指導教官 岩田一彦
社会認識形成におけるイメージ的認識の理論と実際
教科・領域教育専攻
社会系コース
松 島 康 之
1.研究の目的と方法 1.研究の目的
(1)イメージ的認識の構造,及びその認識的特 徴を論理的認識と対比して示し,社会認識形 成におけるその有効性を明らかにする。
(2)(1)の成果をもとに,イメージ的認識を組み 込んだ社会科の授業モデルを構想する。
2.研究の方法
(1)先行研究を整理し,社会科におけるイメー ジ論の問題点を指摘する。
(2)認知心理学の研究成果に学び,イメージ的 認識の構造と認識的特徴を明らかにする。
(3)社会認識形成におけるイメージ的認識の有 効性を明らかにする。
(4)研究仮説に基づいて分析フレームワrクを 作成し,社会科授業実践の分析を行う。
(5)以上の研究成果をもとに,イメージ的認識 を組み込んだ社会科授業モデルを提示する。
H.論文の構成 一
穂1章 社会科におけるイメージと新たな視 点
第2章 イメージ的認識と社会認識形成 第3章イメージ的認識の視点に基づいた授 業分析
第4章 イメージ的認識を組み込んだ社会科 授業の設計
結
In:.研究成果の概要
1.社会科におけるイメージと新たな視点 社会科でイメージが取り入れられた背景には,
1950年代に起こった社会科学科の運動がある。
それは現場の教師に,社会科学の概念や法則を 子どもにどのように教えたらよいのかという 切実な問題をもたらした。イメージは,その打 開策の一つとして用いられるようになったの である。したがって,そこでイメージに求めら れたものは何よりも具体性であった。このよう な経緯から,社会科におけるイメージは, 絵 のような なものに規定されることになった。
だが,そこで用いられるイメージは,あくま でも知覚的野の域を出ることはなく,したがっ て,思考との関わりや認識方法としての可能性 については,有効性を示すことができなかった。
認知心理学のイメージ研究は,上記のような 固定的なイメージ観とは異なる新たなイメー ジ像を提供する。すなわち,イメージには「絵」
のような情報だけでなく,事象を理解した「意 味」のような情報が存在しているということが 明らかにされてきたのである。このことがイメ ージを認識方法としてとらえる上での新たな 視点となる。
2.イメージ的認識と社会認識形成
イメージ的認識とは,事象を「見え」と「実 在」という二重構造で把握するような認識の仕 方をいう。ここで示される「見え」とは,ある
視点から対象を見たときに見える像である。一 方, 「実在」とは「見え」を通して間接的に把 握される事象の意味や関係といったものに該
当する。
イメージ的認識は,論理的認識においてはと もすれば切り捨てられがちな,直感的な思考や 曖昧な認識内容に焦点を当て,それを論理的な ものへ高めようとする。その意味で,両者は相 補的な関係にある。
社会科の学習過程においてイメージ的認識は,
認識内容と問いの二重構造といったかたちで 具現化される。そこでは,経験により近い具体 的な個別例を「見え」として,事象の意味や関 係といった抽象的な概念は「実在」として把握 される。これと対応して問いも二つ設定される。
「問い1」の過程では,事象に関する多様な視 点を導き出し,「問い2」の過程ではそれらを 上位の概念へと体系化する。これは,社会認識 の形成に必要な,知識の量的拡大と体系化の過 程と一致する。すなわち,イメージ的認識にお いては知識の2方向への拡大過程が意図的に 組み込まれていることによって,社会認識が発 心的に形成されるようになっている。
これを思考の面からとらえると,「問い1」
の過程ではアブダクションという推論がはた らき, 「問い2」の過程では論理的認識と同様 に推理という思考がはたらくことになる。イメ ージ的認識における思考面での特徴は,このア ブダクションに求めることができる。それは,
事象と先行認識との間に新たな対応関係を築 き,多様な視点を産出する創造的な推論形式で ある。イメージ形成とは,アプダクション等の はたらきによって,事象が先行認識と結びつけ られ再構成されることである。
3.イメージ的認識の視点に基づいた授業分析
授業分析の結果,知識の量的拡大と体系化と いう両面が達成されている事例は極めて少な いことが明らかになった。特に,知識の量的拡 大の観点が欠如していることが指摘できる。こ のことは,社会認識形成が十分に行われていな いということを示している。この要因として次 の2点がある。
①二つの問いの機能や役割が明確に区別して 用いられていない。
②問いの二重構造と対応したかたちで,認識内 容の二重構造がとられたり,知識の2方向へ の拡大が図られたりしていない。
以上のことから,知識の両方向への拡大過程 を意図的に設定しているイメージ的認識の重 要性と,それを組み込んだ授業設計の必要性が 明らかになった。
4.イメージ的認識を組み込んだ社会科授業の
設計
イメージ的認識を組み込んだ授業モデルを小 単元「伝統的な技術を生かした工業一越前和紙 一」において設計した。 「伝統的工業」という 概念から二つの対概念を抽出し,それらを「見 え」として認識の二重構造を組み,概念探究過 程において「実在」を把握するようにした。ま た,価値分析過程では,伝統的な技術・技法と 機械化という対概念をもとに,合理的意志決定
を図るようにした。
IV.今後の課題
今後の課題は,授業モデルの実践を通して研 究仮説を検証すること,並びにイメージ的認識
を組み込んだ授業実践例を開発し,イメージ的 認識の理論を修正・発展させていくことである。
主任指導教官 岩田一彦
指導教官 岩田一彦
資料編
授業実践の分析フレームワーク 授業実践50事例の分析表を掲載する。
一
Nb.1 学年:小4 単元名・題材名:あたたかい土地のくらし
授業者:.有田和正 出典:膨鞠を育てる9教団闇汁くりへ・中置艦1蜘
中核的問い1 中核的問い2
問いの構造
@ =
沖縄には.まっすぐなさとうき {ありません.みんなこのへん ネがっています.どうして曲がっ トいるのでしょう.
節の間隔の大きいところ ャさいところがあります。
アれはどうしてでしょう。
白いの分類
陶 陶
固定的コード 固定的コード .O
問い・答え
開放的コード ○ 開放的コード
論理的コード D型
論理的コード
O
A型同い→答え
直感的コード
0
直繭コード有
O
イメージ形成の有無
無 イメージ形成の方法 先行認識の活用
イメージ形鶴i① ● . 噂
竄「1 ② 問い2
幽㍗
Bi ②
・ . 陰 ● ● ■ ■ 幽 ● o ● 陰 ■ ● ● ● ● . . , . . o , ● ρ
・台風がきて曲がったのではないカ㌔
Eさとうきびは,暑いところにしかできないので,ビニルハウスの中でつ ュり,ハウスの天井につかえて曲がったのではないか。
f沖織煙締で暑いから・熱で曲がったので駈訟いカ㌔・植物は太陽の方へ曲がる性質があるから,南側へ曲がったのではないか。
@ ,
視点4
知識の量的拡大 O O
Nb.2 学年:小4 単元名・題材名:「ごみ箱」はどのように変わったか 授業者:有田和正 出典:膨魏を訂る9教醗鋤櫛くりへ・中斡艦晒
中核的問い1 φ核的問い2
問いの構造
@:
ごみ箱が,このように変イ オたのは,何が変わったカ 轤ナしょうか。
ごみの変化→ごみ箱の変化→
゚方の変fピ・・このほかに 驍烽フはないでしょう瓶
問いの分頬 What What
固定的コード 固定的コード ○
問い・答え
開放的コード ○ 開放的コード
論理的コード D型
論理的コード ○ A型
問い今答え
直感的コード ○ 直感的コード
有 ○
イメージ形成の有無
無 イメージ形成の方法 先行認識の活用
イメージ形成の場 i 問い1
i①
: 一 層箏7幽 . ● 層 畠 τ
D__.____.._璽_____.._._:問い2 i③ ②
イメ. ・ごみの量がふえたからではないか。
E量がふえて,大きくしないと入らなくなったのでは?
E水分の多いごみが出るようになった?
Eごみの種類が蒙わってきたということだと思う。
E家の庭などでやいたり,埋めたりできなくなって,ごみを出すようにな チて,ごみがふえたと思う。
.視 知識の量的拡大 ○
N
Nα3 学年:小3 単元名・題材名:市のうつりかわり.
授業者:有田和正 出典=膨伽を育てる9紋㈱跡欄くりへ・中学年囎囎㎜
中核的問い1 中核的問い2
問いの構造
@ :
これは.吏京%区の地図です.
謔サ100年前.斜効1できた頃 結桙フ町の範囲は,どこまでくら
「だったと思いますカ㌔
4つの公営墓地が,23区 ワん中にあるのはどうし ナしょう。
同いの分類 .Hσw
晦
固定的コード 固定的コード ○
問い・答え
開放的コード ○ 開放的コード
論理的コード D型
諦理的コード B型
問い→答え
直感的コード ○. 直感的コード ○ 有
イメージ形成の有無
無 ○ イメージ形成の方法
イメージ形成の場 : 問い1
i①
ゴ一…層 「響…一 .一 仰 層●:
@ ②㌦・………∵・……・…………・・……・………・問い2 i
③i
.視点4
Nd4 学年:小4 単元名・題材名:高地のくらし
授業者.:有田和正 出典:騰を叡る9麟鋤・黒くりへ・構囎囲
中核的問い1 中核的問い2
同いの構造
@ :
千葉市や三浦市などがとれなし 條冾ノどうして嬬恋村ではキ
ャxツができるのだろうカ㌔
どうして,5回にわけて ト,しかも,ずらせている フでしょう。
問いのの類
陶
Why固定的コード 固定的コード ○
間い・答え
開放的コード ○ 開放的コード
論理的コード D型
論理的コード ○ A型
同いウ答え
直感的コード ○ 直感的コード 有
イメージ形成の有無
無 ○ イメージ形成の方法
イメージ形成の場 i 問い1 i①
: 斡 一 層 … ▼ … 『 =
@ ②」… 冒・.9..,...,...・幽●曾...曾「曾..■■・・. 噸幽・■問い2 i・甲..曾9 ・..曾,,∂③ :
視点4