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発散技法 第1節自由連想法

1.プレインストーミング(BS)法

■技法の特徴

 発散技法の原点である、ブレインストーミングの誕生のいきさつから述べよう。

 ブレインストーミングは、アメリカの広告会社BBDO社(Battel1, Barton, Durstine and Osborn社)の社長オズボーン(1888〜1966)が考案したものである(31)。彼は、このBB DO社の創立者の一人であり、当初、広告制作の責任者をしていた。当時、広告制作は個人 作業が当然となっていた。しかし彼は、デザイナーがコピー(広告文案)の発想をしても良 いのではないか、と考えた。そこで、デザイナー、コピーライター、営業担当者が縄張り意 識をなくして自由に広告の発想をするための基本ルールと集団技法はどうあるべきか考えた。

そして試行錯誤の後、1939年に自社の従業員とともにブレインストーミングを発案し、実用

化した。

 オズボーンはその後、多くの創造性開発に関する文章をニューヨークタイムズ紙等に発表 した。そして、現在でもアメリカで最も大きな創造性の財団、創造教育財団(Creative Education Foundation)を設立した。

(1)ブレインストーミングの名前の由来

 ブレインストーミングは創造技法の中では、発散技法の中の自由連想法に属する。そして、

発散技法はそのほとんどが、このブレインストーミングから誕生した。

 開発者のオズボーンは、ブレインストーミングという名が誕生したいきさつを次のように 述べている〈31>。「始めの頃の参加者たちが、この仕事をブレインストーム会議と名づけた。

この名前はまさに適切だった。というのは、この場合ブレインストームということは、独創 的な問題に突撃するために頭を使うことである。つまり、1人1人が勇敢に同じ目的に突進 する特攻隊のように突撃するのである」

 オズボーンは、集団で発想する場合、その会議が討議のための会議になってしまうとアイ デアが出にくいことを見つけた。そこで、発想のときは、他人や自分のアイデアの価値判断 をせず、とにかくどんどん出していく「判断延期」というルールを考え、さらにそのルール を中心にして基本ルールを考えたのである。

 ブレインストームという言葉は、前述のように、本来「精神病の発作」の意味を持ってお り、ブレインストーミングの参加者は、突進する特攻隊のようなハイテンションの状態でブ レインストーミングに参加したものと思われる。そのブレイン「脳」からストーム「嵐」の ように発想を出す会議風景が、名前の由来となったのである。

(2)ブレインストーミングの4つの基本ルール

 ブレインストーミングを効果的に実践する上で、忘れてならない4つの基本ルールがある。

この4つは、発散技法そのものの基本的な特徴をよく表しているといえるだろう〈30>。

 ブレインストーミングの基本ルールとは、次の4つである。

  ①判断延期(Deferment 一 of−−Judgment)

  ②自由奔放(Free−Wheeling)

  ③質より量(Quantity yield quality)

  ④結合改善(Combination al、d Improvement)

 第1のルールは「判断延期」。発散技法においては、参加者はアイデアを出すことだけに専 念して、判断はあとですればよいというルールである。自分が出したアイデアに他人から疑 問や反論が出されると、本人は自説を守ろうとして、個々のアイデアに固執してしまい、新 しい発想を生み出せなくなってしまうところからルール化されたものである。

 良い悪いの批判はもちろんのこと、「これをやって失敗したことがある」といった意見や、

「このアイデアなら前に出ている」といったようなことすら言ってはいけない。批判される ことがないからこそ、想像力が活気づき、脳に嵐を巻き起こすことができるわけである。

 第2のルールは「自由奔放」。第1の判断延期というのは、あれこれ批判することを止める、

ということである。そうすれば、誰でも自由に、思いつくままものが言える。すると参加者 の発言は活性化され、何を言ってもよい、バカなことを言っても許されるという自由な雰囲 気が生まれてくる。それが、次のルールの「自由奔放」となる。

 ブレインストーミングでは、リーダーはこうした自由な雰囲気の中で、参加者の「こんな ことを言ったら笑われてしまう」という自己規制をはずしてしまい、より多くのアイデアが 出るように努めることが大切である。

 3つ目のルールは「質より量」。とにかくどんなアイデアにも、批判、評価を差しはさむこ となく、出せるだけのアイデアを大量に出し尽くすことが重要である。選択・評価は後で行 えばよい。「下手な鉄砲、数撃ちゃ当たる」の気持ちで、どんどん量を出せばそれだけ良質の ものも出てくる、という考え方が基本になっている。

 そして4つ目のルールは「結合改善」。これは、誰かが出したアイデアに別の誰かが便乗し て、これに工夫を加え、よりおもしろいアイデアにしていくことである。出されたアイデア はどれも全員のものだと考えて、アイデアの質を高めていくことは、ブレインストーミング が本来、集団技法であることをよく表している。

■技法の展開

 ここでは、ブレインストーミングを進める上での標準的な注意点と、具体的な進め方をあ

げる。

(1)テーマは具体的なものを選ぶ

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 ブレインストーミングがうまくいかないときの原因で最も多いのは、テーマ選びの失敗で ある。テーマは具体的で・わかりやすいものを設定することが大切である。

 筆者の企業教育の体験であるが、ある建設会社で「現場の事故を少なくするには」という テーマでブレインストーミングを行ったところ、ほとんどアイデアが出なかった。そのため

「ヘルメットを全員にかぶらせるには」とテーマを設定し直したら、驚くほど大量のアイデ ァが出てきたことがある。

(2)全員の顔が見えるように机と椅子を配置する

 落ちっけるシンプルな場所を選び、机は楕円形か四角形にし、全員の顔が見渡せるように 椅子を配置する。

(3)模造紙またはホワイトボードなどを用意する

 黒板に模造紙を貼るかホワイトボードを用意し、出てきたアイデアをフェルトペンで書き 取る。記録を縮小コピーできる電子黒板を使うと非常に便利である。

(4)乗せ上手な人をリーダー(進行役)にする

 進行役を務めるリーダーは、4つのルールをしっかり守り、活発に意見が出るような快適 な雰囲気をつくること。そして、あくまで脇役に徹することが大事である。

 また、全員をうまく乗せるとともに、流れがテーマの方向性からはずれないようにリード していけるパーソナリティが求められる。

(5)メンバーは異なった専門家で構成する

 オズボーンは参加者の適切な数を10名程度としているが、筆者の実感では6〜8名程度 が最適だと思う。メンバー構成は、テーマに関する専門家は半数以下に抑え、他はさまざま な分野の専門家を集めることが望ましい。

 それから、できるだけ同じ階層に属する人が揃うように心がけること。少なくとも権威を 振りかざすようなメンバーは排除したほうがよい。

(6)発言のすべてを記録し、キーワードで要約する

 記録用紙には「テーマ」と「アイデア番号」を記入しておき、リーダーまたは書記が参加 者の発言をすべて書き込む。

 発言を記入するには、上手に要約することが不可欠である。キーワードをうまく使い、具 体的な記述を心がける。たとえば、「朝食前に一日の方針を決め、電車の中で具体策を考える」

という発言を「事前準備」などと要約してはいけない。「朝食前に方針を決め、電車内で具体 化する」くらいにまとめたい。

(7)発想時間は1時間程度、それ以上なら休憩する

 発想会議の時間は1時間程度が適当である。テーマにもよるが、1時間あれば最低100件 程度の案は出る。長引くときは、途中で数分の休憩をとると効果的である。

(8)ブレインストーミングの結果評価は一日くらい寝かせてから行う

 出たアイデアは、「独自性」と「可能性」をポイントに、一日くらいおいてから行う・ここ で批評・批判は解禁である。この徹底評価の過程で数々のアイデアが結合して・より高いレ ベルのアイデアが生まれてくることが多い。

 以上が、ブレインストーミングの概要である。