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先行研究の問題点

第1章  創造技法の有効性研究の必要性

第4節 先行研究の問題点

1.先行研究の分野別問題点

 ここでは、先行研究の問題点を見てみよう。これらには、ブレインストーミングの①基本 ルール、②発想時間、③メンバー、④発想技法関連の問題が考えられる。まず、これら4つ の問題点を考えてみよう。

 問題点1「基本ルール」=:従来の研究では、ブレインストーミングの基本ルールを前提と して実験を行っている。しかしこの基本ルールこそ、ブレインストーミングの原点である。

したがって、このルールの研究は不可欠といえる。

 問題点2「発想時間」=従来の研究では、発想時間はほとんどが12分間である。集団発想 時間としては短いといえる。

 問題点3「メンバー」=従来の研究では、集団発想のメンバーはランダムにその場で編成 される。これは、集団発想に不利である。

 問題点4「発想技法」=従来のブレインストーミングという技法はそれ自体、集団発想の 方が個人発想より不利になる要素を持っている。

2.問題点1「基本ルール」の検討

 従来のブレインストーミング研究は、集団思考の生産性の研究がその中心をなしていた。

しかし、ブレインストーミングはまず発想法であり、そもそも発想法としてのブレインスト ーミングの生産性を問うのが、基本にあるべきだと思う。

 その意味からいって、ブレインストーミングの基本精神である4つの基本ルール「判断延 期」「自由奔放」「質より量」「結合改善」ははたして有効性があるのか、という観点から、ま ずはブレインストーミングの生産性の検討を行うべきだと考える。

 そもそもブレインストーミングは集団発想法として誕生したものであるが、この基本ルー ルは個人発想にも大変有効と考えられる。従来の研究は、この基本ルールの存在を当然のも のとした上でブレインストーミング研究を実施してきた。

 しかし、ブレインストーミングはこの基本ルールが最大の特性である。したがって、この ブレインストーミング精神を検討せずに、ブレインストーミングの生産性を問うのは問題が あると考える。

3.問題点2「発想時間」の検討

 多くの従来の研究による発想時間が12分というのは、集団発想にとってあまりにも短い。

集団活動が機能するには、まずメンバー相互がなじみ、チームワークがとれた状態になる必

要がある。

 相互になじむには、筆者の経験では20分くらいは少なくとも必要だと思う。ブレインス トーミングの最初の段階は、メンバー相互がいわば相手を探り合う状態からスタートする。

すぐに頭の回転率100パv−一・セントというわけにはいかない。個人発想とはここが大きく異な る。そして、集団発想は、メンバー相互の刺激により徐々に発想力が高まっていく。

 課題にもよるが、12分ではあまりにも短いと言わざるをえない。

 また集団では、他者が発言したら発言できない。この生産妨害は発想時間が短いほど、個 人より不利である。発想の初期は、後半よりかなりアイデアが出る時間帯だからである。

4.問題点3「メンバー」の検討

 問題点2でもふれたが、集団活動が機能するためには、メンバー相互の親和性向ヒが欠か せない。相手がどんな人間なのかがわからずに、発想を表明するという自己開示はできない。

 これは前述の、集団の凝集性(メンバー同士の友好性やまとまり)が高いほど、生産性も 高い、というCohenら<75>の研究結果にあるとおりである。

 また集団メンバーには、経験者がいることを知らされた場合(誰かは知らされない)、経験 者の人数が増えるほどアイデアの数は減少するということを、Callaros&Anderson<76>の

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研究が証明している。メンバーをその場でランダムに選抜する方式では、互いに相手に対す る不安感があり、集団発想の方が不利と言わざるをえない。

5.問題点4「発想技法」の検討

 従来のブレインストーミング、すなわち、ほとんどの研究で用いられているオズボーン式 のブレインストーミングには、以下のような欠点がある。

①時間共有の欠点

   従来のブレインストーミングでは、メンバーが発言しているとき、他のメンバーは発   言したくても発言できない。これが第1の時間共有の欠点である。

   また、発言者のコミュニケーション能力の問題もある。長々と発言すると、他メンバ   ーの発言時間を大幅に制限する。これが第2の時間共有の欠点になる。これは、Diehl&

  Stroebe<79>が取り上げている生産妨害の一部をなす。

②思考妨害の欠点

   従来のブレインストーミング研究では、各メンバーが自分の発想を発言する方式で進   めている。他人の発言は、確かに発想メンバーの次の発想の刺激にはなる。しかし、声   を出して発言することで、他メンバーの発想を妨げることもありうる。

③発言集中の欠点

   従来のプレインストーミングでは、誰が何回発言しようがまったく自由なため、積極   的な人、地位の高い人、専門家などに発言が独占される危険性がある。他のメンバーが   たとえ優秀でも、つい発言を控えてしまう。地位の高い人、専門家などに関してはDiehl   and Stroebe<79>で取り上げられた評価懸念の例といえる。

④発言歪曲の欠点

   従来のブレインストーミングでは、司会者ないし書記がメンバーの発言を模造紙など   に記入する方式をとる。しかしこれでは、発想者本人の意図内容とは違って、アイデア   が歪曲される可能性がある。また、図などは記入が困難である。これは、Dieh】&Stroebe   が指摘した「無賃乗車」という原因にも係わる。自分の発言を他人が記入し、自分の意   図と異なれば、自分の貢献を無視されたと受け止める。また、他人の字による記録は無   賃乗車意識を促進する。

   もっとも、先行研究ではメンバーの発言はテープでとる方式をとっているので、集団   発想の方が個人より記録に時間をとられて不利になるということはない。

6.先行研究の問題点まとめ

以上、先行研究をまとめると、次のような点が主要問題点といえる。

①ブレインストーミングの基本ルールは研究対象にされてこなかった。しかし、ブレイン

  ストーミングにとって基本ルールの研究は、最も重要だと思う。

  ②発想時間が12分では集団の相互作用が生まれないうちに終わってしまうので、集団    発想は個人発想より不利といえる。

  ③メンバーをランダムに選ぶ方式のチーム編成は、集団に不利である。

  ④通常のプレインストーミングは生産妨害などにより、方法そのものが、集団に有利な    発想法とはいえない。

 ブレインストーミングの有効性を研究するには、これらの先行研究の問題点をしっかり把 握したうえで、進めるべきだと考える。

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