第 2 章 低歪み信号発生アルゴリズム
2.5 位相差切り替え信号のデメリット
2.5.2 fs/2-fin のスプリアス低減量と位相差の変動量δの相関及び、高調波の低減
相関
表2.2, 表2.4で各高調波への低減量について述べた。しかし、これはあくまで理論上の
数字であり、実際の測定でこれらと同等の低減量を得ることは次数が上がるほど難しくな り、理論値との隔たりが大きくなると考えられる。
, =
信号 サンプリング周期: サンプリング周波数:
サンプリング周期: サンプリング周波数:
信号
従来信号位相差切り替え信号
AWGによるサンプリング
・・・ ・・・
37
下図2.15に位相差切り替え信号を用いた時の3次高調波、9次高調波がキャンセルされ る様子を示す。以下簡単のためこの両者に関して比較を行う。図2.16に示すように3次高 調波と 9 次高調波に関して、ともにπの位相差でキャンセルされる点では同じであるため
表2.2, 表2.4の結果となった。しかし、その”位相差π”が持つ時間が異なる。3次高調波の”
位相差π”の時間を Tとすると、9次高調波の”位相差π”の時間はその 1/3 倍短くなりT/3 である。
図2.16 位相差切り替え信号における3次高調波、9次高調波のキャンセルの様子
仮に、図 2.16 の正弦波が下図 2.17 に示すようにδだけ変動したとする。この場合、図 2.17 からわかるようにキャンセル現象が完全には起こらない。また、この変動量δが同じ だけ与えられた場合、図2.17に示すように9次高調波の方が変動に対する耐性がないこと が分かる。そのため高次高調波になるほど理論値からずれやすいと考えられる。
π 3π π
3次高調波のキャンセル 9次高調波のキャンセル
時間 : T 時間 : T/3
38
図2.17 位相差切り替え信号の位相差の変動δ
この変動はノイズによる揺らぎもあるが、主に位相差切り替えのfs/2-finのスプリアスが 帯域制限されることにより低減されてしまう場合に起こる。下図にfs/2-finのスプリアスが 帯域制限され、fs/2-finのスプリアスが低減された時の図2.16に示す位相差の変動量δにつ
いてMATLABを用いて数値シミュレーションを行った。下図2.18の左図にシミュレーシ
ョン結果を示す。図2.18の左図はfs/2-finのスプリアスが低減されたときの時間波形にお ける位相差πからの変動量δ(図2.16)を示している。fs/2-finが全く低減されない場合はδ
=0 であり、位相差がπあるためキャンセル対象になっている高調波(3 次高調波や 9次高 調波)はキャンセルされる。しかし、fs/2-finのスプリアスが低減された場合、図 2.16のδ
>0が発生する。このときは図2.6で示したように完全なキャンセル効果が得られない。ま
た、図2.17の右図にfs/2-finのスプリアスの低減量とキャンセルしようと考えていた高調
波の発生してしまうパワー関係について示した。このシミュレーション結果からfs/2-finの スプリアスが低減されてしまうと高調波のキャンセル効果が得られなくなってしまう。
3次高調波やや低減 9次高調波低減されない
変動量: δ
π δ
変動量: δ δ
同じ変動量
39
図2.18 fs/2-finのスプリアスが低減された際の時間波形上での位相差の変動量(左図)及び、
スペクトル上でのキャンセル対象の高調波の低減量の減少(右図)