炭坑跡地緑化のための土壌モニタリングマニュアル(素案)

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第 5 章 森林回復技術マニュアル(素案)

1) 炭坑跡地緑化のための土壌モニタリングマニュアル(素案)

(Soil Monitoring Manual in the Coal Mining Area) -解説

国際緑化推進センター 研究顧問 大角泰夫、主任研究員 仲摩栄一郎 京都大学大学院 農学研究科 教授 太田誠一

Lambung Mangkrat大学 講師 Dr. Fakhrur Razie

1-1) マニュアルのための一般的理解

前提

このマニュアルは南カリマンタン州の国立大学、Lambung Mangkrat大学との共同研究を 進めるために作成した「Soil Monitoring Manual in the Coal Mining Area」をベースとしてよ りわかりやすい形でまとめたもので、実際に使っているマニュアルは、英文のものである ことを前もってお断りする。

また、読者の皆さんの理解を深めるために写真と図表を用意したが、重複を避けるため にマニュアルに記載した写真・図表は本文では記載しなかった。必要な場合はマニュアルを 参照されることをお願いする。

1. このマニュアルのターゲット

(1) 石炭採掘跡地の埋め戻し材料がいつ、どのように酸性化するのかを探ること (2) 酸性化の時間的な進展を知ること

(3) 材料の違いによる酸性化の違いを知ること

(4) 採掘材料を用いた重機による埋め戻しに伴う土壌の圧密化程度を土壌硬度ならびに容 積重から把握すること

(5) 圧密化された土壌の物理的特性の時間的変化を探ること

2. インドネシア炭坑跡地土壌の一般的性質についての理解

インドネシアで進められている炭坑開発は露天掘りで行われるのが普通である。すなわ ち埋蔵されている炭層までの地層をはぎ取り、石炭を採取するというものである。これら の炭層は通常は複数層埋蔵されており(写真-1)、これらの炭層を順次採取するというもの である。インドネシアの法律では採炭後は速やかに森林回復を行うことと定められている ので、森林回復を容易にすることと土砂崩壊を低減するために、採炭後は速やかに埋め戻 しを行うケースが多い。さらに、森林回復をより確実にするために地表部の森林土壌を別 途採取・貯蔵し、採炭-埋め戻し後被覆する場合もある。埋め戻しに使う材料は炭層の上部の 採炭時にはぎ取られた地層を使うのが普通である。この採炭-埋め戻しの状況をわかりや

すく図化したものが付属資料-Figure-1である。

これらの埋め戻しの材料中には海成堆積物が多く含まれ、その中には酸化剤である過酸 化水素水(H2O2)を加えると判激しい反応を示すものもありパイライト(Pyrite = FeS2-黄 鉄鉱)と考えられる硫黄化合物が存在することが確認された。このような硫黄化合物は酸化 的環境下に暴露された場合、パイライトのケースでは、

FeS2 + 15/4 O2 + 14/4 H2O = Fe(OH)3 + 2H2SO4

という一般化された化学式にしたがって硫酸が形成されるとされている。なお、一部に は鉄明ばん石と称呼される Jarosite(KFe3(SO4)2(OH)6)が中間的に介在する場合もあるとも 言われている(写真-3、写真-4)。いずれにせよ、硫酸によって土壌が酸性化される。

硫酸によって強く酸性化した土壌や硫黄化合物が存在することにより、現在は酸性では ないが将来空気にさらされると強い酸性を示すに至ると予想される土壌を酸性硫酸塩土壌 (Acid Sulfate Soil-略称:ASS)と呼ぶ。

土壌は時としてpH1~3という極めて低い酸性にまで酸性化される場合があり、森林回復 に大きな障害となる。前述のような埋め戻し後に別途採取した Pyrite を含まない元々の森 林土壌等の材料を表面にかぶせて酸性の影響を削減する方法はその後の森林回復にはきわ めて有効である。

なお、埋め戻しに使う炭層の上側に累積した地層は、堆積した環境に対応して硫黄化合 物の量が大きく異なると予想される。すなわち、元々の堆積環境が地上で行われた場合や 海成堆積でもイオウが集積しない場合は酸化による硫酸の発生はない。反対に現在のマン グローブ林下のように多くの有機物が供給されて形成される還元的な堆積環境下で多くの イオウ取り込んだれた堆積材料では強く酸性化すると考えられ、酸性化は堆積物によって 異なることを前提に考えておく必要がある。

この酸性化には微生物が介在すると考えられているが、一般的にはどの様なメカニズム、

スピードで酸性化するのかは明らかとなっていない。

これらの点を可能な限り明らかにするために本事業においては異なった年代の材料によ って埋め戻された植栽予定地で土壌のpHを、表層を従来の森林土壌で被覆した地点と比較 しつつ、モニタリングすることを計画した。

酸性化に加えて、材料の埋め戻しや旧森林土壌表土の被覆は、写真-2 に示したように大 型重機によって行われ、頻繁に重機が通過することで土壌が強く圧密され堅い緻密となる。

この緻密で堅い土壌は植物にとってきわめて厳しい生存・生育環境と考えられるが、どの 程度のレベルの緻密さ、堅さが植物の成育・生存に影響するのかは、植物種の耐性を含め てよくわかっていない。

この様な堅く緻密な堆積材料からなる土壌は植生が定着することによって、また湿潤―

乾燥の繰り返しによって徐々に砕け膨軟になると考えられる。この様な土壌の物理性が時 間の経過と共にどの様に変化するのか、等についての情報もほとんどない。

これらの問題点の解明を可能な限り進めるという目的で、通常の採掘材料を用いて埋め 戻しを行った場所と表層に従来の森林土壌を被覆し、植生の定着を促進した場所での土壌 物理性の変化をモニタリングすると共に、リッピング処理によって緩和した場所と通常の 埋め戻し地の土壌物理性の変化をモニタリングすることとした。

3. 本事業における対象地の選定とモニタリングプロットの設定

埋め戻し材料の酸性化には時間がかかるとの予想から、前項に示したように、新しい堆 積物を用いた埋め戻し地(PT. Antang Gunung Meratus社(AGM))と比較的古い堆積物を埋 め戻しに用いた場所(PT. Tanjung Alam Jaya社(TAJ))の2地点、をモニタリング対象地と して選定した。

新しい堆積物の地、AGMは2010年に掘り起こされ、そのまま埋め戻した場所とその上 に以前の森林土壌(Acrisol)をかぶせた場所が造成されている。古い材料で埋め戻しを行った TAJは2003年に採炭が行われ、採炭時に出た堆積物はそのまま放置され、その材料が2010 年の採炭終了に伴って埋め戻しに用いられた場所である。従ってTAJは2010年の埋め戻し 時点では、埋め戻し地には放置期間中に地表面に出ており酸性化した材料と、下層に埋ま っていたため酸性化が進んでいない材料が混在して地表に出現すると推察される。

AGMモデル林地は写真-3にあるように採炭時の材料を埋め戻した場所と埋め戻し地に別 途保管されていた以前の土壌(Acrisol)の A~C 層によって被覆した場所との二つの試験区が 設定された。2011年度のモデル林対象面積は5haである。この二つの処理地にpHと土壌 物理性のモニタリングプロットを設定した。

一方TAJモデル林地は写真-4のように全体が採炭地の材料を埋め戻した場所であるが、

土壌の物理性を改良するために一部をリッピング(掻き起こし-深さ約 15cm)した場所を設

定した(付属資料Photo-2)。全体の面積は3.5haである。なお、TAJの採炭はかなり以前で

あったため、元々の土壌(Acrisol)の材料は失われており、以前の森林土壌による被覆処理を 行うことはできなかった。ただ、植栽木の植え穴に近傍から採取した森林土壌を混和する 処理を一部について行った(付属資料Photo-3)。TAJのpHと土壌物理性のモニタリングプ ロットはリッピングを行った場所と行わなかった場所に設定した。さらに、両モニタリン グプロットのなかで、植え穴に森林土壌を混和したポイントと混和しなかったポイントを 設定してpHのモニタリングを行うこととした。

土壌pHモニタリングに加えて、両モデル林地内あるいはモデル林隣接地に存在する河川 あるいは池の水pHもモニターすることとした。

1-2) 土壌 pH モニタリングと水 pH モニタリング

1. 土壌モニタリングと水モニタリングプロットの設定と管理

土壌pH測定では土壌を採取して測定する、すなわち破壊調査を行うことになる。したが って、継続的な土壌pHモニタリングでは毎回違った場所で土壌採取をする必要があり、あ る程度の広がりを持ったプロットを設定する必要がある。この点を前提に付属資料Figure-2 に示したように長さ2~3m、幅1~2mの長方形のプロットを設定した。

加えて、TAJでは植え穴中の土壌pHをモニタリングすることとしたが、このモニタリン グポイントは同じ植栽処理区の植え穴(16 本)を順次モニターすることとした。また、土壌 物理性のモニタリングもpHの変化との関係の有無と程度を把握することも想定して、この pHモニタリングプロットに隣接して行うこととした。

水pHモニタリングポイントAGMでは2011年度モデル林隣接地2地点及び2012年度モ デル林隣接地1地点、TAJではモデル林内1地点と隣接地1地点を水pHモニタリングポイ ントとして設定した。

これらのモニタリングプロットは写真(付属資料Photo 4)に示したように4角の長い方の 両側を耐久性の高い Melaleuca 材でマーキングし、識別テープによってプロットを管理す ることとした。また、植え穴土壌pHモニタリングポイントは、対象とした植栽処理区の入 口右手前の植え穴にMelaleuca材によってマーキングし、識別テープによって管理し(付属

資料Photo 5)、水pHモニタリングポイントは水辺にMelaleuca材を打ち込み、識別テープ

で管理することとした。

杭と識別テープはモニタリングの度にチェックし、特に光による劣化や変色が起こりや すい識別テープは毎年更新する。

2. 土壌と水のサンプリング、pH測定及び記録 (1) サンプリング:

土壌pHの変化は空気に接している表層から進んでくると考えられるので、深さ毎にサ ンプリングすることとした。対象深度として0~10cm、10~20cm及び20~30cmを設定し た(付属資料Figure-2)。pH測定に必要な土壌量は10g、繰り返しを行った場合は20g で あるので写真(付属資料 Photo-6)のように土壌オーガーによる採取法を採用した。なお、

その際通常のオーガーでは硬堅土壌のため採取困難であるため、特別仕様の細身オーガー を採用した(付属資料Photo 7)。

サンプリングは同じ地点での繰り返しを避けるために採取地点を毎回変えて行う。サン プリングの際、コンタミネーションを避けるためにオーガーの土壌採取部位の上部 5cm を除いてサンプリングする(付属資料Figure 3)。採取試料は50cc容ファスナー付きビニ ール袋にプロット名、採取深及び採取日を記入して実験室に持ち帰る。

これらの通常のプロットにおけるサンプリングに加えて、TAJでは植え穴土壌採取プロ ットを設定し、この場合のサンプリングもオーガーで0~10、10~20 及び20~30cm の部

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