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結論

ドキュメント内 九州大学学術情報リポジトリ (ページ 138-142)

8.1 本研究のまとめ

本研究では,コンクリート構造物の塩害およびアルカリシリカ反応に関する診断技術の高度化を目 的とし,分極曲線による鉄筋腐食診断,鉄筋周囲の空隙の定量評価,腐食生成物の観察および骨材の ASR反応性判定試験法について検討を行った。

本論文の各章ごとに得られた結果を以下に述べる。

第1章では,本研究の背景および目的を述べた。本研究の背景として,我が国の社会基盤構造物に おいて供用開始から 50 年以上経過したものが増加しており,これらの構造物に対する維持管理の重 要性が高まっていることについて述べ,このような中,構造物の現状を的確に判断できる診断手法の 開発や高精度化が求められていることを述べた。また,コンクリート構造物の耐久性に関しては,多 くの知見が蓄積されているものの,これまで考慮されていない劣化因子が存在も指摘されており,よ り耐久的な構造物の建設および維持管理のためには,それらの影響を明らかにすることが必要である ことを述べた。

以上の背景より,コンクリート構造物の診断技術の高度化を目的とし,コンクリート構造物の塩害 およびアルカリシリカ反応(ASR)を対象として,分極曲線による鉄筋腐食診断,鉄筋周囲の空隙の 定量評価,腐食生成物の観察および骨材のASR反応性判定試験法について検討を行った。

第2章では,既往の知見を整理し,本研究で取り組むべき課題について述べた。

第3章,第4章では,電気化学的手法による鉄筋腐食診断技術の向上に対する検討を行った。

第3章では,電気化学的手法として現在広く用いられる方法である自然電位法および分極抵抗法に 関する基礎的実験として,コンクリートの水セメント比および塩化物イオン量がこれらの計測値に及 ぼす影響について検討を行った。また,アノード分極曲線の計測結果との相互関係を整理することで,

自然電位,分極抵抗の計測値の解釈に関して考察を行った。その結果,自然電位の測定では,塩化物 イオン濃度などの鉄筋周囲の環境の変化を把握できることが明らかとなった。一方,分極抵抗の測定 では,鉄筋表面の状態を把握する手法として有効であることが明らかとなった。

第4章では,新たな鉄筋腐食の診断手法の提案として,アノード分極曲線測定の実構造部材への適 用を目的として,既存の携帯型の分極抵抗測定器に用いられているセンサーとポテンショスタットを

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組み合わせる手法を考案し,その適用性について検討した。室内試験より従来の方法(浸漬法)と新 しい計測方法(接触法)を比較した結果,かぶり厚さが30mm以下であれば従来の方法とほぼ同様の 分極曲線が得られることを示した。また,かぶり厚さが100mm までは,不動態グレードとしての判 定が適用可能であることを示した。さらに,実構造部材に対する適用として,海底トンネルより採取 した解体床版に対して,接触法を適用した。その結果,アノード分極曲線から推察される腐食状態と 実際の腐食の状態は一致し,実構造部材に対する分極曲線の測定手法として本研究で提案する手法が 適用可能であることを示した。

第5章,第6章において,塩害に関わる腐食環境評価の高度化を目的として,微視的観察技術を適 用し,鉄筋-コンクリート界面の空隙構造の解明および腐食生成物の観察による腐食環境評価につい て検討を行った。

第5章では,腐食環境として,コンクリートの内部の環境である鉄筋-コンクリート界面に形成さ れる空隙に着目したものである。鉄筋-コンクリート界面の空隙構造の解明を目的として,X 線 CT スキャナの適用性,また,X線CTスキャナより得られる画像の解析に基づき,ブリーディングと空 隙形成の関係,鉄筋軸方向の空隙分布について検討した。

X線CTの適用性に関しては,鉄筋の代替材料としてアルミニウム製の棒を使用することで観察が 可能であることが明らかとなった。

ブリーディングに起因して形成される空隙の定量評価のため,アルミ棒の高さ方向の位置,モルタ ルの水セメント比を変化させた供試体を作製し,比較を行った。その結果,高さ 500mmの供試体の 上端および下端から30mmの位置に設置したアルミ棒の下面の空隙を比較した結果,上段の場合は2

~4mmの厚さの空隙がほぼ一様の厚みで形成されていたのに対し,下段では,平均的には上段の1/10 程度の厚さの空隙であるが,局所的に数mm厚の粗大な空隙が存在していることが確認され,これら 空隙の平面的な分布が,マクロセル生成の原因となるものと考えられた。

さらに,本研究で得られた空隙厚さは,既往の研究で示された値よりも大きく,実構造物において も鉄筋下面にはmmオーダーの空隙が存在しているものと考えられる。また,空隙体積は,ブリーデ ィング量と打設底面からの高さの関数として表されることを示した。

第6章では,実環境下での鋼材腐食では,腐食生成物が層状の構造を示すことに着目し,層構造が 環境条件の影響を受けていることを確認することを目的とし,観察方法の開発および層の生成に対す る環境条件の影響について検討を行った。その結果,腐食生成物の構造的な特徴の共通点として,肉 眼で確認されるマクロな層の内部は,数μmの薄いミクロな層が重なった構造であることが明らかと なった。さらに,マクロ層とミクロ層の厚さの2つを,層構造の特徴量とし,異なる環境条件より採 取した腐食生成物について比較を行った結果,環境条件の違いによってこれらの値が異なることが明 らかとなり,その違いが気温等の環境条件の相違によるものと考えられた。したがって,腐食生成物 の層構造に対して,腐食進行の履歴が反映されている可能性が示され,本研究で提案した腐食生成物 観察が,各種環境における腐食進行の違いを把握に有効であるものと考えられた。

第7章では,遅延膨張性 ASR による劣化の実態を明らかにし,また,骨材の反応性判定試験の適 用範囲について検討を行った。地質条件等から遅延膨張性 ASR の疑いがある構造物を選定し,コア の分析を行った結果,反応性鉱物として隠微晶質石英が同定され,遅延膨張性 ASR であることが確

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認された。さらに,遅延膨張性 ASR に適した反応性判定試験に関する検討として,対象構造物に使 用されていた骨材と岩石学的に同等の骨材を入手し,化学法および各種促進膨張試験を行った。その 結果,現行のJISの化学法,モルタルバー法では,その反応性を検出不可能であったが,ASTM C 1260 やセメントアルカリ量を増加させた改良モルタルバー法で検出可能であった。以上より,岩石学的分 析に基づき反応性判定試験の選出が必要であることを示した。

134 8.2 今後の課題

3章では,自然電位が水セメント比や塩化物イオン量の影響により,アノード分極曲線から推察さ れる腐食状態と異なる傾向を示すことを述べたが,この原因については,十分に把握することができ なかったため,詳細な検討が必要である。また,本実験では,常に飽水状態にある試験体による検討 であり,実構造物での適用を考えると飽和度の違いによる変動についても検討が必要であるものと考 えられる。

4章の分極曲線計測の実構造部材への適用に関して,かぶり厚さに関する定量的な補正方法につい て十分でなく,実構造部材への適用事例を蓄積し,解決する必要がある。

5章では,鉄筋-コンクリート界面構造の可視化に関する基礎的データを得ることができたことか ら,実際の腐食挙動と照らしあわせて界面構造の影響について,より詳細なデータの蓄積が必要であ る。また,鉄筋-コンクリート界面の空隙を減少させる施工方法や実構造物の非破壊試験による空隙 検出方法のなどの対策面に関しての検討は必須であるものと考えられる。

6章では,腐食生成物の層構造の特徴と気候条件の違いは,定性的に一致したものと考えられるが,

具体的な時間スケールと層厚の関係性を明確にすることで定量的な評価が可能となるものと考えら れ,標準試験片などを用いた要素実験による確認が必要である。また,実際に腐食環境評価としての 適用範囲についても,今後明確にする必要がある。

7章に関しては,国内における遅延型膨張性骨材による劣化事例は,十分にデータが蓄積されてい るとは言いがたく,データを蓄積し劣化の実態を詳細に知ることが重要である。検出手法については,

ASTM C 1260等の適用や岩石学的分析の適用などが望まれることを述べたが,抑制手法について十分 な知見が得られていないため,アルカリ総量規制の適用性や抑制に必要な混和材の適性置換率などに ついても検討が必要であると言える。

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