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(図1)。

平成 24 年度に構築した AeroMACS 信号の送受信実験シ ステムについて,複数アンテナを用いた多入出力の構成

に変更し,送信機を新設の上,新たに移動可能な実験局 免許を取得した。この実験システムは平成

24

年度に構築 した送受信実験システム同様,一方向の通信システムで はあるが,仙台空港に隣接する当研究所岩沼分室内近傍 に設置可能であり,空港内の必要な個所に基地局を設置 し,端末を搭載した実験車両が空港内を移動することで,

空港近傍における

AeroMACS

信号の電波伝搬状況が詳細 に解析できる。

また,これと並行し

WiMAX

の無線通信技術に関する 予備的検討として,計測器を用いた評価システムを構築 し,高速移動時のドップラを考慮した性能評価を行った。

これにより,変調方式の違いによるデータパケットの誤 り率

(Packet Error Rate)

や伝送速度

(Throughput)

に対する 移動速度との関係を明らかにした。これらの解析結果は,

AeroMACS

プロトタイプを用いたフィールドでの基本性

能評価結果と比較の上,国際学会に投稿した。

3.3 AeroMACS

の動向調査及び技術提案

ICAO

における

AeroMACS

用国際標準の規格策定作業

は,

7

月及び

11

月の作業部会

(WG-S)

及び複数回の

web

会議 を経て,

12

月の通信パネル会議で最終案が承認された。

現在,この最終案は平成

28

年秋の国際標準発効に向け,

ICAO

内で事務手続中であり,この次のステップとして実 用に対応するための

AeroMACS

マニュアルを策定する作 業に着手したところである。当研究所は

AeroMACS

用国 際標準の規格策定作業において,

AeroMACS

プロトタイ プ を 用 い た 実 験 結 果 を 継 続 的 に 報 告 し , 最 終 的 に

AeroMACS SARPs

案 の 検 証 作 業 を 担 っ た 。 現 在 は

AeroMACS

マニュアルの策定作業に参画し,

AeroMACS

プロトタイプを用いた性能評価を引き続き実施している。

11

月の

WG-S

は,関連する

WiMAX Forum

のシンポジウ ム

(WiMAX Aviation 2014 Sendai)

と連続日程で日本

(

仙台

)

において開催した。当研究所で開発した

AeroMACS

プロ トタイプは,このシンポジウムや同時期に開催された国 際学会において,実験デモンストレーションとして公開 し,通信関連の研究者や国際標準策定作業メンバにもそ の実験システムや性能等を認められた。図

3

に実験デモン ストレーションの模様を示す。

4.おわりに

平成

26

年度は

AeroMACS

信号実験システムを複数入出

力に対応できるよう改良し,実験局免許を取得の上,性 能を確認した。また,

AeroMACS

プロトタイプを開発し,

性能評価の上,

ICAO

AeroMACS

用国際標準の規格策定 における検証作業を実施した。この

AeroMACS

プロトタ イプは,国際学会や関連する

WiMAX

関連シンポジウム において,実験デモンストレーションとして公開し,国 際 標 準 策 定 規 格 メ ン バ 等 と も 意 見 交 換 し て い る 。

AeroMACS

プロトタイプを用いた性能評価や

WiMAX

術の検討結果は,

ICAO

における

AeroMACS

用国際標準の 図2 伝送速度の性能評価結果

図3 実験デモンストレーションの模様

(WiMAX Aviation Field Technical Tourより)

規格策定会議や国内外の学会等を中心に報告した。平成

27

年度は開発した

AeroMACS

プロトタイプを用い,

ICAO

における

AeroMACS

マニュアルの策定作業を中心に性能

評価を行い,結果をまとめていく予定である。

掲 載 文 献

(1) K.Morioka, N.Kanada, S.Futatsumori, A. Kohmura, N.Yonemoto, Y.Sumiya and D.Asano: Experiments of VoIP using WiMAX System and Fading Simulator with Two-path Models for Aeronautical Scenarios, ICNS 2014, Apr.2014

(2) K.Morioka, N.Kanada, Y.Sumiya, N.Yonemoto, A.

Kohmura, S.Futatsumori, M.Shioji and T.Tomita:

Preliminary Evaluation for AeroMACS Prototype Mobile Station, 17th EUROCAE WG82, May 2014 (3) N.Kanada, K.Morioka, Y.Sumiya, N.Yonemoto, A.

Kohmura, S.Futatsumori, M.Shioji and T.Tomita:

Preliminary RF Characteristics Evaluation for AeroMACS Prototype Mobile Station, WiMAX Aviation 2014 Brussels, May 2014

(4)

森岡 和行

,

金田 直樹

,

二ッ森 俊一

,

河村 暁子

,

米 本 成人

,

住谷 泰人

:

実環境下における

AeroMACS

試 験信号解析

,

平成

26

年度(第

14

回)電子航法研究所 研究発表会講演概要

, 2014.6

(5) K.Inoue and Y.Sumiya: Airport Radio LAN System in Japan, ICAO ACP WGS5 IP02, Jul. 2014

(6) Y.Sumiya, N.Kanada, K.Morioka, N.Yonemoto, A.

Kohmura, S.Futatsumori, M.Shioji and T.Tomita:

Modification in the session of Emission in AeroMACS draft SARPs, ICAO ACP WGS5 IP02, Jul. 2014

(7)

森岡 和行

,

金田 直樹

,

二ッ森 俊一

,

河村 暁子

,

米 本 成人

,

住谷 泰人

: AeroMACS

プロトタイプ端末の 2波モデルによるスループット評価

, 2014

年電子情 報通信学会ソサイエティ大会

, 2014.9

(8) N.Kanada, K.Morioka, Y.Sumiya, N.Yonemoto, A.

Kohmura, S.Futatsumori, M.Shioji and T.Tomita:

Spectrum Mask Measurement Methods and Results for AeroMACS, ICAO ACP WGS Webmeeting6, Sep. 2014 (9) N.Kanada, K.Morioka, Y.Sumiya, N.Yonemoto, A.

Kohmura, S.Futatsumori, M.Shioji and T.Tomita:

AeroMACS Prototype Preliminary evaluation report, ICAO ACP WGS Webmeeting6, Sep. 2014

(10) Y.Sumiya: ENRI’s AeroMACS Project, WiMAX Aviation 2014 Sendai, Nov. 2014

(11) N.Kanada, K.Morioka, Y.Sumiya, N.Yonemoto, T.Tomita, A. Kohmura and S.Futatsumori: Throughput Evaluation of ENRI Prototype AeroMACS in Sendai Airport, ICAO ACP WGS6, Nov. 2014

(12)

住 谷 泰 人

:

新 し い 空 港 面 移 動 通 信 シ ス テ ム

(AeroMACS)

の開発動向

,

平成

26

年度電子航法研究 所講演会

, 2014.11

(13) ICAO ACP WGS (included Y.Sumiya, N.Kanada, K.Morioka, N.Yonemoto, A. Kohmura and S.Futatsumori of ENRI): AeroMACS SARPS Validation Report, ICAO CP1 WP03.1 Appendix D, Dec. 2014 (14)

森岡 和行

,

金田 直樹

,

二ッ森 俊一

,

河村 暁子

,

本 成人

,

住谷 泰人

:

空港面における送信ダイバーシ チ効果についての考察

, 2015

年電子情報通信学会総 合大会

, 2015.3

(15) Y.Sumiya, N.Kanada, K.Morioka, N.Yonemoto, A.

Kohmura and S.Futatsumori: SARPs Validation using AeroMACS Prototype in ENRI, IEEE Service Assurance in System Wide Information Management (SASWIM) , Mar. 2015

航空路監視技術高度化の研究【重点研究】

担当領域 監視通信領域

担 当 者 ○宮崎 裕己,古賀 禎,松永 圭左,角張 泰之,本田 純一,田嶋 裕久 研究期間 平成

25

年度~平成

28

年度

1.はじめに

今後の航空交通管理の運用概念として軌道ベース運用

TBO

)が位置づけられており,

TBO

の実現においては シームレス(継ぎ目のない)かつ高性能(高頻度・高精 度)な航空機監視が要求されている。このため航空機監 視システムは,現用の二次監視レーダー(

SSR

)から,

高性能な広域マルチラテレーション(

WAM

)への移行 が進められており,更には衛星航法システム(

GNSS

) をベースとした高機能な自動位置情報伝送監視(

ADS-B

) の導入も計画されている。しかしながら,これらの監視

技術(

WAM/ADS-B

)を航空路に適用する場合,海岸線

沖合の覆域を

SSR

並に確保できる,高利得アンテナの開 発が必要との課題がある。

一方,

TBO

においては機上・地上間での軌道情報の共 有を可能とするデータリンクが必要不可欠であり,

WAM/ADS-B

による即時性の高いモード

S

データリンク

の実現が期待される。しかしながら,無指向性アンテナ による高頻度なデータの送受信は信号環境の悪化を招く との問題があり,実用化には,必要な方向に送信を限定 するセクタ型アンテナの開発が必要である。

このような背景から,本研究の目的は,

WAM/ADS-B

の課題である海岸線沖合エリアの監視覆域を拡張すると ともに,即時性の高いモード

S

データリンクを実行可能 とする高利得セクタ型アンテナを開発するものである。

我が国の将来の航空交通システムに関する長期ビジョン

CARATS

)では,航空路への

WAM/ADS-B

の導入およ

TBO

の実現が示されており,本研究の意義は高い。

2.研究の概要

2.1 WAM

ADS-B

の測位原理

1

WAM

ADS-B

の 測 位 原 理 の 概 略 図 を 示 す 。

WAM

は,航空機に搭載されたトランスポンダが送信す る信号を,地上に配置された複数の受信局で検出して到 達時刻を測定する。次に測定した到達時刻から受信局間 の到達時刻差を求めて,航空機と各受信局との距離差に 変換する。そして,距離差が一定との条件からなる双曲 線同士の交点を求めることで航空機の位置を算出する。

一方,

ADS-B

は,航空機が自機の位置情報を

GNSS

か ら取得して,放送型データリンクを利用して送信する。

送信された位置情報は,地上に設置された

ADS-B

受信局 などで検出され,この情報を基に監視が行われる。

WAM

ADS-B

は,トランスポンダから送信される同じ形式の

信号を利用するため,共用(同時運用)が可能である。

受信局 双曲線

放送 自機位置

WAM ADS-B

衛星航法システム(GNSS)

受信局

図1 WAMとADS-Bの測位原理の概略図

2.2

海岸線沖合への

WAM/ADS-B

の覆域拡張

WAM

は受信局配置の外側では,図

2

に示すように,

双曲線がほぼ平行に交わるため測位誤差が増大する。加 えて,計算解が得られない検出率の低下も発生する。こ の状況に対して,

SSR

のように質問信号を地上から送信 して航空機トランスポンダに応答させると,質問から応 答までの時間から得られる真円は双曲線とほぼ直角に交 わる。このため,この真円を

WAM

測位に活用すること で,測位精度と更新頻度の改善が可能となる。この測位 方式は

Ranging

と呼ばれ,本研究では

Ranging

に適した 高利得アンテナを開発する。

送受信局 受信局 受信局

受信局

質問から応答までの時間より得られる真円 信号検出の時間差から

算出される双曲線 質問

応答 高利得

アンテナ

図2 Ranging による測位精度の改善

2.3 WAM/ADS-B

によるモード

S

データリンク モード

S

データリンクは,

SSR

モード

S

の監視用信号 フォーマットに

56

ビットのデータフィールドを加えて データの送受が行われる。利点としては,既存の航空機 監視インフラであるモード

S

地上局と機上モード

S

トラ ンスポンダを活用して,航空機監視と同時にデータ通信 が行えることである。一方,課題としては,地上局アン テナの向きに依存してデータ通信のタイミングが制限さ れることである。この課題に対して,

WAM/ADS-B

は固 定アンテナを用いるため,タイミングの制限がなく,即 時性が高いモード

S

データリンクが実行可能となる。し かしながら,通常の無指向性アンテナで高出力かつ高頻 度なデータ送受を行うと,質問・応答数が増加すること に加えて,トランスポンダの占有時間も増加するため,

信号・運用環境が悪化する。このため,信号の送信方向 を限定するセクタ型アンテナの開発が必要となる。

3.研究成果

平成

26

年度は,前年度に製作した高利得セクタ型アン