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第 3 章  参考文献 77

4.4 複数の妨害波源が存在する通信環境における PER 解析

図 4.6: 条件 1-1 ∼ 1-4 に対する推定とシミュレーションの比較

り,パルス性妨害波のPERへの影響を評価する際には,少なくとも,妨害波パラメー タであるTdpTdiの違いを考慮する必要がある.

表 4.2: PER 評価のためのパケット通信及び妨害波パラメータ: 持続時 間,インターバル,電力の異なる妨害パルスが混在する場合

干渉条件 条件2-1 条件2-2 条件2-3 条件2-4 1パケットあたりのシンボル数nsym 100

シンボル時間Tsym[µs] 1 パケット送信周期Tsr[µs] 500 パケット送信時間Tsp[µs] 100 パケット間隔Tsi[µs] 400

総送信パケット数Call 1000(総パケット送信時間:500 ms) パルス1の持続時間Tdp1[µs] 59(<Tsi)

パルス2の持続時間Tdp2[µs] 317(<Tsi) パルス3の持続時間Tdp3[µs] 723(>Tsi)

パルス間インターバルTdi[µs] 230 130∼330(Random)

パルス1の電力Pdp1[dBm] 0 6 1

パルス2の電力Pdp2[dBm] 0 3 3

パルス3の電力Pdp3[dBm] 0 1 6

総パルス数Cdp 837(Cdp1Cdp2Cdp3:各279)

であり,妨害パルス2は542µs,妨害パルス3は953µsである.そのため,観測時間内 に各妨害パルスが279個ずつ発生するときの総パケット送信時間は,(289+542+953) µs× 279個=約500 msである.

4.4.1 T

dp

の異なる妨害パルスが混在する通信環境

条件2-1は,電力(Pdp1Pdp2Pdp3 = 0 dBm)は同一であるが,異なる持続時間

Tdp1Tdp2Tdp3)を持つ妨害パルスが混在する通信環境を模擬している.このとき,

Tdp1,Tdp2TdpTsiを満足し,Tdp3Tdp > Tsiの条件となるように設定した値であ る.ここで,条件2-1は,妨害パルス内で電力の変化しない,3種類の持続時間(Tdp1Tdp2Tdp3)を持つ妨害パルスが,固定のパルス間インターバルTdi=230µsごとに,均 等な確率且つ不規則な順番で発生する通信環境とし,各妨害パルスのPERへの影響が 独立と仮定できる条件を想定する.条件2-1に対するシミュレーション結果を図4.7に 示す.

一方,提案手法を用いたPER推定でも,各妨害パルスのPERへの影響が独立と仮定 できる条件であることから,各々の妨害波に対して独立に求めたPER(図4.7中の赤点 線,青破線,橙実線)のγSIRに対する総和を,条件2-1に対する推定結果(黒太線)と した.図4.7より,スループットに対する影響が大きいとされるPPER >102の領域に おいて,推定結果とシミュレーション結果はほぼ一致している.このことから,持続 時間の異なる複数の妨害パルスが混在する通信環境におけるPER推定に対しても,提 案手法は有効である.

図 4.7: 条件 2-1 に対する PER 推定及びシミュレーション結果

4.4.2 T

di

が一定でない通信環境

条件2-2は,条件2-1に加え,パルス間インターバルTdiが図4.8に示す確率分布に 従い,Tdi > Tspとなる130∼ 330µsの範囲で不規則に変化する通信環境を模擬してい る.ただし,4.4.1項と同様に,3種類の妨害パルスの重なる確率が低い場合を想定す る.図4.8において,Tdiの確率密度関数Ddiは,Tdi = 130 ∼ 330µsの範囲で,1/360, 2/360,及び3/360の3種類の値のみを取り,この分布におけるTdiの期待値は条件2-1 における固定値230µsと同じ値である.ここで,条件2-2に対するシミュレーション 結果と条件2-1に対する推定結果(図4.7と同一)の比較を図4.9に示す.

 図4.9の結果より,Tdiが図4.8の分布を持つ条件2-2に対するシミュレーション結果 も,その期待値を固定値として用いた推定結果とPPER >102の領域においてよく一致 していることがわかる.このことから,同一の持続時間,電力を持つ妨害パルスのパ ルス間インターバルが変化する状況においても,Tdiの期待値を知ることで,提案手法 を用いたPER推定が可能である.

図 4.8: パルス間インターバル T

di

の確率分布

図 4.9: 条件 2-2 に対する PER 推定及びシミュレーション結果

4.4.3 P

dp

の異なる妨害パルスが混在する通信環境

条件2-3,2-4は,持続時間(Tdp1Tdp2Tdp3)及び電力(Pdp1Pdp3Pdp3)の異な る3種類の妨害パルスが混在する通信環境を模擬している.ここでは,条件2-2と同 様に,Tdiが図4.8に示す確率分布に従う条件で,条件2-3,2-4に対するPER推定及び シミュレーションを実施した.ただし,条件2-3,2-4においても,ランダムなパルス 間インターバルで,持続時間または電力の異なる妨害パルスがパケットと衝突するこ とから,各妨害パルスに対するPERを独立に求め,その総和を推定結果とする.また,

図4.10,4.11においては,妨害パルスごとにSIRが変化するため,横軸を信号電力Ps とした.

 図4.10,図4.11の結果より,妨害パルスごとに電力が異なる場合も,提案手法を用 いて各妨害パルスに対するPERを独立に求め,その総和を用いることで,PER推定が 可能であることがわかる.また,条件2-3(図4.10)では,持続時間Tdp3,電力Pdp3の 妨害パルス3が,他の妨害パルスと比較して電力も大きいことから,PERを決定する 支配的な要因となっている.これに対して,条件2-4(図4.11)では,信号電力によっ て支配的な妨害パルスが異なる結果となっている.これらの結果より,提案手法は,持 続時間及び電力の異なる妨害パルスが混在する通信環境において,PERへの影響が大 きい妨害波源を特定する際に有効であると考えられる.

図 4.10: 条件 2-3 に対する PER 推定及びシミュレーション結果

図 4.11: 条件 2-4 に対する PER 推定及びシミュレーション結果