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7 | クオーツ腕時計用発電技術

クオーツ腕時計の出現によって、時間精度も機械式 腕時計の 100 倍と格段に向上した。駆動エネルギー源 に小型ボタン型電池を使うことにより、手巻き機械式 腕時計のように毎日ぜんまいを巻く煩わしさから解放 され、高い時間精度を維持して最低 1 年間動き続ける ことの利便性を享受できるようになった。しかし、1 年或いは数年に 1 回の電池交換を必要とし、電池寿命 予告機能が付いていても、時計を使おうと取り出した 時に止まっている場合もあった。電池交換を自分でで きれば、直ちに交換し使うことが可能であるが、腕時 計の場合には防水性、防塵性の面よりお店での電池交 換が必須である。このように、クオーツ腕時計は高い 時間精度と、突然来る電池寿命により使いたいときに 使えない不便さを合わせ持っている。機械式自動巻腕 時計は腕に着けていれば動き続け止まらない。止まっ ている状態でも、使用者が時計を振って動かすことが できる利点は大きい。クオーツ腕時計も、止まった時 にお店で電池交換せず、使用者が駆動エネルギーを作 り出し溜め込める技術の要望が強まった。

国内情勢も 1973 年の「第一次オイルショック」、

1979 年の「第二次オイルショック」騒動や 1974 年の

「サンシャイン計画」のスタート等、省資源、省エネ ルギー意識が高まる。クオーツ腕時計の多くは、酸化 銀電池或いはリチウム電池を搭載しているが、電池交 換の煩わしさからの解放、環境への配慮などの理由か ら、数々の発電方式が考え出された。腕時計における エネルギー生成手段を以下に示す1)

(1)化学 / 電気エネルギー変換・・一次電池①酸化銀 電池②リチウム電池

(2)光 / 電気エネルギー変換・・・太陽電池(蓄積手 段:二次電池)

(3)熱 / 電気エネルギー変換・・・熱電効果(蓄積手 段:二次電池)

(4)運動 / 電気エネルギー変換・・機械エネルギー① 手巻き②自動巻(蓄積手段:二次電池)

(5)運動 / 機械エネルギー変換・・機械エネルギー① 手巻き②自動巻(蓄積手段:ぜんまい)

クオーツ腕時計の低電力化が進んだこともあり、あ まり大きなエネルギーの創出を必要とせず、腕時計サ イズの中で発電の可能性があったことも開発への弾み がつく要因となった。

1970 年代後半から 80 年代にかけ、各社よりクオー ツ腕時計用発電装置を搭載した種々の製品が市場投入

される。本項では、太陽電池式、手巻き発電式、自動 巻発電式、熱発電式、ぜんまい駆動式クオーツ腕時計 の技術を紹介する。

7.1

世界初太陽電池アナログクオーツ腕時計シチ ズンクオーツ「クリストロン ソーラーセル」2)3)

アナログ時計のムーブメントが機械式からクオーツ へと、技術転換され始めた頃、シチズン時計はソー ラーセルを使って「電池交換不要の腕時計を作るこ と」を目指した。販売からも「世界初のアナログ式光 発電時計に挑みたい」との提案、要望があった。当時、

腕時計用の小型二次電池(繰り返し充放電が可能な化 学反応を利用した電源用部品)がなく可能性は低かっ た。その後、銀電池なら一次電池でも充電可能という 情報を手掛かりに開発がスタートする。現在では、一 般的な太陽電池と二次電池の組合せであるが、一次電 池である銀電池を使って太陽電池時計を作ることは大 きな挑戦であった。

1974 年 2 月、シチズン時計は、太陽電池腕時計の プロトタイプを発表した。発表後、各国の時計メー カーから太陽電池腕時計の発表、発売があったが、全 てデジタル式のものでありアナログ式の技術的難し さを物語っている。プロトタイプ発表から 2 年半後、

1976 年世界初のアナログ式太陽電池腕時計シチズン クオーツ「クリストロン ソーラーセル」(以降、クリ ストロン ソーラーセルと呼ぶ)(図 7.1 参照)を発売 した。

図 7.1 シチズンクオーツ「クリストロン ソーラーセル Cal.8629」

(出典:シチズン時計)

(1)太陽電池腕時計の原理4)

太陽電池腕時計の原理を図 7.2 に示す。時計に照射 された太陽エネルギーが太陽電池により電気エネル ギーに変換され、ここで発生した電気エネルギーは制 御回路を通って、二次電池へ充電され二次電池から

ムーブメントに常に平均化した電気エネルギーが供給 され時計を駆動する。

図 7.2 太陽電池腕時計の構成4)

クリストロン  ソーラーセルの太陽電池は、1 個当 たり 0.5V 程度の起電力のため、時計の駆動に必要な 電圧に上げるため 8 個のソーラーセルを直列に繋いで いた。

制御回路は以下の働きをしている。

①太陽光が照射しない時に二次電池から太陽電池の方 に逆に電流が流れることを防止する。

②あまり強い光で、一度に大電流が流れることによる 二次電池の損傷を防ぐ。

(2)二次電池に銀電池を使う挑戦3)

当時の銀電池の品質レベルは低く、漏液性が悪く 1 週間ぐらいで漏液が始まるような状況であった。実用 になったのは、唯一、先に紹介したシチズン「エック スエイト X-8」に搭載した銀電池であった。これを 使っての実験がスタートする。銀電池を使った場合の 問題は、充電時の水素ガスの発生で、水素ガスの発生 は充電をしている証明であるが、電池の膨らみと液漏 れを引き起こす。これを抑えながら充電する回路条件 を見つけ出し、水素ガスの発生をコントロールした。

太陽電池により多くの電気エネルギーを作っても、

主電源が満タンになってしまえば、電気を捨てなけれ ばならず、せっかく作ったエネルギーを無駄にしてい た。エネルギーを溜め込む時計の主電源の開発が進 み、ゴールドキャパシタ→二次電池へと変わり、エネ ルギー変換や充電効率は大きく向上した。

(3)太陽電池4)5)

プロトタイプの開発スタートは、1971 年頃シャープ

(株)の Si 単結晶太陽電池を用いての充放電実験であ る。その結果、腕時計への太陽電池搭載の可能性を見 出し、試作へと動き出す。この試作した太陽電池腕時 計は、1974 年 6 月の朝日新聞に「太陽電池が高いの

でまだ市販されないが日本で初めての太陽電池付腕時 計」と紹介された。これが、今日のシチズン時計「エ コ・ドライブ」の原型である。図 7.3 にプロトタイプ の外観を示す。ソーラーセルは 6 段の構造である。

クリストロン ソーラーセルの仕様6)は以下の通りで ある。

ムーブメントサイズ:直径 26.4mm 厚み 5.17mm 時間精度     :月差± 15 秒

持続時間     :5 年

      ( 最初の 2 年間は全く光を当て なくても動き続ける)

太陽電池仕様 

  波長: 7000Å~9000Åの光に最高感度を示す。(太 陽光だけでなく室内光でも充電可能)

  充電能 力:1 日約 10 分の太陽光照射で、時計を 1 日駆動できる。

図 7.3 プロトタイプ5)

無尽蔵にある太陽のエネルギーを電気エネルギーに 変換する太陽電池であるが、太陽電池が持つ独特の色 に対していろいろな意見があった。腕時計のように身 に着ける装飾品と太陽電池の色は合わないと、太陽電 池の素地をそのまま時計表面にデザインすることは主 流にはなり得なかった。そこで太陽電池を腕時計に搭 載するための技術活動が始まる。

①太陽電池表面を隠す方法

太陽電池は直接太陽光に当たることにより、より多 くのエネルギーを取り込み電気エネルギーを発生させ ることが可能である。しかし、隠すことにより変換効 率は低下し期待する電気エネルギーを作り出せない。

作り出せるエネルギーが少なければ、時計自体の低電 力化を更に実施するとともに、電池に蓄積できる効率 および容量の向上に向けた二次電池の開発、太陽電池 の変換効率向上をメーカーと強力に推進した。

時計メーカーは、太陽光などの光を透過する材料

(プラスチック材料等)を用いて文字板を作成し、装 飾品として相応しい文字板の外観開発に邁進する。プ

ラスチックの表面処理、文字板厚み、材料色調等透過 率と外観バランスの取り組みである。

②太陽電池の配置5)

太陽電池の配置を工夫する製品も登場した。シチ ズン時計が、2001 年フレキシブルソーラーセルを採 用した「エコ・ドライブ エクリッセ」を販売する。

ソーラーセルをフィルム状に形成し、風防ガラスの下 の本体ケース内側面(文字板外周部)にリング状に配 置しており、文字板の材質に制限をなくし従来の金属 文字板等の使用を可能にした。(図 7.4 参照)

図 7.4 リングソーラー「エコ ・ ドライブ エクリッセ」5)

シチズン時計は、2000 年のバーゼルフェアで太陽 電池そのもののイメージを変える、最先端技術の結晶

「世界初透明ソーラーセル」を搭載した新製品を発表 し、10 月、シチズン「エコ ・ ドライブ ビトロ」(以 降、ビトロと呼ぶ)を発売した。(図 7.5 参照)

図 7.5 シチズン「エコ ・ ドライブ ビトロ」

(出典:シチズン時計)

7.2

世界初透明ソーラーセル搭載シチズン 

「エコ ・ ドライブ ビトロ」7)

太陽電池腕時計の課題である、文字板の見栄えを解 消すべく開発したソーラーセルは、全く太陽電池と気 づかせない技術である。シチズン時計の技術研究所の 三好幸三は、「開発の最初の動機は、実はシチズン商 事の人に、透明な太陽電池はできないですか?と、唐 突に言われたのがキッカケなんです7)」と語る。社内 展示会での透明ソーラーセルの発表と、ソーラー腕時 計で普通の文字板を使いたいという要望が出始めた時 期と重なり商品開発がスタートする。

図 7.6 に、従来の文字板の裏側に搭載された構造と、

透明ソーラーセルを搭載した「ビトロ」の構造を示 す。従来型では、光を効率よく吸収するために文字板 に様々な工夫が施された。

図 7.6  ソーラーセルの配置 従来(上) 透明ソーラー セル(下)8)

(1)透明ソーラーセルの原理7)

透明ソーラーセルの作成には、大きく 2 つの方法、

セルのパターンを微細化する方法およびセルを極力薄 くする方法が考案された。薄くする方法は、アモル ファスシリコンの屈折率が高いため、いくら薄くして も黄色い色が付いてしまい満足のいく透明度が得られ なかった。したがって、セルの微細パターンの方法が