■技法の特徴
NM法は、1970年頃、創造工学研究所所長の中山正和が考案した類比発想法である。 rN M法」とは、中山正和の頭文字をとってつけられた〈43>。
中山は自らも数多くの特許をもっている創造工学の理論家であり、実践家である。工学禅 なども創案し、筆者も数多くの教示を受けている。
NM法は、中山が「仮説設定」によって作成したものである。そのことを筆者は中山の講 義でこう紹介された。「NM法はマッカロ・ビッツの『形式ニューロンモデル』を基にしてい
る。まず『脳のはたらきを機能的にコンピュータにおきかえたらどういうことになるか?』
という疑問からHBC(ヒューマン・ブレイン・コンピュータ)を考えた。そして、これか ら直観と分析の関係を仮説として導き出したものである」
中山はこの技法を考える上でシネクティクスをヒントにしているが、ステップの完成度は NM法のほうが高いといえる。これは、現代能力開発研究所所長の高橋浩がNM−T型とし て、この技法をわかりやすく整理したことにも負っている。
基本的にNM法は、発想のために用いる方法であり、問題点の洗い出しに向くものではな い。したがって、解決策の作成に有効な技法である。
■技法の展開
NM法は、次のように進められる。
(1)課題を設定する
(2)キーワードを決める(KW−Key Word)
(3)類比を発想する(QA−Question Analogy)
(4)QAの背景を探る(QB−Question Background)
(5)アイデアを発想する(QC−Question Conception)
(6)解決案にまとめる
【例:灰皿】
灰皿の発想を例にとって説明する。
〔課題〕課題はなるべく具体的で、切実なものとする。ここでは、嫌煙権がうるさいオフ ィスでの「目立たない灰皿」をテーマとする。
(図表17) (目立たない灰皿)NM法による発想
〈解決策〉
OL向き 鉛筆立て型 隠し灰皿
「煙筆箱」
tt−(蘂、
★を用いて発想 をまとめた
壁が回転して 中に人が入る
(KW)
(QA)
短い鉛筆は中に入 ってみえなくなる
丸い筒の形をして いる
回転部分が壁で (QB)
扉と見えない
アルミ製の鉛筆立 てを灰皿に使う
鉛筆立てと兼用
★ の灰皿
縦長の灰皿に したらよい
床置きの長い筒型灰 皿(すく火が消Zる)
灰皿の上にブタを して見えなくする
一見灰皿にみえ
ない工夫をする (QC)
回転して隠れる仕 他の品と組合せテ 組みを考える ザインを統一する
〔KW〕次はキーワードの決定である。課題の本質を表すもので、物であれば基本的には 機能となる。この場合、本質的な機能ばかりでなく、付加的な、あるいは希望する機能を 入れる必要がある。灰皿であれば「捨てる」「置く」「貯める」「消す」などがあげられる。
(例では「隠す」と「貯める」とした。なお、例ではKWは2つだが、実際はもっと多く
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のKWを用いる)。
〔QA〕類比の発想が次の手川頁である。キーワードから「たとえば…のように」という問 いかけをする。思いつくまま、類比になる実例を探していく。テーマと必ずしも関係のな いもので、具体的なものを探す。なお、自然界の例は、よいアイデアを生むもとになるこ とがよくある(灰皿の例では「長い鉛筆たて」や「貯金箱」などが出された。もちろん、
QAは1KWに2つ以上あってもいっこうにかまわない)。
〔QB〕さて次は、各QAごとに「そこでは何が起きているか」という問いかけをする。
QAそれぞれに、その背景はどうなっているのか雑談などしながら探す(例では、「忍者 屋敷」では「壁が回転して中に人が入る」、「鉛筆たて」では「鉛筆の他、いろいろ入る」
となった。QBも各QAごとにいくつあってもかまわない)。
〔QC〕ここでは、 QBに出ているイメージが「課題に何かヒントを与えていないか」と 考える。つまり、頭の中でヒントとなるQBのイメージを広げ、強引に課題と結びつけて アイデアを考えてみる(例では「壁が回転して中に人が入る」から「灰皿の上にブタをし て…」「回転して隠れる仕組み…」といった2つのアイデアが出ている)。
〔解決案〕最後は、多角度から大量に出したQCを眺め渡し、課題の解決案とならないか を考えるステップである。各ステップごとにすべてカードを用いるが、最終的に解決案を 考えるときは、それらのカードをいろいろ動かしまとめてみて、具体策を考える。(例で は以下の3つのQC「鉛筆たてと兼用の灰皿」と「回転して隠れる仕組み…」「下のブタ が回転して中身を出す」を用い、「煙筆箱」という製品アイデアにまとめた)。
■技法の応用
NM法は、発明のための技法として誕生した。しかし、中山は、 NM法を使って問題を解 くようなことはしない方がいい、と力説する。そして、NM法はこれによって問題を解くと いうよりも、それによって右脳優先で考えるようにするためのマニュアルと考えてほしい。
問題に当たってNM法の手順を使うのではなくて、 NM法の実習をすれば自動的にアイデア が出るようなアタマができるのだと考えるのである、と主張する。
確かに、NM法は手順が明確で大変使いやすい技法だが、慣れてしまえばいちいちその手 順どおりにやらなくても、自然にそんな頭の使い方になっていることに驚かされる。
NM法は前述のように発明のための手法として考えられたものだが、ソフト企画を考える 際にも用いることができる。手順はまったく同じで、テーマを「ホームパーティ」の企画の ような例にすれば、QAを「お祭り」や「盛り場」として発想していけばよい。
ともかくNM法は、類比発想法の中ではステップが明確で大変使いやすいものといえる。