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A一

第2節 問題解決過程の

  内的表現を視点と した分析

 本節では、空間図形領域の問題解決過程において、適切な内的表現の生成を阻害 する要因を探っていく。

 そのために、次のように論を進める。

1

2 3

問題解決過程を捉える枠組みと内的表現について示す。

内的表現の生成過程と、適切な内的表現の生成を阻害する要因を探る。

探索過程の流れと内的表現のチェヅクについて考察する。

■.問題解決と内的表現

 一般的に、問題解決過程は理解と探索という2っの下位過程によって次の図のよ

うに表せる[52]。

問題

一)一・ 理解過程 ÷

匝i]一[壷]

【図3−19】

 理解過程とは問題に対する内的表現を生成する過程であり、探索過程とは理解過 程の産物をもとに、問題の解を見つけたり計算したりする過程である[53]。

 問題解決において、問題が与えられるとその解釈という理解過程が始まり、問題 文などから与えられる情報や既有の知識を利用しながら、その問題の意味する状況 を構成する。ここで構成された内容を内的表現とよぶ。

       一74一

 問題から与えられる情報が少なかったり、その意味する状況が単純な場合は、そ の問題状況に対する内的表現を、一度に念頭で構成することが可能である。ところ が、問題で与えられる情報が多かったり、その意味する状況が複雑である場合、一 度に内的表現を構成することは難しい。そのような場合、我々は略図をかいたり要 点を書き出すなどして、その問題の意味する状況を捉えようとする。こうした略図 や書き出しなどを外的表現という。

2.内的表現の生成について

(1)内的表現の生成方法

 空間図形領域の問題解決過程においては、問題文や見取図などが示す情報や既有 の知識を利用しながら、解決者は問題の3次元的状況に対する内的表現を生成する。

 内的表現の生成方法として、次の2つが考えられる。

①三三の知識の想起による生成

②新たな内的表現の構成による生成

以下で、この2つについてみていく。

 ①既有の知識の想起による生成

 なじみ深い立体図形については、以前の授業や問題解決で用いた内的表現が、記 憶内に知識として保持ざれていると思われる。その既有の知識が、問題の情報をも

とにして、また、見取図と個人的標準図との照合により、記憶内から想起される。

 ②新たな内的表現の構成による生成

 未経験の図形や3次元的状況を含む問題では、記憶からの想起によって、内的表 現を生成することはできない。そのような場合は、問題の条件や既有の知識から内 的表現を即時的に構成する必要が生ずる。

 たとえば、次のような問題[54]を考えてみよう。

問題1

6cm i一一一一一一

10cm

    左のような容器に、いっぱいに入ってい    る水をいろいろな方向に傾けて、ちょうど    300cm3、及び100c皿3が残るようにしたい。

10 cm

   どのように傾ければよいか。

 この問題を解くためには、体積が半分になっている状態の内的表現を構成しなけ ればならない。構成される内的表現としては、図3−20のようなものが考えられ

る。

【図3−20】

 ここで、直方体の内的表現は記憶内の知識を想起することで得られるが、直方体 を半分に分ける面の内的表現は、この問題解決場面において即時的に構成される必

要がある。

一76一

(2)適切な内的表現の生成を阻害する要因

【①想起に関する要因】

(ア)基本的な立体図形に対して、想起される内的表現が固定的である。

 基本的な立体図形に対して想起される内的表現は、固定的で物理的に安定した状 態のものが多い。

 たとえば、正四面体としては、図3−21aのような内的表現が想起され易く、

図3−21bのような内的表現は想起されにくい。

N Ns

s

       a       b       【図3−21】

 立体図形が置かれる向きが異なると、その立体図形の持つ幾何的性質の内、どの 性質が強調されるかが異なる。そのため、問題によっては、ある1つの図形に対し て、ある方向からの内的表現が想起され易く別の方向からの内的表現が想起されに

くいという固定性のために、続く探索過程がむずかしくなる場合がある。この場合 の例として、次のような問題[55]を考えてみよう。

問題2  一辺の長さがしの正四面体と、正四角錐がある。

    この2つの立体を2つの合同な面でくっつけたら     できあがった立体は何面体になるか。

 この問題で、図3−22aのような内的表現を生成することができれば、この問 題は容易に解ける。そのためには、正四面体の内的表現として、図3−21bのよう

な内的表現が想起されることが必要である。しかしながら、生徒は、正四面体に対

して図3−21bのような内的表現を想起することはほとんどなく、図3−21a

のような内的表現を想起することが多い。図3−21aのような内的表現が想起さ れると、それをもとに、図3−22bのような内的表現が生成され易く、その内的 表現を用いると、4つの面と5つの面のうち2つが重なって、「面は7つ」という

誤答が導かれ易い。

  ノき×二〜

 、、、

きく

NN

!:L;,・;t

.弓印r「■■

a

b

【図3−22】

(イ)類似しているが不適切な内的表現を想起してしまう。

 3次元的な内的表現の即時的な構成は、生徒にかなりの認知的負荷を与える。そ のため、生徒は、新たな内的表現を構成しなければならない場合に記憶内に保持し ている類似表現を想起し、それを本来生成させなければならなかった内的表現の代 わりに用いてしまう、ということが考えられる。

 たとえば、次のような問題[56]を考えてみよう。

問題3  右の図の立方体を3点P,Q, R を通る平面で切ると、切り口はどんな 図形になりますか。切り口を右の見取 図にかき入れて答えなさい。

P

L一一..

R Q

一78一

 この問題では、図3−23aのように3点をそのまま結び、切断面を三角形とし てしまう誤答が多い。これは、切断の内的表現を構成しなければならない場面なの に、類似した状況である図3−23bの内的表現を想起したためであると考えられ

る。

P

t

R

Q

7

1

 

,し一 ρ

a b

【図3−23】

(ウ)想起すべき知識をもっていない。

 空間図形領域の問題解決では、空間図形の見 え方に関する過去の経験で得られた知識が想起 され、それをもとに、問題の3次元的状況に対 する内的表現が生成されることがある。

 たとえば、図3−24aに示す円錐の切断を 考える際、 「竹の子を切ったときの切り口」を 想起する生徒がいる。また、図3−24bに示 すような円柱を斜めに切ってできる立体図形の 側面の展開図を考える際、 「洋服の袖を作ると

きの型紙」を想起して、それを内的表現として 適用する生徒がいる。

 これとは逆に、それらの経験がないために、

想起すべき知識が記憶されておらず、適切な内 的表現を生成できないことが考えられる。

【図3−24a】

【図3−24b】

【②構成に関する要因】

(ア)与えられた見取図に惑わされる。

 見取図では、3次元的状況のすべてを正確に表すことはできない。たとえば、奥 行き方向の辺の長さや、角の大きさは正確に表されない。また、立体の内部を通る 線や、表面を通る線を表す明確なルールも存在しないし、異なる視座からの見取図 では、3次元的状況の表され方も異なる。

 このような見取図の限界を考慮しない生徒は、2次元図である見取図の上に見え る幾何的性質や関係を、3次元へ持ち込む可能性があろう。

 たとえば、次のような問題を考えてみよう。

問題4

   一辺6c皿の立方体を頂点E,B, G

  を通る平面で切るとき、△EBGの面

  積を求めよ。

A D

B

還.一

E F

C

G

 上の見取図では、△EBGは、辺の長さや角の大きさが正確に表されておらず、

正三角形には見えない。このような見取図の上に見える幾何的性質を3次元へ持ち 込んでしまうことが、「立方体の中にできる三角形BEGは正三角形である」とい

うことがわかる適切な内的表現の生成を阻害する1つの要因と考えられる。

(イ)問題文中の「幾何的専門用語」の意味がわからない。

 「2つの辺に平行な平面」 「平面に垂直な直線」などの位置関係を表す用語や、

「2点を結ぶ」「平面で切断する」などの操作を表す用語の意味がわからず、問題 の示す空間的状況を理解することができないことが考えられる。

 たとえば、次のような聞題[57]を考えてみよう。

一80一

問題5

 右の図のような、縦6c皿、横10 em 高さ4 cmの直方体で、2点P,Qを結ぶ 線分の長さは何cmですか。

 ただし、AP=2c皿、 CQ=3c皿である とします。

A P

t

i

ノー一・一一の一一一一 一

1

t

Q c

 この問題では、図3−25のような不適切な内的表現を生成してしまう「ことが考 えられる。これは問題文中の「2点P,Qを結ぶ」という表現の意味を「直方体の 表面上で2点P,Qを結ぶ」と解釈したために、生成された内的表現であると考え

られる。

AP

L_一_____

t

t t

(a) Q C

【図3−25】

3.探索過程の流れと内的表現のチェック

 前節では、適切な内的表現の生成を阻害すると思われるいくつかの要因を指摘し

た。

 ここでは、内的表現が問題の解決において有効であるのか否かのチェヅクの必要 性が生ずる場面を、問題5の理解過程を例に見ていく。

 問題5の理解過程において、次のような2種類の内的表現が生成されたとして、

それぞれの探索の流れを考察してみよう。

 (a)直方体の内部で2点P,Qを結んだ内的表現  (b)直方体の表面上で2点P,Qを結んだ内的表現

図3−26は、内的表現(a)(b)をもとにして、どのように探索が進んで行く のかを示したものである。

(a)〆問題\(b)

AP

夢rq鴫一鵜曽一顧

tt

,v一 QL CXS

  P al

A P

み一一rx一。一一

  P a2A

 た闘■一一  ノ

    Q

探索ス1・1フ

tK−XX一一: