Answer
1.問診により尿失禁の病態を把握する. (B)
2.婦人科診察で骨盤内疾患を検索し,原因となる器質的疾患が認められる場合には,そ の治療を優先する. (A)
3.排尿直後の残尿量が 50〜100mL 以上ある場合には専門医受診をすすめる. (B)
4.尿検査で反復する血尿が認められる場合には,膀胱がんなどの器質的疾患が疑われ るため専門医受診をすすめる. (A)
▷解 説
尿失禁については,1992 年に米国 Agency for Health Care Policy and Research から「成人尿 失禁のガイドライン」1)が,わが国でも 2004 年に泌尿器科領域の治療標準化に関する研究班により
「EBM に基づく尿失禁診療ガイドライン」2)が作成されているが,その内容は多岐にわたるため,ここで は一般産婦人科医が日常臨床で遭遇する女性尿失禁について,尿失禁の診断に必要な知識ならびにエビ デンスを解説する.
尿失禁とは,「尿の無意識あるいは不随意な漏れが衛生的または社会的に問題となったもの」と定義さ れる.つまり,患者自身から「尿が漏れて困る」との訴えがあった時点で尿失禁と診断され,その症状 から①腹圧性尿失禁,②切迫性尿失禁,③混合性尿失禁,④溢流性尿失禁に分類される.腹圧性尿失禁 とは,「咳やくしゃみ,運動時など腹圧上昇時に,膀胱の収縮と無関係に尿が漏れてしまう状態」であり,
その原因として尿道過可動(urethral hypermobility)と内因性括約筋不全(intrinsic sphincter defi-ciency:ISD)が挙げられる.切迫性尿失禁とは,「我慢することができない突然の尿意とともに尿が漏 れてしまう状態」であり,その原因として神経因性と非神経因性が挙げられる.混合性尿失禁とは,腹 圧性尿失禁と切迫性尿失禁が混在する状態である.溢流性尿失禁とは,「尿が膀胱に充満し,尿道から溢 れ漏れ出る状態」であり,その原因として排尿筋収縮力低下と下部尿路閉塞が挙げられる.ウロダイナ ミクス検査等が必要となるため,専門医へ紹介することが望ましい.
1.尿失禁の病態の分類
詳細な問診票などを使って行う.参考までにわが国でしばしば用いられている問診票を図に示す3).こ の問診票は,腹圧性尿失禁スコア(stress score)と切迫性尿失禁スコア(urge score)で構成されて おり,この問診票より得られたスコアをプロットし,領域 a,b,c は腹圧性尿失禁,領域 g,i,j は切 迫性尿失禁,領域 e,f,h は混合性尿失禁と診断される4).さらに,この問診票は重症度判定にも有用で あることが報告されている5).腹圧性尿失禁では stress score が 10〜17 で軽症,18〜23 で中等症,
24〜26 で重症と判定でき,切迫性尿失禁では urge score が 12〜18 で軽症,19〜22 で中等症と 判定できる.
2.内診および超音波検査
子宮筋腫や子宮がんなどの婦人科疾患を検索するために行う.巨大な子宮筋腫が存在すると,膀胱や 骨盤底への影響により尿失禁を呈することがある.何らかの婦人科疾患がみつかれば,その治療を優先 する.
3.残尿測定
排尿直後の残尿量を測定する.直接導尿にて測定する方法と超音波検査にて近似値を得る方法がある が,直接導尿は正確な残尿量が測定できるが侵襲的であるため,超音波検査による近似値で評価するこ とがすすめられる.近似値の求め方は,残尿量(RUV)mL,膀胱の縦 a(cm),横 b(cm),深さ c
(cm)とした時,楕円体の体積として,RUV=π6 abc≒1 2 abc で求めることができる.排尿直後 の残尿量が 50〜100mL を超える場合は,膀胱機能の精密検査が必要となるため,専門医へ紹介するこ とが望ましい.
4.尿検査の異常所見
血尿や膿尿がみられれば,膀胱や尿道の器質的疾患を疑う.血尿のみがみられる場合は,膀胱がんな どが疑われるため,尿細胞診も必要であるが,尿細胞診が陰性であっても膀胱がんは否定できないこと を留意しておく必要がある.反復する血尿がみられる場合は,専門医へ紹介することが望ましい.
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! 文 献 !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
1)Agency for Health Care Policy and Research: Urinary Incontinence in Adults: Acute and Chronic Management Clinical Practice Guideline, 1996 (Guideline)
2)泌尿器科領域の治療標準化に関する研究班編:EBM に基づく尿失禁診療ガイドライン,東京,じほう,
2004(Guideline)
3)石河 修,角 俊幸:更年期女性の尿失禁.日本醫事新報 2000;3995:25―29(II)
4)Ishiko O, Hirai K, Sumi T, Nishimura S, Ogita S: The urinary incontinence score in the diag-nosis of female urinary incontinence. Int J Gynaecol Obstet 2000; 68 (2): 131―137 (II) 5)Ishiko O, Sumi T, Hirai K, Ogita S: Classification of female urinary incontinence by the
scored incontinence questionnaire. Int J Gynaecol Obstet 2000; 69 (3): 255―260 (II)