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平成 26 年度はこれまでに ICAO の監視関係パネル等に 提出された, 1030/1090MHz 信号環境関係の文献を調査す

るとともに,これまでに電子研で行ってきだ実験データ等 の整理を行った。これらの調査と既存の信号環境測定装置 等の調整・改良や新たな手法の検討を行った。

3.1

信号環境評価手法の開発

信号量を推定するための手段として,(1)対象とする 帯域内に含まれる信号の種類とそれぞれの信号毎の発生 数を求める方法と,(2)発生した信号の種類とは無関係 にある単位時間内に任意の信号強度レベルを超える占有 時間を求める手法が考えられる。どちらの手法にもそれぞ れ得手,不得手があり,希望する測定量によって必要な手 法をとる必要がある。(1)の手法では,信号種類毎の具 体的な統計を得る事ができる反面,受信機の特性に統計量 が依存してしまうことや,未知の信号があった場合には統

計から漏れてしまう可能性がある。(2)の手法では帯域 内の信号量を正確に見積もれる代わりに,どんな信号種類 が多いのかなどの具体的な信号量を得る事が難しい。これ ら両者の関係性を求めることは未実施であり,今後の課題 として挙げられる。

3.2

信号環境測定装置の開発

信号環境を直接的に測定するのではなく,一度帯域内の すべてを記録し,それらの記録信号を再生することによっ て,信号環境測定をすることとした。そのため,信号環境 記録装置を

1ch

記録から

2ch

同時記録が出来るように変更 し,

1030/1090MHz

を同時に測定して,質問

/

応答の関係も 含めた信号環境測定を行うための準備を行った。

また,過去に実施した信号環境計測結果との比較を行う ために,過去に信号環境計測に使ったモード

S

トランスポ ンダ試作機を使用して再生信号による信号環境計測を試 みた。しかしながら,機器の老朽化に伴い受信機や信号処 理部に多くの不具合があり,動作の正確性が期待できない。

そのためトランスポンダと同様の動作をするように設計

した

TIS-B

システム干渉防止装置の信号処理部を一部改造

して,信号環境の計測が可能となるようにした

(

図1

)

。こ の装置は新しい設計に基づいて作られているため,古い機 材と信号の認識方法に違いがあり,過去のデータとの完全 な比較をすることは難しい。

3.3

測定実験による信号環境取得

航空機に搭載した信号環境記録装置による信号環境記

録実験を行った。過去のデータと比較するために,国内の

ほぼすべての空域を飛行するルートを検討し,多くのデー

タを取得することが出来た。実施した飛行経路は図の通り。

飛行実験によって得られたデータおよび過去に行った 信号環境測定飛行実験にて得られた信号環境の比較を行 った。比較結果を図に示す。

すでに述べているとおり,信号を区分するための受信機特 性が異なるため,完全な比較はできないが図から明らかな ように,過去のデータと比較しておおまかな傾向は変化し ていないことがわかる。今回記録したデータで特徴的な点 として

36.5

度付近の

ModeA/C

データが

10

倍程度他と比較 して大きくなっている。ここでは宇都宮北駐屯地の付近を 通過しているところであり,そこに設置された

IFF(

敵味方 識別装置

)

の影響を受けていると推測される。

過去のデータと同一経路,同一高度を飛行しているのが あまり多くないため,他の地域での比較は困難であるが,

航空路に限らず同一の空域などで比較を行っていること が今後求められている。

.

まとめ

本年度は信号環境測定装置の開発および実際に計測し た結果を過去の測定データと比較によってその有効性を 確認した。今後,信号占有量計測と信号毎の発生数計測と

の間の関係性を求め検証する必要があるものの,得られた 結果は地上のレーダサイト数や付近の航空機数から推測 される結果と比較して妥当であると考えられる。測定結果 の精度を上げるために,今後推定方法や計測方法について より詳細な検討が必要である。

所外発表

(1) S. Ozeki, Amendments to 3.4.2.8.c) on draft Doc. 9994, ICAO ASTAF, April 2014.

(2) S. Ozeki, draft Doc. 9994, ICAO ASTAF

(3) T. Otsuyama and S. Ozeki, "A Study of Evaluation Method for Aeronautical L-band Signal Environment during Flight Experiments," Proc. EMC Europe 2014, Gothenburg, Sweden, September 2014.

SWIM

による航空交通情報システム基本技術の研究【指定研究

A

担当領域 監視通信領域

担 当 者 ○呂 暁東,塩見 格一,古賀 禎,住谷 泰人 研究期間 平成

26

年度~平成

27

年度

.

はじめに

運航の安全性と効率性を向上するため,効率的な情報 管理と協調的な運用が求められている。これを実現する ため,

ICAO

International Civil Aviation Organization

)で は,監視・気象・フロー管理・空港・フライト管理など 様々な情報を管理できる

SWIM

System Wide Information

Management

)という仕組みにより次世代の航空交通シス

テムの情報基盤を構築することとしている。欧米を中心 として,

SWIM

に関する研究開発が進められている。

日本の

CARATS

Collaborative Actions for Renovation of Air Traffic Systems

)のロードマップにおいても情報共有 基盤の導入は重要なミッションとしてあげられているが,

実際的な研究開発が遅れている。また,日本の航空交通 システムを取り巻く環境は欧米の状況と異なり,欧米の 仕組みは必ずしも適切とは言えない。このような背景か ら,日本に適用できる

SWIM

の構築技術が求められている。

.

研究概要

本研究では,

SWIM

技術インフラの構成要素と性能要 件を明らかにする上で,適切なシステムアーキテクチャ と情報管理技術を検討し,情報サービスの構築モデルと 検証プラットホームを開発する。本年度は

2

カ年計画の

1

年目であり,主に以下の研究開発を行った。

・米国の

Mini Global Demonstration

MGD

)という

SWIM

の実証実験と連携し,飛行情報(

FIXM

),航空情報(

AIXM

) と気象情報(

WXXM

)の共有実験環境を構築した。

SWIM

の構成要素に対して,ネットワーク・インフ ラ技術とメッセージング・インフラ技術を調査し,対応 技術の機能分析を行った。

.

研究成果

3.1 Mini Global Demonstration

Mini Global Demonstration

MGD

)は,世界航空交通計 画において重要となる「次世代の情報共有基盤」につい て,

ICAO

加盟国の具体的な理解を促進するため,米国連 邦航空局(

FAA

)が中心となって

ICAO

に協力し,航空交

通の状況を常に共有することで,様々な変化に円滑かつ 柔軟に対応できることを示すための実証実験である。

航空局(

JCAB

)と電子航法研究所(

ENRI

)を中核と して日本が分担する実験システムを開発し,実証実験を 実施した。図

1

に示す実験システムは

VPN

Virtual Private Network

)を通して

FAA

Mini Global EMS

Enterprise Messaging Service

)と接続している。

ATFM

Air Traffic Flow Management System

)は航空局が運用調整に使用して いるシステムであり,リアルタイムの飛行計画と位置情 報を提供している。

MGD

ではこの情報を利用して,実時 間に近い情報共有実験を行った。実運用システムの信頼 性や安全性に悪影響を与えないため,

Data Processor

の処 理により新しい国際標準ファーマットに変換して,

5

分遅 れの

Semi-live

データを送信している。また,

GUFI

Globally Unique Flight Identifier

)の生成機能を開発し,各航空機に 対して唯一の識別子で管理することを実現した。

Internet + VPN Mini Global SWIM EMS

FTB SWIM Services VPN Router

Global GUFI Service

FAA FIXMv2.0

JCAB

Data Filter ATFM

XMLDB

FIXM Adapter FO Register

System and Data Monitor

Data Processor

FO Manager PublisherJMS JMS

Subscriber Communication Server

Local GUFI

XMLDB Real-time Flight Plan and Position Data FO: Flight Object

5 minutes delayed data

Mini Global Viewer

Trajectory Evaluator Scenario

Server PublisherJMS

Regional Viewer Multiple consumers Generate

simulated data for scenarios

Other ANSPs

図1 実験システムの構成

2

に,抽出された日本からの出発便の飛行情報を示し

ている。また,今回の実証実験では,

Semi-live

データの

共有実験だけではなく,模擬データを用いた様々な状況

の想定シナリオへの対応処理について,情報共有の有効

性を実証した。

11

件のシナリオの内,アジア太平洋地域

に係るものが

6

件,その内

4

件に日本が協力した。

図2 Semi-live飛行情報

3

に,日本がメインに担当したシナリオを示す。この シナリオでは,飛行前に,東京~ロスアンゼルス間の飛 行経路上で,火山噴火により突発的に制限エリアが生じ たことを想定した。送信された気象情報を使って,地図 上に制限エリアを表示し,システム解析により影響度を 判定することで,速やかに飛行経路を変更し,運航を実 施することができることなどを実証した。

Volcanic ash area

Current Flight Plan

Revised Flight Plan

図3 シナリオ:東京~ロスアンゼルス

3.2

構築技術の分析

今回の実証実験から,次のことがわかった。汎用ネッ トワーク,または実験システムで使用された

VPN over

Internet

は多国間の飛行情報の交換においてリアルタイム

性の保証が困難である。現状では,リアルタイム性を保 証するため,専用ネットワークがよく使われている。し かし,設置コストや維持費用が高く,適応性と安全性の 面で問題も指摘されており,専用ネットワークの新規構 築で課題を全て解決できるわけではない。今後,

Cloud

技 術の進展により,ネットワーク仮想化などの技術を利用 して,性能要件を満たせるようにすることも一つの解決 方法である。

メ ッ セ ー ジ を 交 換 す る 方 法 は , 二 つ あ る 。 一 つ は

Request / Reply

,もう一つは

Publish / Subscribe

である。そ れぞれを実現するいくつかの技術が知られている。今回 の実験では,

JMS

Java Messaging Service

)の

Publish /

Subscribe

を使って,飛行情報を交換した。しかし,ネッ

トワークの遅延で,パッケージの量が多くなると,損失 率も高くなる。従来の

CORBA

Common Object Request Broker Architecture

)と

DDS

Data Distribution Service

)技 術は良い性能を持っている。しかし,一方のメッセージ 交換方式しかサポートしていない。

J2EE

Notification

いう

Web Service

技術は情報システムによく使われている

が,リアルタイム通信を保証することは困難である。

ESB

Enterprise Service Bus

)は

Intranet

に対して高性能,かつ 効率性を実現できる。しかし,大規模の分散システムに 対して,いくつかの難しい課題がある。このように,航 空交通情報共有基盤への要請を満たすメッセージ交換方 法はまだ実現されていない。このため,今後,ネットワ ーク技術と合わせて,

ESB

Web Service

技術を融合でき る航空交通情報共有基盤を構築する必要がある。

.

まとめ

SWIM

が普及すれば,情報交換は

Local

から

Global

にな る 。 ま た , ネ ッ ト ワ ー ク 通 信 は

Point-to-Point

か ら

Many-to-Many

になる。さらに,システム管理は

Close

から

Open

化にされる。このような環境では,データ中心情報 環境の構築,異種システム間での情報交換,情報品質の ライフサイクル管理などに関する技術が必要になり,今 後の研究課題である。

掲載文献

(1) H. Shirasaki and X.D. Lu, “Research and Development of SWIM,” Information Paper, Air Traffic Management Requirements Ana Performance Panel (ATMRPP) 26th Working Group Meeting, Tokyo, Japan, July 2014.

(2)

呂 暁東,“ミニグローバルデモンストレーションの 報告(電子航法研究所),”

CARATS

15

回情報管 理検討

WG

2014

10

21

日。

(3) X.D. Lu and T. Koga, “Real-time Oriented System Wide Information Management for Service Assurance,” IEEE Proc. of International Symposium on Autonomous Decentralized Systems, Taichung, Taiwan, Mar. 2015.