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第 2 章  参考文献 40

3.3 DSSS システム間の干渉がスループットに与える影響の評価

3.3.4 BER 及びスループットに与える影響の評価

図3.7のシステムAに対する解析モデルと,図3.8のシステムBに対する解析モデル を図3.6の干渉モデルに適用し,システムA/B間の干渉がBERに与える影響(Case1, 2)について計算した結果を図3.14に示す.同図より,Case1とCase2を比較すると,

両者の差はSIRで約2 dBであることが確認でき,両者の特性の差が小さいことを示し ている.これは,両者の拡散符号長が13と11でほぼ同じであることに起因し,拡散 符号間の相互相関係数も同等であるためと考察される.

図 3.14: Case1 2 )システム A / B 間の干渉に対する BER 特性

次に,2.4 GHz帯無線LANに採用されているDSSSシステムでは,送信データをパ

ケットとして送信する場合,パケット誤りが発生すると,受信側からの要求に応じて,

誤ったパケット以降のデータを再送することにより,End-to-Endの信頼性を確保して いる.この方式における実効的な転送効率(スループット)S [bps]は,1パケットあ たりのビット数をLbとすると式(3.3)で表される.

S = Lb/Teff (3.3)

ただし,Teはパケットの実効的な転送時間であり,DSSSシステムの最大伝送速度V

[bps],パケット誤りの発生からパケットを再送するまでの経過時間Tre,及びパケット

誤り率PPERを用いて式(3.4)で表される[28].

Te = ∑

i=1

(iLb/V +(i−1)Tre)Pi−1PER(1−PPER)i

= (LbTreV PPER)/{

V(1PPER)}

(3.4) また,各パケットにおいてビット誤りがランダムに発生するとき,ある1つのパケット が誤る確率PPERはビット誤り率PBERを用いて,式(3.5)で表される.

PPER =1−(1−PBER)Lb (3.5) ここで,PBERは図3.14において求めたBERであり,且つLb= (1,216×8)ビット,V = 2 Mbps,Tre =25 msのときのスループットの計算結果を図3.15に示す.また,図3.4 において,AP間の距離rに対してプロットしたCase1及びCase2のスループットの測 定結果をSIRに対して示した結果も合わせて示す.

 図3.15の結果より,スループットの計算結果と測定結果のSIRに対する変動の傾向 は定性的に一致しているものの,最大で7.2 dBの差が生じている.この理由は,電波 半無教室における測定結果にはアース面からの反射波の影響による受信強度の変動が 含まれているのに対して,計算結果では,伝送路におけるフェージングの影響はない ものと仮定していることによる.しかしながら,両者とも,SIR>15 dBとなる条件で は,90 %以上のスループットが実現されており,DSSSシステム間の干渉を回避するた めの基地局設計において有効な指標が得られたと考える.移動体通信等の回線設計に おいては,サービス品質から定まる所要通信品質と,それを満足できない場所的割合 である劣化率が規定される[30].このとき,受信レベルの標準偏差が5∼10 dBで見積 もられ,劣化率1 %を満足するための所要SIRに対して15∼25 dB程度の変動マージ ンが設けられる[31].そのため,無線LAN等に適用されているDSSSシステムの受信 レベル変動は,移動体通信と比較して小さいが,干渉を回避するための設計において は,電波伝搬特性による所要SIRの変動マージンも考慮することが妥当であり,今後 の課題である.

図 3.15: ( Case1 , 2 )システム A / B 間の干渉に対するスループット特性

3.4 DSSS システムと FHSS システム間の干渉がスループッ