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「出資交渉」用語解説

ドキュメント内 橡04_ケース扉絵 (ページ 93-105)

 

・  「 出 資 」:企業や個人が、対象となる企業の株式(このケースの場合シェフズ・デリ・ジャパン 社の株式)を購入する形で資金を投入(投資)すること。出資により提携関係を結ぶことを「資 本提携」とも言う。出資側(投資側)からすると、企業が成功すれば配当(後述)による収益 や株式公開(後述)によりキャピタルゲイン(後述)を得ることができる。また一定以上の比 率(株式持分比率)を保有すれば、その企業の経営に関与できるため、自社に協力してもらう など、ビジネス上のメリットも生じる。反面、企業が倒産などして失敗すれば、投資を回収で きなくなるリスクを負う。出資受け入れ側からすると、借り入れと違って返済の義務が生じな いため、少なくとも一時的にキャッシュフロー(現金保有)が潤沢になるメリットがある。一 方、一定上の比率を外部企業に保有されると経営に関与され、自社の独立性を保てなくなるリ スクがある。企業同士が業務提携を行う際、緊密な事業上の関係を構築することが重要となる 場合、この「出資」を行って関係を強化することが広く行われている。 

 

・  「(株式)持分比率」:企業の全株式発行総数に対する、特定株主の持ち株数の比率のこと。持 分比率に応じ、企業に対し様々な権利を行使することができる。主なものとしては、3%以上で

「帳簿閲覧」と「取締役・監査役の監査請求」、10%以上で「会社解散請求」、33.4%以上(3 分の 1 超)で「総会特別決議に対する拒否権行使」、50%以上で「取締役・監査役の選任」「取 締役・監査役の報酬額決議」「総会普通決議」、66.7%以上(3 分の 2 超)で「営業譲渡」「取締 役・監査役の解任」「第三者に対する新株有利発行」「譲渡制限があるときの第三者割り当て増 資」「定款の変更」「解散・合併」などが可能となる。つまり、むやみに株式を外部に譲渡する と、会社のコントロールを奪われてしまう可能性が生じる。 

 

・  「 株 式 公 開 」 ≒ 「 上 場 」:企業の株式を「東京証券取引所」といった「株式市場」で一般の人が 売買できるよう、市場に登録(上場)して公開すること。市場登録(上場)には厳しい審査が 課され、様々な基準をクリアしなければ登録(上場)できないため、一般には企業が成功した 証とされ、多くの企業が「株式公開」を目指して経営を行う。また株式が公開されると、それ まで「未公開」であった株式に「市場価格」がつき、一般に「未公開株式」であったときの数 倍から場合によっては数十倍もの価格となることから、株式を保有している創業者や取締役な どは株式公開により大富豪となる可能性を持っている。当然その企業に出資している企業も大 きなキャピタルゲイン(後述)を得ることができるため、経済的動機に基づいて出資した場合 は、出資先企業に積極的に株式公開を働きかけていくケースが多い。 

 

・  「 ベ ン チ ャ ー キ ャ ピ タ ル 」:成長が見込めるベンチャー企業に対し、出資という形で資金を投下 して株式を保有し、その企業を株式公開(上場)させることによってキャピタルゲイン(後述)

を得ることを目的とする投資機関。一般的には出資先のビジネスに関する事業会社や専門家で はなく、経営に関与する際も適切な資金活用をしているか、あるいは資本政策は適切に行われ ているか、といった全体的な経営管理の観点からであることが多い。 

 

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・  「 第 三 者 割 り 当 て 増 資 」:企業が社外の個人あるいは企業(第三者)に対して新たに株式を発行 し、購入してもらうこと(出資)を通じて資金を得る手段。ベンチャーキャピタルのようにキ ャピタルゲインを目的とするケースと、事業上のパートナーシップ・提携関係の強化を目的と して事業会社が増資に応じるケースとがある。 

 

・  「 配 当 」:株主に対する、会社の利益の配分のこと。企業業績により、当該年度ごとに 1 株当た りの配当金額が決定される。 

 

・  「キャピタルゲイン」:株式などの有価証券や土地等の資産の価格変動に伴って生じる売買差益

(利益)のこと。譲渡益・資本利得と訳される。株式を公開していない企業の株式を購入し、その 後その企業が株式公開すると一般的に相当なキャピタルゲインを得ることができる。 

   

       

 

 

 

 

 

 

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「シェフズ・デリ」社  基本情報 

(業界誌記事より)  

         

 

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アメリカ外食業界の風雲児、ついに日本上陸か? 

 

  す で に 飽 和 感 が た だ よ い 、 既 存 業 者 間 の 価 格 競 争 が 激 化 し て いる外食業界に、新たな黒船が襲来する。

全米で新しい形態のレストラン・デリを展開し急成長、新たな外食の旗手として注目を浴びている C h e f s  D e l i (シェフズ・デリ)社が、来春にも日本に進出する計画があるというのだ。食習慣が違い、材料の質や 安全性にもうるさい日本の消費者に果たして受け入れられるのか、シェフズ・デリ社を徹底検証する。 

 

  ご存知の読者も多いだろうが、アメリカにおいて外食産業は日本以上に競争が激しく、新しいコ ンセプト・フォーマット(業態)の企業が生まれては消え、生まれては消えしている。その中で、

比較的最近唱えられ始めたが、どうやら新しい外食の潮流として定着しそうなコンセプトの一つに、

HMR(ホームミール・リプレースメント) がある。言葉が表すように「自宅での食事の代替品」

という意味であり、単なるファーストフードやレストランの食事といった「軽食」あるいは「非日 常の食事」とは違い、毎日の食卓を占める食事を代替してしまおう、というコンセプトのもとに展 開されている。今回取り上げるシェフズ・デリ社は、まさに HMR の旗手として最近注目を浴びてい る企業である。どこに新しさがあるのか、今後の展望はどうなのか、早速取材してみた。 

 

  シェフズ・デリ社は 1985 年、イリノイ州シカゴの小さなデリ(惣菜などの食品を主体に日常生 活用品などを扱う小売店で、日本のコンビニと惣菜屋が合体したような業態)からスタートし、ま たたく間に全米に店舗網を拡大した、業界注目の企業である。創業者(正確には二代目だが)のア ントニオ・バルドゥッチ氏は、イタリア移民である父親が母親とともに始めた小さな街角のデリ店

(テイクアウトもイートインもできる惣菜屋)を、わずか 20 年足らずでアメリカ外食産業屈指の 成長企業に育て上げた。そして今、世界第 2 位の外食大国日本に向けて、虎視眈々と進出の機会を うかがっているというのだ。 

 

バルドゥッチ氏の戦略は極めてシンプルである。高級レストラン並みの味の料理を、持ち帰って 家庭で味わってもらおう、というものだ。一般にデリの料理というと、多くはファーストフードに 毛の生えたようなもので、そもそもデリの店に本格的な調理を学んだシェフが在籍していることな どほとんどないと言って良いだろう。バルドゥッチ氏は、もともとシェフとして数々の有名店の厨 房に在籍していた父親が、体調を壊してから始めたデリ店を子供の頃から見て育った。出かけたと きなどに他のデリを利用して、「なぜ他の店はこんなにひどい味の料理を出すのだろう」と子供心 に思っていたそうだ。 

 

高校生になると氏は学校から帰ると毎日のように父親について料理を習い、新しい料理を作って はデリの店頭でお客の反応を見るようになる。この鍛錬の成果か、18 歳になる頃にはお客も父親の 料理か、氏の料理か分からなくなるほどだったという。しかし、このままで終わらないところが氏 の非凡なところである。氏はいつしか「イタリアンを中心とした料理のおいしいデリ」を全米に広 げたい、という夢を持つようになったという。まさに現在にいたるシェフズ・デリ社の構想が生ま れた瞬間であった。 

 

1985 年、氏は父親が病に倒れ、第一線から退いたのをきっかけに、家族の貯金をはたいて会社を

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設立し、新しいシェフを雇い入れる。これは氏に言わせると冒険だったそうだが、手を抜かないよ う氏が目を光らせた上でシェフが作る料理は大変な評判を呼び、「本格的なシェフの居るデリ」と して瞬く間にシカゴでも1、2を争う人気店となった。これをきっかけに、氏は積極的に経営不振 のデリ店を買収してシェフを雇い入れ、経営を建て直すという手法で店舗を増やしていくのである。

そして 1996 年、シェフズ・デリはついにシカゴ市内中心部にあり、高級ブランド品の店舗が多い ことで有名な老舗デパート バロンズ の地下に店舗を出すことになった。それまでの、どちらか というと下町中心の店舗展開から、高級品ばかり扱うデパートへの出店は、シェフズ・デリ社にと って一大転機となった。バルドゥッチ氏は語る。 

 

下町の無名デリが出店するというのですから、他の高級食品店は最初さげすみの目で見ていたと思い ますよ。しかし、私には勝算がありました。それまでに、高級デパートの食品フロアはすべて徹底的に調査 していましたし、徐々に増えていた高額所得者のお客様から、彼らの好む料理、食品は調べ上げていまし たから。それに何より、金持ちでも貧乏人でも、おいしいものは大好きなんですよ。私自身おいしいものに 目が無いですし、お客様に楽しみながらおいしい物を買ってもらうコツはつかんでいましたから。 

 

氏の読みどおり、この店はバロンズの食品フロア史上例を見ない大成功を収めるのである。開店 前に氏をバカにしていた他の店は、オープンしたシェフズ・デリの店を見て、驚嘆したという。何 しろそこには、既存のデリのイメージを完全にくつがえした「エンターテインメント・デリ」とで もいうべき空間が出現していたのだから。この 300 ㎡余りの店は、いまや伝説となっている。 

 

店内に入ると、アッと驚くことにまず厨房が目の前にあるのである。シェフが客に出す料理を調 理している場面を、そのまま目にすることができる。これではごかましはできないので客にとって は大変な安心感につながると同時に、目を楽しませる要素となることは言うまでもないだろう。さ らに香ばしい香りの漂う本格的なパン焼き釜があり、中央にあるロティサリー(回転式肉焼き機)

ではチキンが丸のままジュウジュウと音を立てている。奥に進むと、天井からずらりと並んだ高級 ハム・チーズ類が食欲をそそる。もちろんその下には、あらゆる種類の料理を並べたのではないか と思うほどの、調理したばかりのおいしそうなフードが湯気を立てて並んでいるのだ。 

 

フードは、すべて対面で販売される。店に 10 人以上もいるシェフが販売も兼ねており、お客の 好みを聞いて、その場で少し味付けを変えてくれたりもする。さらに驚いたことには、朝・昼・晩 とメニューの半分以上を入れ替え、客の食生活を豊かにするサポートまでしてくれる。料理の下の 段には、相性の良いワインが並べられ、客の購買意欲をそそる。客は、シェフズ・デリに行けば一 日の食事をすべて、まさにスープからデザートまで(その気になればフルコースで)買うことがで きる。しかも高級レストラン並みの味を、家庭に持ち帰って楽しめるのだ。 

 

バルドゥッチ氏の非凡さは、店内で売る料理の食材やスパイスまで、同時に店頭で売るという常 識破りのアイディアにも見ることができる。料理好きなグルメの客は、最初はシェフの調理した料 理を買い、次は同じ食材とスパイスを使って自分でもチャレンジすることができる。しかも店のシ ェフ達は、惜しげもなく調理のコツを教えてくれるのだと言う。こういった顧客を大事にする姿勢、

楽しませる姿勢は店への忠誠心となって現れる。現に、アンケートによると一度来店した客の 98%

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