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第 5 章 ヘテロエピタキシャル成長を利用した

5.7 FDTD 法を用いた Ag ナノアレイ構造の光学特性評価

5.7.2 Ag ナノアレイ構造の反射光特性

まず始めに、Agナノアレイ構造を構成するAgナノロッドのサイズ、ギャップ間距離 を変化させた場合における反射光特性を図5.20に示す。図5.20(a)は、周期P(ロッドサ イズDとギャップ間距離Gを足し合わせた数値)を固定し、ロッドサイズを変化させた 場合における反射光強度の波長依存性、図5.20(b)は、ロッドサイズDを固定し、ギャッ プ間距離Gを変化させた場合における反射光強度の波長依存性である。基板屈折率は、

SiO2基板を想定し1.458とした。

図5.20 Agナノアレイ構造の反射光特性結果

(a) ロッドサイズ依存(周期固定)

(b) ギャップ間距離依存(ロッドサイズ固定)

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図5.20の結果より、Agナノアレイ構造の基本的な反射光スペクトルとしては、実験 結果と同じく、短波長側に大きなLSP共鳴ピークが現れることが分かった。図5.20(a) では、ロッドサイズDが小さくなることで(ギャップ間距離Gが大きくなることに相当)、

LSP共鳴波長が短波長側へシフトし、反射光強度が減少した。また、ギャップ間距離G が小さくなることで(ロッドサイズDが大きくなることに相当)、LSPに由来する共鳴 波長が長波長側へシフトし、反射光強度が上昇した。また、図5.20(b)では、ロッドサ イズDを固定し、ギャップ間距離Gを10 nmとさらに小さくした(周期Pが小さくなるこ とに相当)。その結果、ギャップ間距離Gが10 nmにおいて、LSP共鳴波長が分裂した。

これは、第3章で議論したように、Agナノロッド間の相互作用が強くなったことに由来 する。つまり、ギャップ間隔が大きいときは相互作用が弱く、小さいときは相互作用が 強くなったため、結合モードと反結合モードの特性が明瞭に確認でき、ロッド間の複合 体としての振る舞いが波長依存性の違いとして強く見られたと考える。

次に、基板の屈折率変化による反射光スペクトルの影響をみる。基板屈折率としては、

SiO2基板の屈折率を想定して、1.458と1.521の2種類、PETフィルムの屈折率を想定し て、1.600を用いて計算した。各条件における反射光強度の波長依存特性を図5.21に示 す。

基板の屈折率が大きくなるにつれて、LSP共鳴波長は長波長側へシフトした。これは、

5.5節に詳述したMalinskyらの結果からも、妥当な結果が得られている。実験による散 乱光測定では、SiO2基板(n = 1.521)からPETフィルム(n = 1.600)へ変更すること で、LSP共鳴波長が約10 nm長波長側へシフトした。FDTD解析によっても同等の結果

図5.21 基板屈折率変化による反射光強度の波長依存性

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が得られており、屈折率n = 1.521の時に、LSP共鳴波長は𝜆𝐿𝑆𝑃 =527.52 nm、屈折率n =

1.600の時に、LSP共鳴波長は𝜆𝐿𝑆𝑃=541.53 nmとなり、約14 nmの長波長シフトを確認

した。

本項最後の検討として、図5.22に偏光方向の影響を確認した。図5.22(a)に示すように、

構造に対して、x方向に振動しているTE偏光で入射した場合と偏光を45°傾けたTEM 偏光の場合を確認した。Agナノアレイ構造は、ロッドサイズD = 160 nm、ギャップ間 距離G = 40 nm、基板屈折率はSiO2基板を想定し1.458とした。

図5.22(b)に示す偏光方向の違いによる反射光強度の波長依存性の結果から、今回の Agナノアレイ構造において、偏光による依存特性は確認できなかった。この結果は、

実験でも同様な結果が得られており、Agナノロッドのサイズや隣接するロッド間距離 が大きかったため、ロッドの頂点間で生じるギャップモードが共鳴状態を変化させるほ ど発生しなかった、もしくは可視光領域に現れなかったと推察する。

次に、共鳴状態を視覚的に捉えるために、短波長側の共鳴波長に対する電界強度分布 図を図5.23に示す。Agナノアレイの計算構造は、ロッドサイズD = 160 nm、ギャップ 間距離G = 40 nm、周期P = 200 nm、基板屈折率は実験で使用したSiO2基板を想定し

1.521とした。入射光は、x方向に振動しているTE偏光で入射した。電界強度分布図は、

上述の計算構造の反射光スペクトル結果(図5.21の屈折1.521の結果と同等)から、LSP 共鳴波長𝜆𝐿𝑆𝑃 =527.52 nmを決定し、図5.23(a)(b)の計算構造に示すラインから抽出した 2次元の電界強度分布図を示す。

図5.22偏光方向の違いによる反射光強度の波長依存性 (a) 計算構造、(b) 反射光スペクトル

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図5.23(c)-(e)の電界強度分布図の結果から、x-y面、x-z面、x-z面(45º)いずれの観 察面おいても、ロッドの側面よりもエッジ部分に光が強く局在することが分かった。し かしながら、図5.23(c)のx-y面や図5.23(e)のx-z面(45º)から分かるように、隣り合う ロッド間での相互作用が弱いことが分かった。これは、隣接するロッド間距離が大きか ったためであり、双極子-双極子相互作用を積極的に起こすほどの距離にはなかったと 言える。共鳴状態を有意に変化させるためには、ロッド間のギャップ間距離をさらに縮 める必要がある。

図5.23 Agナノアレイ構造の電界強度分布図

(a)(b) 計算構造、

(c) x-y面の電界強度分布図 (d) x-z面の電界強度分布図 (e) x-z面(45º)の電界強度分布図

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