図2−3のように、すべての投射線を平行にする投影法を「平行投影法」といい、
図2−4のように、すべての投射線が1点に会する投影法を「中心投影法」という。
平行投影法において、図2−3(1)のように、投射線が投影面と直交する場合を「直 投影」といい、(2)のように、斜交する場合を「斜投影jという。数学用語の正射影 は直投影に相当する。
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【図2−3】 【図2−4】
直投影においては、一投射線上の各点がすべて重なって、1点として表現され、
ただ一つの図で、立体の3次元的な広がりを表すことはできない。しかし、以下で 示すような投影法においては、我々が眼で見る像とよく似た投影を得ることができ
る。
図2−5のように、
立体に直交3主軸を想 定し、それらの直投影 または射投影である軸 測軸をかき、これらを 基準として立体を作図 する投影法を「軸測投 影」,という。このうち (1)を「直軸測投影」
(2)を「斜軸測投影」
という。
【図2−5】
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直軸測投影では、座標軸に沿う長さは、3軸とも縮小されて投影されるが、3軸 方向のうち、いちばん縮小率の少ない軸を原寸でかき、他の2軸を、軸角度・縮率 比はそのままに、それに比例して拡大してかいた図を「直軸測図」という。この図 は、簡単にかくことができ、しかも立体の実態をよく表すので説明図としてしばし ば用いられる。3軸の縮率比が簡単な整数比である直軸測図の例を図2−6に示す。
最もよく使われるのは3軸が120。おきになり、各回の縮率の等しい等測図であ
る。
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【図2−6】
斜軸測投影では1つの面が実形で、第3の次元はつけたしの形となり、立体感も やや不自然であるが、作図が簡単なので、説明図としてよく使われる(図2−7参 照)。実用されている図の奥行き方向の軸の傾きは、他の軸に対して30。45。60。
などの簡単な角度のものが用いられ、縮率も0.5〜1の間の便利な値が用いられる。
これらは「斜軸測図」とよばれる。図2−7は(軸の傾き,縮率)を(45。,1)
(45。,1/2) (300,3/4)でかいた立方体である。
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【図2−7】
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これらのことから、数学教育で用いられる「見取図」は、平行投影法の中の直軸 測投影と斜二三投影による図法と考えられる。
(2)平行投影法の性質
見取図、すなわち平行投影法による図は、どのような点で空間図形領域の学習に 適しているのであろう。そのことを考察するために、図2−8の平行投影図と図
2−9の透視図を比較しながら、平行投影図の性質を考えていく。
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【図2−8】 【図2−9】
平行投影法において、平面図形の投影は原図形とアフィン幾何的に同値である。
たとえば、三角形は三角形に、楕円は楕円に投影される。しかし合同ではない(た だし、投影面に平行な平面図形の投影は原図形に合同に投影される)。このことは、
投影によって変化する幾何的性質と変化しない幾何的性質があることを示す。すな
わち、
①投影によって変化しないもの
・直線の投影は直線であり、直線上の点の投影は直線の投影上にある。
・平行な直線群は平行に投影される(透視図法では、平行な直線群は1 点に集まるように投影される。つまり平行性は保存されない)。
・平行な直線分の長さの比は変わらない(透視図法では、平行線の長さ の比は投影によって変化する)。
・線分の内、外分比は変わらない(透視図法では、線分の内、外分比は
変化する)。
②投影によって変化するもの
・線分の長さ、平面角は一般には投影によって変化する。
3次元の立体図形を2次元に表現するためには、次元が下がる分、何等かの幾何 的性質の変化が必ず伴う。空間図形領域が空間図形の性質を研究、考察する学習領 域である以上、立体の視覚的現実感よりも幾何的性質を優先することは当然のこと である。そのような点から考えると、平面曲線の次数、点と線の結合関係、直線の 平行性、平行直線分の長さの比、直線分の内、外分比が変化されずに保持される平 行投影法が空間図形領域で使用される理由がわかる。
本節では、教材面から空間図形領域の学習についての考察を進めることにより、
次のような点を明らかにすることができた。
①見取図は、平行投影法の直軸測投影と斜軸測投影をもとにしている。
②見取図では、次に示す立体図形の幾何的性質が保持されるため、空間図形 領域の学習に適している。
・直線の平行性。
・平行な直線分の長さの比。
・直線分の内、外分比。
一36一
第2節 認知面からの考察
■.3D〈一→2Dのコーディング、及びディコーディングの心理学的側面
前節では、空間図形領域で使用されている図を、図法の性質から捉えたが、その 図を通して知識を獲得し、問題解決の道具として使っていくのは生徒である。した がって、生徒の3D←→2Dのコーディング、ディコーディングにおける心理学的 側面を研究し、生徒の認知面から使用されている図の特性を考察することが必要で あると考える。
ここで、コーディングとは、3Dの幾何対象を2Dに表現することである。また、
ディコーディングとは、2Dに表現された対象を3Dの立体図形としてよみとるこ
とである。
(1) コーディングでの心理学的側面
コーディングの際、図のかき方には次の2通りの方法が考えられる。見えるまま にかく方法と、幾何的性質を保持するようにかく方法である。見えるままにかくと いくうかの幾何的性質が奪われ、幾何的性質を保存したものは、見た目からはなれ ていく。それでは、生徒はコーディングにおいて、どのような幾何的性質を残しな がら、どのような図をかくのであろう。
橋本、重松[40][41]らは「物理空間のモデル化における図的表現の役割一スケル トン四角錐の表示」の研究において、立体模型を紙にかいて伝達するという場面で、
立体模型が持つ幾何的な性質、関係をどのような表示手段(「見取図」、投影図、
言葉、記号など)を使って2次元に表示するのか、また、表示に際して「知ってい ること」と「見たこと」をどのように子どもたちは調整するのかということを調査 している。彼らは、小学校1年から高等学校1年までの児童・生徒を対象に、彼ら にとってある程度なじみがあり、しかも単純すきることのない四角錐を表示させた。
使用した四角錐は「スケルトン四角錐」といいビニール性のストローとモールでつ くられていた(図2−10参照)。
調査では次のような手続きがとられた。生徒に一つのスケルトン四角錐が与えら れ、彼らは、それを手にとっていろいろと観察することが許された。教師は、より 大きなスケルトン四角錐で辺の数や面の形について説明した。説明の後、教師用の
四角錐は生徒たちの目のふれぬ所へ移され、「東京に住んでいるあなたの友達に、
あなたが何をかいたかわかるようにかきなさい」という指示が生徒に出された。一 つのグループは四角錐を見ないで、もう一つのグループは自分の四角錐を持ってか
いた。
【図2−10】
全体的な結果として、児童・生徒の平面上での立体表示パターンは、学年があが るにつれて、平面的表示→不十分な立体的表示→見取図→多様な見取図、と変化す ることが見られた(図2−11を参照)。
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小1 小3
小5 小6 中1 中2
【図2−11】
一38一
この変化の中には、未熟な表現法で見たままにかく段階から、次第に幾何的な性 質を図の中にとり入れ、図としてのバランスを考えながらかくようになっていく変 化も現れている。そのことは、調査で報告されている次のような生徒の行動記録か
ら、うかがうことができる。
くく小学校1、2年の児童は見えるまま、感じるままに素直にかくのと異な り、3年になると、まず模型をしっかりと研究しようとする児童が多く なり、いろいろなことに気づきはじめる。そしてかかれた図の中に×印 が現れかき直された図が多くなる。…・このような試行錯誤は観察の確 立とかく技術との成長に伴って小5くらいで少なくなる〉〉([40],P.72)
この変化の中で、児童・生徒はどのような図をかくようになっていくのだろう。
そして、どのような図法にちかづいていくのだろうか。子どもたちがかいた四角錐 の図の底面に注目してみるのも一方策と考える。つまり、平行投影法にちかづけば 底面はひし形や平行四辺形にちかづいていくだろうし、透視図法にちかづくなら底 面は台形などにちかづいていくと考えられる。 (図2−12を参照)。
合
正方形 長方形