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年 11 月.

本研究は 3 ヵ年計画であり,平成 26 年度は第 1 年次で ある。平成 26 年度は,主に下記の項目を実施した。

・運用コンセプト検討

・降下軌道の客観解析

・スケジューリングの検討

・気象現象の解析

・滑走路容量の解析

・航空交通シミュレータの開発

3.研究成果

初年度は現状の航空交通の解析,基礎的なシミュレーシ ョンなどを主な目的として,到着管理システムの運用コン セプトの検討,到着機の運航分析とモデル化,スケジュー リング,気象現象の解析,滑走路容量の特性解析,航空交 通シミュレータの開発を実施した。

運用コンセプトの検討では,欧米の到着管理システムの 標準的な機能を踏まえつつ,

CDO

(継続降下運航)によ る消費燃料低減を目指したスケジューリングと間隔付け の課題を抽出し,コンセプトの全体的な概要を示した。

図1 到着管理システムのコンセプト概要

運航分析では,

4

次元(緯度,経度,高度,時間)自由 度を持つ軌道最適化による便益を推定し,時間間隔を確保 する不等式拘束条件下の最適化を行っても,燃料消費量の 劣化が限定されていることを確認した。また,実際の航空 機の運航の特性を把握するため,

FMS

(飛行管理システム)

の機能と性能を確認した。

スケジューリングでは,

CDO

の便益を推定し,スケジ ューリングの手法を比較検討した。実運航の誤差分散に基 づくスケジューリングと時間管理の方法の有効性を解析 により確認した。

気象現象の解析では,気象の影響を分析し,遅延の調査 を行った。

CDO

による時間調整への気象の影響を分析し,

巡航中からの到着機の集中を予測し緩和させる方式を検 討した。

ターミナル空域入域点

(高度10,000ft付近)

スケジュール準拠の 通過時刻

降下区間 軌道最適化による 効率的な運航

巡航区間 経済的な速度で飛行 交 通 集 中 時 に 必 要 が あ れ ば,通過時刻指示

スケジュール表示 タイムライン

滑走路進入点 スケジュール準拠の通過時刻

滑走路容量に関しては,需要容量バランシングと到着管 理の関係を検討し,離着陸順序付けと滑走路容量の実態解 析を行った。到着機と出発機の順序を制御することによる 容量増加の可能性を示した。

航空交通シミュレータの開発では,コンフリクトフリー の経路生成を開発し,基本的なシナリオで動作を確認した。

これらの研究成果について,国土交通省航空局交通管制 部,航空会社,メーカの実務担当者へ発表し,成果の普及 と活用を目指した意見交換を行った。理論的な提案を実際 に運用するための課題,国土交通省

CARATS

の施策への 反映などについて議論した。今後はさらに実態の分析とシ ミュレーションを進め,到着管理アルゴリズムの開発と評 価を進めたいと考えている。

掲載文献

(1)

重冨,小塚,宮沢,ビクラマシンハ,ブラウン,福 田,“

SSR

監視データを用いたターミナル空域周辺の 飛行解析”

,

52

回飛行機シンポジウム,

2A08

JSASS-2014-5145

2014

10

(2) A. Harada, T. Kozuka, Y. Miyazawa, N. K.

Wickramasinghe, M. Brown, Y. Fukuda, “Analysis of Air Traffic Efficiency Using Dynamic Programming Trajectory Optimization”, 29th Congress of the International Council of the Aeronautical Sciences, ICAS2014_0743, 11.7.3, Sept.

2014

(3)

手塚,瀬之口,福田,

"

アプローチ軌道の平滑化風況 モデルを用いた羽田空港到着機の

TBO

に関する検討

"

52

回飛行機シンポジウム,

2A01

JSASS-2014-5090

2014

10

(4)

手塚,瀬之口,

"

管制空域への流入・流出量に着目し

た羽田空港到着便の遅延の調査

",

日本機械学会第

23

回交通・物流部門大会

(

目黒区

)

1210

2014

12

(5)

手塚,瀬之口,

"

偏西風の影響による羽田空港到着機

の到着予定時刻のゆらぎの調査

"

平成

26

年度航空宇宙

空力シンポジウム,

1L9

2015

1

2 航法システム領域

Ⅰ 年度当初の試験研究計画とそのねらい

平成26年度においては,当所の長期ビジョンを基に行 政当局などの要望を考慮しながら下記のような研究を計 画・実施した。

1. カテゴリⅢ着陸に対応したGBAS(GAST-D)の安全 性設計および検証技術の開発

2. GNSS を利用した曲線経路による精密進入着陸方式 等の高度な飛行方式の研究

3. GNSS高度利用のための電離圏データ収集・共有 4. 地上型衛星航法補強システムの設置技術に関する研

5. 次世代 GNSS に対応したアベイラビリティの高い航 法システムに関する予備的研究

6. GNSS 広域補強信号サービスのアジア展開に関する 研究

7. GBAS を用いた新しい運航に関連した気象の影響に 関する調査

8. GNSS障害時の代替(APNT)に関する調査

9. ロケット・地上連携観測による中緯度電離圏波動の生 成機構の解明

10. 赤道大気レーダーと広域観測網による赤道スプレッ ドF現象と電離圏構造の関連の解明

11. 電離圏リアルタイム3次元トモグラフィーへの挑戦 12. 準天頂衛星システムの機能を用いたアジア・オセアニ

ア地域における精度評価及び高精度測位による利用 実証

1及び2は重点研究,3から6は指定研究,7及び8は 調査,9から12は競争的資金による研究である。

1は,視程の悪い状況下でも滑走路面まで誘導可能なカ テゴリⅢ(CAT-Ⅲ)着陸をサポートするGBAS(地上型補 強システム)の実現に必要となる安全性設計,解析技術の 開発及び認証手法の確立を目指す研究である。

2は,曲線精密進入等のGLS(GBAS Landing System) による高度な飛行方式に関する技術開発を実施し,旅客機 のPBN・GLS機能で可能な飛行方式およびGLS曲線進入 の実現を目指す研究である。

3は,日本に適したGNSSシステムを開発していく上で 必要な磁気低緯度電離圏擾乱現象の国際的なデータ収 集・共有活動を推進し,電離圏脅威モデルを構築するため に,国内外で独自観測データを含むデータの収集を行い,

データベースを構築する研究である。

4は,GBAS装置を空港へ設置するために必要な技術を 開発し,周辺環境等からのマルチパス波による影響,PPD

(個人用保護デバイス)等による電波干渉源の影響を定量 的に明らかにする研究である。

5は,補強システムを含む衛星航法システムのアベイラ ビリティ向上に有効な要素技術の調査や技術的要件の検 討を行う研究である。

6は,日本近傍に限られている準天頂衛星補強信号

(QZSS L1-SAIF)及びMSASなどのGPS補強システムの サービスエリアをアジア地域へ広げるために必要となる 検討を行う研究である。

7は,GBASを活用した後方乱気流の回避とターミナル エリアにおける GBAS 運航に対する気象の影響について 調査し,それらの運航コンセプト構築を含む実現可能性の 検討と,実現までの要件や課題を抽出する調査研究である。

8は,GNSS の脆弱性の対策として,代替システム

(APNT)を構築する際の性能要件を明らかにし,国内に 導入する場合の課題を抽出する調査研究である。

9は,中緯度電離圏における中規模伝搬性電離圏擾乱の 生成機構をロケット・地上連携観測により明らかにする研 究である。

10は,ESF(赤道スプレッド現象)と電離圏構造の関 係を解明することで,ESF発生機構の謎を解く研究である。

11は,衛星航法における誤差の低減や信頼性の向上の ため,電離圏の密度変動のトモグラフィー解析を行い,電 離圏 3 次元リアルタイムモニタリングシステムを開発す る研究である。

12は,QZSSの利用によって新サービスの創出を図る

ため,ASEAN地域におけるL1-SAIF補強方式の性能評価

を行う研究である。

Ⅱ 試験研究の実施状況

4ヶ年計画の最終年度にあたる「カテゴリⅢ着陸に対応

したGBAS(GAST-D)の安全性設計および検証技術の開

発」では,平成25年度に製造を完了し,新石垣空港へ設

置した GAST-D 地上プロトタイプについて空港環境下で

長期安定性試験を行った。また,GAST-D機上評価装置を 用いて新石垣空港周辺で飛行実験を実施し,電離圏擾乱

(プラズマバブル)発生下を含む実験データを取得し,地 上と機上モニタによる電離圏脅威の軽減策の有効性を実 証した。

5ヶ年計画の2年度にあたる「

GNSS

を利用した曲線経 路による精密進入着陸方式等の高度な飛行方式の研究」で は,飛行実験を実施し

GLS

曲線セグメント(

TAP

)の課 題を抽出した。また,

RNP to xLS

経路設計の計算ツール を開発し,フライトシミュレータによる検証を行った。さ らに,

GLS

衝突危険度モデル開発のため操縦モデルを検 討し,操縦経験者によるシミュレータ操縦実験から操縦モ デルの大枠を決定した。

4ヶ年計画の最終年度にあたる「

GNSS

高度利用のため の電離圏データ収集・共有」では,

ICAO

アジア太平洋事 務局と協力して電離圏データの収集・共有を完了した。ま た,電離圏遅延量リアルタイム解析プロトタイプを開発す るとともに,共同研究により,タイとインドネシアの電離 圏勾配観測を実施した。

3ヶ年計画の最終年度にあたる「地上型衛星航法補強シ ステムの設置技術に関する研究」では,

GBAS

基準局に対 する周辺物件からのマルチパスによる影響や電波干渉源 からの影響を,シミュレーション,実験等を実施し評価を 行い,周辺物件や電波干渉源からの離隔距離を検討し,定 量的な

GBAS

基準局の設置条件を示した。

単年度計画の「次世代

GNSS

に対応したアベイラビリテ ィの高い航法システムに関する予備的研究」では,マルチ

GNSS

環境に対応した補強システムの課題の抽出,宇宙天

気情報の利用の効果を検証するためのデータ収集を実施 した。

2ヶ年計画の最終年度にあたる「

GNSS

広域補強信号サ ービスのアジア展開に関する研究」では,改良アルゴリズ ムのシミュレーション計算によるアベイラビリティの評 価および測位精度評価を行った。また,シンガポールでの 実観測データによる測位精度評価を行った。

2ヶ年計画の最終年度にあたる「

GBAS

を用いた新しい 運航に関連した気象の影響に関する調査」では,豪雨によ る空港の滑走路切り替え等の交通流に与えた影響を調査 して課題抽出を行った。また,ターミナルエリアにおける 新しい運航として気象監視予測情報を利用した飛行方式 の設計についてその概念を検討した。

3ヶ年計画の最終年度にあたる「ロケット・地上連携観 測による中緯度電離圏波動の生成機構の解明」では,電離 圏擾乱のリアルタイムモニタシステムを開発し,ロケット 実験の成功に貢献した。また,電離圏擾乱の詳細解析を行 い,ロケット観測データと符合する結果が得られた。

3ヵ年計画の2年度にあたる「赤道大気レーダーと広域 観測網による赤道スプレッド

F

現象と電離圏構造の関連

の解明」では,インドネシアにおける電離圏勾配の精密解 析を実施し,その特性及び解析手法の改良点を明らかにし た。

3ヶ年計画の初年度にあたる「電離圏リアルタイム3次 元トモグラフィーへの挑戦」では,

3

次元トモグラフィー のリアルタイム解析システムの設計を実施した。

2ヶ年計画の初年度にあたる「準天頂衛星システムの機 能を用いたアジア・オセアニア地域における精度評価及び 高精度測位による利用実証」では,タイ・バンコクにおい て車両による実験を実施し,補強を施した場合の測位精度 を評価した。

Ⅲ 試験研究の成果と国土交通行政,産業界,学会等に及 ぼす効果の所見

当領域の航法システムに関する研究課題は,航空行政の 支援などを通じて,航空交通の安全性,航空利用者の利便 性向上,環境負荷の軽減などの達成に向けて行われている。

航空に使われる技術は国際的な調和が必要であるため に,国際機関である

ICAO

RTCA

及び

EUROCAE

におい て基準の作成,改訂のための活動が行われている。航法技 術では航法システムパネル

(NSP)

において新しい

GNSS

の 技術基準及び検証作業の活動が行われている。また,

SBAS

を整備運用中の関係各国

(

日,米,欧州,加,印

)

が参加す る

SBAS

相互運用性検討ワーキンググループ会議

(IWG)

GBAS

における開発や運用を計画している関係国,機関,

企業等が参加する

IGWG(

国際

GBAS

ワーキンググループ

)

会議などにおいても検討がなされている。当領域では,こ れらの国際会議に参加し,技術資料を提出して基準作成等 の国際的な活動に寄与している。

当所の数多くの研究成果は,今後設置・運用する航空保 安システムの技術基準,運用基準の策定等に必要な技術資 料として,行政の整備するシステムの性能向上,整備方針 策定に貢献し,国土交通行政に直接貢献するとともに,米 国航法学会,電子情報通信学会,日本航空宇宙学会,日本 航海学会等のおける講演発表や論文として,広く社会に周 知され,航法システムの応用面からみた技術の方向性の提 案として活用されている。

(

航法システム領域長 福田 豊

)