した ら保護者自身が、まずは精神的 口物理的に、また社会的に十分な援助を与えられなけ ればならない
(p.90)」
と述べた。家族の最善の利益を守ることで、子どもの最善の利益を 守る方法があるのだということを忘れてはならない。2つ
目の議論 として長期の家庭外措置にとって子 どもの最善の利益であるパーマネンシ ーの確保のための制度が現時点では未成熟(premature)な
点である。ここで指摘 している のは次の2つ
の状況についてである。1つ目の未成熟な状況は長期の家庭外措置の判断に 際 して、親子分離の正当性および必然性を客観的に証明するシステムが未だ整ってはいな い点である。事実、平成24年 4月 1日 の「民法等の一部を改正する法律」の施行により2
年以内の期間に限つて親権の停止制度が新設 される(厚
生労働省,201lc;厚
生労働省ヮ 201ld;法務省,2011)。
この制度に該当する事案として想定されているのは、「祖父母や親 族が養育するのが相当であるが、親権者がそのことに納得せず、親権を喪失するのもちゅ うちょされるような事案(法
務省,2011)」
、「入所ケースにおいて不当な主張が繰 り返され る、または繰 り返されるおそれがあることにより、児童の安定的な監護が損なわれるおそ れがある場合(厚
生労働省,201ld)」
、「緊急時以外の医療ネグ レク ト事案(厚
生労働省,201ld)」
、「在宅でも性的虐待のケース(厚
生労働省,201ld)」
などであり、筆者が論 じて いるような司法という中立的な立場で、パーマネンシーの確保のために親子分離が必要か どうかを客観的に判断することをね らったものではない。また停止解除の条件に伴 う保護 者に対する指導に対 しては、議論の段階か ら、司法関係者は極めて消極的な態度であ り、「施設入所中などの子どもの養護上、必要であるケースに対 して関与する」という運用が 主ではないかと昇・込まれる
(法
務省,2011)。
このまま、「分離の正当性・必然性を証明す る」という制度が整えられないまま親権制限の処分が行われて しまうことがないようにし てほ しい。この制度を「子 どもの最善の利益」のために、運用 していくには、これか ら事 案を積み重ねていく必要があり、時間が必要となるだろう。次に、
2つ
目の未成熟な状況として、日本の社会的養護の現場が子どものパーマネンシ ーを保証するという観点か らは、未成熟な状況を脱 していないことを指摘 したい。実際、家庭外措置になつた子 どもたちの約9割が児童養護施設に入所
1し
ている中で、職員配置等 を定めた「児童福祉施設最低基準」はここ30年近 くの間、改正されてはいない(才
村,2008)。
1平
成
21年度
(年度末実績
)において児童養護施設の在所児は 29,587人 、里親委託児は 3,836人 で
あつた
(厚生労働省 ,201le)。
また、日本は国際的に見ても、親のケアを受けていない子どもに対する代替的養護が不十 分であることに対 して、再三の勧告を国連子 どもの権利委員会か ら受けている
(平
野,2010)。
パーマネンシーの保証、つまり、「心理的親との永続的な関係の下での養育環境」の保証 と いう観点では、施設において職員がどんなに努力しても、必ず しも入所 している子どもの 発達に対 して万全の環境であるとは言えない。特に職員配置の問題では、金子 (2004)が 指摘するように、現在の交代勤務制で複数の職員が養育に携わる中では、特別な大人との 永続的な関係を保障することはできず、心理・社会的関係を構築することが難 しい。施設 現場で働いた経験がある者ならば誰でもどれだけ職員が精魂を込めて子 どもと向き合つて も、施設という環境の中での子 どもとの関係性に対 して限界を感 じたことがあるだろう。
もちろん、「集団主義養護理論」
(積
推,1971)、
「積極的養護理論」などの施設養護におけ る集団養護の特性の肯定的影響を唱えた理論(北
川,2000)も
あるが、三宅 (2002)が提 言するように、職員体制・治療 口支援体制等の児童養護施設体制そのものが被虐待児の受 け入れが整っているとは言えない現状が続いている。これ らの点についても、今後、職員 の加算配置や人員配置の引き上げ、里親委託率の引き上げなども将来的な構想 として取 り 組まれているが、同時に平成26年度には社会的養護に措置 される子 ども数は4万7600人 に増えると見込まれてお り、社会的養護の下のすべての子どもたちに対 してパーマネンシ ーが保証されている制度が構築されるには、まだまだ時間を要するだろう。里親制度が進 んだアメリカでさえ、家庭外措置の経験 自体が子 どもに与える否定的な影響を示す調査結 果が示されている(Fantuzzo&Perlman,2007;Stone,2007)。 このような否定的影響を考 えても、Goldsteinら が言 うように親子分離後の措置先が「子どもが家庭でとどまるより も害が少ない」ことをあらゆる意味で保障できなければ、家庭外措置は正当化できない。家庭外措置にかかわる裁判所介入および社会的養護のいずれも改善に向けての制度改変 が行われつつあるが、これ らの改変と同時に、その未成熟 (premature)な 状況を補てんす るためにも、在宅でパーマネンシーを保証するための実践、家族維持を目的とした在宅支 援を制度の中に組み込む必要性があると強調 したい。
3つ
目の議論は、一度、物理的に長期分離 して しまった子 どもを家庭復帰させ、家族を 再統合することは家族維持よ りも難 しいのではないか、という点である。実際、家族再統 合の定義についても、日本では、分離された子どもが実際に家族のもとで生活することを 要件 とする狭義の「家族再統合」と、在宅ケースにおいて傷ついた親子関係についての関 係修復を目的とした「家族再統合」、また施設入所児の子 どもと親 との関係修復 を目的とし、第3章
日本 における家族支援についての考察
必ず しも同居家族の再開を要件 としない「家族再統合」などのかな り広義の定義が混在 し て検討されている
(才
村,2005a:山
本・庄司・有村・板倉 口佐藤・伊藤 ら,2009)。
本研 究では、在宅支援による親子関係の修復については、「家族維持」の定義の範囲に含まれる ものとしてとらえてお り、本論文で「家族再統合」という言葉を用いる時は、前者の「分 離 した家族が再び一緒に生活すること」として子 どもの家庭復帰を想定 した「家族再統合」を意味 している。平成17年か ら平成19年にかけて才村 らは、「児童相談所における家族再 統合援助実施体制のあり方に関する研究」においてその実態調査を行 つている。平成
18
年度の調査では虐待相談で児童福祉施設に施設入所 している在籍児童(里
親を含む)7,026 人の うち、実際に家族再統合の方針を立てている事例数は 1,091件(15.5%)、
家族再統合 に向けてプログラムを実施 しているのは626件 (8.91%)(553家 族)、 うち各種技法とし て特定される技法によるプログラムを実施 しているのは64件 (0.9%)で あつた。平成20
年の児童養護施設入所児童等調査結果では自立まで児童養護施設に在所 し続ける見込みの 子 どもたちが 55.1%にも至ることが明らかになっている。才村 (2005a)は 子 どもたちの 家庭復帰が困難化 している理由として、家族再統合の必要性は感 じつつも、十分に時間が 割けないこと、保護者を援助の土俵に引き入れるための制度的基盤が脆弱であることなど の要因を指摘 した。それを裏付けるかのように平成 19年 度における才村 らの調査(才
村 ロ 澁谷・柏女・庄司・有村 口佐久間,2006:才
村・澁谷・柏女・庄司 口有村・妹夫 ら,2007;才村・山本・庄司 口有村・板倉・根本 ら
,2008)に
おいて対象となった実際に家族再統合 を策定 している 136件 の事例の うち、保護者自体が「行為があつたことも虐待にあたるこ とも認めていなかったケース」は全体の18.4%を占める。家族再統合の援助計画の策定に 虐待者 自身が参画 したケースは64件 (24.6%)、
虐待以外の家族が参画 したケースは34
件 (25.0%)に とどまつてお り、児童相談所が保護者に参画を要請 していないケースが多 いのではないかと考えられる。家族再統合を図るには、生活課題解決のためのソーシヤル ワークを始め、家族と子 どもを徐々に接近させる家族再接触プログラム、個別またはグル ープによるカウンセ リング、ペア レン トトレーニングなどの治療的教育など多面的な援助 が必要 と考えられるが、実際行われている援助は「定期的な面接指導・カウンセ リング」が群を抜いて多く、他の援助の実施状況は低調であつた。以前か ら一般的に取 り入れ られ ていた「家族再接触 プログラム」でさえ、3分の 1に とどまつていた。「実施予定が立てら れない・実施予定な し」と回答 した理由については「親の意識 口意欲が乏 しいため」が
12
件(92.3%)、
「親の経済的理由から実施が困難であるため」3件 (23.1%)で あつた。平成
19年
の児童虐待防止法改正において家族再統合への試みに対する強化が法律に盛 り込まれたのち、さまざまな保護者向けのプログラム(東
京都児童相談センター,2004;加藤・福間,2005;神 奈川県児童相談所虐待防止班ヮ
2006)、
そ して2008年には厚生労働省 より主に家族再統合を目的とした保護者を援助するためのガイ ドラインが示された。施策 は試行錯誤 しなが ら児童養護施設等に入所 している子どもたちを家庭復帰させ、家族を再 統合することを目的として力を尽 くしているが、その試みはいまだ発展途上 といってもよ い。物理的に分離された親子をもう一度、家族 として再統合させることは、その分離期間 が長期間であればあるほど、至難の業であることは想像に足る。実際、米国の調査におい ても、再統合率は13%‑70%と
幅があり、再統合ケースにおける再措置率においても10%
‑33%と
まちまちである (Maluccio,Fein&Davis,1994)。 再統合の検証はその方法論が 難 しいため、手法についても、不明確である部分が多い(Maluccioヮ
Fein&Davis,1994;Barth,Oourtney,Berrick&Albert,1994)。 日本での家族再統合の試みはまだ始まつたば か りである。どの手法をとつても、人が人に対 して行 う手法である故、完璧なものはない だろう。だか らこそ、緊急の安全確保が必要でない限 り
(こ
れを判断することは重要 とな る)、子 どもが在宅の時点で、子 どもが家族 と共に安全に暮 らしていける方向性を探ること、つま り家族維持を数ある方法論の一つとして、実践に根付かせることの必要性を繰 り返 し 強調することをこの議論の結論 としたい。
公U
■■
第4章
アメ リカ合衆国における「
Family Preservation」
第
4章
アメリカ合衆国における「Fam:ly Preservation」
第
1節
連邦法に見 られる Family Preservationの 変遷 :the Adoption Assistance and Child Welfare Act of 1980と :the Adoption and Safe Families Act本章では、家族維持の originと もいうべき、アメリカ合衆国での
Family Preservation
について、その法律上・実践上の歴史的変遷、効果測定の調査に関するレビューを行い、どのような背景のもとで、Family Preservationが 生まれ、実践されてきたのかを把握 し、
日本の児童福祉施策にて、どのように応用できるかを考察 したい。
1.the Adoption Ass:stance and Child Welfare Act of 1980の 成立とその背景
1970年 代のアメリカ合衆国では、児童虐待ネグ レク トの主な解決策として里親ケアが和1 用 され、その結果として 1977年 には約502,000の 子 どもたちが里親ケアに措置 されていた。
その結果、平均措置期間は 31カ 月、1人の子 どもが15か所以上の里親に措置変更される ドリフ ト
(た
らいまわ し)現
象"が
起 こり始めた。いったん里親ケアに措置 されると、実家族に対 しては具体的な支援が行われないまま、子 どもが措置に至った原因となる問題 についても放置 されていることが多かつた。里親ケアヘ措置 された子どもに対 しても、措 置後のフォローアップが行わることも少なかった
(師 ith,1991)。
このような状況の中で も特に 1980年 に連邦法ができた理由として、Stein(2000)は 次の5点を挙げている ;1)十 分な家族維持の努力がなされないまま、子 どもが簡単に措置 されて しまつた現状があつたこと、2)里親ケアは一時的なものであるべきなのに、永続的なケアとして使われて しまつ ていたこと、3)子 どもに対する援助計画力ヽまとんど文書化されていなかつたこと、4)実親 に対 して措置を予防するためのサー ビスカヽまとんど提供されてこなかつたこと、5)里親ケ アにいる子 どもに対 して、実親の訪間が促 されていなかったこと。
里親ケアでの虐待の被害、里親ケアの長期化や「たらいまわ し現象」の子どもに対する 悪影響が問題視 される中
,上
記のような理由か ら、1980年 にthe Adoption Assistance and
Child Welfare Act of 1980(以 下 AACWA)が+1定
された。この連邦法は「子 どもの心理的親との永 続 的 な関係 の下 での養 育環境 の保証 に対す る系統 だ つた援助 の プ ロセス」
(Permanency Planning)の 確立を目的に、「家族維持」および「家族再統合」に対する「正 当な努力
(Reasonable Efforts)」
を法制化 した州に財政的な報償(連
邦特別予算の支給)を与えるものであつた。この法律は過去20年間の児童福祉体制に対する大改革を試みてお り、社会福祉法 Ⅳ―A章、IV―B章を改正 し、新 しいIV―E章を創出することで作 られた。ま