開口呼 斉歯呼 合口呼 撮口呼 i u ü a ia ua
o io uo üo ê ieh üeh êrh
ǔ ih
ai iai uai êi/ei uei/ui ao iao
ou iu
an ien uan üan/üen ên in uên /un ün ang iang uang
êng ing
ung iung 調:
陰平 □1 陽平 □2 上声 □3 去声 □4
声母は27個であり、利用する記号は25個である。舌尖後音の「ch」・「ch‘」と舌面前音
「ch」・「ch‘」のローマ字綴りは一緒であり、相補分布の条件異音である。舌尖後音の「ch」・
「ch‘」は開口呼・合口呼韻母、舌面前音「ch」・「ch‘」は斉歯呼・撮口呼韻母としている。
韻母は40個であり、開口呼14個・斉歯呼12個・合口呼9個・撮口呼5個からなってい る。
声調は4個である。ローマ字綴りの右上に数字を記入することによって表記している。
1.4.2.視話法に照らして工夫した記号
「緒言」には「著者ハ、今彼我兩國ノ音韻ヲ生理的言理學、即チ視話法ノ原理ニ照ラシ テ考究シ、我假字ニ附スルニ、若干ノ記號ヲ以テシ、猶ホ數個ノ合字ヲ作リテ、其不足ヲ 補ヒ」とあり、『日清字音鑑』は「視話法ノ原理」に照らしてカナを工夫している。
「視話法」の定義について、伊沢修二『視話法』は次のように述べている。
視話法トハ,何ゾヤ。視話法トハ,人類發音ノ理ヲ攻究シテ,人體中特ニ發音ニ 關スル諸器,即チ發音器ノ位置ニ基ヅキ,若干ノ音字ノ原子ヲ作リ,之ヲ結合シ テ,各種ノ音韻ヲ表明記載スル所ノ學術ナリ。之ヲ視話法ト稱スル所以ハ,斯ノ
如ク原子ヲ結合シテ作リタル音字ヲ見ル時ハ,一目ノ下,明ニ其發スル音韻ノ何 タルヲ知リ得ル故ナリ。又一ニ之ヲ萬國普通音字學ト稱ス。其所以ハ,此字音ニ ヨルトキハ,世界何レノ國語ノ音韻ニテモ悉ク記シ得ルヲ以テナリ。又或ハ之ヲ 生理的音字學ト云フ。其理由ハ,モトコノ音字ヲ製作スルハ,生理上ノ原理ニ準 據シ來レルニヨルナリ。
「又一ニ之ヲ萬國普通音字學ト稱ス」とあるように「視話法」は当時の音声学であると 考えられる。
「之ヲ視話法ト稱スル所以ハ,斯ノ如ク原子ヲ結合シテ作リタル音字ヲ見ル時ハ,一目 ノ下,明ニ其發スル音韻ノ何タルヲ知リ得ル故ナリ」とあるように、視話法とは視話文字 を見ることによってその発音がわかる音声学であると考えられる。
また、伊沢修二『視話法』は「視話法」の発明について次のように述べている。
此法ヲ發明セシハ,誰ナルカ。此法ヲ發明セシハ,大英國蘇格蘭士ノ人,あれき ざんだー,めるびる,べるトイフ人ナリ。此人ハ,能辯學者ニシテ,啞子吃子抔 ノ發音ヲ研究セシ人ナリガ,千八百四十九年頃ヨリ,世界普通ノ音字ヲ工夫セン コトヲ心掛ケ,千八百六十年,歐羅巴諸國ノ語學者,墺地利ノ首府維納ニ,萬國 普通文字制定會ニ列シ,三週日ニシテ,終ニ其記號ノ無數ナルヲ發見シ到底成ス 可ラザルモノト決シ,散會セシガ,當時獨逸ニテハ,唇讀ミト云フコト行ハレ始 メタルヲ見テ,此會ヨリ歸リ,一層奮勵シテ,發音器ノ符牒ヲ工夫シ,之ヲ結合 シテ,音字ヲ大成シ,其適用ノ正確ニシテ,他ニ其比類ヲ見ザル程ノ成績ヲ得テ,
大ニ世人ヲ驚カシメタリ。
「視話法」は1860年頃イギリス人アレクサンダー・メルヴィル・ベル(Alexander Melville Bell,1819-1905)によって発明されたものである。
伊沢修二『視話法』は、伊沢修二の視話法に出会った経緯について次のように述べてい る。
千八百七十八年,米國ノひらでるひあ府ニ,百年期萬國博覧會ノ開カレタルトキ,
會塲中まっさちゅーせっつ州ノ教育部ニツキテ閲覧セシニ,一種異様ノ字形ヲ記 セル掛圖アルヲ見,ソノ何タルヲ委員ニ問ヒシニ,之ハ,啞子ニ英語ヲ教ユルノ 方法ヲ示セルモノナリト答ヘタリ。依リテ,ソノ發明者ヲ問ヒタルニ,ぼすとん 府ニ,あれきざんだー.ぐらーむ.べるトイフ人アリ,常ニ此法ヲ傳習シ居レバ,往テ 聞カルベシト教ヘラレキ。(筆者注:中略)ぼすとんニ至リ,一日べる氏ヲ訪ヒテ, ソノ志望ヲ告ゲシニ,べる氏ハ,大ニ喜ンデ之ヲ諾シ,余ヲシテ或ハ讀本ノ二三節ヲ 讀マシメ,直ニ視話法音字ヲ以テ,其發音ヲ記シ終リ,べる氏自ラ其寫シ取シ音字ニ
依リ,我發音ノ如ク讀過セリ。(筆者注:中略)コヽニ於テ,余益々コノ法ノ,外國語 ヲ學習スルニ必要ナルヲ感ジ,遂ニ同氏ニ就テ,其直傳ヲ受ケ,數週間ノ後,不十分ナ ガラモ,マヅ米人ニ會得シ得ラルヽガ如ク,眞個ノ英語音ヲ發シ得ルニ至レリ。
伊沢修二はアメリカに留学中(1875年9月前後から1877年7月まで、アメリカのマサチ ュセッツ州ブリッジウォートル師範学校)、アレクサンダー・グラハム・ベル(Alexander Graham Bell,1847-1922)から英語の発音矯正のために視話法を学んだ。
視話法は文字表記によって発音がわかる音声文字である。以下、視話話の原理につて伊 沢修二『視話法』を引用しながら説明していきたい。
伊沢修二『視話法』「視話法音字ノ構造及名称」の章には次のような図がある。
〔図12〕伊沢修二『視話法』「視話法音字ノ構造及名称」における「第二圖」
〔図12〕について、伊沢修二『視話法』は次のように説明している。
上圖中,( )ハ,喉頭ニアル聲帯ガ緊張シテ,殆ド一直線ノ如クナリタルニ象レルモ ノニシテ,即チ聲トス。其理由ハ,聲帯ガ,斯クノ如キ形状ニ至ルトキハ,始メテ其顫 動ニ依リテ,聲ヲ發シ得ルニヨル。( )ハ,舌本ニ象リ,( )ハ,舌上ニ象リ,( ) ハ,舌頭ニ象リ,( )ハ,唇ニ象リタルコト,一目ノ下,自ラ瞭然タルベシ。而シテ( ) ハ,軟口蓋ノ垂下セルニ象レルモノナルガ,通俗ニハ,之ヲ鼻トス。其故ハ,軟口蓋,垂 下スルトキハ,音聲ガ,鼻腔ヲ通ジテ出ルヲ以テナリ。( )ハ,息ヲ吹キ出スニ象リ,
( )ハ其音器ノ局部収合シテ,中心ニ小孔ヲ開キタルニ象レルモノニシテ,之ヲ開 ト稱ス。( )ハ,某音器ノ局部,全ク閉ヂタルヲ形容セルモノニシテ,閉ト稱ス。
視話文字「 」・「 」・「 」・「 」・「 」・「 」・「 」・「 」は発音器官を模擬してい て、それぞれ「舌本」・「舌上」・「舌頭」・「唇」などを表している。
以上のように、視話法の原理とはすなわち文字で発音器官を模擬し、文字を見ることに
よって発音を知るものである。
『日清字音鑑』は視話法の原理に照らしてカナを工夫している。『日清字音鑑』の「緒言」
の説明によると、次のようなものがある。
(1)記号「∘」
記号「∘」について、「緒言」は次のように説明している。
著者ハ、本書中、無聲ノ呼息、即チ出気音ヲ表スルニハ、總テ「∘」ヲ用ヒタリ。
コレ視話法ノ原理ニ依ルニ、喉頭ノ聲帯ヲ開キテ呼息ヲナストキハ、無聲ナルヲ 以テ、之ヲ表スルニ、「∘」形ヲ用フルヲ適當ナリトスレバナリ。
「無聲ノ呼息、即チ出気音ヲ表スルニハ」とあるように、「∘」は喉から無声の呼気を表 している。具体例で示せば、以下のように中国語の「有気音」も表し、舌面前音「hs」と舌 面後音「‘h」の発音前の無声気流も表している。
有気音
p‘a・怕・パ。ァ p‘ai・派・パ。ァイ ts‘a・擦・ツ。ァ
ts‘ao・草・ツ。ァオ k‘ai・開・カ。ァイ k‘an・看・カ。ァン
舌面前音「hs」の無声気流
hsi・洗・∘シィ hsia・下・∘シィア hsiao・削・∘シィァオ
hsieh・血・∘シィエ hsin・心・∘シィン hsiung・熊・∘シィゥク、
舌面後音「‘h」の無声気流
‘hai・海・∘ハァイ ‘han・罕・∘ハァン ‘hang・行・∘ハァク、
‘hei・黑・∘ヘェイ ‘hu・虎・∘ホゥ ‘hua・化・∘ホゥア
(2)記号「∣ツ」
記号「∣」について、「緒言」は次のように説明している。
「チ」ノ原音ハ、彼我、相同ジカラズ。支那語ニ於テハ、此音ヲ發スルニ、日本 語ニ比スレバ、其舌頭ヲ遙カ上腭ノ後部ニ置クヲ以テ、「ツ」ニ似タル音ヲ發ス。
故ニ「∣ツ」字ヲ以テ之ヲ表ス。コレ亦視話法ノ原理ニ依リ、左傍ニ、縦線ヲ施シ テ、舌頭ノ位置、後部ニ至ルヲ示シタリ。
「コレ亦視話法ノ原理ニ依リ、左傍ニ、縦線ヲ施シテ、舌頭ノ位置、後部ニ至ルヲ 示シタリ。」とあるように、記号「∣ツ」の「∣」は舌位を後ろにする働きを持っている。
記号「∣ツ」の具体例を示すと、次のように舌尖後音「ch」系を表している。
「ch」
cha・閘・∣ツァ chai・宅・∣ツァイ chan・展・∣ツァン
chei・這 ・∣ツェイ chu・燭・∣ツゥ chua・抓・∣ツゥア
「ch‘」
ch‘a・察・∣ツ。ァ ch‘an・產・∣ツ。ァン ch‘o・綽・∣ツ。ォ
ch‘u・楚・∣ツ。ゥ ch‘uai・踹・∣ツ。ゥァイ ch‘uan・川・∣ツ。ゥァン
(3)記号「 ス」
記号「 ス」について、「緒言」は次のように説明している。
「 スァ」行ノ音ハ、支那特有ニシテ、之ヲ譯スルコト甚ダ難シ。強ヒテ之ヲ解ス レバ、「 スァ」ハ「ル-ズ-ア」ノ音ヲ約シタルモノニ等シト謂ハンノミ。隋テ「
スゥ」ハ「ル-ズ-ウ」ニ、「 スォ」ハ「ル-ズ-オ」ニ均シク、「 スォェ」「 ス ォァ」モ之ニ準ジテ知ルベシ。而シテ今、之ヲ表スルニ、「 ス」字ヲ以テスルモノ ハ、亦視話法ノ理ヲ適用シ、「 」ヲ以テ、舌頭ノ振動ヲ示シ、即チ「ル」ノ原音ヲ 顯ハシタルナリ。
「亦視話法ノ理ヲ適用シ、「 」ヲ以テ、舌頭ノ振動ヲ示シ、」とあるように、記号「 ス」
の「 」は舌頭を振動させる機能を持っている。「 ス」の具体例を示すと、次のように舌尖 後音「j」を表す。
jan・然・ スァン jang・瓤・ スァク、 jao・擾・ スァオ
jui・瑞・ スゥイ jun・潤・ スゥン jung・冗・ スゥク、
1.4.3.合字
「緒言」には「猶ホ數個ノ合字ヲ作リテ、其不足ヲ補ヒ」とあるように、『日清字音鑑』
は中国語音を表記するため「合字」を作っていた。「緒言」によると、「合字」は次のよう に2種類に分けられる。
(1)「ィゥ」
合字「ィゥ」について、「緒言」は次のように述べている。
此外一ノ間音「ィゥ」アリ。コレハ、「イ」ノ音ヲ發スルト同時ニ、口角ヲ窄メ、
唇ヲ突出スルガ爲ニ、「ウ」ノ韻ヲ帯ブルモノナリ。故ニ「ィゥ」ノ合字ヲ以テ之