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インドネシアの鉱山開発跡地における森林回復施業技術の情報収集

第 2 章 開発地の森林・植生回復に適用可能な技術の分析

2) インドネシアの鉱山開発跡地における森林回復施業技術の情報収集

元インドネシア林業省研究開発局 上席研究員 Dr. A. Ngaloken Gintings

1. はじめに

天然資源は国家発展における基本的資本であり、中でも鉱業は、現在インドネシアに外 貨をもたらす一つの要因となっている(Siti Latifah、2003年)。

採鉱、特に金と石炭の採掘は、露天掘りで行われている。Sabtanto Joko Suprapto氏(2012 年)によると、その結果として、鉱業跡地では、特に地下水や地表水における化学的性質 の変化、土地の形態学的・地形学的変化といった環境変化が起こっている。それに続いて 引き起こされるミクロレベルでの気候変動、動植物の生息地破壊、土地の生産性低下も発 生している。Anonim 氏(2011 年)によれば、露天掘りによる石炭採掘では、石炭以外の 物質も大量に産出され、別の場所へ堆積される(表土下層部)。この土壌は、表土(A層と B層)と土壌の母材の混合物である。土壌の母材には、粘土岩、シルト岩、砂岩、凝灰岩と いったものが挙げられるが、これらは物理性が不良であり、有毒な化学物質を含んでいる ことも多い。Chairil Anwar Siregar氏とWayan Susi Dharmawan氏(2007年)によると、

Pongkorの金鉱山では相当量の尾鉱を産出するが、この尾鉱に処理を施せば、林木の育成に

用いることが可能な培養土となる。この処理は、金属イオン(Pb, Cu, Zn dan Fe)と反応 する有機官能基がキレートする過程で、金属イオンを抑制し、菌根もしくはN、P、K肥料 を混ぜるという方法で行われる。

このように様々な問題があるため、鉱業跡地には再生とリハビリテーションが必要であ る。

2. 解釈

様々な参考文献や規則が存在するため、ここで用いる解釈を以下に挙げる。

再生とは、鉱業事業活動の結果損傷を受けた土地が、その用途に合わせて効率的に機能 することが出来るよう、その機能を修復、整備する活動のことである(Sabtanto Joko Suprapto、2012年)。

Siti Latifah氏(2003年)によると、「再生」、「鉱業跡地の復旧」、「尾鉱」、「露天掘り」と は、以下を指す。

「再生」とは、鉱業事業活動の結果損失を受けた土地が、その能力に合わせて最適に機 能することが出来るよう、修復(回復)するための活動のことである。

「鉱業跡地の復旧」とは、鉱業跡地の機能を元の状態に戻すための活動のことである。

「尾鉱」とは、産出された時点や鉱石処理過程において経済的価値がないとされる鉱物 のことである。

「露天掘り」とは、直接大気に暴露する採掘方法のことである。

Susilo Bambang Yudhoyono氏(2008年)によると、森林の再生及び森林と土地のリハ ビリテーションとは、以下を指す。

森林再生とは、土地と森林の植物がその用途に合わせて最適に機能することが出来るよ う、修復もしくは回復させるための活動のことである。

森林と土地のリハビリテーションとは、森林と土地の機能を回復、維持、向上させるた めの活動で、環境収容力や生産寿命も引き続き保護される。

3. 再生とリハビリテーションの目標と目的

森林の再生とリハビリテーションの解釈からその目標と目的は以下の通りである。

リハビリテーションの短期的な目標は、浸食に対して安定した景観を形成することと、

土地を生産的にすることである(Sabtanto Joko Suprapto、2012年)。

再生は、採掘の結果損失を受けた土地の機能を、修復もしくは整備することを目標とす る(Hermin Tikupadang及びRetno Prayudyaningsih、2010年)。

Siti Latifah氏による目的(2003年):

(1). 生態系が妨げられた土地を修復するための鉱業跡地の回復。

(2). 生態系が修復された鉱業跡地を次の用途に使用するための準備。

4. 採掘活動

Sabtanto Joko Suprapto氏(2012年)は、活動は以下のように行われるべきであると述

べている。

A. 鉱業計画活動の段階

この活動には、資源と埋蔵量の予測、鉱業範囲の計画、採掘の各段階、鉱山生産スケジ ュール、堆積地の計画、必要な機材と労働力の計算、資本と操業経費の計算、財政面の評 価、環境影響分析、企業の社会的責任(CSR)、社会の発展、鉱山の閉山を含む。Siti Latifah 氏(2003年)によると、再生計画立案において留意するべき点は、以下の通りである。

(1) 採掘を実施する前に再生計画を準備する。

(2) 再生される土地の面積は、採掘用地の面積と同じ広さである。

(3) 表土上層部を決められた場所へ移動、保管し、再緑化の際に元の姿に戻す。

(4) 損傷を受けた自然の水流経路を元に戻す(修復する)。

(5) 廃棄場へ廃棄する前に、有害物質の含有(率)を、安全なレベルまで無くす(下げ る)。

(6) 土地の状態を元に戻したり、使用目的に適合させる。

(7) 再生プロセスの途中や、終了後の浸食を小さくする。

(8) 採掘活動で使用が終了した全ての機材を移動させる。

(9) 硬い表面の土壌を柔らかくする必要があるが、それが出来ない場合には、硬い土壌 を貫通する根を持つパイオニア植物を植える。

(10) 採掘後、鉱業跡地は直ちに再緑化されるため、林業省のリハビリテーション計画 と、作成済みの環境管理・ミティゲーション計画書(RKL)に沿った植物種の再植 林が行われる。

(11) 有害な害虫や雑草が入り込むのを防止する。

B. 再生

この活動は、持続可能な環境計画を目指す鉱山の閉山プログラムである。東カリマンタ

ンのKelian金鉱山の閉山は、見本とすることが出来るインドネシアで初めての事例である。

C. 土地の修復対策

酸性鉱山廃水に関して、とりわけ以下の事項に留意する必要がある。採掘後に土を埋立 て、上層土に肥料を撒き、浸食を防ぐ。勾配が急な斜面にはテラスを造成したり、天候や その他機能を調整することで、土壌と水環境の保護を行う。

土地復旧のための試みとしては、土を再度埋め戻すこと、苗を育てるための畑や農園作 り、再緑化の実施、酸性鉱山廃水への対応、水路の整備、鉱業跡地の活用法決定、鉱石保 護の観点から目的に沿った植林木樹種の選定が挙げられる。

5. 再生とリハビリテーションに関わる技術指針

上記の説明に基づき、再生とリハビリテーションに関わる技術の詳細に関して、以下の ように述べることが出来る。

A. 鉱業跡の埋立て.

有効な規定に則り、採掘の際に掘られた地層は決められた場所に置かれ(積まれ)、採掘 終了後にこの地層を元の通りに戻すことで、鉱業跡地の埋立てを行う。

B. 安定した土地作り

埋立てによる自然景観は、浸食が起こらないよう、元通りに作られる。険しい土地には テラスや苗を育てるための畑を作ったり、被覆作物や草を用いて土地を覆ったり、その地 域に適した木を植林する。Anonim 氏(2011 年)によると、この他に安定した土地を作る ために用いられる方法には、特に以下の方法が挙げられる。(1)アスファルト乳剤の使用、

(2)Flemengia congestaのような被覆作物を植える。

C. 土壌の性質の修復

通常、鉱業跡地は酸性であるため、施肥が行われる。Anonim 氏(2011 年)によれば、

利用できる方法には、有機物、堆肥、石灰といった土壌改良剤の使用がある。これと同等 に重要なのは、雨水の収集である。

D. 尾鉱の毒性試験

Chairil Anwar Siregar氏とI Wayan Susi Dharmawan氏(2007年)によると、以下のよ うな方法を用いて実験を行うことが可能である。

(1) 重金属に対して反応を示すトウガラシ(Capsicum annum)を植える。

(2) 植林木用の穴は50 cm x 50 cmで作り、間隔は3 m x 2 mとする。

(3) 培養土 →岩がちな鉱業用地の場合、尾鉱:堆肥:表土上層部=1:1:1。平地の場 合、尾鉱:堆肥=3:1.

(4) 苗には菌根菌を与える。

(5) 3ヶ月毎に植林木の保育を行う。

(6) Glomusaggregatum、G. fasciculatum、G. etunicatumといった、Gmelina arborea 植林樹種には、内菌根を与えるとN、P、Kの吸収が良くなる。

E. 苗床

Hermin Tikupadang氏とRetno Prayudyaningsih氏(2010年)による実験は、以下の通 りである。

(1) バイオポッティングを使用する。バイオポッティングとは、有機物と土壌の微生物

(有益な菌もしくはバクテリア)を混合して固める、苗床の土壌作りの方法の一つ である。

(2) バイオポッティングは、特に生産性がほとんどないような土地において、苗床から 植林場所に至るまで、植林木の成長を向上させることが出来る。

(3) バイオポッティングは、鉱業によって損失を受けた土壌の化学的、生物学的、物理 的性質を修復することが出来る。

(4) BIOTROP によって生産された、アカシアマンギウムの樹皮と粘土から成る苗木の

土壌ブロック(BMS)は、水分含有量30%、密度0.60 gr/cm3、気孔率35%である。

林産物研究開発センターのPasaribuは、粘土20%(粘度20~25%)、平均水分含有 率7.80%、平均密度0.82%、平均気孔率46.89%を有する、マンギウム樹皮の堆肥 80%のBMSを作った。

F. 再生とリハビリテーション

再生活動の原則は、以下の通りである。(1)再生活動は、開発活動全体のうちの一部を 成すものであると捉えられなければならない。(2)再生活動は出来るだけ早期に行われな くてはならず、採掘プロセス全体の終了を待つ必要はない。再生実施は、土木技術や植林 技術を用いて行うことが可能である。(Siti Latifah、2003年)

Maming Iriansyah氏(2005年)は、鉱業跡地の再生とリハビリテーション活動において、

以下の実験を行った。

(1) 植林間隔は、3 m x 3 m 及び5 m x 5 m