• 検索結果がありません。

基本波低減用ノッチフィルタ、高調波増幅用アンプの設計・実装・評価 62

第 3 章 AWG 由来の 3 次高調波測定

3.2 AWG による ADC テスト信号の生成

3.3.1 基本波低減用ノッチフィルタ、高調波増幅用アンプの設計・実装・評価 62

ここでは図3.14におけるAWGの出力信号(ADCテスト信号)に高調波がどの程度含まれ ているかの検証を行うため、基本波低減用ノッチフィルタ及び、測定する 3 次高調波アン プの設計・実装を行った。基本波に対する 3 次高調波を測定するに当たり問題となるのが 測定機器の保証範囲である。基本波に対して微小信号を測定器メーカは精度を保証してい ない。今回 3 次高調波の測定に用いた測定器は HP 社のベクトルシグナルアナライザ

89441Aを用いている。この89941Aは-80dBcまでしか精度を保証していないため、これ

以下の信号に関しては正しい値が測定できている保証はない。

下図3.21に今回用いたノッチフィルタとアンプの回路構成を示す。更に、実装の際には 図3.22に示すように図3.21のフィルタを3段縦続に接続をする。このことで、基本波の低 減量を増加し、高調波に関しては増幅量を増やすことができる。図3.21に関してオペアン プ部で10倍(+20dB)信号を増幅し、この回路が2段、3段と縦続接続されるとそれぞれ合 計100倍、1000倍(+60dB)の増幅効果がある。また、ノッチフィルタに関しては可変抵抗 を用いることでノッチ点が寄生抵抗、キャパシタなどによりずれた分を吸収できるように している。

図3.21 ノッチフィルタ及びアンプ基本回路

図3.22 図3.21を3段縦続に接続した回路

- +

100

900 1.8k 587p

2.4k 3.86k 2.3k

330p 330p 330p

- + - + - +

1段目

2段目 3段目

63

下図3.23に図3.22の実装回路を示す。図3.23に関してはオペアンプの供給用電源と出 力段を変更するスイッチを備え付けてある。下表3.4 にスイッチの切りかえによる図 3.23 の出力段信号を示す。スイッチ1の時は入力信号がそのまま出力され、スイッチ2 の時は フィルタとアンプ1段分の回路を通過して出力、スイッチ3は更に2段分通過して出力し スイッチ4では3段分通過して出力される。また、図3.23の回路にはノッチフィルタとア ンプが実装されているが、以降ノッチフィルタと呼んだ場合、図3.23のノッチフィルタと アンプが実装されている回路を指すことにする。

図3.23 図3.22ノッチフィルタ及びアンプ回路の実装.

表3.4 図4.13実装回路スイッチ切り替えによる出力段

下図3.24に図3.22の回路を実装した図3.23に示した回路の周波数特性についてFRAを 用いて測定した結果を示す。200kHz の点でノッチ点が形成され、3 次高調波が発生する

600kHzでは信号が出力段を後段にする毎に増幅されていることが確認できる。

電源 1段目

2段目 3段目

入力 出力

スイッチ

スイッチ 出力段

1 Vin

2 Vout1

3 Vout2

4 Vout3

64

図3.24 図3.22実装回路のFRAによる周波数特性の測定結果

更に、下図 3.25にノッチ点近傍の拡大図及び、2段目、3段目出力における信号のダイ ナミックレンジを示した。理論的には2段目よりも3 段目の方がノッチ点における減衰量 が大きくなるが、図3.24から3段目のノッチ点の減衰量が頭打ちになっていしまっている ことが確認できる。しかし、これは、ノッチフィルタの設計段階での誤りではなく測定機 器(FRA)自身の測定限界によるものであると考えられる。図4.22の拡大図のようにFRA内 部のノイズフロアの下にノッチ点が本来は確認できると予想される。

図3.24の周波数特性を持つ図3.23の回路をAWG出力信号に適用して信号を測定するこ とで基本波を十分に低減し、高調波を増幅することからAWG由来の3次高調波の測定をベ クトルシグナルアナライザが保証する範囲に信号を入れることが可能になるため、比較的 に高精度に測定を行うことができるようになる。

基本波

@200kHz:減衰

3次高調波

@600kHz:増幅

10

4

10

5

10

6

10

7

-80 -60 -40 -20 0 20 40 60

Frequency[Hz]

G a in [d B ]

ノッチ点@ 200kHz

3次 高調波

@600kHz

65

図3.25 2, 3段目出力におけるノッチ点近傍の拡大図とダイナミックレンジ

3.3.2

ADCテスト信号に含まれる3次高調波の測定

ここでは、AWG由来の3次高調波測定について検討をする。以下の(a)~(c)の各テスト信 号に含まれる3次高調波の割合について検証を行う。

(a) 高純度正弦波信号(従来信号に図3.16のフィルタを適用) (b) 従来信号

(c) 位相差切り替え信号

なお、図 3.23の実装回路内部のオペアンプを駆動するために 1MΩの入力インピーダン

スを持つ HP社の 89441A のベクトルシグナルアナライザを用いて信号の測定を行った。

この89441Aの精度保証に関して、-80dBc以下の信号は精度が保証されていない。なお、

先程用いたR3267は入力インピーダンスが50Ωであり、この入力抵抗では図4.22内に実 装されているオペアンプを駆動することができない。下図3.26に図3.23の実装回路入力前 の信号を、図3.27には図3.23の実装回路を通過させた信号を示す。

104 105 106 107

-80 -60 -40 -20 0 20 40 60

Frequency[Hz]

Gain[dB]

97.7dB 82.3dB

105.2 105.3

-80 -60 -40 -20 0 20 40

Frequency[Hz]

Gain[dB]

2, 3段目出力における ノッチ点近傍拡大図

測定器(FRA) ノイズフロア により測定不可

66

図3.26 ベクトルシグナルアナライザによる各信号スペクトル

図3.27 図3.26に図3.23のフィルタ(表4.4でスイッチ4)を適用した各信号スペクトル

図3.26, 図3.27の測定結果に関して考察を行う。下図3.28に図3.26(a), 図3.27(a)の信 号処理の様子を示す。AWGの出力信号に含まれる図 3.26(a)の3高調波に関して、この信 号は図3.26に示すように、3次高調波が小さ過ぎるため検出が不可となってしまう。そこ で、図3.23のノッチフィルタ回路を用いて基本波を十分に低減し、高調波のみを増幅する ことで、目的の 3 次高調波が測定器の精度保証内に入るため検出が可能になる。この値を 測定しておき、アンプによる3次高調波増幅分を引くことで本来の 3次高調波を見積もる ことが可能になる。

Frequency [Hz]

100k 200k 500k 1M

従来信号 基本波:-3.15 dBVrms

(b) 従来信号

100k 200k 500k 1M

Frequency [Hz]

位相差信号

(fs/2近傍スプリアス低減)

(c) 位相差切り替え信号

(図3.19 fc=1MHzフィルタ適用)

基本波:-3.34 dBVrms

Power [dBVrms]

-20 -40 -60 -80 -100 0

100k 200k 500k 1M

Frequency [Hz]

従来信号

→LPF@fc=250kHz

(a) 従来信号

(図3.16 fc=250kHzフィルタ適用)

基本波:-3.56 dBVrms

Frequency [Hz]

100k 200k 500k 1M

従来信号

(b) 従来信号 3次高調波:-33.42 dBVrms

100k 200k 500k 1M

Frequency [Hz]

位相差信号

(fs/2近傍スプリアス低減)

(c) 位相差切り替え信号

(図3.19 fc=1MHzフィルタ適用)

3次高調波:-39.18 dBVrms

Power [dBVrms]

-20 -40 -60 -80 -100 0

100k 200k 500k 1M

Frequency [Hz]

ノイズフロア以下に 3次高調波低減 従来信号

→LPF@fc=250kHz

(a) 従来信号

(図3.16 fc=250kHzフィルタ適用)

3次高調波:-58.71 dBVrms

67

図3.28 図3.26(a), 図3.27(a)の信号処理の様子

下図3.29では、図3.26(b), 図3.27(b)での信処理の様子を示した。図3.29に示すように

位相差切り替え手法でAWG由来の3次高調波を低減する一方で、位相差切り替えによる

fs/2-finのスプリアスが発生する。このスプリアスを図3.19に示すfc=1MHzカットオフ周

波数のフィルタで低減をする。この時次段の図3.23で示すノッチフィルタで正確に信号処 理を行う都合上十分にfs/2-finのスプリアスを低減しなければならない。仮に、このfs/2-fin のスプリアスを低減しない場合、図3.14のように急峻な切り替えしを持つ時間波形がノッ チフィルタに入力されるが、実装されているオペアンプのスルーレートがこの切り替えし に追いつかず、その結果ノッチフィルタでの信号処理を行うことができない。そのため、

fc=1MHzのカットオフフィルタで十分fs/2-finのスプリアスを低減 (54dB低減) した後に

ノッチフィルタに入力した。ノッチフィルタ入力後、基本波を十分低減し、アンプ部で3 次高調波を増幅する。そして、この3次高調波がベクトルシグナルアナライザの精度保証 内に入ることで正確にその値を検出することができる。

図3.29 図4.25(b), 図4.26(b)の信号処理の様子

最後に、下図3.30で図4.26(c), 図4.27(c)で行った信号処理について議論する。この場合、

AWGにより従来信号を用いてテスト信号を発生させているためAWG由来の3次高調波が

Freq.

3次高調波 基本波

fs/2-fin 低減

Freq.

3次高調波 基本波

fs/2-fin

基本波低減、高調波増幅 AWG由来3次高調波発生

増幅され検出

ノイズ ベクトルシグナル

アナライザ 精度保限界線

精度保証外 精度保証内 AWG

従来信号

図3.23 ノッチフィルタ

ベクトルシグナル アナライザ 3次高調波測定

Freq.

4thLPF@fc=1MHz /2 スプリアス

低減 AWG

位相差切り替え 信号発生

図3.23 ノッチフィルタ

ベクトルシグナル アナライザ 3次高調波測定

Freq.

基本波

fs/2-fin

位相差切り替えによる fs/2-finスプリアス低減

Freq.

基本波

fs/2-fin

AWG由来3次高調波を 位相差切り替え手法で低減

基本波

fs/2-fin

基本波低減、高調波増幅

3次高調波 増幅され検出

低減 3次高調波

位相差切り替え により低減

ベクトルシグナル アナライザ 精度保限界線

精度保証内

精度保証外

68

発生するが、次段の図3.16で示すfc=250kHzフィルタで3次高調波を除去している。その 後にノッチフィルタで基本波を低減し、高調波を増幅するものの、高調波は観測できない。

よって、この図4.14のフィルタを用いた従来信号は純度の高い正弦波信号が生成できてい ることが確認できる。

図3.30 図3.26(c), 図3.27(c)の信号処理の様子

図3.26より基本波パワーの測定し、図3.27より3次高調波の測定した結果を下表4.5に まとめた。また、図4.26では図4.22の実装回路におけるスイッチ4を用いている。スイッ チ4では図4.23から3次高調波@600kHzで54.7dB増幅される。つまり、3次高調波の本 来値(増幅される前の値)は測定値よりも54.7dBだけ低い値になる。そのアンプによる増幅 分を差し引いた値に関しても3次高調波パワーの本来値として表3.5に示した。

表3.5 図3.26, 図3.27より測定結果のまとめ

表4.5より基本波に対する3次高調波のダイナミックレンジを計算する。3次高調波のダ イナミックレンジは下式(4.3)で計算をする。

基本波パワー測定値 [dBVrms]-3次高調波パワー本来値[dBVrms] (4.3)

表3.6を基に(4.3)式を計算した結果を下表4.6及び、図3.31にまとめた。

表3.6 各AWG出力信号の3次高調波ダイナミックレンジ

Freq.

Freq.

AWG由来3次高調波のカット

3次高調波 基本波

fs/2-fin

基本波低減、高調波増幅

基本波

fs/2-fin Freq.

AWG由来3次高調波発生

3次高調波 基本波

fs/2-fin ノイズ

低減 5thLPF@fc=250kHz

3次高調波低減 低減 AWG

位相差切り替え 信号発生

図3.23 ノッチフィルタ

ベクトルシグナル アナライザ 3次高調波測定

ベクトルシグナル アナライザ 精度保限界線

精度保証内

精度保証外

図4.25(a), 図4.26(a) 図4.25(b), 図4.26(b) 図4.25(c), 図4.26(c) 基本波パワー測定値 [dBVrms] -3.15 -3.34 -3.56 3次高調波パワー測定値 [dBVrms] -33.42 -39.18 -58.71

3次高調波パワー本来値 [dBVrms] -88.12 -93.88 -113.41

図4.25(a) 図4.25(b) 図4.25(c) 3次高調波ダイナミックレンジ [dBc] 84.97 90.54 109.85