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− 1 年間の追跡調査から−

ドキュメント内 保健科学研究第1号 (ページ 71-78)

小山内 隆 生

*1

 加 藤 拓 彦

*1

 田 中   真

*1

和 田 一 丸

*1

(2010 年 9 月 30 日受付,2010 年 12 月 14 日受理)

要旨:精神障害に関する知識が,精神障害者に対するイメージに及ぼす影響について,弘前大 学医学部保健学科看護学専攻の2007年度入学の学生を対象に,精神障害に関する講義を受講す る前と後での精神障害に対するイメージについて調査した。精神障害者に対するイメージは 2007年度調査では,「複雑な」,「危険な」,「怖い」,「激しい」,「困難な」であり,2008年度調査 では「複雑な」,「危険な」,「困難な」であり,精神障害に関する講義を受講しても精神障害に 対する警戒感を示すイメージを有するものが多かった。精神医学を学習したことで,イメージ の対象疾患が統合失調症となるものが多く,具体的精神障害に関するイメージ形成がなされて いた。今後,専門科目や実習などによるさらなる精神障害に関する授業経験の影響について追 跡調査を行う必要性が示唆された。

キーワード:精神障害,イメージ,精神障害に関する知識

*1弘前大学大学院保健学研究科

  〒036-8564 青森県弘前市本町66-1

  E-mail:[email protected] はじめに

 1995年の精神保健及び精神障害者福祉に関する法律

(以下,精神保健福祉法と略す)の施行以来,精神科 病院の入院期間の短縮が進む1)とともに,精神障害 者の地域生活が盛んになりつつある2)。対人関係能力 や生活管理能力に障害を抱える精神障害者3)にとっ て,地域で生活することは多大な努力を必要とし,ス トレスの原因となることが考えられる。ストレスは再 発の原因4)となるため,ストレスのマネジメントが 重要となる。その方策としては,精神障害者自身の生 活技能の向上によるストレスの軽減と周囲の精神障害 に対する援助によるストレス軽減がある。精神障害者 にとって,周囲からの援助の有無は,地域生活の安定 性に影響を及ぼすと考えられる。

 周囲からの援助を得るためには,精神障害者と彼ら を取り巻く人々との間のコミュニケーションが必要不

可欠であるものの,精神障害者の生活障害としての対 人関係の能力の低さ3)や,周囲からの社会的偏見5)

などによって精神障害者と地域住民との円滑なコミュ ニケーションは難しい状況にある。この社会的偏見の 原因となるものに精神障害者に対する負のイメージが 考えられる。谷岡ら6)は一般の人が精神障害を意識 した時期に否定的イメージを持つことが多いと報告し ている。この精神障害者に対する負のイメージの要因 として,精神障害者に対する意識上のバリア7)や,

精神障害に対する理解不足が考えられる。著者らは,

精神障害に対する知識と精神障害者に対するイメージ について横断的研究を行い,精神障害に対する知識を 有するものは,それを有しないものに比べて精神障害 に対する負のイメージを有するものが少ないことを報 告した8)。しかし,前回の報告は横断的研究であり,

精神障害に対する知識を得ることでイメージがどのよ うに変化したのかを調査することの重要性が示唆され

ていた。そこで,今回は, 1 年間の追跡調査を行い授 業前と授業後でどのようにイメージが変化したかにつ いて報告する。

対象と方法

 研究の対象は,2007年度入学の学生のうち,卒業ま でのカリキュラムに精神障害に関する講義や実習があ り,H大学看護学専攻の本研究の趣旨に同意した学生 である。調査は2007年10月の第 1 週と2008年10月の第 1 週の 2 度実施した。表 1 に当該専攻の精神医学に関 する内容を含む講義の履修年次を示した。今回の調査 対象である2007年度入学生が2008年 9 月までに受講し た精神医学に関する内容を含む講義は, 1 年次後期の 地域保健学,薬理学と 2 年次前期の疾病論Ⅲ,セルフ ケア論,精神看護学概論である。

 2007年の調査では,回答者は72名であり,精神医学 に関する内容を含む講義を受けているものはいない。

2008年の調査では,回答者は62名であり,精神医学に 関する内容を含む講義である地域保健学,薬理学,疾 病論Ⅲ,セルフケア論,精神看護学概論についての講 義は終了しているが,精神科に関わる実習は始まって いない。調査内容は,精神障害に対するイメージと,

精神疾患で思い浮かぶ疾患名についてであった.

 精神障害に対するイメージについては,星越らの

「精神病」のイメージ調査票9)を用いた.調査項目は,

「暖かい−冷たい」,「単純な−複雑な」,「汚い−きれ いな」,「暗い−明るい」,「陰気な−陽気な」,「安全な

−危険な」,「悪い−良い」,「縁遠い−身近な」,「怖く ない−怖い」,「遅い−早い」,「活動的な−不活発な」,

「迷惑な−迷惑でない」,「役立つ−役立たない」,「激

しい−穏やか」,「弱い−強い」,「容易な−困難な」,「浅 い−深い」,「柔らかい−硬い」,「寂しい−賑やかな」,

「憎らしい−可愛らしい」の20項目の形容詞対である。

評定は「どちらでもない」を基準に左右両極に向かっ て「やや」,「かなり」,「非常に」の 7 段階に分けられ ている。データを処理するにあたり,『どちらでもない』

にマークしたものを中間イメージとし,それ以外は形 容詞対のうちのどちらかとした。精神疾患名について は,「思い浮かぶ精神疾患名」について記載してもらっ た。2007年と2008年の差異は独立性の検定(χ2乗検 定)を用い,危険率 5 %未満を有意差ありとした。

 なお対象者には研究目的を文書と口頭で説明し,プ ライバシーの保護,特に,本研究への協力の有無に よって成績評価に影響しないことを強調した。得られ たデータは研究目的以外には使用しないことも説明し た。質問紙への回答で同意と見なした。

結  果

 2007年度入学の看護学専攻の学生80中,2007年の調 査では,72票(90%)が回収され,全票が有効であっ た。2008年の調査では,62票(78%)が回収され,そ のうち61票(98%)が有効であった。

 表 2 に2007年の調査時の精神障害に対するイメージ を示した。「どちらでもない」という回答が50%以上 のイメージは,「暖かい−冷たい」,「汚い−きれいな」,

「悪い−良い」,「遅い−早い」,「迷惑な−迷惑でない」,

「役立つ−役立たない」,「弱い−強い」,「浅い−深い」,

「柔らかい−硬い」,「憎らしい−可愛らしい」の10項 目であった。これらのイメージをのぞいた10項目のイ メージで50%以上のものが有するイメージは,「複雑 表1 看護学専攻の精神科の講義内容を含む授業科目と履修年次

1 年 2 年 3 年 4 年

前期 後期 前期 後期 前期 後期 前期 後期

地域保健学 ○

薬理学 ○

疾病論Ⅲ ○

セルフケア論 ○

小児看護方法論 ○

地域看護方法論Ⅰ ○

老年看護方法論 ○

老年看護学実習 ○

精神看護学概論 ○

精神看護方法論 ○

精神看護学演習 ○

精神看護学実習 ○

保健医療福祉倫理学 ○

保健学概論演習 ○

73 精神障害に関する知識が精神障害者に対する学生のイメージに及ぼす影響− 1 年間の追跡調査から−

な」が63%,「危険な」が69%,「怖い」が54%,「激しい」

が51%,「困難な」が54%であった。残りの,「暗い−

明るい」,「陰気な−陽気な」,「縁遠い−身近な」,「活 動的な−不活発な」,「寂しい−賑やかな」のイメージ についてはどれも50%未満であった。

 図 1 に2007年の調査時の精神障害で思い浮かぶ疾患 名について表した。わからないと答えたものが69%,

うつ病と答えたものが18%,統合失調症が 4 %,その 他が 8 %となっていた。

 表 3 に2008年の調査時の精神障害に対するイメージ を示した。「どちらでもない」という回答が50%以上 のイメージは,「暖かい−冷たい」,「汚い−きれいな」,

「悪い−良い」,「遅い−早い」,「活動的な−不活発な」,

「役立つ−役立たない」,「激しい−穏やか」,「浅い−

深い」,「柔らかい−硬い」,「憎らしい−可愛らしい」

の10項目であった.これらのイメージをのぞいた10項 目のイメージで50%以上のものが有するイメージは,

「複雑な」が62%,「危険な」が74%,「困難な」が52%

であった。残りの,「暗い−明るい」,「陰気な−陽気 な」,「縁遠い−身近な」,「怖くない−怖い」,「迷惑な

−迷惑でない」,「弱い−強い」,「寂しい−賑やかな」

のイメージについてはどれも50%未満であった。

 図 2 に2008年の調査時の精神障害で思い浮かぶ疾患 名について表した.わからないと答えたものが 7 %,

うつ病と答えたものが25%,統合失調症が66%,その 他 3 %となっていた。

 図 3 に2007年と2008年のイメージの割合が有意に変 化したイメージについて分布を示した。2007年調査 と2008年調査で分布に有意な差の認められたイメー ジは,「活動的な−不活発な」,「激しい−穏やか」の 2 つのイメージであった。「活動的な−不活発な」と いうイメージは,2007年の調査では「活動的な」が 17%,「どちらでもない」が39%,「不活発な」が44%

で あ っ た も の が2008年 の 調 査 で は「 活 動 的 な 」 が 13%,「不活発な」が26%に減ったのに対し,「どちら でもない」が61%と増加していた(p<0.05)。「激しい

−穏やか」というイメージは,2007年の調査では「激 しい」が51%,「どちらでもない」が35%,「穏やか」

が14%であったものが2008年の調査では,「激しい」

表2 精神障害に対するイメージ(2007年調査)

どちらでもない

暖かい 10% 69% 21% 冷たい

単純な 15% 21% 63% 複雑な

汚い 17% 73% 10% きれいな

暗い 42% 32% 25% 明るい

陰気な 41% 35% 24% 陽気な

安全な 4% 27% 69% 危険な

悪い 13% 70% 17% 良い

縁遠い 39% 25% 35% 身近な

怖くない 21% 25% 54% 怖い

遅い 27% 65% 8% 早い

活動的な 17% 39% 44% 不活発な

迷惑な 23% 52% 25% 迷惑でない

役立つ 10% 65% 25% 役立たない

激しい 51% 35% 14% 穏やか

弱い 42% 54% 4% 強い

容易な 7% 39% 54% 困難な

浅い 6% 50% 44% 深い

柔らかい 10% 72% 18% 硬い

寂しい 48% 38% 14% 賑やかな

憎らしい 7% 80% 13% 可愛らしい

䜟䛛䜙䛺䛔 69%

䛖䛴⑓

18%

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4%

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8%

n=72

図1 精神障害で思い浮かぶ疾患名(2007年度)

ドキュメント内 保健科学研究第1号 (ページ 71-78)