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従来信号、位相差切り替え信号を用いた AD7356 の 3 次高調波の測定

第 4 章 ADC 出力における 3 次高調波測定

4.3 ADC 出力の 3 次高調波の測定結果とその考察

4.3.2 従来信号、位相差切り替え信号を用いた AD7356 の 3 次高調波の測定

ここでは従来信号と位相差切り替え信号を用いて図4.6の測定系でADCの3次高調波の 評価を行う。なお、ADCは図4.2に示す入力AにつながるADCを用いる。

(b) 従来信号を用いたADC評価

ADCのサンプリング周波数は4.3.1と同様にfs=3.478261MHzとする。この条件でADC を動かし、従来信号をフィルタなしで ADC に入力した時の出力信号のスペクトルを下図 4.8に示す。図4.8では基本波fin以外で比較的大きい信号パワーを持つスプリアスが発生 していることが分かる。このスプリアスは図3.13(d)で示したサンプリングによるスプリア ス(fs近傍、2fs近傍、3fs近傍)が折り返されてエイリアシングとして観測されている。なお、

実際のADCテストの際にはこれらの信号はTHDやENOBなどのADC評価をするに当た りADCの性能とは本質的には相関のないものであるためADC入力前段でアンチエイリア シングフィルタを用いて除去することが必須である。

更に、従来信号に図3.19でカットオフ周波数が1MHzを持つフィルタを従来信号に適用 してADCに入力した。この時のADCの出力信号のスペクトルを下図4.9に示す。下図4.9 では図4.8に対して、挿入フィルタによりサンプリングによるfs近傍、2fs近傍、3fs近傍 のスプリアスが低減されている。

図 4.8 従来信号を用いたADCの出力スペクトル 基本波 [dB] 3次高調波 [dB]

-7.10 -94.6

Frequency [MHz]

Power [dBFs]

3rd Harmonic

79

図 4.9 従来信号に図3.19の1MHzカットオフフィルタを用いたADCの出力スペクトル

また、図3.19示すその他のフィルタを従来信号に適用した信号をADC に入力した時の ADC出力信号のスペクトルを下図4.10に示す。

Frequency [MHz]

Power [dBFs]

3rd Harmonic

80

図 4.10 従来信号に図3.19の2MHz, 2.7MHz, 3.7MHzのカットオフフィルタを用いた 時のADCの出力スペクトル

図4.8~図4.10のADC出力観測結果を基に基本波と3次高調波のパワーを下表4.3にまと

めた。表4.3より基本波パワーに対して3次高調波はほぼ同じ値が測定されている。つまり、

この結果より図3.19のフィルタは3次高調波には影響を与えていないことを示している。

フィルタが3次高調波に影響を及ぼす要因としてカットオフ周波数が3次高調波近傍にず れてしまうことや、フィルタの非線形特性により信号に高調波が発生することが考えられ

Frequency [MHz]

Power [dBFs]

3rd Harmonic

Frequency [MHz]

Power [dBFs]

3rd Harmonic

Frequency [MHz]

Power [dBFs]

3rd Harmonic

図3.19の 2MHzカットオフ

フィルタ適用

図3.19の 2.7MHzカットオフ

フィルタ適用

図3.19の 3.7MHzカットオフ

フィルタ適用

81

る。しかし、表4.3よりそのことが起こっていない確認できる。

表4.3 図4.8~図4.10の基本波と3次高調波のパワー関係

(c) 位相差切り替え信号を用いたADC評価

ここでも4.3.2の(a)、 (b)同様にADCをfs=3.478261MHzのサンプリング周波数で動か す。また、従来信号に対し、位相差切り替え信号では第 2 章で述べたように基本波パワー をそろえるために従来信号の正弦波振幅に対して 1.155 倍の振幅にして位相差切り替え信 号の正弦波振幅を設定した。

位相差切り替え信号にフィルタを用いずにADC のテストを行った結果を下図4.11に示 す。図4.11にでは図3.14の信号をそのまま入力しているためサンプリングによるスプリア ス(fs,2fs,3fs…)及び、位相差切り替えによるスプリアス(fs/2, 3fs/2, 5fs/2, …)の信号がイメ ージ信号として全てADCの帯域内に折り返されている。

図4.11 位相差切り替え信号に用いた時のADC出力スペクトル

基本波 [dB] 3次高調波 [dB]

従来信号

フィルタなし -6.94 -88.1

従来信号 図3.19のfc=3.7MHz

フィルタ適用

-6.98 -87.9

従来信号 図3.19のfc=2.7MHz

フィルタ適用

-7.00 -88.0

従来信号 図3.19のfc=2MHz

フィルタ適用

-7.01 -88.7

従来信号 図3.19のfc=1MHz

フィルタ適用

-7.05 -88.5

Frequency [MHz]

Power [dBFs]

3rd

①- ①+ ①±:

②±:

③±:

④±:

②+ ②- ③+

-④+

④-82

また、位相差切り替え信号に図3.19のカットオフフィルタを用いた時の ADC出力スペ クトルを下図4.12に示す。図3.19の選択フィルタによりfs/2-finのスプリアスの低減量が 異なることが確認できる。

図4.12 図3.19フィルタを位相差切り替え信号に用いた時のADC出力スペクトル

Frequency [MHz]

Power [dBFs]

3rd

- 30dB フィルタ

Frequency [MHz]

Power [dBFs]

3rd

- 17dB フィルタ

Frequency [MHz]

Power [dBFs]

3rd

- 54dB フィルタ

Frequency [MHz]

Power [dBFs]

3rd

- 8dB フィルタ

図3.19の

3.7MHzカットオフ フィルタ適用

fs/2-finスプリアス

8dB低減

図3.19の 2.7MHzカットオフ

フィルタ適用

fs/2-finスプリアス

17dB低減

図3.19の 2MHzカットオフ

フィルタ適用

fs/2-finスプリアス

30dB低減

図3.19の 1MHzカットオフ

フィルタ適用

fs/2-finスプリアス

54dB低減

83

また、図4.11, 図4.12に示したスペクトルを解析した時間波形を下図4.13に示す。なお、

ADCの入力信号についても示した。位相差切り替え信号入力におけるADC出力信号に関 して図4.13からローパスフィルタによりfs/2-finのスプリアスを8dB低減することで大幅 に信号が平滑化され、その低減量を順次増加させる毎に更に平滑化されている。出力信号 が入力信号に対して平滑化されているのはADCによりアンダーサンプリングされているた めである。

図4.13 位相差切り替え手法を用いたときのAD7356 (ADC) 入出力信号

0 5 10 15 20 25 30 35

1000 1500 2000 2500 3000

Sample Number

Codes

0 5 10 15 20 25 30 35

1000 1500 2000 2500 3000

Sample Number

Codes

0 5 10 15 20 25 30 35

1000 1500 2000 2500 3000

Sample Number

Codes

0 5 10 15 20 25 30 35

1000 1500 2000 2500 3000

Sample Number

Codes

0 5 10 15 20 25

1000 1500 2000 2500 3000

Sample Number

Codes

ADC入力信号波形 ADC出力信号波形

位相差切り替え信号 fs/2-fin低減なし

位相差切り替え信号 fs/2-fin:8dB低減

位相差切り替え信号 fs/2-fin:17dB低減

位相差切り替え信号 fs/2-fin:30dB低減

位相差切り替え信号 fs/2-fin:54dB低減

Voltage[V]

2

2 0 1

1

Time

Voltage[V]

2

2 0 1

1

Time

Voltage[V]

2

2 0 1

1

Time

Voltage[V]

2

2 0 1

1

Time

Voltage[V]

2

2 0 1

1

Time

84

表4.4に位相差切り替え信号を用いたADCテストに関して基本波と3次高調波のパワー についてまとめた。表4.4から位相差切り替え信号をフィルタなしで用いた場合にのみ3 次高調波の測定値が他とややずれた値になっている。この値はADCの3次高調波の本来値

(-94.6dB)よりも小さい値を計測しているため位相差切り替え信号がADCの歪みを何らか

の形で低減してしまっていることが考えられる。この測定結果より、実験的に位相差切り 替え信号のスプリアスが低減されない場合は誤差が大きくある程度低減することで正しい 誤差量に落ち着くという結果になっていると考えられる。

表4.4 図4.11, 図4.12の基本波と3次高調波のパワー関係