ビジネス交渉人材育成プログラム
ケーススタディー Ⅳ
出資交渉
「シェフズ・デリ・ジャパン」
参加者用ケース情報
シェフズ・デリ社「ロイ・ブラッドリー」用
《秘密資料》
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① あなた(ロイ)の立場
あなたはアメリカで大成功を収めているデリ(惣菜)ショップ経営企業、シェフズ・デリ社の上 級副社長、ロイ・ブラッドリー34 歳である。シェフズ・デリ社の持つ斬新なコンセプト 高級レス トランの味をご家庭で を維持し、ビジネスとしてさらに発展させることがあなたの使命である。
創業者であるアントニオ・バルドゥッチの右腕として、あなたはシェフズ・デリ社のあらゆる部門 に目を光らせることを期待されている。今回、初めての海外進出先として日本が選ばれ、シェフズ・
デリの店舗を展開していくことが決定されたが、あなたは日本でのビジネスがある程度軌道に乗る までシェフズ・デリ社の基本コンセプトが守られ、ブランドイメージに傷がつくことのないよう、
やはりあらゆる面に目を光らせておきたいと考えている。
日本に設立される予定のシェフズ・デリ・ジャパンの社長には、若いがレストラン業界で実績の ある黒岩が選ばれている。何度も一緒に打ち合わせや検討を重ね、黒岩は信頼できる人物だとの結 論には達しているが、シェフズ・デリ本体で働いた経験はないため、本当にシェフズ・デリのコン セプトが理解できているのか、そしてそれを日本で実現できるのか、あなたは多少不安に思ってい る。特に、今年前半はアメリカでの業績が思ったほど伸びず、予定よりも利益が相当下回った関係 で、日本への投資額を予定の半額程度にまで減らさざるを得なかった。あなたは中途半端な形で進 出すると、成功するビジネスも成功しないと考えているため、無理な提携や不利なパートナーシッ プであれば、しばらく余裕資金ができるまで日本上陸を延期してもよいと思っている。あなたは日 本法人においては役職を持たないため、法人が設立されてしまえば、あくまでも親会社の役員とい う立場になり、基本的な経営は日本法人が主体的に動かすこととなる。従って法人が設立される前 の段階で主要な方向性を定めるプロセスに関与しておきたいと考えている。
アメリカ本社社長のバルドゥッチからは、あらかじめ指示した合意条件(⑥参照)さえ守ってく れれば、基本的には黒岩の意思決定を尊重するつもりだが、そうは言っても上級副社長としてのあ なたの意見も無視はできないので、黒岩に率直に意見して欲しいと言われている。バルドゥッチ自 身は、あなたよりは冒険家でもあり日本進出は既定路線として捉えているようである。できれば黒 岩のモチベーションの意味でもまとまる話であればまとめたいとあなたは思う。幸い、パートナー として興味を示している企業は複数あり、好条件での契約が期待できる可能性もある。
② あなたのバックグラウンド(職歴)
あなたは大学卒業後、大手コンピュータ企業に入社し、マーケティングスタッフとして 3 年勤務 した後、マーケティングで有名な某大学のビジネススクール(経営大学院)で経営の基礎を学んだ。
あなたは企業戦略の授業において、「業界の革命児」として取り上げられたシェフズ・デリ社に興 味を持ち、サマーインターンシップ(夏の体験入社)もシェフズ・デリ社にて行った。あなたはイ ンターンシップ中に創業経営者であるバルドゥッチと話す機会を頻繁に持ち、すっかり彼の人柄や 理念にほれ込んでしまった。
そのままあなたは卒業すると、95 年にシェフズ・デリ社マーケティング担当マネージャとして入 社した。一般的に給与レベルの低いフードサービス業への就職は、投資銀行家やコンサルタントな
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ど高給取りを志向しがちなビジネススクール卒業生としては異例のことと、大学でも話題になった らしいが、あなたは業界を変える革命的企業に就職でき、大変嬉しく思っていた。
あなたは入社後、シェフズ・デリ社のブランドが、内実よりも消費者に低く認知されていること に対し、大きな問題意識を感じた。ちょうどタイミングよく、バルドゥッチの旧知のレストラン経 営者から、シカゴ市内の高級デパート、バロンズの地下食品フロアに大きな空きが出そうで、新た なテナントを探しているとの情報が入った。あなたはこれを、シェフズ・デリ社を全国区の有名企 業にする絶好のマーケティング機会ととらえ、出店を強く進言した。集客力のある高級デパートで 客を呼び、完全に差別化された店づくりを行えば、大きな話題となってシェフズ・デリ社の知名度 とブランドイメージを一気に高めることができると考えたのである。
あなたの戦略はまさに的中した。あなた自身が陣頭指揮した店の内装や全体コンセプトは、シカ ゴ中の話題を独占した。マスコミの取材など、表に出るのは社長のバルドゥッチだったが、ブラン ド戦略、イメージ戦略、マーケティング戦略すべてを指揮したあなたは、社長の信頼を一気に獲得 し、翌 97 年異例の速さで副社長に昇進した。
現在あなたはバルドゥッチとともにシェフズ・デリ社の主要な意思決定にすべて参加している。
今回の日本進出にあたっては、アメリカ国内の業績回復に専念したいというバルドゥッチからすべ てを任されている。シェフズ・デリのブランドを守りつつビジネスとして成功できそうかどうかを 判断し、行けるとなったら黒岩をとことんサポートするつもりでいるあなたである。
③ 現在の会社の状況 【全体】
日本法人を設立したと発表したとはいえ、まだ実は資本金が決まっていないため登記も終了して おらず、実質的にはすべてこれからの状態である。社長である黒岩と秘書、黒岩が連れてきた専門 家スタッフのチームのほかは、あなたおよび本社からの応援スタッフが数人いるだけで、これから 日本法人のスタッフ募集なども行う必要がある。日本進出が業界誌等で非常に大きな話題を読んだ ため、黒岩は毎日のように取材や提携申し込み、商談の打ち合わせに追われており、肝心かなめの 組織作りはすべてこれから、という状態であなたは少し心配している。
【資金面】
シェフズ・デリ・ジャパンは今後積極的に店舗を展開していくために、多額の資本(投資)を必 要としている。本社からの投資額は、当初の 1 年は 4 億円程度になる予定である。アメリカでの業 績予想が下方修正された影響もあり、当初 8 億円程度の投入予定が、大幅に削減せざるを得なくな ってしまった。1 年以内に少なくとも 3 店舗の出店が必要と考えており、1 店舗当たりの投資額が 最低でも 1 億円かかることを考慮すると、人件費や宣伝広告費その他の費用も含め、少なくとも初 年度で 7 億円程度の資金が必要となる。つまり、残り 3 億円程度をパートナー企業などから出資(投 資)してもらわないと、ブランドを維持した展開はできない。銀行等からの借入れは一切認めるつ もりはない。資金はすべてパートナー企業などからの出資で賄わせる予定である。
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【人材面】
出店に必要な店舗開発スタッフ、本社スタッフさらには店舗運営に必要なスタッフも、核となる 人材はすべて黒岩が連れてきたので問題ないと言っている。教育や運営システムはすべて本社のも のを使わせる予定なので、稼動できるスタッフの数が揃ってしまえば、軌道に乗せることは比較的 短期間で可能であると黒岩は言っている。しかし、あなたは自分自身の経験からもビジネス開発に は優秀なマーケティングスタッフや店舗開発のスタッフが不可欠と考えており、黒岩の連れてきた スタッフでは、力不足であると感じている。
④ 交渉目的
シェフズ・デリの経営理念に共感してくれることを前提に、パートナー企業として日本進出・市 場浸透に必要な資金・人材面の投入および実際のビジネス展開をサポートしてもらうこと。特に、
開け始めている市場に一気にシェフズ・デリの名前を浸透させるため、できる限り大規模かつ早期 に協力してくれる企業をパートナーに得たい。またその際、なるべく長期的な関係が構築できるよ う、お互いにメリットのある関係を取り決めておきたい。単なるキャピタルゲイン狙いといったビ ジネスライクな関係は認めるつもりはない。
⑤ 交渉相手
複数の大手商社、食品メーカー、レストランチェーンなどからアプローチがあったが、経営の方 向性や資金供給の条件等でかみあわず、最終的に以下の 2 社が残ったと報告を受けている。
【総合商社 越後屋商事 】
世界中の企業と輸出入ビジネスを展開している日本でも有数の総合商社。年間取扱高は 20 兆円 弱、もちろん食品輸入等も手がけており、食材の仕入れ等でパートナーシップを組むメリットが生 じる可能性がある。近年、新規ビジネス開発に力を入れており、海外企業の日本進出サポートも数 多く手がけている。
【スーパーマーケット ダイコクヤ 】
大都市周辺の高級住宅街中心に出店している高級食品スーパー。高所得者をターゲットとした輸 入食品やワインなどを中心に扱い、有名料理番組などにも食材を提供するなどして高いブランドイ メージを獲得している。全国で 30 店舗弱ほどと、規模自体は大きくない。ダイコクヤは、社長の 子供で後継ぎである海野がアメリカまで来てくれて、提携を申し入れてきたときに面談している。
アグレッシブで好感の持てる人物だったため、あなたは有力な提携相手だと考えている。
⑥ バルドゥッチと相談して決めた交渉条件
1. 日本での店舗展開は、基本的なコンセプトを守ってさえくれれば、具体的手法に関しては ある程度市場環境に対応させて変更しても構わない。例えばアメリカでは行っていないフラ ンチャイズ制を導入することなど。
2. パートナーの条件としては、資金面、人材供給面、ビジネス開発面すべての面において何 らかのメリットをもたらしてくれる企業であること。優先順位ナンバーワンは資金面である。