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CO 2 生成過程の検討

ドキュメント内 九州大学学術情報リポジトリ (ページ 42-45)

第 3 章 アモルファス氷に吸着した一酸化炭素の真空紫外光に誘起される化学反応

3.3 結果と考察

3.3.5 CO 2 生成過程の検討

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それらの吸収ピーク波数は,希ガスの種類により異なる.しかし,本研究において測定

した157 nm照射後の赤外反射吸収スペクトルには,これらの中間体や錯体に関する吸

収ピークは観測されなかった.CO蒸着量が約1 MLと少ないため,中間体濃度が非常 に低く,検出感度を満たさなかったと考えられる.そのため,HOCOラジカルを反応中 間体として経由する反応(7)-(9)が起こっているかについては定かではないが,素過程と して考えられる.CO2生成は反応(7)-(9)の正味の反応を表す次の反応式により引き起こ されたといえる.

CO + OH → CO2 + H (10)

アモルファス氷に157 nmの真空紫外光を照射すると,氷バルクでの水の光分解により 生成した H 原子が表層の水分子に衝突し,この水分子が氷から脱離する光脱離モデル が報告されている[41].このような脱離機構は,一般にkick-out 機構と呼ばれている.

アモルファス氷表面に吸着するCOの近傍の水分子が光分解する場合(特にアモルファ ス氷表面のdangling OHにCOが吸着する場合),氷表面の(dangling OHをもつ)水分

子が157 nmの光照射により光分解し,生成したH原子やOHラジカルが衝突するkick

out機構によってCOが脱離することが予想される.しかし,CO消費量に対するCO2生 成量で表される CO2収率が高いことから,CO の脱離はほとんど起こらないといえる.

COは反応(10)の経路をたどる,もしくはアモルファス氷表面に残存すると考えられる.

dangling OH をもつ水分子が 157 nm という大きなエネルギーを持って切れる場合,

dangling OHと相互作用しているCO は弾き飛ばされ,CO2の生成効率が下がることが

予期される.しかし,本論文の結果をみると,bonded OHと相互作用しているCO氷よ

りもdangling OHと相互作用しているCO氷の方がCO2生成効率は高い.よって,切れ

たdangling OHが反応に使われているだけでなく,光解離するdangling OHと相互作用

しているCOも反応に使われていると考えられる.

CO2生成過程として,反応(10)の他に考えられる反応を検討する.次の2つが挙げら れる.

CO* + CO → CO2 + C (11)

CO + O → CO2 (12)

ここで,CO*は真空紫外光により電子励起されたCOである.本研究でのCO蒸着量は

1 ML程度であるが,多孔質なアモルファス氷表面は結晶化氷に比べ8倍の表面積をも

つとの報告があるため[42],アモルファス氷表面が完全に覆われている状態ではない.

CO はアモルファス氷表面に点在していると考えられる.そのため,反応(11)のような CO分子同士の衝突(再結合)は起こりづらい.また,Gerakinesらによれば反応(11)に

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よるCO2生成断面積は1.3 × 10-20 cm2 molecule-1と報告されており[15],これは反応(11) によるCO2生成は寄与が小さいことを意味する.また,H2Oの光分解の主要な経路は,

上述したように反応(6b)であり,O原子は生成されない.157 nmにおいてはCOの光分 解も起こらないので,COからもO原子は供給されない.そのため,反応(12)は起こら ない.CO/H2O の 2 成分系へ紫外光照射による氷表面素過程を調べた Watanabe and Kouchi[43]やWatanabeら[44]の研究でも,CO2生成に対する反応(11), (12)の寄与は小さ いと考えていることと一致する.

COが157 nmの光子を吸収した場合について述べる.本研究でのCO2収率は,昇温

しない場合に(60±1)%,昇温によるCO拡散を行った場合に(93±3)%であった.このよ うにCO2収率が高いことは157 nm照射後にCOは光脱離せず,アモルファス氷表面上 での反応によりCO2生成の過程に向かうと考えられる.Cruz-Diazらによると,固体CO

(純CO氷)の真空紫外領域の吸収断面積スペクトルは,気体のそれに比べて数波数レ ッドシフトするが,116-162 nmの領域に吸収をもつ[45].波長157 nm(7.9 eV)は固体 COのA1 ← X1+ 遷移に相当する.COのA1 状態のポテンシャルエネルギー曲線は 解離的ではないため,この波長ではCOは解離しないといえる[46].そのため,本研究 に関する実験でも次に示すCOの光分解は起こらず,C原子やO原子の影響を考える必 要はない.

CO + h (157 nm) → C + O (13)

純CO氷やアモルファス氷上にCOを吸着させた氷試料からの光脱離に関しては,Bertin らがシンクロトロン光を光源に利用し,報告している[47].7-14 eV紫外光を純CO氷に 照射した際に,四重極質量分析計(QMS)で検出した脱離COのスペクトルが一致する ことから,彼らは光刺激脱離によって純CO氷からCO分子が光脱離することを明らか にした.一方で,CO-H2O氷の場合,検出される脱離COの信号強度が15分の1にまで 減少した.そのため,アモルファス氷と直接相互作用するCOの光脱離効率は非常に低 い,あるいは光脱離しない.そして光脱離には純CO氷に相当する多層CO薄膜が必要 であると結論づけた.この報告を考慮すると,本研究でも,アモルファス氷表面と相互 作用するCOはほとんど光脱離しないと考えられる.よって,COが157 nmの光子を吸 収する場合,A1 ← X1+ 遷移により電子励起するが,氷表面にエネルギーを逃がすよ うに緩和し,氷表面に残ると考えられる.

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