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世界初 EPD ウオッチ「SEIKO SPECTRUM」、

5 | 世界初クオーツ腕時計の開発と多機能化 1)2)

5.5 セイコー「クオーツ 36SQC」 12)13)

5.11.2  世界初 EPD ウオッチ「SEIKO SPECTRUM」、

「SEIKO SPIRIT SMART S771」

書き換え可能な表示体として、電気泳動ディスプレ イ技術を腕時計に応用し、従来にないデジタル腕時計 を目指した。EPD は、表示保持性を有しており、非 常に小さなバッテリーであっても長時間の表示閲覧と 書き換えが可能になる。この EPD を用いた世界初の 商品は、書き換え可能な電子ブックとして 2004 年に ソニーより市場投入された。セイコーエプソン株式 会社が開発し、セイコーが販売した液晶表示と同様 の 7 セグメント表示とアクティブマトリックス表示の EPD ウオッチについて述べる。

(1)セイコー「SEIKO SPECTRUM」30)

2006 年 1 月、セイコーが EPD を搭載した「SEIKO  SPECTRUM」( 以 降 SPECTRUM と 呼 ぶ ) を 世 界 に先駆けて発売した。EPD の高コントラスならび に表示部の可撓性などの特徴を生かし、今までにな いブレスレット型のウオッチを実現した。図 5.43 に SPECTRUM の外観(左)、外装ケースを含む断面図

(右)、図 5.44 にその表示用ディスプレイの外観を示 してある。SPECTRUM は、ブレスレットを考慮して おり表示部を湾曲させて、腕にフィットするようなデ ザインとなっている。ディスプレイも、ケースに組込 むときに表示部に歪が加わらないよう、湾曲させて製 造している。

図 5.43 SEIKO SPECTRUM30)

図 5.44 ディスプレイの外観30)

表示材料には、E Ink Corporation 製のマイクロ カプセル型電気泳動材料を用いている。図 5.45 は、

EPD 表示体の断面図を示してある。図を基に簡単に 動作の説明をする。マイクロカプセル型 EPD は、溶 媒中に分散させた白黒二種類の顔料粒子を封入した、

直径数十 µm 程度のマイクロカプセルを透明基板と駆 動基板に挟み込んだ構造である。マイクロカプセル内 部には、それぞれ極性が異なる白黒の顔料粒子(白は マイナス、黒はプラス)が溶媒とともに封入されてお り、表示面側に形成された ITO(Indium Tin Oxide)

などの透明共通電極と、裏面側に形成されたセグメン ト電極の間に電位差を発生させることにより、白黒粒 子を上下に移動させ表示動作を行なう。

図 5.45 EPD 表示体の断面図30)

例えば、表示面側である共通電極にプラス、セグメ ント電極にマイナスの電位差を与えた場合、マイナス に帯電された白粒子が表示面側に移動し、表示面側に 集まった白色粒子の色を認識できる。EPD の表示保 持性は、上下電極への電圧印加をなくした場合にも、

白黒粒子がその場に留まり表示を継続するため、省電 力での表示が可能である。特に、静止画を表示中は、

一定期間電力供給が不要である。表示動作そのものに 関しても、EPD ならではの新しい表現を試みた。毎 分の時刻が切り替わるたびに、アニメーション表現を 取り入れ、表示動作に付加価値を加えた。        

白黒粒子の顔料を直接視認するため白黒の品質が高 く、印刷物を見るような高コントラスの表示が可能で ある。液晶表示に比較して、特に白色を高品位に表現 でき、視野角依存性がないため、どの角度からも視認 性が良い。ただし、EPD は完全反射型のディスプレ イのため、バックライトの使用が不可能である。

(2)セイコー「SEIKO SPIRIT SMART S771」31)

EPD に高精細な TFT(Thin Film Transistor)基 板を組合わせ、2010 年にアクティブマトリックス EPD ウオッチ(Cal.S770)、翌年派生機種(Cal.S771、

図 5.46)を商品化した。アクティブマトリックス方式 になることにより、図 5.47 に示すように、表示内容 に自由度が広がり、いろいろな表現が可能になった。

時刻表示においても、7 セグメントの表示より変形さ せた楽しい数字表現ができ、時刻表示のデザイン展開 が大きく広がった。

図 5.46 SEIKO SPIRIT SMART(Cal.S771)31)

図 5.47 EPD での表示例

参考・引用文献

1)  セイコーエプソン株式会社:「腕時計の歴史を変 えた世界初のクオーツウオッチ」2004 年 2 月発 行

2)  株式会社ワールドフォトプレス:「世界の腕時計  QUARTZ クオーツウオッチの開発秘話 - 基本 原理の考案から商品化まで」No.45 pp.116-119  2000 年 6 月 20 日

3)  精工舎 社内報:「せいこう」p.4 1959 年 12 月号 4)  株式会社服部時計店:「SEIKO NEWS 精工舎水

晶時計の紹介」pp.10-11 1960 年 1 月号

5)  精工舎 社内報:「せいこう」新製品技術解説「日 差± 1 秒以内の高精度」 1968 年 6 月号

6)  セイコーエプソン株式会社:「年表で読むセイコー エプソン[1881~2000 年]」p.47,64,65 2001 年 2 月発行

7) 「SEIKO 時計の戦後史」編集委員会:「SEIKO 時 計の戦後史」pp.149-162 1996 年 3 月 28 日発行 8)  グ ッ ズ プ レ ス 編 集 部 特 別 編 集:「THE SEIKO 

BOOK 時の革新者-セイコー腕時計の軌跡-」

pp.88-99      1999 年 5 月 1 日発行 9)  相沢進:「セイコークリスタルクロノメーターに

ついて」日本時計学会誌 No.30 pp.1-10 1964 年 6 月

10) 小口昭:「水晶腕時計の現状と展望」日本時計学 会誌 No.83 pp.4-16 1977 年 12 月

11) 久保田浩司:「セイコークオーツ「アストロン」

IEEE マイルストーン受賞」マイクロメカトロニ クス Vol.49 No.192 pp.61-62 2005 年 6 月 12) 株式会社第二精工舎 社内報:水晶発振式電子腕

時計「SEIKO QUARTZ 36SQC」No.179 pp.10-19 1970 年 11 月号

13) 株式会社服部時計店:「SEIKO NEWS」水晶発 振式電子腕時計 SEIKO クオーツ 36SQC 発売  1970 年 10 月

14) リクルート:週刊就職情報「“ 浮気 ” の仕事が “ 本 気 ” なってしまった」pp.82-85

15) シチズン時計株式会社:シチズンライフ「商品 ・ 技術が語るものづくりのこころ」2002 年 10 号

16) シチズン時計株式会社:G72 広報資料

17) シチズン時計株式会社 時計資料館:社史腕時計 台帳 No.02-16「G720-05A」 

18) リズム時計工業株式会社:社内資料「リニアムー ブメント商品展開」

19) リズム時計工業株式会社:内部資料

20) 諏訪精工舎:「液晶表示式水晶時計 セイコーク オーツ 06LC」日本時計学会誌 No.72 pp.70-76  1974 年 12 月

21) カシオ計算機株式会社:「カシオトロン」報道関 係者向け新製品説明資料 1974 年 10 月 7 日 22) カシオ計算機株式会社:「超軽量 10 気圧(100m)

防水ウオッチ」報道関係者向け新製品説明資料  1980 年 7 月 31 日

23) カシオ計算機株式会社:「カシオ ヘビーデュー ティスポーツ」報道関係者向け新製品説明資料 1983 年 4 月 7 日

24) カシオ計算機株式会社:内部資料

25) カシオ計算機株式会社:「気圧 / 高度・方位・温 度が計測できる 3 種類のセンサーを内蔵した腕 時計」報道関係者向け新製品説明資料 1994 年 1 月 17 日

26) 奥薗祥彦,中鉢治幸:「トリプルセンサウオッチ の開発」日本時計学会誌 No.163 1997 年 12 月 27) 中鉢治幸,奥薗祥彦,小野治夫:「MR 素子を用

いた電子方位計ウオッチの開発」日本時計学会誌 No.149 1994 年 6 月

28) 株 式 会 社 第 二 精 工 舎  社 内 報:SEIKO  JOURNAL ECD デジタルを世界で初めて実用 化 1980 年 3 月

29) 株式会社第二精工舎:新製品説明書「E.C.D デ ジタルクオーツ F623」 1981 年 10 月

30) 石井潤一郎,上林葉月,小須田司:「電気泳動 ディスプレイ搭載ブレスレットウオッチの開発」

マイクロメカトロニクス Vol.52,No.198 pp.36-44  2008 年 6 月

31) 村山哲朗,小越剛,関重彰:「アクティブマトリ クス EPD ウオッチの開発」マイクロメカトロニ クス Vol.57,No.208 pp.26-32 2013 年 6 月