• 検索結果がありません。

E-09icorr(A/cm2)

ドキュメント内 九州大学学術情報リポジトリ (ページ 30-44)

)exp(it

1.0 E-09icorr(A/cm2)

% Pore Saturation

0% Cl

+

2% Cl

図-2.15 細孔溶液の飽和度と腐食速度の関係2.45)

24 2.6.3 分極曲線を用いた鉄筋腐食の評価2.22)

分極曲線を用いたコンクリート中の鉄筋の腐食評価は,大即 2.22)によって精力的に検討がなされて いるが,その適用事例は少ないと言える。大即 2.22)は,アノード分極曲線の形状より不動態の状態を 判定する方法として,不動態の状態をグレード0~5(0Æ5で不動態の状態が良いことを表している)

の6段階に分類する方法を提案している。大即によれば,不動態グレード2を境に腐食を生じている 傾向にあり,グレードが3以上であれば,腐食を生じている可能性は極めて低いとされる2.22)

2.5.5でも述べたように,自然電位と腐食速度は分極曲線により決定されるものであることから,

自然電位は,必ずしも腐食の状態と一致するものでは無い可能性についても言及しており,腐食状態 を確認する手法として,アノード分極曲線によるグレード判定が適用されることが望ましいとしてい る。しかしながら,分極曲線測定を実構造物に適用した事例は無い。そこで,本研究では,第4章に おいて,分極曲線測定の実構造物への適用性について検討を行った。

25

2.7 アルカリシリカ反応に関する研究の現状と問題点の整理

アルカリシリカ反応(以下,ASR)は,反応性鉱物を含む骨材が,コンクリートの中の細孔溶液と 反応し,膨張性のASRゲルを生成することにより生じるコンクリートの膨張劣化である。

近年,ASRに対する関心が高まっており,特に現行の抑制対策手法に関して再考する必要性が指摘 されている 2.47)2.48)2.49)。本節では,まず,アルカリシリカ反応の研究の現状として,この現行の抑 制対策の問題点について整理する。

また,ASR抑制対策をより合理的なものとするには,実構造物の調査を通じて劣化の実態を知るこ とに加えて,なぜ ASR を生じるに至ったか,また,その原因は現行の抑制対策の範囲内で対応でき るものであるか,等を検討する必要があることが主張されている2.49)2.50)。そこで,ASRを生じた構 造物に対する分析調査の現状と課題を整理する。

2.7.1 ASR抑制手法について

現行の ASR抑制対策は,1986年に建設省から発表されたものであり2.51),以下に示す3つの内い ずれかを満足するように定められている。

(1) アルカリ総量(コンクリート1m3中のアルカリ(Na2Oeq)量)を3kg/m3以下とする。

(2) 抑制効果の認められる混和材の使用 (3) 無害な骨材の使用

(1)については,ASRは,コンクリート中の細孔溶液のpHに依存する反応(2.7.2で述べる)

であり,また,コンクリート中のアルカリ量と細孔溶液のpHは比例関係にあることから,アルカリ 量を規制することでASR発生を抑制しようとするものである。なお,この閾値である3kg/m3につい ては,促進試験結果をもとに定められたものである。

(2)について,高炉スラグ微粉末やフライアッシュなどの混和材を混和することによるASR抑制効 果は様々な観点から論じられているが,細孔溶液のpHが低下する効果2.52)やASRゲルの組成の変化 によって膨張圧が緩和される効果2.55)などが報告されている。

推奨値として,高炉スラグ微粉末ではセメントに対し40%以上,フライアッシュではセメントに対 し15%以上の置換率が挙げられている。

(3)については,劣化因子としての反応性骨材を排除することで ASR抑制を図るものである。骨材 が反応性を有しているか否かを判定する試験として,我が国では,化学法,モルタルバー法がそれぞ れJIS A 1145,JIS A 1146として規格化されている。

以上の,3つの抑制対策の適用によってASRによる被害は減少した。しかし,これらの対策を満足 した場合でもASRの被害が報告されている2.50)2.58)2.59)

このような現状から現行の ASR 抑制対策の妥当性は,再考されつつあり,それぞれの抑制対策に 関する問題点を以下に述べる。

(1) アルカリ総量規制について

コンクリート中のアルカリ量の規制は,材料から供給されるアルカリ量のみを規制するものであり,

外部から継時的に浸透するアルカリについて考慮がなされていない。外部から供給されるアルカリと しては,海水(NaCl)や凍結防止剤(NaCl が用いられることが多い)などが挙げられ,コンクリー

26

ト構造物が置かれる環境として,決して特別な環境ではない。特に,凍結防止剤の散布が多い北陸地 方では,凍結防止剤によってASRが促進され,劣化を生じた可能性が示されている2.52)2.53)

また,極めて反応性の高い鉱物(例えばオパールなど)を含む場合には,低いアルカリ量であって も劣化を示した事例が報告されており 2.50),骨材の種類によっては,アルカリ総量規制が不十分であ る可能性が示唆される。

(2) 抑制効果の認められる混和材の使用について

混和材を使用した場合においても,ASR劣化の事例が数件報告されている。尾花ら2.58)は,高炉ス ラグ微粉末を使用したコンクリート構造物において,ASRが発生した事例を報告しており,この構造 物における高炉スラグ微粉末の置換率は38%であったと推察されている。また,Imai et al.2.59)は,フ ライアッシュをセメントに対し18%置換したコンクリートを用いた構造物において ASR被害が生じ ている事例を報告している。

さらに,混和材の使用に関して注意すべき点として,混和材の種類によってアルカリを固定する能 力が異なることを考慮すべきである。特に,フライアッシュに関しては,JIS 規格では,I 種~IV 種 に区分されるが,これらの区分で ASR 抑制効果は異なり,さらに,同じ区分の中でも抑制効果が異 なることが指摘されている2.56)

また,同程度の抑制効果を有する混和材であっても,骨材の反応性の違いによっても,抑制に必要 な混和材量は異なる2.57)ことも考慮すべき点である。

「抑制効果の認められる混和材」とされているが,抑制効果を確認する試験方法として確立された ものがないことも問題点として挙げられる。

以上より,使用される骨材と混和材の組み合わせから必要な混和率を設定する必要があるものと考 えられるが,現状では,それらを決定するようなシステムが確立されていないのが現状である。

(3) 無害な骨材の使用について

骨材が「無害」か「無害でない」かを判定する試験方法として,現在,我が国では化学法またはモ ルタルバー法によって判定されることが多いが,これらの試験において実際に反応性を有する骨材を

「無害」と判定する場合があることが報告されている 2.53)。また,化学法,モルタルバー法以外の判 定試験も存在するが,各試験条件によって異なる判定結果となる場合がある2.60)

以上の現行の抑制対策の問題点を解決し,より合理的なASR抑制対策を講じることが急務であり,

近年,多くの研究者によって検討がなされている。特に,岩石学的な分析や細孔溶液の組成分析など のASR反応の反応機構に立脚した検討なども多い2.60)2.53)

2.7.2 ASRの反応機構の整理

ASR における反応性鉱物と細孔溶液との反応は,以下の式(2.21),(2.22)で示されるような反応性 シリカ鉱物の溶解反応である。

-Si-O-Si- + R+ + OH- -Si-O-R + H-O-Si-

-Si-O-Si-

-Si-O-Si- + R+ + OH- -Si-O-R + H-O-Si--Si-O-R + H-O-Si-

(2.21)

27 + R+ + OH- -Si-O-R + H2O H-O-Si + R+ + OH- -Si-O-R + H2O H-O-Si

(2.22)

骨材中の反応性シリカ鉱物および非晶質シリカとしては,オパール,カルセドニー,トリディマイ ト,クリストバライト,火山ガラス,隠微晶質石英などが挙げられる。

いずれの反応性シリカ鉱物および非晶質シリカにおいても基本的な反応は,式(2.21)と式(2.22)に示 す反応で説明されるが,各鉱物によって溶解度のpH依存性が異なるため,異なる反応性を示すとさ れる。川端ら2.60)は,クリストバライトを含有する安山岩と安山岩質火山ガラスを含む安山岩につい て,異なるpHのアルカリ溶液中に浸漬した場合の溶解シリカ量を計測している。その結果,クリス トバライトを含有する場合には,低いpHであっても継続して反応が進行するが,安山岩質の火山ガ ラスは,低いpHでの反応が低く,反応性シリカの種類によって,溶解度(反応性)のpH依存性が 異なることを示している。

図-2.16 アルカリ溶液の濃度と溶解シリカ量(Sc)の関係2.60)

2.7.3 各種反応性判定試験による試験結果の相違について

現行の反応性判定試験である化学法(JIS A 1145),モルタルバー法(JIS A 1146)やその他海外等で 適用されているASTM C 1260や飽和NaCl浸漬法(デンマーク法)2.63),セメントアルカリを増加さ せた飽和NaCl浸漬法(修正デンマーク法)2.64)などの試験環境の違いによって同じ骨材であっても異 なる判定結果を与えることが知られている2.53)2.60)0。表-2.5は,鳥居らの報告2.53)より,種々の骨 材を異なる試験方法によりASR反応性を判定した結果を比較したものであり,ASR反応性判定試験 の結果は,試験の条件により異なり,また骨材種類によっても,その傾向が異なることが分かる。

安山岩質火山ガラス クリストバライト

28

表-2.5 異なるASR反応性判定試験による判定結果2.53)

JIS化学法 JIS モルタルバー法

JIS

迅速法 ASTM C 1260 デンマーク法 修正 デンマーク法 AO 安山岩 無害でない 無害でない 無害でない 無害でない 無害でない 無害でない

T 輝石安山岩 無害でない 無害でない 無害でない 無害でない 無害でない 無害でない

N 安山岩 無害でない 無害 無害でない 無害でない 無害 無害

U 安山岩 無害でない 無害でない 無害でない 無害でない 無害でない 無害でない

Yo チャート 無害でない 無害でない 無害 無害 無害 無害でない

Se チャート 無害でない 無害でない 無害でない 不明確 無害 無害でない

JB チャート 無害でない 無害 無害でない 無害でない 不明確 不明確

YA 安山岩 無害 無害 無害 無害 無害 無害

TT 砂岩 無害 無害 無害 無害でない 無害 無害

ASR反応性判定試験 記号 骨材種類

以上のように,試験環境によって判定結果が異なる原因について,川端らは,各種判定試験におい て骨材が反応する溶液または細孔溶液のpHと骨材中の反応性鉱物の溶解度の pH依存性から説明で きることを示している2.60)

上記に挙げた骨材の反応性判定試験は,いずれも反応性を適切に検出できる骨材と検出できない骨 材が存在する。したがって,反応性判定試験により得られた結果を正しく解釈するには,岩石学的分 析が必須であるものと考えられる。

国内においても,岩石学的分析により骨材の反応性を判定する方法として,JCI-DD3「骨材に含ま れる有害鉱物の判別(同定)方法(案)」2.61)として,規準化がなされているが,広く適用されている 方法とは言えず,より一層の普及が望まれる。

2.7.4 海外におけるASR抑制対策

欧米諸国では,先進的にASR抑制対策手法の体系化が進められており2.65),我が国においても参考 にすべき点は多い。

RILEM の技術委員会(TC-191-ARP)より提案されているASR抑制対策のフロー2.66)(図-2.17)

によれば,まず,構造物の重要度によって対策レベルが分類される(S1~S3)。次に環境の評価であ り,湿分および劣化因子(凍結防止剤や海水など)に曝される環境であるかを分類する(E1~E3)。

以上の分類より対策レベルが決定され(P1~P3),M1~M4 に示される対策のうち,対策レベルが高 い場合には,複数の対策を,対策レベルが低い場合には,いずれか一つ,または,予防措置不要であ ると判断する。

骨材の判定方法としては,図-2.18のようなフローで反応性を評価することが推奨されている2.66)。 特に,岩石学的評価を行うことが第一とされ,その後各種岩石学的特徴に応じた試験を選定し,反応 性を評価する方法が採用されている点が特徴的であり,非常に有効な方法であるものと考えられる。

欧米諸国においても,かつては我が国と同様の抑制対策がとられていたが,ASR劣化の顕在化に伴 い構造物の詳細な分析を通して,現在のような抑制フローが構築されてきた経緯がある2.65)

すなわち,より合理的な ASR 抑制対策の構築に向けて,実構造物の詳細な調査を行うことが重要 であり,劣化原因がASRによるものと判定するだけでなく,その構造物でASR劣化を生じるに至っ た原因の追求を行い,現行の抑制対策を吟味することが重要であるものと考えられる。

ドキュメント内 九州大学学術情報リポジトリ (ページ 30-44)