第3章 発想法の個人と集団の比較研究(研究2)
第1節 本研究で用いるブレインライティング法
(3)5分たったら、2列目を記入する。
1列目のアイデアをふくらませ、発展させたものを考えて記入する。
(4)これを繰り返して、考えを深めていく。
3.ブレインライティング法の利点
ブレインライティング法の利点については、第II部第1章の第1節、3(p.45)を参照し てほしい。
第2節 本研究の目的と研究計画
第皿部第1章からわかるように、従来の研究ではプレインストーミングの集団技法として の有効性は確かめられていない。
しかし、産業界での使用の現実を見ると、この点については疑問が残る。そこで本研究で は先行研究を踏襲しつつ、取り上げる発想技法も現在の産業界の実態に合わせて研究を行う
こととした。
1.本研究の目的
『プレインストーミング的発想法の生産性は個人と集団とではどちらが高いのか』
2.本研究の特色
本研究は、先行研究とは以下のような点で異なる。
(1)発想ルールはブレインストーミングの4ルール以外に、多角発想のルールを加えた。
(2)通常のブレインストーミングは用いず、改良技法のブレインライティング法を用いた。
(3)先行研究の発想時間は12分が多かったが、本研究の本実験では18分とした。
3.本研究の計画
本研究では2つの検討を行う。
(1)本実験=個人と集団の発想生産性を量的に比較することを目的とした。そのため、
個人発想グループと集団発想グループとに分け、比較した。
(2)補助実験=個人と集団の発想生産性の意識上の比較を目的とした。そこで同一対象に 集団発想と個人発想の両方を体験させ、アンケートにより、その意識の違いを調べた。
第3節 本実験「個人と集団の発想生産性の量的比較」
1.本実験の目的
本実験の目的は、個人と集団の発想生産性を量的に比較することである。そのため、対象 者を個人発想メンバーと集団発想メンバーとに分け、その発想生産性を量的に比較した。
2.本実験の方法
(1)被験者
①K大学の1年生 男子 128人 平均年齢19歳
この128人を個人発想メンバーと集団発想メンバーに2分する。
1)個人発想メンバー 64人 平均年齢 19.0歳(18〜21歳)
2)集団発想メンバー 64人 平均年齢 19.0歳(18〜21歳)
②K大学の1年生 女子 112人 平均年齢18.9歳
この112人を個人発想メンバーと集団発想メンバーに2分する。
1)個人発想メンバー 56人 平均年齢 18.8歳(18〜21歳)
2)集団発想メンバー 56人 平均年齢 19.0歳(18〜22歳)
(2)実施場所
大学教室、机の配置は講義式だが、対面も可能。
(3)手続き
実験は同教室で同時に行った。
①対象者を個人発想メンバーと集団発想メンバーとに分ける。
1)全メンバーをランダムに集団発想メンバーと個人発想メンバーとに分ける。
(手続き「女子の例」:全員を1〜28、1〜28と繰り返して各自に番号を告げる。
1から14までの同一番号4人ずつを1チームとして集団発想メンバーとする。
15から28の番号の者は個人発想メンバーとする)
2)集団発想メンバーは4人ずつで机を囲んで座り、個人メンバーはばらばらに座る。
②発想ルールの教示
この教示内容は、研究1と同じ。
③ブレインライティング法の進め方
この指示内容は以下のとおりである。なお、発想テーマは「ビールビンの使い道」と した。また発想時間はテーマがやさしいので1回3分とした。
【集団発想メンバーへの指示内容】
「これから、あるテーマに関してアイデア発想をしてもらいます。発想法はブレインライ ティング法です。プレインライティング法はこのようなシート〔といってテーマが記入さ
130
れていないブレインライティング・シート(資料4)を見せる〕に3分ずつでアイデアを 順番に記入していきます。まず、最初の3分で1番上の列にいくつでもアイデアを記入し
ます。
3分たったら、シートを左の人に渡してください。
次の3分は、2列目にアイデアを記入します。このとき、前の人が上の列に記入してあ るものや自分が前に書いたものと同一のものは記入しないでください。しかし、これらを 新たに発展させたり、出されたアイデア同士や自分の考えたものと結び付けて新しいもの にするのは大歓迎です。また3分たったら、シートを左の人に渡し、3列目にアイデアを 記入します。
このようにして、このシートの6列にアイデアを記入していってください。発想時間は 3分×6列で18分です。発想のときには、先ほど話した発想ルールをぜひ活用してくだ さい。時間は、3分経過したら、こちらからお知らせします」
【個人発想メンバーへの指示内容】
上述の集団発想メンバーへの指示内容の下線部分を変更した。
「次の3分は、シートの2列目にアイデアを記入します。このとき、上の列に記入された のと同一のものは記入しないでください。しかし、新たに発展させたり、上に出ているア イデアと新しい思いつきを結び付けることは大歓迎です。また3分たったら、3列目にア イデアを記入します」
④全員にテーマ記入済みのブレインライティング・シート(資料4)を裏返して配付する。
⑤開始の指示をする。
⑥3分経過ごとに下の列に進むよう指示を出す。
⑦18分で終了。シートを回収する。
⑧発想アンケート(資料5)を配付して記入させる。
⑨発想結果の評価と分析をする。
3.本実験の結果と考察
(1)発想結果の評価法(進め方は男女とも同じ)
すべての発想実験の結果を採点法1、採点法2、採点法3の順に集計する。
ここで、採点法1と採点法2は個人シートの採点で、採点法3は集団としてまとめてから の採点である。それぞれの採点法について、以下に述べる。
①採点法1(個人シートの採点)
記入されたすべての回答を数え、採点法1の全回答数として記入する。
②採点法2(個人シートの採点)
1)流暢性の採点法
a残った回答の中で、まったく同一の回答がある場合は1回答のみ残す。
b.テーマにそぐわない回答、これを不適切回答と名づける。
これがあれば、それらを除外した回答数を数えて流暢性得点とする。
(注)不適切回答とは、以下のようなものを指す。
(a)本来の使い道そのものの回答
(例:ビールを入れる。地ビールを入れる)
(b)使い道ではない回答
(例:飲みすぎて倒れる。眺めるなど)
(c)連想ゲーム、ストーリーにしているなどの回答 (例:ビンゴ・回る・酔う・倒れるなど)
研究1では、この不適切回答はほとんどなかった。それは発想時間が3分だけであり、テ ーマに沿った回答以外が出る余地はほとんどないからと考えられる。
ところが、研究2の発想時間は18分である。そのために、アイデアにつまったり、ちょ っと興味が他に向いたり、つい遊んだり、ということで不適切回答が増加したと思われる。
これらは、そもそも題意に沿わない回答なので、流暢性の得点に算入しないこととした。
そこで、全回答を丹念に調べ、不適切回答を除いて流暢性の得点をカウントした。
c残った回答の数を数え、流暢性得点とする。
2)柔軟性の採点法
a.流暢性の採点で残された回答を、各発想テーマごとの「発想評価表」で採点する。
b.各回答が、柔軟性のどの観点に入るかを決める。
(注)観点が2つ以上ある場合、回答記入済みの観点は避け、他観点にする。
c.回答が入った観点の数を数え、柔軟性得点とする。
(注)その他の回答は、各回答が観点が異なるか否かを判断し、いくつかの観点に 分かれたら、その観点数だけ柔軟性得点に加える。
3)独自性の採点法
a.独自性の採点尺度の決め方
研究1と同様、1%未満の回答を「独自性あり」とした。
b採点法2の1の流暢性の採点で残された回答をもとに、上記の独自性採点尺度で独 自性の回答を選抜する。
c.独自性の回答数を数え、独自性得点を出す。
③採点法3(集団採点)
1)採点法2の作業が終了したシートを採点に用いる。
2)個人発想メンバーのシートをランダムに4人ずつ括る。(名義集団)
3)集団発想メンバーのシートをチーム別に括る。(現実集団)
132
4)4人ずつに括られた4枚のシートを1チームとして採点する。
a流暢性の採点方法
4枚のすべての回答の中で、まったく同一の回答がある場合は1回答のみ残し、
残った回答の数を数え、流暢1生得点とする。
b.柔軟性の採点方法
流暢性の採点で残された回答をもとに、柔軟性の採点をする。
c.独自性の採点方法
流暢性の採点で残された回答をもとに、独自性の採点をする。
なお、採点法3に関しては、男女を合計した結果も出した。
(2)本実験の結果と考察
分析は集団か個人か、または名義集団か現実集団かを、独立変数にし、流暢性・柔軟性・
独自性の各変数を従属変数にして、1要因分散分析を行った。その結果、次のようなこと がわかった。
①採点法1の結果 (男女とも検討)
女子は全数集計(採点法1)では、個人メンバーの方が、集団メンバーより全回答
数が多い[F(1,110)]=7.43,P〈.01]。
一方、男子は有意差は認められなかった。
(図表36)
①男子採点法1全数集計
発想グルー1人1 2_A一答数一⊃個人集団1
駆⊇註撒警巴;は平均が個人メ〉,,一(または名_の方が
集団メンバー 64−[1621−1−25.301」, 1.8 集団メンバー(または現実集団)より高いもの
②女子採点法1全数集計
「 tt TL r t r
…発想グルー1人1 全回答数 …個人集団1 1 プ別 数 一一合言「「−9均一」の差 旦竺ンバー56−一一1435」25,旦..(一)**1 集団メンバー 56 1249 122.30 3.33
②採点法2の結果 (男女とも検討)
1)流暢性
女子は、個人メンバーの方が集団メンバーより流暢性が高い傾向が見られた
[F(1,110) =3.79,p<.1]。
男子は有意差はない。