インタ ビュー質問は、すべてのインタ ビューに共通 して 「どのように して援助者が行 つ た家族 を維持す るための『努力』が『正当である』 と判断できるか
?」
と尋ねた。結果 と して、14カ テゴ リーが抽出され、3つのカテゴ リー、
1.「 Reasonable Efforts」
の内容 、 Ⅱ口「
Reasonable Efforts」
を実践す るため に必要 な もの(必
要 な条件)、 Ⅲ.「
Reasonable Efforts」
の抱える問題点に分類 した。結果は次の表 5‑3の とお りである。表
5‑3分析より得られた 14カ テゴリー
本節ではREの操作的定義の参考とするため、「REの内容」のカテゴリーに注 目した。各 カテゴリーについて、ローデーターであるインタビューイーの発言を含めなが ら(「」内に 示す
)考
察を加えた。1口 家族 と援助者側両方に「正当な努力」を認める。
裁半
1所
での判断の基準 となるのは、援助者側の活動に対 してのみになりがちだが、「家族 の能力と責任を認めた上で、家族側にも求められるべきものである」という意見が本調査公 U η
′
ReasonaЫ
e Effortsの内容 必要なもの 問 題 点 家族と援助者側両方に 「適切な努力」
を認める 援助に使える資源の存在 司法論理に基づいている
リスクとニーズのアセスメント 家族 が援 助 に対 して拒 否 的でな
い 一定の定義がない
結果ではなくプロセスである ワーカーの「努 力」についての記 録を 残す
達成すべき目的がある 家族との接触
家族への物質的サービスの提供 家族が子どもの養育に対する最低基 準を保つ
継続性をもって家族に働きかける
援助側のアイデアと手段の限りを尽く
す
第5章
「家族維持」のために援助者が行 うべ き「正当な努力」 とは
では多数見 られた。援助者側の「正当性」だけではな く、介入される側の家族も「正当」
であるべきだという意見も見 られた。
2.リ
スクとニーズのアセスメン ト家族を維持 しなが ら子 どもの安全を守るためには、「最初に子どもに対するリスクアセス メン トを行い、現時点で子 どもが家族にとどまることが可能かどうかを確認 した後、子ど もが家庭で養育 され続けるためには、家族に何が必要かのアセスメン トを行 う。」
3.結
果ではな くプロセスである 日4ロ ヮーカーの努力についての記録を残す実践現場にいるワーカーは「正当な努力」を裁判所が判断する「結果」であるとはとら えていない。「今回は子どもの措置が認められなかつたとしても、文書が残つていれば、裁 判所は次回違 う判断を下すかもしれない」「『正当な努力』はいつでも達成 しなければなら ないのではな く、それに向かって取 り組んでいくことである」。現時点では、裁半
J所
の客観 的な判断では、「正当性」が認められなかったとしても、「援助することで起 こつた小さな 変化が次の大きな変化につながる」可能性を信 じなが ら、援助を提供 し、その証明のため 記録を残 してお く。5口 達成すべき目的がある
援助者が家族に対 して「正当な努力」を行 うとき、そこには常に達成すべき目的が存在 していなくてはならない。その目的とは、「子どもがより安全になること」、「家族が安定す ること」、「親がよりよく機能できるような機会を与えること」であり、「子どもの最善の利 益のために、養育に適切な環境に子 どもをとどめる」ために「家族を必要な援助に結び付 ける」ことである。
6.家
族との接触・7.家
族への物質的サー ビスの提供ワーカーが行 つた努力が正当なものであるか否かの最低基準は、「ワーカーが家族に接触 したか
(し
ようとしたか)」 と「親 として子 どもを養育する最低基準を満たすための物質的 サー ビスをワーカーが提供 したか」である。「ワーカーの中には、十分に家族と接触 しなか つた り、リスクに対するアセスメン トをしなかった りするワーカーがいるので、ある一定 の責任基準を設けておく必要がある」との意見もあった。また、親に対 して物質的サー ビ スを提供するのは、「貧困は親の責任ではなく、国や州の政策の責任である」という大前提 があるからである。これ らのサー ビスが提供されたにもかかわ らず、親が与えられた物質 的サー ビスを子 どものために使わなかった時には、子 どもの措置が必要 となる。8。 家族が子 どもに対する養育の最低基準 を保 つている。
親は子 どもを養育す るための衣食住以外の最低基準 も保 つておかな くてはな らない。
「たとえ、家か ら一歩出た環境が、銃声が飛び交い、薬物の売人がたむろするような場所 だつたとしても、家に一歩入れば、子 どもが安全に暮 らせる環境を、親は提供する必要が ある。それが提供できない場合は、子 どもの措置を考慮する必要がある。」
9.継
続性を持 つて家族に働 きかける 日10。 援助者側のアイデアと手段の限 りを尽 くす 援助者側の援助は継続性をもったものでなくてはならない。「家族が非協力的態度、怠慢、無反応だったとしても、1回 の電話、2回の訪間で終わるのではな く、ワーカーは子 どもに 対するリスク レベルを考慮 しなが らも、継続的に家族に働きかける必要がある」。そ して、
「チームや機関が全力で関わつてでも、変化が起 こらず、子 どもにとつて危険な場合は、
すべての関係者が集まつて『正当な努力』が達成できたかどうかを判断する」必要がある。
「『正当な努力』 とは治療ではな く、すべての人が試みたということ」であり、「家族に対 する援助の方法は一つだけではない」ので、援助者が「どれだけ工夫を凝 らして家族に介 入 したか」で判断される。
これ らの 内容 を踏 まえた上 で、実際 に 日本 の在 宅支援 を援助者 の 「正 当な努 力
(Reasonable Efforts)」
の視点で評価をおこなうため、その操作的定義を次節にて試みた い。第4節
まとめ
「正当な努力」という概念の操作的定義
本章では、第1節にて、文献 レビューより、Reasonable Efforts(RE)の概念の整理を 行い、第2節にて、全米の各州法ではどのようにREが定義されているかを州法の条文内の REの定義を抽出 しまとめた。第3節では、筆者がアメリカ合衆国イ リノイ州にて児童家庭 局関係者及び実践者に対 しておこなったインタビュー調査の結果についてまとめた。以上 を参考にしなが ら、本節では本章のまとめとして、
REを
法的用語 として使 うのではな く、「正当な努力」と日本語訳 し、その定義を「現時点での心理的につなが りを持つ保護者と 子 どもの関係を重視 し、家族に価値をおき、家族を維持するために児童福祉に関わる援助 者 として正当な努力を行 うことであり、専門的援助活動のアカウンタビリティ
(説
明責任) を示す指標」 とし、質問紙調査により日本の現在の在宅支援においてREが
どれほど体現 されているかを明 らかにするため、操作的定義を行い、変数化 したい。もともとREはケースバイケースにて判断できるための余地を残 しているため、ケースの
78
第5章
「家族維持」のために援助者が行 うべ き「正当な努力」 とは
状況に合わせた定義付けは本研究で予定 している「援助者に対する質問紙調査」と言 う形 にはそ ぐわない。なので、個別のケース内での実践を操作的定義に含めることは難 しい。
だが、質問紙 という手法を用いて、文献 レビューにより明らかになつた「正当な努力」を 示す援助行動 (「家族 との接触
(畠
山,2007)」
、や「援助活動の言羊細な記録 (Seaberg,1986:Sudia,1989;畠山
,2007)」
など)が
行われているかということは把握できる。サー ビス の質については、個々のケースに実際に提供されたサー ビス内容を検証することは難 しい ため、サー ビスの質を保証するような行動 (「サー ビスとニーズの妥当性のためのアセスメ ン ト(Seaberg,1986;畠山,2007)」
「達成すべき目的の設定(畠
山,2007)」
など)を
援 助項 目に反映 させ る ことと した。前章 で述べ た とお り、ア メ リカ合衆 国の Family Preservationは「REを
実践 にて具体化 した援助の体系」であるはずなので、Family Preservationの概念を援助行動 として項目化 したものに、サー ビスの質を表す援助項目が 含まれているはずなため、Family Preservationの 概念を援助項 目化 した後に、これ らの REの文献 レビューに上がっている「サー ビスの質」に関する項 目が含まれているか再度確 認することした(実
際、抽出 した項目にすでに含まれていた)。 また家族側の「正当な努力」については、個別のケースに関する状況であり、援助者を対象とした今回の質問紙調査で は把握するのは難 しいため、今回の定義づけには直接的に含めないこととした。
芝野 (2005b)は Reasonable Effortsは 「適切な援助努力」と訳 しており、直接援助者 の専門的援助活動実績であり、アカウンタビリティとしてのプロセス・エビデンスと説明 した。第3節で取 り上げた筆者によるインタビュー調査の結果
(畠
山ヮ2007)に おいても、REは結果ではな く、「達成すべき目的に向かったプロセス」であり、「継続性」を持つて「援 助者のアイデアと手段の限 りを尽 くし」て、家族に働きかけることであるとされていた。
ゆえに、本研究でもREを援助行動の総量 としてとらえることとし、家族維持を目的とした 援助 (REの 具体化 した援助行動でもある
)の
実施度の総量 として定義することとした。フ ェーズ型の日本の児童虐待施策において、プロセス ロエビデンスに基づ く評1面は難 しいと されるが(芝
野、2005b)、
援助者を主体 とし、その在宅支援全般に対 しての一定期間にお ける援助の総量を変数としてとらえることは、援助者 としてのREの操作的定義としては適 当であると考えた。加えて、元々の連邦法 (AACWA)で のREの主旨を考慮 し、「措置に至ったケースに関 して は、援助者は措置前に家族維持のための援助をできる限 り行つた」という措置前の家族維 持のための尽力度に対する評1面を操作的定義とすることとした。ただ し、実際のREは米国
では裁判所による客観的評価の基準であるが、日本の現状では客観的な評価が難 しいため、
今回の調査では援助者 自身による主観的評価という形式をとつた。
最後に、1980年 連邦法でREの背景にある家族に対する価値、「親子分離は最後の手段で ある」もその操作的定義に含め、援助者の「正当な努力」の「正当性」の基盤 となる価値 についても定義として含めることに した。これは子 どものパーマネンシーを確保するとい う意味でも、重要な価値であり、1980年 連邦法の中心的な理念の源 となつているものであ る。
以上、本研究では Reasonable Efforts,「 正当な努力」の操作的定義として次の3つの 変数を採用 し、質問紙調査においては観測変数 として定義づける。
1.家
族維持を目的とした援助活動の総量2。 子 どもの家庭外措置の決定前に、できる限 りの家族維持を目的とした援助をおこなつ たという援助者 自身の評価。
3.「
親子分離は最後の手段である」という価値そ して、これ らの3つ変数においては相互に正の関係があることを仮定 し、在宅支援を行 う上でこの3つの変数の関係が成立することこそが、「正当な努力」の「正当性」を示 して いると仮定する。つま り援助者の家族維持の努力が「正当である」ためには、この3つの 変数が正の相関を示 していることとした。