第 3 章 日本と韓国における特別支援教育の ICT 活用教育成果評価
第 4 節 日本と韓国の特別支援教育における ICT 活用教育の 成果評価
4.4 日本と韓国の特別支援教育における ICT 活用教育の成果評価の比較
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自由、知的障害、視覚障害、聴覚障害などであるが、韓国の対象とした障害生徒は肢体不 自由に限定されている。日本の肢体不自由の障害生徒のみを分析対象とすると、韓国の結 果と同様に、「社会生活機能」>「コミュニケーション能力」>「情報活用能力」という傾向 が見られた。このことから、障害種により、「コミュニケーション能力」、「情報活用能力」、
「社会生活機能」における成果が異なる可能性が確認されたが、対象者の数が少ないため、
今後、さらなる検討が必要である。
第2に、成果評価の重要性に関する認識の違いが考えられる。韓国は、1998年に大きな 経済危機を迎え、社会全体が大きく変換した。従来には実行されなかった成果評価システ ムが、政府の主導で導入され、成果評価への重要性が高まった(KDI韓国開発研究院、2000)。
2002年には、ほぼすべての分野において、成果評価システムが導入された。教育分野にお いても「特別支援教育における情報化現状指標」、「ISSS(ICT Standard Skill for Student)」
のような指標や指数が開発され、全国調査が行われた。このような社会的背景が、特別支 援教育の教員の評価に関する認識にも影響し、成果の向上につながったと考えられる。
第3に、ICT活用教育に関する考え方の変換が考えられる。韓国における1990年代から 2010年代までの障害生徒に関するICT活用教育の研究175件の動向をみると、1990年代 から2000年代までは、コミュニケーション能力に関する研究が最も多かった。一方、2000 年代後半からは、情報活用能力に関する研究が多くなった。加えて、2010年代には、社会 参加と自立活動といった社会生活機能に関する研究が多くなっている(YANG、2014)。従来、
障害生徒の言語能力に関する研究が多く、コミュニケーション能力に関する研究が多かっ たが、現在は、障害生徒が独立した社会構成員として生きて行くため、社会生活機能の向 上が図られている。このような考え方の転換が、本研究において、韓国の「社会生活機能」
の向上の結果にも影響していると考えられる。一方、日本における2000年代から現在まで の障害生徒に関するICT活用教育の研究81件の動向を見ると、学習支援、社会参加、コミ ュニケーション等の研究が多い。特にコミュニケーション関連の研究が最も多く(約51%)、
次いで社会生活機能関連(約37%)であり、情報活用能力関連の研究(約11%)は最も少なかっ た。また、社会生活機能に関する研究の対象者は、障害生徒よりも、障害者が主であった。
このことから、日本のICT活用教育の場合、主に、コミュニケーション手段としての取り 込まれており、本研究において、日本の「コミュニケーション能力」の向上の結果にも影 響していると考えられる。
図3-6 日本と韓国の特別支援教育におけるICT活用教育の成果評価比較(項目) 0
1 2 3 4 5 Q1
Q2
Q3 Q4
Q5
Q6
Q7 Q8 Q9
Q10 Q11
Q12 Q13 Q14
Q15 Q16
Q17
日本 韓国 単位:点
126
表3-15 日本と韓国の特別支援教育におけるICT活用教育の成果評価の詳細
(単位:点)
成果評価 日本 韓国 t 値
「コミュニケーション能力」 2.9 3.0 -0.4*
「情報活用能力」 2.4 2.9 -1.9
「社会生活機能」 2.7 3.4 -2.9
Q1.相手を意識して聞く能力 2.8 3.1 -1.1
Q2.聞いて、表現する能力 3.0 2.9 0.4
Q3.状況に応じ、相互関係の中で、
適切なコミュニケーションスキルを使う能力 2.8 3.0 -0.6
Q4.情報出典の理解 2.7 3.0 -1.2
Q5.情報収集 2.7 3.1 -1.2
Q6.情報の共通点 2.2 2.8 -1.7
Q7.情報の相違点 2.0 2.7 -2.3
Q8.発表の姿の改善 2.8 2.9 -0.4
Q9.情報伝達 2.4 2.8 -1.2
Q10.課題導出 2.1 2.9 -2.4*
Q11.問題解決認識 2.5 2.8 -1.2
Q12.著作権の意識 2.1 2.7 -1.8
Q13.個人情報 2.1 2.8 -2.1*
Q14.環境変化への適応力 2.5 3.4 -3.0
Q15.意欲向上 2.9 3.5 -1.7
Q16.社会参加 2.7 3.4 -2.5
Q17.自己尊重感 2.6 3.3 -2.8
*p<0.05
注)各領域のなか、平均得点が最も高い項目を網掛けで示す。