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第 3 章 Ag ナノプリズムの光学特性評価

3.5 エッジ形状とギャップ間距離が LSP 特性に及ぼす影響

前節の結果から、二量体構造のギャップ間距離が電界強度増倍度に及ぼす影響が大き いことが分かった。これは、単量体構造におけるエッジ部分の曲率と同様な挙動である

図3.5 ギャップ間隔距離変化による電界強度増倍度の波長依存性

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ことから、両者の関係性について評価した。単量体構造のエッジ部分の曲率と二量体構 造のギャップ間距離を変化させたときの電界強度増倍度をプロットした結果を図3.6に 示す。電界強度増倍度は、各条件における最大値を使用し、それぞれ累乗フィッティン グを行った近似曲線の結果も同図内に示す。

図3.6 最大電界強度増倍度の依存特性

(a) 単量体構造におけるエッジ部分の曲率半径(CR)

(b) 二量体構造におけるギャップ間距離(G)

※累乗フィッティングのため、CR=0 nmのデータは除外

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図3.6から分かるように、単量体構造のエッジ部分の曲率を大きく(エッジに丸みが 帯びる)、二量体構造のギャップ間距離を大きく(間隔が離れる)することで、両者と もに電界強度増倍度が累乗的に減少することが分かった。

一般的に導体表面の電界は、導体表面の電荷密度に比例するため、単量体構造のエッ ジ先端の電荷の量が少しであっても電荷密度は大きくなる。そのために、先端部分の電 界が非常に大きくなる。エッジ先端のように尖った導体の曲率と電界の関係は、図3.7 のような2つの導体球モデルを使って表現できる[9]。2つの導体球は等電位にするために 導線で結ばれており、このモデルはエッジ部分を理想化したものである。ここで、半径 𝑟1の小さな導体球に𝑄1の電荷を与えたとすると、導体表面の電界𝐸1は、

𝐸

1

= 1 4𝜋𝜀

0

𝑄

1

𝑟

12

となる。同様に、半径𝑟2の導体球に電荷𝑄2を与えたとすると、導体表面の電界𝐸2は、

𝐸

2

= 1 4𝜋𝜀

0

𝑄

2

𝑟

22

となるが、導線で結んでいるため、等電位であり、𝑄1⁄𝑟1=𝑄2⁄𝑟2となる。したがって、

𝐸

1

𝐸

2

= 𝑄

1

⁄ 𝑟

12

𝑄

2

⁄ 𝑟

22

= 𝑟

2

𝑟

1

≥ 1

となり、電界は半径に逆比例し、半径𝑟1の小球の電界の方が強くなる。つまり、導体表 面の曲率半径が小さいほどその表面の電界が強いことになる。

(3-1)

(3-2)

(3-3)

+ +++ + + +

+ + +

+

図3.7 エッジ先端の簡易モデル

- 31 -

一方、二量体構造のギャップ間距離に関しては、簡単な系ではあるが、図3.8に示す ような距離𝑟離れた電荷𝑄1と電荷𝑄2を考える。クーロンの法則から、電荷𝑄1に働く力F は式(3-4)で与えられる[10]。𝒓は電荷𝑄2から電荷𝑄1の方向の単位ベクトルである。

𝑭 = 1 4𝜋𝜀

0

𝑄

1

𝑄

2

𝑟

2

𝒓

さらに、電場の定義式𝑭 = 𝑄1𝑬より、電場Eは式(3-5)で表される。

𝑬 = 1 4𝜋𝜀

0

𝑄

2

𝑟

2

𝒓

任意の電荷の受ける力は他の各電荷から受けるクーロン力のベクトル和であることか ら、重ね合わせの原理に従って求めることができる。電荷分布を表すために、電荷密度 𝜌(= ∆𝑞2/∆V)を導入し、電荷𝑞1を含む全空間に渡る積分で置き換えると次式が与えられ る。ここで、𝑑𝑉は、𝑑𝑥、𝑑𝑦𝑑𝑧である。

𝑬 = 1

4𝜋𝜀

0

∫ 𝜌

𝑟

2

𝒓𝑑𝑉

ギャップ間距離は、距離𝑟に依存しており、距離が大きくなるほど、電界が小さくなる ことが理解できる。つまり、両者の因子は、電界に反比例的に影響を及ぼすことが分か った。結果的には、電界強度増倍度に対して同じ作用が働くと考える。実際にFIBなど での微細加工を想定した場合は、いかにエッジ部分の先鋭さを維持し、ギャップ間隔を

(3-4)

(3-5)

(3-6) 図3.8 空間的に分布している電荷がつくる電場

2

1

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小さく加工できるかが求められる。著者らのグループでは、FIBによる微細加工で、曲 率半径8.66 nmとギャップ間距離8 nmを達成(4.8節参照)しており、FIBによる作製 方法において、分野最高水準の結果が得られている。