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第5節

  

まとめ

 

アメリカの Family Preservationか ら応用すべきもの

本章では、アメリカ合衆国における Family Preservationに おける法律、歴史的変遷、

類型化、そ して効果評1面についての レビューをおこなつた。Family Preservationモ デル はこれまで児童福祉が尊重 してきた家族に対する価値を実践 として具体化 したものであり、

1980年のAACWAに定め られた Reasonable Effortsを 実践 として具体化させたものであつ た。

AACWA施行以降、ワシン トン州で開発 された Homebuildersモ デルを原型とした短期集中 型のモデルが全米に広がったが、このモデルでサー ビス提供の対象とされているのは、「差 し迫 った措置の危機にある」家族であり、このモデルの目的は「子 どもの措置の予防」で あつた。この集中型 Family Preservationモ デルについては、その対象の選定と目的自体 が自己矛盾を招いていることが、一連の調査の中で明らかになつてきた。つま り対象とな る「差 し迫 った措置の危険性があるけれ ども、Family Preservationサ ー ビスを提供され れば措置を予防できるケース」の選定が非常に難 しいため、目的にあつた対象が選定され ていないことが多かつた。

ゆえに、集中型 Family Preservationモ デルについては、早期対応におけるアセスメン トを兼ねて行われるべきではないかという意見もある(Hayward&Cameron,2002)。 集中型 Family Preservationモ デルに比ベサー ビス提供期間がより長 く集中度が低い家族基盤サ ー ビスモデルと対象を組み合わせなが ら、複数の効果指標を用いて、「どのモデル」が「ど のような対象」に、「どのような効果」をもたらすかを吟味 していく必要があると考える。

結局は、 Family Preservation"は 「措置を予防する」ことに重きを置 くのではな<、

「家族を維持する」ことを目的とするべきである。根底に流れる哲学としての Family Preservation"は 児童福祉にとって欠かすことのできない価値であり、その実践は絶や し てはならない。実験デザインを用いた量的調査による効果測定では芳 しい結果は出なかっ たが、プログラムの性質上 と調査デザイン自体に問題があつた。「Family Preservationプ ログラムは効果がない」と結論づけて しまうのではなく、「できるかぎり家族が維持できる ように」努力すること

(Reasonable Efforts)を

具体化する方法 として

Family Preservation

は大切であり、日本でもアメリカでの Family Preservationの 流れや調査結果を踏まえた

うえで、「家族維持」への努 力を具体化 させ た、援助行動の集合体 と しての Family Preservation実践モデルの開発が必要である。ゆえに本研究では、この 日本における Family Preservationの 日本語訳として「家族維持」という言葉を用い、その内容につい

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第4章

 

アメ リカ合衆国における「

Family Preservation」

て「現時点での心理的につなが りを持つ保護者

(家

族の形態にはとらわれない)の もとで、

子 どもが安全に安心 して成長できることを目的とした援助の体系」を指すものと定義 した い。そ してその「家族維持」のための「正当な努力」について、操作的定義を行い、日本 での児童虐待ケースの在宅支援実践での検証を試みたい。次章においては、援助者が行 う べき「Reasonable Efforts(正 当な努力)」 についての文献 レビューを行い、その操作的定 義を行 う。

第5章

 

「家族維持」のために援助者が行 うべき「正当な努力」とは 第1節

 

アメリカ合衆国における Reasonable Effortsと は

本節では、Reasonable Efforts(RE)に 関する文献研究を行い、その概念の整理を行いた い。Reasonable Effortsは 法律用語として広 く用いられる用語であり、その使用は児童福 祉および社会福祉領域に限つたものではない。Reasonable Effortsは 2つの単語か らなる が、英単語の「

Reasonable」

はプログ レッシブ英和中辞典によると「1。 理にかなつている,

道理の通つた

,筋

道がたっている

.2.道

理にはずれない

,正

当な

,公

平な

,適

当な

,ほ

ど よい,(値段について

)相

応な

,法

外でない 3.理性のあるヮ分別のある」であり、「

Effort(s)」

は「(目的のための

)努

力・奮闘」を意味 している。法律用語においては、Best Efforts

(す

べての手段を用いて、手を尽 くす

)の

次に高い程度の「努力」を表すものであるが、

その程度は主観的判断に委ね られている。

Adoption Assistance and Child Welfare Act of

1980(AACWA)に記 されたREは「子どもの家庭外措置されることに対する予防」および「子 どもを家庭復帰 させることに対 して」に対 して Reasonableな Effortsを 行 うこととされ た。序章で述べたように、本研究では「

Reasonable」

を子どもの最善の利益の追求を目的 に、家族を援助する援助者としての道理にかなった努力の程度を示すものと理解 し、「正当 な」と訳す こととし、Reasonable Effortsを 「正当な努力」と訳 した。 しか し、アメリカ 合衆国の実践においても、Reasonable Effortsの 定義は主観的判断を意図的に残 したもの であり、解釈は人によって違 う。そのため、本節では、アメリカ合衆国において「Reasonable

Efforts」

がどのように扱われ、角翠釈されているかを文献より探つていくこととした。

he US department of health and human services: Administration for children and familiesに

よる と、児童福祉 にお ける

Reasonable Effortsは

連邦法 にお いてはその法律

的定義をあえて明確に行つておらず、州法もケースバイケースでの角翠釈が可能なものとし てお り、裁判所がケースの状況を見て最終的な判断ができるようになつている。REは

1980

年の連邦法、AACWAの 中で2回条文の中に登場 し、1回 日は州政府に課 した 16ア イテムの 一つとして、

2回

目は各事業所が行 つた援助が「

Reasonable」

であるという判断をする仕 組みの設置 を裁判所に義務付けたものとされている

(Blome,1996)。

連邦政府か らの予算 獲得の条件 と して各州に課せ られ た措置 予防及び家族再統合のための 「正 当な努 力

(Reasonable Efforts)」

は、1983年には、すべての措置ケースに対 して、事前にその努 力が行われ た ことを裁判 官が レビュー し判断す る ことにな つて いた。だが 、 この

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第5章

 

「家族維持」のために援助者が行 うべ き「正当な努力」 とは

Reasonableが どの程度のサー ビスの量と質を指すのかは、はつきりしないままであり、そ の概念 については裁判官の主観的な判断に完全に委ね られていたのだ つた

(Seaberg, 1986)。

AACWA施行以降も増え続ける里親ケア措置数により、裁判所が取 り扱 うケース数は膨大 とな り、裁判所が行 うREのレビューは形骸化 して しまうことも少な くなかった。多くの州 では、裁半

J官

がREのためのチェック リス トにチェックを入れていくだけであり、ある州で はすでに措置を求める書類に「REは証明された」と事前に印刷 してあるので裁半

1官

は何も しな くてもいいようにさえなっていた (Knepper&Barton,1997)。 ケンタッキー州で裁半1

所システム改善のために行われた調査では、多 くの場合、裁判官は児童福祉に関 しては門 外漢であるとの意言哉が強いため、ほぼケースヮーカーの主張どお りに判決が下されている ことが明らかになった。また、REを否定すると、その後の処理が煩雑になるためなるべ く 避けようとする傾向が強いことも結果によ り示された。 (Knepper&Barton,1997)。

州によるREの不履行に対 して、権利擁護団体等か ら州に対 して訴訟が行われたが、多 く の場合は、児童福祉事業所に対 してケースワーカーに対するスーパー ビジョンと研修の強 化、ワーカーが抱える担当ケース数の減少などを求める判決結果に終わつた。なかでもイ リノイ州児童家庭局を訴えた

Suter v.Artist Mの

判例は、連邦最高裁判所にまで控訴 され た判例である。この訴訟はREは連邦政府が州に対 して課 したものであり、個人は州に対 し てその不履行を訴える権限はないと判断され、最高裁判所での訴えは取 り下げられた。加 えて、この最高裁判決によって、連邦政府は州に家族維持と家族再統合のためのREを示す ような援助計画を作成することは求めていても、実際に計画を実行することまでは求めて はいなかった点が公に明 らか となった。また連邦政府は意図的にREの定義を明文化するこ とを避けてお り、その解釈については州任せになっていることも、この訴訟において公然 の事実 となつた (Kopels&Racraft,1993)。

このようにREに対する客観的判断は困難ではあるが、同時によい結果をもたらすことも ある。Rattermanの調査によると法的に実践の説明責任を問われることにより、ケースマ ネージメン トの主体である事業所に対 して、説明責任を果たすことへのよいプレッシャー を与えることになる。また、裁判官が児童福祉に対する知識が深ければそれだけ良い判断 を下す ことができるため、裁判官への研修が各州で行われるようになってきた。加えて、

裁判官が判決のために、ケース記録をレビュー した結果、家族維持のための資源の不足に 気づき、新 しい社会資源の創出を指示す ることもある (Ratterman,1986)。 1997年の

Adoption and Safe Family Actに より、子 どもの安全性が最優先事項としてさらに強調 さ れたため、REの遂行について条件が付けられるようになった。またRE自体もその定義が 拡大 され、必要があれば親権を停止 し養子縁組を行 うことでパーマネンシーを確保するこ とや、REが必要ないとされる状況であつても、子 どもにとって「最 も有害でない環境への 措置」を熟慮する努力も REと して解釈 されるようになつた。

実際には Reasonable Effortsは 主観的な判断であるはずだが、その主観的な判断を裁判 所が客観的に判断するのは大変難 しい。特に Reasonableが 示す「正当な1」 量・質は、親 に「何 をすべきか」を伝えるだけではな く、実際にワーカーが積極的に援助 しているか

(Seaberg,1986)、

家族にサー ビスを使 うようにどの<らい働きかけたか

(Hunner,1986)、

家族がサー ビスを利用 しやすいようにどの くらい配慮 したか

(サ

ー ビスの

accessibility)

(Hunner,1986)、 サー ビスの提供の順番 ロタイミングに酉己慮 したか、措置の危機の起因 となるニーズを満たすだけの量を提供 したか

(Hunner,1986)、

必要なサー ビスが入手不可 能であれば、代替 となるサー ビス用意 したか

(availability)、

が判断基準 となるが、これ

らの判断は十分なソーシャルワークの専門知識を持つた者でも困難だろう。

サー ビスの質に関 しては、家族の状態および二一ズとサー ビスとの妥当な関係、つま り 提供するサー ビスの適切 さ (appropriateness)を 示す。適切なサー ビスとは次の2つを克 服することを目的としていな くてはならない;1)子どもが里親ケアに措置 された、もしく は措置 される恐れが発生 した原因となった問題、2)家族がサー ビスを利用することへの阻 害要因

(Seaberg,1986)。

問題の特定化には包括的かつ綿密な家族状況に対するアセスメ ン トが必要 とな り、アセスメン ト自体の正確さもここでは問題となる。これ らのサー ビス に対する一連の多角的な判断を行 うためには、提供 したサー ビスの リス トだけではな く、

「どのように援助をしたのか」などに及ぶ援助活動の詳細な記録、およびアセスメン ト記 録が必要であり、ケースの状況を見なが らその記録を綿密に精査 して判断する必要がある

(Seaberg,1986)。

また、REは援助者か らの一方向の努力だけではな く、家族

(親 )側

の 変化に対する努力も含まれる。サー ビスプランに対 して親がどれだけ協力的だつたか?そ

して実際に措置の原因を解消するに当たって Reasonable Progress(適 切な進展

)が

あつ たのか、も判断の基準 となっている。

(Sudia,1989)。

1序

章で述べたように、本研究では「 Reasonable」

する援助者 としての努力を表すために、「正当な」

訳す。

を子 どもの最善の利益の追求を目的に家族を援助 と訳 し、 Reasonable Effortsを 「正当な努力」と

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