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ドキュメント内 保健科学研究第1号 (ページ 115-121)

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図3 4群の得点合計と年齢の関係

つような,積極的で元気な人の集団であることが,農 作業を続ける意欲につながっているとも考えられる。

3 )身体活動状況について

 以上の対象者の運動習慣の有無と農業従事か無職か により,対象者を 4 群に分けたところ,農業のみ群(26 名)や運動のみ群(23名)がそれぞれ対象者の約 4 分 の 1 ずつを占めたのに比べて,運動・農業群は10名で 対象者の約10%であり, 4 群の中では最も人数が少な かった。その原因については明らかでないが,調査の 中で運動・スポーツの実施状況についての問いに「普 段農作業をして体を動かしているから(特に運動は 行っていない)」という意見が聞かれたことから,農 業従事者は日ごろから十分に活動をしていると感じて いたり,あるいは日々の農作業で忙しいため運動・ス ポーツを行う時間や体力の余裕がないこと等の理由が 推測される。他方,現在は無職で農作業のように体を 動かす仕事を日ごろ行っていない人では,健康のため に体を動かそうと意識してウォーキングや体操を行っ ているようである。そのため,農業従事者ではとりた てて何か運動・スポーツを行う人が少なく,運動・ス ポーツを行っている人では農業に従事している人が少 ない,ということで運動・農業群が少ないという結果 になったのではないかと考える。

2.新体力テストの結果について

 得点合計を全国平均値と比較した結果,今回の対象 者の方が低い得点を示したが,対象者は老人大学の受 講生であり,本研究の健康調査・体力測定への参加呼 びかけに応じるなど,地域の中でも活動への意欲や健 康への関心が比較的高い層であろうと考えられる。調 査を実施した会場へ徒歩または自転車等で集まった人 も少なからずみられた。しかしそのような元気な高齢 者であっても全国の同年代における得点合計平均値よ り 7 点も低い成績であったことは,予想外の結果で あった。

 運動テスト項目別の得点平均では,上体起こしと 6 分間歩行が 3 点台,10m 障害物歩行が 4 点台と低かっ たが,これらのテスト項目はそれぞれ筋力・筋持久 力,全身持久力,歩行能力の指標とみなされている18)

ことから,主に体幹や下肢の筋力や全身持久力,歩行 能力の低下が得点合計の低さに影響していることが推 測される。一方,長座体前屈は 6 点台,開眼片足立ち は 7 点台でやや高い得点であったことから,これらの テスト項目が表す体力要素である柔軟性やバランス機 能は,比較的保たれている人が多いということがわ

かった。

 青森県では大都市に比べると公共の交通機関の便が 悪い19)ために,外出時には自動車を利用することが 多く,都市部の高齢者に比べると日常生活においての 歩行量が少なくなりがちであると推測される。また豪 雪地帯の抱える問題として冬の積雪・凍結による道路 状況の悪さ20−22)が挙げられる。A町と同様の積雪寒 冷地帯における高齢者の外出や移動手段等に関する先 行研究では23,24),夏期よりも冬期のほうが,一日当た りの歩数や移動距離が少なくなること,外出や運動・

散歩等の時間が短く屋内での活動時間が多くなること 等が報告されている。おそらくA町においても,積雪 による路面状況の悪化により冬期間の外出が制限され 屋外での活動が少なくなりがちであろうと推測され る。これらのことが,都市部や非積雪地帯に住む高齢 者のデータも含まれる全国平均値に比べて 6 分間歩行 や 10m 障害物歩行の得点が低いことと関係があるの かもしれない。

3.運動及び農業従事と新体力テストの結果の関係に ついて

1 )運動テスト得点合計の群間比較

  4 群の得点合計を比較すると,運動のみ群が農業の み群と両方なし群に比べ有意に高かった。また,運動・

農業群は,農業のみ群と両方なし群に比べ有意差はな いが得点が高い傾向にあった。これらの結果より週 2 回以上の頻度で運動を行う習慣があり, 1 年以上継続 して行っていることは,体力水準を維持する効果があ るということが示唆される。運動・農業群が農業のみ 群及び両方なし群との間で有意差を示さなかったこと の理由の一つとしては,運動・農業群の対象者が10名 で人数が少なかったことが考えられる。

 農業従事が体力に及ぼす効果について検討すると,

農業のみ群は運動のみ群に比べて得点合計が有意に低 かった。この理由としては次のように考える。今回用 いた厚生労働省による運動習慣の定義は,「 1 日に30 分以上,週に 2 回以上の運動を,1 年以上継続して行っ ている」であり,主観的ではあるが運動量の時間や頻 度の基準が定められている。これに対して,農業従事 では農作業を行っている時間や頻度の基準を設定せ ず,個人によって負荷量にばらつきがある可能性があ る。また 1 日当たりの平均労働時間は約 7 時間であっ たが,同じ場所で同じ姿勢での作業継続や,休憩をは さみながら個人のペースで行えるなどの理由から,同 時間の運動を行った場合と同じ負荷量には達しない場 合もあり得る。そのため,運動を行った場合と比べて

120 原田,野田,木田,齋藤,石﨑,北宮,古川,西村,倉内,木立,北嶋,扇野,大津,赤池,牧野,對馬,畠山,石井,成田,今井,三田

身体活動量の低さや使用する身体機能の違いが,得 点の低さに反映されているのかもしれないと考えられ る。

 

2 )各運動テスト項目別得点の群間比較

 運動のみ群では農業のみ群に比べ握力,10m 障害 物歩行の得点が有意に高く,また両方なし群に比べ,

長座体前屈の得点が有意に高かった。これらの結果は,

運動習慣がある者の運動種目にウォーキングや散歩,

ストレッチを含む体操が多かったことから,筋力や歩 行能力などはウォーキングや体操を行い意識的に身体 を動かすことによって高めることができ,また体操を おこなっている効果が柔軟性の指標である長座体前屈 の得点に表れていると考えられる。体力向上への効果 を考えると,農業従事だけでは十分な運動量とならな い体力要素があることが示唆される。

 上体起こし,開眼片足立ち, 6 分間歩行では 4 群間 に有意な差は認められず,それぞれが表す体力要素で ある筋力・筋持久力,バランス,全身持久力は運動や 農作業の実施以外の要因による部分が大きい可能性が 考えられる。 

 

3 )年齢に対する運動テスト得点合計の群間比較   4 群の年齢と得点合計との回帰直線を比較すると,

対象者全体の得点合計の平均より高い水準にあるの が,運動習慣のある運動・農業群と運動のみ群であ り,低い水準にあるのが運動習慣の無い農業のみ群と 両方なし群であった。この結果より運動習慣があるこ とは高年齢においても,より高い体力水準を保つ要因 になることが示唆される。

 農業のみ群と両方なし群を比較すると,高年齢で農 業のみ群の得点合計が高い水準を示していた。この結 果より,農業従事は運動には及ばないながらも高齢に なっても体力水準を保つ要因になることが示唆され る。

 両方なし群は加齢に伴う得点低下が最も大きいこと から,普段運動をする習慣がなく農作業で体を動かす 機会もない人は体力の低下が著しいといえる。

4.身体活動と体力の関連について

 以上のことから運動習慣があること,および農業従 事は共に体力水準を維持・増進することの要因になっ ていることが示唆される。ただし,運動のみ群が農業 のみ群に比べ得点合計が有意に高かったことから,運 動習慣があることの方がより効果的に体力水準を高め ることが示唆される。

 厚生労働省発表の「健康づくりのための運動基準 2006」25)では「一般的に身体活動量が多い人の体力は 高いが,体力を高めるための運動強度には下限があり,

必ずしも総エネルギー消費量で定量化された身体活動 量と体力との相関は高くなく,特に日常生活における 低い強度の身体活動量が高い体力を保つことにつなが るとは限らない」としている。これは,個人の体力水 準に対して不十分な,運動強度の低い身体活動を長く 行っても体力への効果は高くないことを示している。

体力の維持・増進に最適な運動強度は相対的なもので あり個人の体力によって強度が異なることを留意する 必要もあるが,農業従事が運動習慣のあることに比べ 体力水準を維持・増進する効果が低い原因としては,

活動の強度に問題があるかもしれないこと,また体力 の要素として不足があるかもしれないということが考 えられる。以上の結果から,高齢者に対して運動習慣 を身につけてもらうことが,体力水準の維持・増進に 効果的であることが示唆される。

 藤原26)は介護予防リハビリテーションの目的を「生 活をいかに活発にするか」と考え,日常生活の中に活 発な活動を取り入れ介護予防につなげる事の重要性を 提唱している。作業療法士の専門技術は日常生活にあ ふれているさまざまな作業を活用して,介護予防や自 立を促すものである。高齢者に日常生活を活発に過ご してもらうように,作業療法士も介護予防事業として 高齢者の生活スタイルに対し積極的にアプローチする 必要がある。その際に日々の活動の中で不足している 体力要素を運動プログラムで補う努力も必要と思われ る。そして強化したい体力要素の目的にかなった種目,

適切な負荷量および実施頻度の運動処方はもちろんで あるが,運動習慣が生活の中に定着しやすいように,

覚えやすく実施しやすい運動内容,地域の特殊性や個 人の興味,関心などを考慮した運動プログラムを検討 してゆく必要があると考える。 

5.本研究の限界と今後の課題

 本研究では,限られた対象者数を 4 群に分けて統計 処理をしたため検定上の無理があったかもしれない。

今後は対象者数の人数を増やす等の対応をし,検定の 信頼性向上を図る必要があると考える。

 今回,身体活動を運動習慣と農業従事の有無に分け て調査したが,この項目のみで身体活動全てを総称し,

一般化することは困難である。よって今後の身体活動 状況の調査としては一日のスケジュールを詳細に記載 してもらう内容のアンケートを考える等,日常生活で の身体活動をより詳しく把握する手段を検討する必要

ドキュメント内 保健科学研究第1号 (ページ 115-121)