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Agilent 33220A を用いた ADC テスト信号の生成

第 3 章 AWG 由来の 3 次高調波測定

3.2 AWG による ADC テスト信号の生成

3.2.3 Agilent 33220A を用いた ADC テスト信号の生成

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図3.11 Agilent33220Aにおけるサンプリング周波数の低減手法

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図3.12 外部PCによる波形生成とその制御

今回、信号の周波数に関して200kHzの正弦波を10MHzサンプリングで発生させる(下

表3.1)。次章で紹介するADCテスト信号に関してもこの条件により発生させた信号をテス

ト信号として用いる。

表3.1 AWGによる信号発生パラメータ

信号を 10MHzでサンプリングさせるため、サンプリング定理より5MHzの正弦波まで

出力が可能であるが、その場合5MHzの正弦波の高調波が10MHz(2次高調波)、15MHz(3 次高調波)、20MHz(4 次高調波)…と発生する。しかし、その高調波に関してはサンプリン グ周波数の半分の周波数よりも高い周波数となるため、その周波数を観測できない。また、

第 2 章で位相差切り替え信号の周波数限界について、位相差切り替え信号では、従来信号 に対して半分の周波数までしか構成することができないことを紹介した。つまり、位相差 切り替え信号の場合は10MHzでAWGがサンプリングする場合、2.5MHzの信号までしか 扱うことができない。つまり3次高調波を見るためには830kHz ( = 2.5MHz÷3 )の基本波 で少なくとも発生させることが必要になる。しかし、この場合3次高調波とfs/2-finのスプ リアスが非常に接近するため扱いにくい。また、測定においてfs/2-finのスプリアスのみ低 減をし、3次高調波に影響を与えないようなアナログフィルタを設計するが、そのフィルタ 設計の際にある程度、基本波(高調波)とfs/2-finのスプリアスが離れていた方が容易に設計 できるため、今回200kHz正弦波を用いてADCのテスト信号を発生させた。

33220Aにより発生させた従来信号及び、位相差切り替え信号の信号波形及びスペクトル

をそれぞれ下図3.13、図3.14に示す。なお、時間波形に関しては岩通社の DS-4262のオ シロスコープで、スペクトルに関してはアドバンテスト社のR3267を用いて測定を行った。

DAC

CLK

Waveform Memory 外部PC

Low Pass Filter 14-bits

Programable

50MHz

Accumulator

Phase Resister Phase

Increment Resister

CLK

周波数制御 波形データ

メモリ・アドレス

(位相)

4096

(π/2)

8192

(π)

12288

(3π/2)

16363

(2π)

正弦波周波数 サンプリング周波数

200kHz 10MHz

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図3.13(a)の従来信号波形に関して、正弦波信号であるため滑らかな曲線を描いているが、

細かく観測を行うとサンプル点を保持している様子が確認でき、この保持期間は1u秒であ る。つまり、この期間がサンプリング周期に相当し、この時のサンプリング周波数は10MHz に相当する。よって、図3.8の議論からこの波形は10MHzでサンプリングされていること が確認できる。更に、図3.13(b)から基本波に対して、AWG自身の非線形特性により 3次 高調波が確認できる。また、図3.13(b), (c)では信号をサンプリングしたことによりfs, 2fs, 3fs近傍にサンプリング起因のスプリアスが発生していることが確認できる。

更に、図3.14(a)の波形では実際にπ/3の位相差を持った正弦波が1サンプリング点毎に

切り替わっていることが観測できる。更に、詳細の波形を確認すると、こちらも1サンプ リング点におけるデータの保持期間が1u秒で従来信号の図3.13(a)と同じであることが確 認できる。以上より、33220Aのサンプリング周波数は50MHzにより固定されているが、

図3.11で提案した波形メモリに組み込むサンプルポイントを調整することで等価的にサン プリング周波数を変更できていることを確認した。更に、図3.14 (b), (c), (d)の位相差切り 替え信号のスペクトルについて議論をする。図3.14 (b)のスペクトルから基本波に対する3 次高調波を測定すると、3次高調波のパワーが図3.13 (b)の従来の場合と比較し、10dB程 度低減できていることを確認した。しかし、この観測した測定機器R3267は-80dBcまでし か信号の精度が保証されていない。従来信号では、図3.13(b)より基本波と3次高調波のダ イナミックレンジはこの範囲にあるが、位相差切り替え信号に関しては図4.12(b)より基本 波と3次高調波のダイナミックレンジが87dBc以上あり精度が保証されていないため細か い精度をここで断定することはできない。しかし、傾向を議論する程度は可能であり、位 相差切り替え手法により3次高調波は従来手法より低減をされており、測定器に観測され ているノイズフロアよりは高いレベルの信号であるということはできると考えられる。

更に、図 3.14(c)より、位相差を切り替えたことによるスプリアス fs/2-fin が観測できる。

このスプリアスにより3次高調波を低減している。

ここで、3次高調波のキャンセルのための条件を4.1.2の項でfs/2-finのスプリアスパワ ーと基本波のパワーの相関で議論した。ここで、図4.13より位相差切り替え信号の基本波

パワーとfs/2-finのスプリアスパワーは下式の関係がある。

(位相差切り替え信号のfs/2 − finの信号パワー) − (位相差切り替え信号の基本波パワー)

= −0.91 − 9.00 = −9.91[dB] … (4.1)

理論的には(4.1)式の値は(2.15), (2.18)式より-4.77dBである。しかし、AWG内部でfs/2-fin のスプリアス内部のDACやその他のブロックで高周波領域がフィルタリングされているこ

とによりfs/2-finが低減されてしまい誤差が生じている。この誤差により3次高調波はある

程度低減されるが、シミュレーションのように完全にはキャンセルされていない。

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図3.13 従来信号のAWG出力波形とそのスペクトル

図3.14 位相差切り替え信号のAWG出力波形とそのスペクトル

5

Frequency [KHz] Frequency [MHz] Frequency [MHz]

3rd harmonic

Power [dBm]

-9 -6 -3

基本波:9.0dBm 3次高調波:-68.0dBm

(a) 時間波形

(b) 基本波近傍 (c) fs/2近傍スプリアス (d) サンプリング起因のスプリアス

サンプル点の保持

保持時間 1u[sec]

5

Frequency [KHz] Frequency [MHz] Frequency [MHz]

/2 /2

/2

Power [dBm]

-9 -6 -3

基本波:9.0dBm

3rd harmonic

fs/2-fin :-0.91dBm

(b) 基本波近傍 (c) fs/2近傍スプリアス (d) サンプリング起因のスプリアス

(a) 時間波形

サンプル点の保持

1u[sec]

1u[sec] 1u[sec]

保持時間

Time

Voltage

3次高調波:-78.2dBm

π/3

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3.2.4

3次高調波低減用のアナログローパスフィルタの設計・実装・評価

ここでは、4.2.3で示したADCテスト用信号に含まれる従来信号のAWG由来3次高調 波低減用のアナログフィルタを設計・実装しその周波数特性の評価を行う。アナログフィ ルタの設計は現在、ほぼマニュアル化されており、所望の周波数帯域での低減量などから フィルタの回路構成を選定する。この回路構成によりフィルタの次数は決まる。更に、そ の回路に含まれる素子定数の正規化値がフィルタ回路構成毎に表にまとめられているため、

その表を基に目的のカットオフ周波数に応じた素子の値を算出する[14]-[17]。下式(4.2),

(4.3)のようにフィルタの所望のカットオフ周波数が、fcである場合正規化表に下式で表す

LsとCsをそれぞれインダクタ値とキャパシタ値に乗算することで各フィルタの素子値を 求める。ここでRLはフィルタの負荷インピーダンスであり、今回の測定器の入力インピー ダンスの値がフィルタにとってのこれに相当し、その値は50Ωである。

Ls= RL/2πfc… (4.2) Cs= 1/2πfcRL… (4.3)

3次高調波低減用のアナログフィルタの回路図を下図3.15に示す。このフィルタはADC の3次高調波本来値を測定するために用いる。図3.15では5次LCバタワースフィルタの 構成になっており回路図を示したL1, L2, C1, C2, C3の値を用いることで250kHzカット オフ周波数のフィルタを構成される。

図3.15 5次LCバタワースフィルタ@250kHzカットオフ周波数

LCの受動素子が用いられているため、理論的には図3.15のフィルタは線形特性を示す。

また、一般的にインダクタ L に関して、インダクタコアに鉄心などを用いてインダクタン ス値を大きく稼ぐことが行われるが、そのことで L の特性が非線形特性を示すという側面 がある。本測定では、AWGやADCの高調波を測定するため、フィルタにより高調波が発 生すると測定の精度が落ちてしまうという問題が発生する。そこで、インダクタ L のコア を空芯にすることでその問題に対応する。空芯コアのインダクタを用いることで巻き数が

+

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多くなるため、インダクタ L の形状が大きくなるが、今回は線形特性を得ることの方が重 要であるため空芯インダクタを用いる。この空芯コアインダクタを用いて図3.15のフィル タを実装したものを下図3.16に示す。また、周波数分析器(Frequency Response Analyzer : FRA)により試作フィルタの周波数特性の測定を行った。

図3.16 図3.15のフィルタの実装及び特性評価

FRA による図3.15 を実装した図3.16の周波数特性の測定結果を下図 3.17に示す。図 3.16 のフィルタを通すことにより 200kHz の基本波は通過し、600kHz の 3 次高調波は

-40dB 程度低減されることが分かる。単純計算で 3次高調波が-120dBc 程度になることが

予想され、非常に純度の良い信号が生成可能となる。

図3.17 FRAによる図3.16の周波数特性の測定結果

試作フィルタ

周波数特性分析器

(FRA)により評価

105 106 107

-100 -80 -60 -40 -20 0

Frequency[Hz]

Gain[dB]

60