き,破線)は,周波数シフトが±

300Hz

よりずれると誤 り訂正を施していてもビット誤り率が

10-1

を超えてしま っている。一方,内挿補間型(青色,実線)は周波数シ

フトが±

900Hz

程度になってビット誤り率が

10-1

を超え

ることから,周波数シフト耐性が改善していることがわ

かる。

またリバースリンクのフレームサイズは変更せずに,

パイロット信号の配置のみを変更する実装も行った。

4.まとめ

OFDM

ベースの通信システムは比較的広帯域なチャネ ルを使用するために,伝送路の周波数等化が受信性能に 大きく影響する。本年度は等化アルゴリズムやパイロッ ト信号配置について幾つかのバリエーションを実装し,

比較検証を行ってきた。航空機局が空間を移動すると,

局周囲や地形等の環境に応じて様々なフェージングが生 じる。今後は,本実験結果をもとに代表的なパラメータ を設定したフェージング環境下での

LDACS1

のビット 誤り率特性について実験を実施する等,航空用高速デー タリンクにおける課題解決を行っていく予定である。

掲載文献

(1) J. KITAORI

, “

Updated LDACS1 BER perfomances with LPES

”,

ICAO ACP WG-M #21

2014

7

. (2)

北折, “航空データリンクとソフトウェア無線技術”,

航空振興財団 航空交通管制システム小委員会,

2014

11

.

(3)

北折,塩見, “フェージング環境下における

LDACS1

ビット誤り率特性”,電子情報通信学会 宇宙・航行 エレクトロニクス研究会,

2015

1

.

(4)

北折,住谷,石出, “将来の航空用高速データリンク に関する研究”,電子航法研究所報告 技術資料,

No. 132

pp.51-60

2015

1

.

10-7 10-6 10-5 10-4 10-3 10-2 10-1 100

-1500 -1200 -900 -600 -300 0 300 600 900 1200 1500

BER CNR=20[dB]

Frequency shift [Hz]

BER performance vs frequency shift, data frames in reverse link

DFE interpolation

図 1 リバースリンク周波数シフト耐性の改善

発話音声による覚醒度低下の評価尺度の開発【指定研究

B

担当領域 監視通信領域 担 当 者 〇塩見 格一 研究期間 平成

26

年度

1.はじめに

「音声を分析して,その発話者が居眠りを起こす可能性 の増大を検出し警告する。」このような機能を有する居眠 り防止装置の実現を目指して,筆者は,

1998

年以来,カ オス論的な手法による音声分析技術の研究開発を進めて きた。この研究開発は,

1998

年における,当時の(株)

オージス総研に在籍されていた広瀬氏による「発話音声信 号をサンプリングした時系列信号から再構成されるスト レンジ・アトラクタに対して計算される最大リアプノフ指 数(

LLE

)の移動時間平均値が,発話者の心身状態に応じ て変化する。 」現象の発見に始まる。

1)

以降,

2003

年ま での第1期の研究期間において心身状態の相関する特徴 量としての

CEM

を定義し,これを計算するアルゴリズム

SiCECA: Shiomi’s Cerebral Exponent Calculation Algorithm

) を開発した。

2008

年までの第2期において

CEM

が覚醒度 に 相 関 す る こ と を 確 認 し , 最 初 の 発 話 音 声 分 析 装 置

“CENTE”

を実現した。その後の

2012

年までは

CEM

の性

質を再確認する試行錯誤が続いた。

転機は

2013

年に訪れ,それ以降を技術的には第3期と 位置づけている。早稲田大学の菊池先生からのコメントを 契機に,我が国の音声資源コンソーシアムが管理する音声 データを分析し,

CEM

の一般的な性質や性格を明らかに する試みを開始した。

2014

年は,本研究課題の開始と共 に第3期における研究成果が出始めた年であり,本年次報 告においては,その概要を報告する。

2.第3期の発話音声分析技術の研究開発

筆者は,

2008

年には既に, 「音声分析型居眠り防止装置」

の実現に要する信号処理技術を確立しており,肯定的な機 能検証結果を得て,学会報告等も行っていた。

2008

年は 米国

NTSB

が,パイロット等の健全性を実証的な技術によ り管理することを求める安全勧告を発し,これに対して当 所が発話音声分析装置を以って,米国

FAA

が主宰する航 空安全フォーラムに初参加・初出品した年であった。

第3期の研究は,上記の肯定的な成果を積み上げながら も,一向に認知されない当所の発話音声分析技術について,

これが「興味を持たれない理由」 ,少しだけ試して放棄さ れてしまう「信頼されるに至らない理由」の検討から始め た。また,基礎に立ち帰って「

1998

年に筆者らは何を発 見したのか?」 「

1998

年の発見の内容を第三者に誤解のな

いように説明するためには,何をどのように示すことが必 要なのか?」検討・考察した。

2.1 CEM

とは何か?

1998

年に筆者らは何を発見したのか?」との問いの 発展型が「

CEM

とは何か?」との問いであるが,

2014

年 以前は「時間局所性を考慮して

LLE

を変形させたもので あって,声の揺らぎを定量化した指数値です。 」と言った 以上の回答を提示していない。

個人差は不可避であろうが,誰にでも「具体的に過ぎて 理解できないこと」と「抽象的に過ぎて理解できないこと」

がある。

1998

年,筆者らは, 「音声信号から再構成される ストレンジ・アトラクタの

LLE

2005

年以降は

CEM

)が,

発話者の心身状態に応じて変化する。 」と仮設を設定し,

その肯定的な検証を目指した。現時点でこの命題を検討す れば,

2014

年以前は,ストレンジ・アトラクタと,形式 的に計算される

LLE

に対する無理解があったことは間違 いない。これらの無理解はストレンジ・アトラクタと

LLE

2

つを具体的なものとして理解していたことにあり,ま た心身状態については抽象的な概念として取扱っていた ことが問題であった。

心身状態を抽象的な概念としてしか理解していない状 態で,音声により発話者の心身状態を評価しようとしたた めに,人間の脳機能と生理的なメカニズムの関係等,およ そ定説もない未知の事柄だらけの領域で,定義さえ曖昧な 疲労度に係る議論に関わり,結論の出せない実験等を行っ てきた。我々が問題とすべきは,多くの専門家の合意する 定量化尺度の存在する「覚醒度」等の心身状態であり,多 くの医療関係者が合意する診断尺度の存在する「鬱と非 鬱」, 「アルツハイマー型認知症と血管性認知症」,等々を 識別する技術としての研究開発を進めることが本来的に 必要なことであり,現在,共同研究者と検証予備実験等を 進めている。また,形式的な

LLE

が発話者の覚醒度等の 評価に適していなかったために,筆者は

CEM

を新たに定 義したにもかかわらず,ストレンジ・アトラクタの物理 的・数理的な意味に関する理解が不十分であったため,

2014

年までは

CEM

の有効性を明確に論ずることができな

かった。このために,幾つかの大学や企業において当所技

術を追試・再試するような研究がなされ,それらの学会報

告等も見られるが,当所の研究成果を踏まえながらも

LLE

の有効性が主張される等,明確な成果を示しているものは 皆無であり,逆に,これらは,当所技術の普及や発展を妨 げる一因になっていた。

3)

このような状況に対して,

2014

年,筆者は共同研究者 の了解を得て,従来非公開としていた

SiCEA

パラメータ の設定等,適正な覚醒度評価に必要な情報を開示した。

5)

当所の発話音声分析技術を理解することは,発話音声か ら生成(カオス論的には, 「再構成」と言う。 )されるスト レンジ・アトラクタに対して定義される特徴量としての

CEM

を計算する

SiCECA

アルゴリズムを理解することで あり,その信頼性向上等の高性能化や高機能化は

SiCECA

パラメータの調整により実現される。アルゴリズムは手続 きの記述であって,

CEM

SiCECA

アルゴリズムにより 算出される「時系列信号として離散化された音声信号に対 して定義された特徴量」であるから,理解のための努力が 払われるのであれば,誰でも,複雑ではあっても曖昧なも のではないことは了解できる筈である。

2,5)

2.2 CEM

の信頼性は十分か?

血圧等の従来の生理指標については,

10

回計測を行え ば殆どの場合

10

個の計測値はその平均値に対して

±σ

(標 準偏差)の範囲に含まれるであろうが,

2013

年までの

SiCECA

の実装において

CEM

は全く異なる挙動を示して

いた。これは

SiCECA

の実装に対する

CEM

の分布に依存 するものであって,本来

SiCECA

CEM

の信頼性とは別 次元の話であるが,この事情を知らない限りは,以下の様 な

CEM

の分布の有する性質のために,

CEM

そのものに対 する信頼性に疑問が生ずる状況は理解できる。

ある時にある人が

10

の短文を朗読してその音声から

10