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     図4.50  2つの正方形を内側に描いた場合の性質

 しかし、U班やV班のように発想を転換して考えた班は、他にはなか った。これはやはり、時間不足によるものと考えられる。

 図4.44、図4.45、図4.46、図4.48に示した図形の性質は、

教科書の例題や練習問題などに、証明問題として採用されている問題で ある。生徒は、教科書を一切参照することなく、それらをすべて発見し、

変換の性質を利用して証明することができた。これは、従来の授業では 考えられない成果である。

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4.4 授業実践についての考察

4、4 授業突践についての考察

 事後調査の分析結果・生徒の操作履歴の分析結果・生徒が提出したプ リント・授業時の様子をもとにして、次の3つの観点から、考察してい くことにする。

  (ア)単元の目標の達成度

  (イ)ソフトウェアに対する評価   (ウ)新しい学習方法に対する評価

(ア) 単元の目標の達成度

 この単元での目標は、平面上の変換についてまとめることと、変換の 考えを幾何の問題の証明に応用することである。

 平面上の変換についてまとめることについては、授業実践の第1時間 目に行った。内容的には中学校の復習も多く、それほど高度な内容では なかったので、この内容に対する評価テストなどは行っていない。授業 中の発問に対して、どの生徒も的確に解答していたことから判断して、

この内容に関しては、理解できていたと考えられる。

 変換の考えを幾何の証明に利用することに関しては、時間の関係で回 転移動の性質を利用する問題しか扱うことができなかった。回転移動の 性質を利用する問題に関しては、次に示すような理由で、十分な理解が 得られた。

  ①どの班からも正しい証明を記述したプリントが提出されている。

  ②操作履歴を分析した結果、どの班も正しい証明活動を行っている。

   したがって、他の班の結果のみを写してプリントを提出したので    はない。

 本授業実践では、図形を動かす操作を生徒に実際にさせ、納得がいき

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4.4 授業実践についての考察

まで動く様子を見せたので、通常の方法で授業をしたときよりも、深い 理解が得られたと考えられる。

 本授業実践の一番の問題点は、授業時間の不足から、最後のまとめを 十分にできなかったことである。各班が発見した性質を発表する時間を

とることができず、各班の成果をクラスとして共有することができなか った。もしこれができていれば、クラス全員の力で教科書の問題をすべ て解決したことを、生徒に示すことができた。これは、単に与えられた 問題が解くことができたということではなく、「問題を全て自分たちで 発見し、解決する」という、より上位の活動ができたことを意味する。

各班の成果をクラス全体で共有することができていれば、生徒は通常の 学習以上の成就感が得られたと考えられる。本授業実践は、学校現場の 都合により学期末の短縮授業期間に実施したため、授業時間を延長する ことはできなかった。しかし、平常の授業期間中であれば、先に述べた ような形で打ち切ることはなく、他の単元の時間を工面してでも、まと めを行うのが普通である。したがって、この問題は本授業実践における 特別な事情によるものといえる。

(イ)ソフトウェアに対する評価

 これは、4.3.2の(エ)で示した「事後調査の結果と考察」の内容 となり重複するので、ここでは簡単に述べることにする。

 ソフトウェアの開発の目的は、「変換の視覚化」と「探究活動と証明 過程の活動の統合」であった。

 「変換の視覚化」を具体化した機能は、「移動」の機能である。これ は、変換をその途中の様子まで含めてアニメーション表示するものであ る。この機能は、生徒には非常に好評で、図4.32に示した事後調査

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4,4 授業実践についての考察

の結果でも分かるように、「変換の視覚化」は十分に成功したといえる。

変換を視覚化することは、2つの効果をもたらした。1つは、変換自体 の理解を促す効果であり、もう1つは、その機能が面白いために、生徒 の学習への動機づけとなる効果である。

 本ソフトウェアにおいて、探究活動を行うための機能は「作図」と

「計測」であり、証明過程の活動を行う機能が「移動」と「証明の表示」

である。ソフトウェア開発の目的であった「探究活動と証明過程の活動 の統合」は、それらの機能を1つのソフトウェアの中に盛り込むことに よって実現している。しかし、せっかく機能を盛り込んでも、生徒が使 い方に戸惑うようでは、開発目的が達成されたとはいえない。授業時に 観察した結果では、生徒はどの機能も見事に使いこなし、その活動はス ムーズに進行していた。また、事後調査においても、89%の生徒がど の機能を使うかで迷うことはなかったと答えている。観察と事後調査の 結果から、1時間の授業の中で切れ目なく「探究活動と証明過程の活動」

をさせるという目標は達成されたといえる。

 ソフトウェアの操作性については、図4.35に示したようにかなり 高い評価を得た。事後調査の結果で述べたように、操作性に関して不満 が集中したのは、履歴用図形ファイルを保存する際に、操作が一時でき なくなる点であり、これは今後改善する必要がある。

 また、生徒はこちらが想定していなかったような作図方法を求める場 合があり、このことが図4.36に示した機能不足の指摘につながって いる。例えば、本ソフトウェアでは、二等辺三角形と作図する場合には、

底辺を先に指定してから斜辺を指定することにしているが、逆の手順で の作図を望む者もある。生徒の学習のツールであるためには、このよう な作図手順にも対応できるように改良していく必要がある。

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4.4 授業実践についての考察

(ウ)新しい学習方法に対する評価

 本授業実践で試みた新しい学習の方法とは、次の2つである。

 ・「生徒が自ら図形の性質を発見し、その性質を証明していく」学習  ・「生徒が自ら新しい問題を作り出していく」学習

 4.2.1の(オ)からわかるように、どちらのクラスにおいても、数 学や図形が非常に嫌いで、かつ苦手な生徒が多い。しかし、現実にはど ちらのクラスにおいても大学受験を強く意識した授業が行われている。

しかも、数学の授業時間数は特に多く、週8時間もの授業(義務性の補 習も含む)を行っている。そのため、生徒の多くは、「数学とは、例題 の解答を書き写し、問題演習をするもの」と思っている。生徒のこのよ うな数学に対する見方を一新し、数学の学習には、もっと別の形態もあ ることを体験させるのが、今回の授業実践の目的である。4.3.2の

(エ)で示したように、この目的は達成された。しかし、このような授 業を今後も実践していくためには、次のような課題がある。

  ①生徒が学習の目的や学習内容の面白さを理解するのに時間がか     かる。生徒によっては、学習の目的を全く理解できないまま終     わってしまう可能性がある。

  ②通常の授業方法に比べて、倍以上の授業時間が必要となるので、

    よほど授業時間に余裕があるときでないと実践できない。

  ③このような学習を多くの単元において可能にするためには、今     後、新たな教材開発・ソフトウェア開発が必要となる。

  ④実践の結果がすぐに現れるものではないので、このような学習     が定着したかどうか、生徒がどのように変容したかなどを調べ     るには、長い時間が必要となる。

  ⑤ 生徒は、このような学習を「コンピュータを使う時間だけの特