第 3 章 日本と韓国における特別支援教育の ICT 活用教育成果評価
第 3 節 UISS の開発と有効性の検討
3.2 ICT 活用教育に関する先行文献のレビュー
3.4.2 韓国における「UISS(試案)」に関する有効性の検討
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② 信頼性の検証(内的整合性:Cronbachʼs α係数)
韓国の特別支援教育の現場教員を対象として、UISSの信頼性を分析した。対象の基本属 性は、表3-11に示す。
UISSの信頼性を分析するために、各領域と項目に対するCronbachʼs α係数を求めた。
一般的に、α 係数が0.70以上であれば、内的整合性が高く判断され、信頼性が認められる (Cronbach,1951)。
信頼性について分析した結果、領域のCronbachʼs α 係数は「コミュニケーション能力」
の領域は0.871、「情報活用能力」の領域は 0.788、「社会生活機能」の領域は、0.823であ
り、全ての項目は、0.971 であった。このことから各領域と項目の信頼性が検証された(表 3-12)。
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表3-11 韓国の特別支援教育の現場教員の基本属性
属性(n=25)
平均年齢(SD) 41.3歳(10.1) 性別(%) 男性 8名(32.0%)
女性 17名(68.0%) 特別支援教育教員
免許の有無(%)
有 23名(92.0%) 無 2名(8.0%) 平均職業経験年数(SD) 13.5年(8.6) 特別支援教育における平均勤務年数(SD) 11.1年(8.5)
担当している クラスの障害種(%)
肢体不自由 25名(100%) 知的障害 0名(0.0%) 聴覚障害 0名(0.0%) 視覚障害 0名(0.0%) 病弱 0名(0.0%) 重複障害 0名(0.0%)
担当している クラスの
学年(%)
小 学 部
1年 1名(4.0%) 2年 1名(4.0%) 3年 1名(4.0%) 4年 1名(4.0%) 5年 1名(4.0%) 6年 1名(4.0%) 小計 6名(24.0%)
中 学 部
1年 1名(4.0%) 2年 1名(4.0%) 3年 2名(8.0%) その他 6名(24.0%)
小計 10名(40.0%)
高 等 部
1年 1名(4.0%) 2年 1名(4.0%) 3年 1名(4.0%) その他 4名(16.0%)
小計 7名(28.0%) その他(専攻科) 2名(8%)
表3-12 韓国における「UISS(試案)」の信頼性の検証結果
(n=25) 項目 項目が削除された場合の
Cronbachʼs α係数 Cronbachʼs α係数
「コミュニケーション能力」 0.871
Q1.聞く能力 0.834
Q2. 聞いて、表現する能力 0.816 Q3. 状況に応じ、聞いて表現する能力 0.826
「情報活用能力」 0.788
Q4.情報の出典への理解 0.775
Q5.情報収集 0.769
Q6.情報の共通点 0.764
Q7.情報の相違点 0.766
Q8.発表の姿の改善 0.771
Q9.情報伝達 0.763
Q10.課題導出 0.763
Q11.問題解決認識 0.764
Q12.著作権の意識 0.765
Q13.個人情報 0.762
「社会生活能力」 0.823
Q14.環境変化への適応力 0.775
Q15.意欲向上 0.767
Q16.社会参加 0.792
Q17.自己尊重感 0.781
Q1~Q17 0.971
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③ 内容的妥当性の検証
韓国の特別支援教育の現場教員と研究者から得られたデータを用い、内容的妥当性を検 討した。
問1~24の妥当性評価の結果等を表3-13-1、表3-13-2にまとめた。その結果、「コミュニ ケーション能力」が3.8点、「情報活用能力」が3.6点、「社会生活機能」が3.8点であるこ とから領域の内容的妥当性が検証された。「UISS」の領域に対して、「UISSを用いることで、
能力のある生徒に対しては、とても有益であり、成果が見えると思う。しかし、ICT を重 度・重症障害生徒にどう活用すればいいのか、自分も悩むところが多い」の意見があった。
「コミュニケーション能力」、「情報活用能力」、「社会生活機能」領域の項目の妥当性を 検討した結果、すべての項目の平均得点が 3 点を超えたことから内容的妥当性が検証され た。
「コミュニケーション能力」領域の項目に関する問5-7のうち、平均得点が最も高いのは、
3.6点であり、問5と問6であった。
「情報活用能力」領域の項目に関する問9-19のうち、平均得点が最も高いのは、3.9点で あり、問16であった。次いで問15、問17、問18の順で平均得点が高かった。
「社会生活機能」領域の項目に関する問20-23のうち、平均得点が最も高いのは、4.0点 であり、問22であった。次いで問21、問20での順で平均得点が高かった。
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表3-13-1 韓国の「UISS(試案)」に関する意見調査結果1
(単位:%(人)) 質問項目 妥当である5.きわめて 4.妥当で
ある
3.どちらかと いうと妥当
2.妥当で ない
1.全く妥当
でない 無回答 平均 得点 SD
領 域
1 コミュニケーション能力 9.5(4) 35.7(15) 21.4(9) 3.8 0.6 2 情報活用能力 9.5(4) 26.2(11) 28.6(12) 2.4(1) 3.6 0.7 3 社会生活機能 11.9(5) 31.0(13) 19.0(8) 4.8(2) 3.8 0.9
4 領域に関する自由記述 あり: 1名
領 域 1
5 聴くく能力 7.1(3) 31.0(13) 21.4(9) 7.1(3) 3.6 0.8 6 表現する能力 7.1(3) 28.6(12) 23.8(10) 4.8(2) 2.4(1) 3.6 0.9 7 状況に応じ、聞いて表現する能力 9.5(4) 23.8(10) 23.8(10) 9.5(4) 3.5 0.9
8 自由記述 なし
領 域 2
9 情報の出典への理解 11.9(5) 19.0(8) 28.6(12) 2.4(2) 3.4 0.9 10 情報収集 9.5(4) 28.6(12) 19.0(8) 7.1(3) 3.5 0.9 11 情報の共通点 11.9(5) 14.3(6) 26.2(11) 9.5(4) 2.4(1) 3.3 1.1 12 情報の相違点 11.9(5) 19.0(8) 23.8(10) 9.5(4) 3.4 1.0 13 発表の姿の改善 9.5(4) 28.6(12) 19.0(8) 2.4(1) 4.8(2) 3.4 1.0 14 情報伝達 7.1(3) 31.0(13) 21.4(9) 4.8(2) 2.4(1) 3.6 1.0 15 課題導出 16.7(7) 23.8(10) 19.0(8) 4.8(2) 2.4(1) 3.8 0.9 16 問題解決認識 14.3(6) 23.8(10) 21.4(9) 4.8(2) 2.4(1) 3.9 0.9 17 著作権の意識 14.3(6) 14.3(6) 26.2(11) 4.8(2) 4.8(2) 2.4(1) 3.7 1.1 18 個人情報 21.4(9) 19.0(8) 14.3(6) 9.5(4) 2.4(1) 3.7 1.1
19 自由記述 なし
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表3-13-2 韓国の「UISS(試案)」に関する意見調査結果2
(単位:%(人)) 質問項目 5.きわめて
妥当である
4.妥当で ある
3.どちらかと いうと妥当
2.妥当で ない
1.全く妥当
でない 無回答 平均 得点 SD
領 域 3
20 環境変化への適応力 11.9(5) 33.3(14) 14.3(6) 4.8(2) 2.4(1) 3.8 0.9 21 意欲向上 16.7(7) 26.2(11) 11.9(5) 9.5(4) 2.4(1) 3.8 1.0 22 社会参加 11.9(5) 35.7(15) 11.9(5) 4.8(2) 2.4(1) 4.0 0.8 23 自己尊重感 7.1(3) 33.3(14) 16.7(7) 2.4(1) 4.8(2) 2.4(1) 3.6 1.0
24 自由記述 なし
3.5 「UISS」の開発に関する考察
従来、日本と韓国の特別支援教育においは、ICT を活用した教育に関して、どのような 効果があるのかといった定性的な評価は行われたが、その効果がどの程度のものなのかに ついては、評価できなった。本章では、特別支援教育におけるICT 活用教育を定性的に評 価した事例や先行研究を収集し、特別支援教育におけるICT 活用教育の成果を定量的に評 価できる尺度「UISS(試案1)」を開発した。「UISS」を用いて評価する主体は教員であり、
障害生徒に対する変化の様子について、教員の主観的な評価が行われる。また、「UISS」は ICT を活用した教育の成果を評価することが前提であるため、事後評価が求められる。
「UISS」を用いることで、特別支援教育におけるICT活用教育の課題を明らかにすること ができると考えられる。
「UISS(試案1)」の有効性を検討するために、日本と韓国の特別支援教育において妥当性 と信頼性を検証した。「UISS(試案1)」の信頼性の検証のため、日本と韓国の特別支援教育 における現場教員を対象とし、5件法で回答を求めた上、各領域と項目のCronbachʼs α係 数を求めた。その結果、日本の場合、「コミュニケーション能力」が 0.850 であり、「情報 活用能力」が0.779 であり、「社会生活機能」が0.830 であった。韓国の場合、「コミュニ ケーション能力」が0.871 であり、「情報活用能力」が0.788 であり、「社会生活機能」が
0.823であった。日本と韓国どちらも各領域におけるα係数は、すべて0.70以上であった。
このことから、「UISS(試案1)」は、日本と韓国の特別支援教育におけるICT活用教育の 成果を評価する尺度として十分な信頼性を有していることが明らかになった。
また、「UISS(試案1)」の内容的妥当性の検証のため、日本と韓国の特別支援教育におい て、専門家意見調査を実施した。専門家意見調査の回答は、5件法で求めており、5件法の 中、「妥当である」との3点を超える場合、妥当性が検証されたと判断された。日本の特別 支援教育における専門家意見調査の結果、「コミュニケーション能力」の領域が4.0点、「情 報活用能力」の領域と「社会生活機能」の領域が3.9点であった。韓国の特別支援教育にお ける専門家意見調査の結果、「コミュニケーション能力」の領域が3.8点、「情報活用能力」
の領域が3.6点、「社会生活機能」の領域が3.8点であった。日本と韓国どちらも、ほとん どの項目が3.0点を超えていることから、「UISS(試案)1」の内容的妥当性が検証された。
以上のように、本章では、「UISS(試案1)」の信頼性(内的整合性)及び妥当性(内容的妥当 性)が検証された。検証により「UISS(試案1)」は日本と韓国の特別支援教育におけるICT 活用教育の成果を評価するのための尺度として活用することが可能になった。
114 3.6 「UISS」の完成
以上、「UISS(試案1)」について有効性を検討した結果、「UISS(試案2)」が完成された。
完成されたものは付録3と付録4に示す。