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イメージ的認識を組み込んだ社会科授業の設計

前章では,研究仮説に基づいて授業分析フレームワークを設定し,社会科 授業実践の分析を行った。その結果,それらの事例では知識の量的拡大と 体系化の両過程を備えているものが少ないため,社会認識が十分に形成さ れていないということが判明した。このことにより,イメージ的認識を社 会科の授業設計に組み込む必要性が明らかになった。

そこで本章では,これまでの成果をもとにして,イメージ的認識を組み込 んだ社会科授業モデルを提案する。

第1節 社会科授業設計の視点

岩田一彦氏は授業分析における視点設計について次のように述べている。

 「社会科は社会諸科学の研究成果を組み込んで社会認識教育をしていく 教科である。社会諸科学の研究成果の基本は,原因・結果の関係で示され

る。」 (①,P.32)

そして,図4−1のように視点設計の構造を表している。この視点とは,授 業分析にのみ適用されるものではない。それは授業設計の視点の裏返しで もある。岩田氏のこの考えをもとにして,社会科授業設計に関する視点を 明らかにしていく。

社会諸科学

か ら の視点

学習対象と な る

 社会現象

1灘編・解す・た

端観」な。.。探求.て、、

けば構造が習得できるか

図4−1視点設計の構造(①,p.32)

1.視点1 社会事象の理解構造の設計…知識の構造

社会諸科学の成果は,授業設計において学習目標との関係において構造化 して示される。これは,具体的には知識の階層構造というかたちをとる。

岩田氏は,知識の質の違いをもとに,次のような分類を行っている。

知識

記述的知識 分析的知識 説明的知識 概念的知識 規範的知識

図4−2知識の分類(②,p.44)

これらの知識の質的な違いは,岩田氏の説明によると次のようになる。

(1)事実関係的知識 記述的知識

社会に存在する情報の内で,事象の存在について述べたもの。これらの情 報の一つひとつは,断片的知識,応用がきかない知識,無限大にある知識 であり,全体としてはイメー一・一・ジを形成したり,情報間の関係を明らかにす る際の材料となる知識である。

分析的知識

これはさらに,目的に関する知識,手段・手法に関する知識,構造に関す る知識,過程に関する知識,相互関係に関する知識に分類することができ

る。

分析的知識は,社会事象間の一定の関係を記述している。その意味で,記 述的知識よりは応用のきく知識ということができる。観察や資料からの事 実判断によって獲得されるものでもある。

 この分析的知識をどのように扱うかによって,社会科授業の性格が決定さ れるという。

説明的知識

社会事象問の関係を原因と結果の関係でしめしているものを説明的知識 という。一般的には,「AはBが原因である。」, 「AならばBとなる。」

といった表現形式をとる。社会事象間の関係では,自然科学と違って経験

的事実を集めて,そこから共通する因果関係を抽出するという方法がとら れる。その意味で,この因果関係の記述は,社会事象の説明の中核をなす ものである。岩田氏は,この知識が学習指導案における目標記述の典型と なるべきであるとしている。

概念的知識

上記のような説明的知識が蓄積されると,やがてそれは人類共通の財産に なってくる。すなわち, 「特定の具体的社会事象」という限定を抜かしで も通用する法則性が抽出されるようになる。このような法則性を表現して いる知識を概念的知識という。

(2)価値関係的知識 規範的知識

人々は「〜ので〜すべきである。」,「〜ので〜すべきでない。」という 価値判断の伴った知識を無数にもっていて,行動の規範としている。この 知識を規範的知識と呼ぶ。この知識は,社会科学習においては,豊かな事 実関係上知識に基づいて合理的に意志決定させることによって習得される。

(以上,②,pp.39−45より抽出)

このような知識の分類をもとにして,学習目標をどのように構成していく かをみてみよう。

まず,授業設計に際しては,本時で習得させたい本質目標がある。それは,

概念的知識のかたちで提示される。この概念的知識自体を学習させること はできないので,特定の具体的事象における事象間の関係を追求させる過 程でそれを習得させることになる。このように,概念的知識に特定の具体 的事実を結合させたものが,本時の学習目標である説明的知識となる。

この説明的知識は,これを構成する下位の説明的知識,分析的知識記述 的知識の構造として示されることが必要となる。説明的知識の構造として 学習目標を示すモデルとしては,次のような例が提示できる。

〈学習指導案における目標モデル〉

目標

・本質的目標…概念的知識

・学習目標…説明的知識

学習目標の構造(説明的知識の構造)

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@HA fi9 Si[] ua {

一一 ア灘

一識一 ロ驚』.

上のモデルのように知識が構造化されたならば,教授学習過程の基本的な 設計方向が提示されたことになる。授業設計においては,社会的見方とし ての説明的知識を明確に把握しておいて,その教授に必要な分析的知識,

記述的知識は何かを考えていけばよい。 (以上,②,pp.78−79より抽出)

このように,知識の構造化は授業設計において重要なポイントである。

2.視点H 構造の探究過程の設計

(1)問いの構造

前項で,授業設計の手順が知識の構造化と深く関わっていることをみた。

授業設計が上位の説明的知識から下位の記述的知識を構造化する方向で進 められるのに対し,子どもの学習過程はその逆の過程をたどる。すなわち,

「記述的知識,分析的知識といった知識の習得をして,その材料を組み合 わせて説明的知識を習得する」 (②,p.79)といった下位の知識から上位の 説明的知識の習得という流れとなる。

このように構造化された知識の習得は,問いによって行われる。岩田氏は,

問いによって子どもが習得する知識も変わってくるとして,問いの重要性 を主張している。そして,問いと習得される知識との関係を図4−3のように 示している。

 このことについて,岩田氏はこのように述べている。

 「情報を求める問いによって習得される内容は,社会事象に対する記述的 知識が中心となる。もう一方の,情報問の関係を求める問いによって 習得される内容は,法則性を組み込んだ説明的知識(概念的知識)が中心 になる。また,その中間に位置つく問いによって習得される内容は,社会

事象を分析して得られた分析的知識である。…略…問いにはそのほかに価 値関係的な問いがある。Whichの問いである。どちらを選択するかという 意志決定を迫る問いである。そこで習得される知識は『…なので…すべき である』という規範的知識である。」 (②,p.29)

以上のように,問いの構造と知識の構造とは,授業設計における重要な柱 となっている。

問いの種類 習得される知識

①情報を求める問い(W)一一ny一→記述的知識

 When, Where, Who, What

①②の中間に位置する問い(H)

 How

②情報間の関係を求める問い(D)

 Why

分析的知識

説明的知識

(概念的知識)

③価値判断を求める問い(V)一一一→規範的知識

 Which

図4−3問いと習得される知識との関係(①,p.29)

(2)科学的社会認識と授業過程

岩田氏は,授業設計の際に,社会的見方(社会認識)と社会的考え方(市 民的資質)を分けて位置づけることが重要であるとしている。氏は,この 社会的見方と考え方を知識の分類と関連させて,次のように述べている。

 「一般に, 『社会科教育の目的は,子どもに社会的見方,考え方を身に つけさせることである。』,『社会科教育の目的は,社会認識を通して市 民的資質を形成することである。』などが,社会科の目的について言われ ている。ここで使用されている社会的見方,社会認識が,事実関係的知識 にかかわっている。事実関係的知識の内で,記述的知識,分析的知識が,

社会的見方・社会認識の材料となる知識である。説明的知識,概念的知識 が社会的見方・社会認識である。一方の価値関係的知識が,社会的考え方,

市民的資質とかかわっている。社会的考え方,市民的資質は,社会的な価 値判断を求められた際の合理的意志決定能力と言い替えることができる。

知識との関係では,規範的知識の合理的選択能力とも言える。」

 (@,pp.52−53)

このような考えに立って,岩田氏は社会科においては,社会的見方の探究 過程と社会的考え方の形成過程が必要であると論じている。具体的には,

説明的知識・概念的知識の探究過程としての概念探究過程と,規範的知識 選択過程としての価値分析過程の二つの学習過程を組み込むことが必要で あるとしている。したがって,社会科の基本的学習過程は次のように示さ れることになる。

概念探究・価値分析型社会科

  基本的学習過程   概念探究過程一一一+価値分析過程       (@,p.58)

この概念探究の基本的学習過程を,岩田氏は図4−4のように示している。

1 情報収集 H 情報の分類  ・比較

皿学習問題の発見・把握  (なぜ疑問の発見・把握)

IV.予想の提示

@惰報間の

@関係の直

@観的結合

V,仮説の設定

@情報間の

@関係の分

@析的結合

W.仮説の根拠と

@なる資料の収集

m灘劉

鴨.まとめ,応用

@新しい問いの発見 VIL検証

k脚灘の証明〕

 図4−4 概念探究の基本的学習段階(②,p.58)

尚,筆者は第2章において,研究仮説に基づいて岩田氏の概念探究過程に イメージ的認識を組み込むことの必要性を説いた。ここで,改めて研究仮 説とイメージ的認識を組み込んだ探究過程を提示する。