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社会経済調査

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第 4 章 現地調査の結果

9) 社会経済調査

開発跡地の森林回復ならびに森林の保全・持続的利用管理には周辺に住む地域住民の継 続的な協力が必要不可欠である。そこで、東ヌサテンガラ州の農牧開発地のモデル林造成 地周辺の地域住民を対象として社会経済調査を実施した。

9-1) NEKBAUN 村 社会経済調査結果

インドネシア林業省研究開発局Kupang支所 研究員 Mr. Eko Pujiono 国際緑化推進センター 主任研究員 仲摩栄一郎

1. 村の歴史

1967 年以前、Nekbaun 村の行政は「旧スタイル」であった。行政構造は、幾つかの

「tamukung」(村レベル)から成り立つ「fetor」(郡レベル)より構成され、Amarasi 地域

周辺には、12のtamukungから成り立つ、4つのfetorが存在した。Nekbaun村自体は、2 つのtamukungより成り立っていた。1968年以降、tamukung及びfetorの行政形態は次第 に使われなくなり、村行政へと変化していった。

2. 位置及び面積

Nekbaun 村 の 面 積 は 16.23 km2で、4 つの集落より成り立っ

ている。Nekbaun村に最も近い町

はクパンで、距離にして約27 km、 原動機付き車両を使用した場合 には1時間程度を要する。村への アクセスには、24 kmのアスファ ルト道路と、3 km に及ぶ未舗装 の道路を通らなくてはならない。

Nekbaun 村は、海抜約 250 メー トルの高さに位置する。Nekbaun 村の位置と土地利用図について は、図1を参照されたい。

図1. Nekbaun村土地利用図

3. 人口統計

Nekbaun村は、西 Amarasi郡にある親村の一つに含まれる。Nekbaun村の住民構成は、

Dawan Amarasi語を母語とするTimor族出身の現地人である。日常の社会生活においては、

Dawan Amarasi語とインドネシア語が使用される。2011年の住民数は1,460名と記録され

ており、一家族は平均3名で構成されている。Nekbaun村の人口統計に関しては、図2を 参照されたい。

(a) (b)

図2. Nekbaun村人口統計:(a)最近3年間における住民数と人口密度、(b)2011年、

年齢別住民数

人口統計では、人口増加について最近3年間比較的一定であることが示されている。住民 構成としては、男女の割合がほぼ1:1で均衡している。人口密度は低く、村長の予想では、

今後50年から75年の間は居住用や農業用地に対する需要は十分にまかなうことが出来る。

年齢別分布に関しては、Nekbaun住民の約55%が、村落開発の担い手となり得る生産年齢 に属している。

4. 経済活動

Nekbaun 村における経済状況は、地域総生産額(PDRB)の大きさ及び一人当たりの収

入レベルで表わされる。地域総生産額(PDRB)は、地方における経済指標の一つとなるも のである。中央統計局(BPS)による地域総生産額(PDRB)及び一人当たりの収入を算出 するに当たっての最小単位となるのは郡である。よって、Nekbaun村の地域総生産額(PDRB) と一人当たりの収入を知りたい場合、西Amarasi郡の地域総生産額(PDRB)のデータを使

0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600

2009 2010 2011

住民数(名)

年 Penduduk Laki-laki Penduduk Perempuan Total Penduduk

0 100 200 300 400 500 600 700 800 900

0-14 15-59 60+

住民数(名)

年齢別分布 男性

女性 総人口

用することとなる。2009 年から2011年の西 Amarasi郡における地域総生産額(PDRB) 調査結果によると、地域総生産額(PDRB)は約400億、経済成長率は約5%、住民一人当 たりの収入は年間およそ500から600万ルピアとなっている。

クパン県中央統計局(BPS)の記録によると、2009 年から 2011 年までの経済構造とし ては、未だ農業セクターが地域総生産額(PDRB)全体の 50%を占めており、続いて、商 業、サービス、その他セクターとなっている(図 3a)。農業セクター内には、食糧作物や 畜産業といった農業セクターの大部分を占める幾つかのサブセクターが存在する(図 3b)。

一方、林業サブセクターは最も小さなサブセクターとなっている(図 3b)。

(a) (b)

図3. 西Amarasi郡(Nekbaun村)の経済活動状況:(a)最近3年間における域総生産 額(PDRB)及び一人当たりの収入、(b)農業セクターにおける各サブセクターの 占める割合

5. 土地の所有と利用

一般的に土地は個人所有となっており、その約 45%はすでに登記書を取得している。村 用地として定められている幾つかの場所については、全村民による共同所有となっている。

村用地の全面積は、400 ha程である。この村用地の分割に関しては、全村民が共同で作成 した村条例に盛り込まれている。村条例の一例としては、結婚をしたがまだ土地を所有し ていない村民に対しては、一世帯に付き50 m x 25 mの面積の村用地に居住し、管理を行 う権利が与えられる。

0 1 2 3 4 5 6 7

0 5000 10000 15000 20000 25000

2009 2010 2011

地域総生産額(PDRB)(100万ルピア)

年 Pertanian

Perdagangan, Hotel, Restoran Jasa-jasa

lain-lain PerKapita

一人当たりの収入(100万ルピア/年)

49%

7%

41%

1% 2%

Tanaman pangan Tanman perkebunan Peternakan

Kehutanan Perikanan 農業

商業 サービス業 その他

一人当たりの収入

農業 農園業 畜産業 林業 漁業

土地利用については、乾燥地が 90%を占めており、その内訳は焼畑、畑、放牧場、藪と なっている。残りは、湿地(田んぼ)と国有林(約250 ha)である。大部分の住民は農民 として生活の糧を得ており、トウモロコシ、水稲、陸稲、イモ類等、自給用の主要農産物 を植えるために土地を利用している。一方、自給用の非主要農産物としてではなく、販売 用の収穫物としては、野菜、豆類の他、ココナッツ、バナナ、キャンドルナッツといった 果物が挙げられる。一般的に住民が植林する木は、チーク、マホガニー、グメリナgmelina、 カシューナッツといった樹種である。住民は、地元の在来種もしくは原産種の木を植える ことはなく、これらは自生している。在来樹種とは、アラビアゴムkabesak やレッドウッ ドのことを指す。Nekbaun村の植林木樹種の一覧は、表1を参照されたい。

表1. Nekbaun村で植えられている植林木樹種一覧

農作物 果物作物 樹木

外来種 在来種

トウモロコシ (Zea mays) 水稲

(Oryza sativa) 陸稲

イモ類 野菜 豆類

果物作物:

ココナッツ (Cocos nucifera) バナナ

(Musa Paradisiaca) キャンドルナッツ (Anacardium occidentale)

チーク

(Tectona grandis) マホガニー

(Sweitenia mahagoni) グメリナ

(Gmelina arborea)

Kabesak

(Acacia leucophloea) レッドウッド

(Pterocarpus indicus) 白檀

(Santallum album)

情報源:2013年現場視察&インタビュー

6. 森林と伐採

Nekbaun村の森林は、国有林と村有林より構成されている。250 ha程の面積を有する国

有林には、モクマオウ属の木、チーク、その他の種類が分布する。一方、15 ha程の面積を 有する村有林は、モクマオウ属の木、セイロンオーク、ビダラのようなジジプス属の木kom/

bidara (Zysipus sp), タマリンド、チーク、グメリナといった植林木より構成されている。

Nekbaun 村の地元有力者に対するインタビュー結果によると、森林消失もしくは森林面

積の減少は1990年代以降に発生した。一般的に、森林消失は経済的な要因により引き起こ される。つまり、建設用資材や薪といった生活上のニーズや住民のニーズを満たすための 伐採ということである。さらに、チェーンソーのような伐採器具の普及によって伐採活動 はより容易になり、違法伐採を行う者も出てきた。2011年だけでも、Nekbaun村において 2件の違法伐採があったことが記録されており、1件目は住民数名によるパピと呼ばれる香

木kayu papiの伐採、2件目は4名によって行われた国有林区域における違法伐採である。

どちらについても、法的措置が取られている。この法的措置は、二度と違法伐採を行わな いよう犯人を反省させる目的で行われると同時に、住民に対する教訓ともなっている。違

法伐採という人為的な理由によるものの他、土砂崩れといった自然的要因によって減少し た森林地域も存在する。これは、保護林の大部分が急勾配であることに起因する。

違法伐採事件や、土砂崩れといった自然的要因があるものの、Nekbaun 村の国有林は一 般的に保全されていると言って良い。国有林が変わらずに保全されている要因は、以下の 通りである。

(1) 地域住民及び慣習的組織による強い支援があること

その支援形態とは、住民総意に基づく森林保護の方法と、その利用を定めた慣習規則の 存在である。現在も慣習法は守られている。例えば、慣習規則で定められた保護林におい て、盗伐や動物を殺すなどの違反をした場合、それに関わった人物に災いが起こると信じ ている地域住民もいる。そのため、現存する森林が変わらず守られているのである。

(2) 国有林と住民所有地の明確な境界があること

慣習規則や合意に基づき、各世帯主には、国有林と住民所有地を隔てるための全長8~20 メートルの石壁を作る責務が与えられている。この活動によって、全世帯の住民が国有林 と住民所有地の境界を間接的に知ることとなっている。

(3) 森林保護の必要性に関する住民意識があること

すでに行われている住民意識の形成としては、林業局やその他関係機関によって実施さ れる造林や緑化プログラムへの住民参加が挙げられる。また、結婚する若者はその村に苗 木を植えなくてはならないという地元の知恵があることにも、環境保護に対する住民の関 心が表されている。

村有林では、村条例に定められている手続きを踏むことで木材伐採が許可される。村有 林における伐採の手続きは、村長もしくは地元有力者によって承認された隣組(RT)レベ ルでの書類作成や、現場での共同調査の実施がある。該当の木が伐採に適している場合に は伐採許可が下りるが、湧水、河川、墓に近い地点にある際は、伐採が禁じられる。つま り、貯水地域を考慮することによる水源保全や、適切な木材のみを伐採することで成り立 つ産物存続などが村条例によって間接的に管理されているのである。村条例に違反する伐 採に対しては、家畜の屠殺や罰金といった罰則が科される。罰則の程度は行われた違反の レベルによる。

7. 畜産

Nekbaun 村民の多くが家畜を所有していることを踏まえ、村条例では放牧に関連する規

則が定められている。Nekbaun村全世帯のうち、約15%が放牧を行っている。村の歴史に

よると、Nekbaun 村の設立当初から放牧専用となっている土地は存在した。この放牧専用

地の面積は、約400 haである。このため、他人の私有地に家畜が立ち入った場合には、罰 則が科される。この罰則は、柵を所有する住民と、家畜を所有する住民に対して施行され る。柵の所有者に対しては損害の半分相当の罰則が科され、家畜の所有者に対しては家畜 の屠殺が行われ、その半分は政府と被害があった土地の所有者に分け与えられる。

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