第 4 章 現地調査の結果
7) Acacia mangium を用いた直播造林法
早稲田大学 助手 田中一生
国際緑化推進センター 主任研究員 仲摩栄一郎、研究顧問 大角泰夫
7-1. はじめに
石炭採掘の廃土地造林を困難にしている要因として、良質な苗木の生産と植栽本数の調 達の困難さや、適正な植え穴サイズの確保と施肥などの不安定さという人為的な影響があ げられる。この問題に対して、苗木生産における問題を無視することができ、植栽の手間 を省くことが可能な方法として直播造林が挙げられる。
石炭採掘の廃土地における直播造林の候補樹種として、A. mangium が考えられる。A.
mangiumは東南アジアにおいて、既に様々な地域で造林木として植栽されており、さらに
植栽地周辺において天然更新が確認されている。図-1は、AGMの造林地の端において天然 更新したA. mangiumであるが、約5カ月で樹高約50cm程度から180cmを越える程度ま で成長していた。A. mangiumは既に様々なストレスに対して抵抗性があることがわかって おり、様々な用途において材の利用が可能である(岩崎ほか、2012)。
熱帯荒廃地造林において、直播き造林はほとんど行われることがないが、この要因の一 つは荒廃地の多くがチガヤ草原となっているため、樹木実生が被陰され成長が困難である ためである。石炭採掘の廃土地では、整地後しばらくの期間は草本の侵入は少ないため、
直播き造林に適していると考えられる。
加えて、A. mangium は本来インドネシアに自生していないため、成林後、A. mangium を被陰木として利用し、現地産の樹種に転換していくことも考えられる。
これらのことから本研究では、A. mangiumの直播造林手法について、検討を行う。
図 6-1 石炭採掘跡地(PT. TAG)において天然更新をしているA. mangiumの様子。
2012 年 5 月 11 日 2012 年 9 月 21 日
図7-1 石炭採掘跡地(PT. TAG)において天然更新をしているA. mangiumの様子。
7-2. 方法
A. mangiumの直播試験を行った。A. mangiumの種子は熱湯処理を事前に施した (林木 育種センター 2006)。100×100 (cm)の格子角で播種試験を行った。播種後は、周囲をスズ ランテープで囲むか四方にスズランテープを巻いた標識杭をたて、作業員による踏圧等の 攪乱を防いだ(図7-1C, D)。
7-3. 今後の予定
次回の現地調査時に、生存率、成長量、写真撮影を行う予定である。
15 cm
3 cm
15 cm
A B
C
D
図‐*石炭採掘跡地におけるA. mangiumの直播造林実験の様子。植え穴の様子(縦×横)(A)。植 え穴の様子(深さ)(B)。TAJにおける実験地(オレンジ色の箇所に播種)(C)。AGMにおける 実験地(オレンジ色の箇所に播種)(C)。
図 7-1 石炭採掘跡地における A. mangium の直播造林実験の様子。植え穴の様子(縦×
横)(A)。植え穴の様子(深さ)(B)。TAJにおける実験地(オレンジ色の箇所に播種)(C)。 AGMにおける実験地(オレンジ色の箇所に播種)(D)。
7-4. 引用文献
岩崎 誠・坂 史朗・藤間 剛・林 隆久・松村順司・村田功二 2012. 早生樹―産業植 林とその利用、259pp、海青社
熱帯産等早生樹種の育種マニュアル, 2006, 林木育種センター 海外協力部, 林木育種セン ター, p9.