第 9 章 剛体の運動 129
12.3 静電ポテンシャル
位置エネルギーと静電ポテンシャル 実際には式(12.10)を用いて電場は 求めるのは困難である.この式はベクトルの足し算で方向などを考慮しな くてはならないからだ.
そこで力学の場合を思い出してみよう.力を直接求めず,まず位置エネル ギーを求めると,ベクトルの和でなく,エネルギーという方向をもたない量 の和を求めればよくなり,問題が簡単になった.また,エネルギーの保存 則を用いて現象を解釈できるようになった.そこで電磁気にも位置エネル ギーを導入しよう.クーロン力に逆らって仕事をすると位置エネルギーが たまる.この位置エネルギーを表すのに静電ポテンシャルを定義する.位 置エネルギーと静電ポテンシャルの関係は,
(位置エネルギー)=(電荷)×(静電ポテンシャル) (12.11) である.
静電ポテンシャルは
Φ(r) =
∑N i=1
1 4π0
Qi
Ri (12.12)
で定義される.これより電場は
E=−grad Φ(r) (12.13)
となる.
連続的な分布 電荷は素電荷からなっているので,電気量は離散的な値
(eの整数倍)しかとらない.よって,(12.10)を計算する必要がある.し かし,実際には帯電した物質では電子の電荷は10−10m 間隔で分布してい るので,これらを遠く(10−10mのスケール)から見る限り,連続分布と 思ってよいのである.黒板の字を思い描いてみよう.目を近づけてみれば粉 のあるところとないところがはっきりと見えるが,チョークの粉の間隔よ りも十分離れてみればチョークの濃淡は連続的に変化して見える.同じよ
12.3 静電ポテンシャル 181 うに原子間隔よりも大きなスケールから眺めると,電荷は連続的に変化し
ているように見えるのである(図12.2).
図12.2 近づいてみると黒と白の点だが,遠くから見るとグレーに見える.グレー の濃淡は黒点(白点)の密度で決まっている.
こうした状況は電荷密度を使って記述される.電荷密度ρ(r)を用いると,
r付近の微小体積∆V の中にある電荷∆Qは
∆Q=ρ(r)∆V (12.14)
で与えられる.
連続的な電荷密度が与えられたときの静電ポテンシャルの表式を求めよ う.位置riにおける微小体積∆Vi中の電荷が∆Qiだとする.この場所の 電荷密度はρi= ∆Qi/∆Viである.
Φ(r) = 1 4π0
∑
i
∆Qi
|r−ri| = 1 4π0
∑
i
ρi∆Vi
|r−ri| (12.15) である.体積を無限小にもってiくことで,微小体積の和は体積積分になり,
Φ(r) = 1 4π0
∫ dQ(r0)
|r−r0| = 1 4π0
∫ ρ(r0)dV0
|r−r0| (12.16) となる.ここで電荷密度を考えたが,表面電荷密度
dQ(r0) =σ(r0)dS0 (12.17) や線電荷密度
dQ(r0) =λ(r0)dr0 (12.18) を考えるほうが便利な場合は,
Φ(r) = 1 4π0
∫ dQ(r0)
|r−r0| = 1 4π0
∫ σ(r0)dS0
|r−r0| (12.19) Φ(r) = 1
4π0
∫ dQ(r0)
|r−r0| = 1 4π0
∫ λ(r0)dr0
|r−r0| (12.20) となる.
電場を求めるにはこれらの勾配を求めればよい (式(12.13)を使う). r−r0=Rとすると
+ gradについては,第6 章の保存力のところで説明 した.gradV (Vはスカラー 関数)は,∇V とも書かれる.
ここではなれるために∇を 使って書く.
∇ 1
R =− Rˆ
R2 (12.21)
から,式(12.13)と組み合わせて,電場は E(r) = 1
4π0
∫ Rˆ
R2ρ(r0)dV0 (12.22) となる.
表面電荷密度が与えられている場合は E(r) = 1
4π0
∫ Rˆ
R2σ(r0)dS0, (12.23) 線電荷密度が与えられている場合は
E(r) = 1 4π0
∫ Rˆ
R2λ(r0)dr0, (12.24) となる.ポテンシャルに比べて電場は,はるかに計算しづらい表式になって しまうことに注意しよう.
電場から電位を求める 電位から電場は式(12.13)から求められる.一 方,電位から電場を求めるには,逆に積分してやればよい.
+力から仕事を計算するの と同じやり方(式6.59参照)
である. Φ=−
∫
E·dr0 (12.25)
無限遠で0で,原点Oで球対称の電場の場合,
Φ=−
∫ r
∞
E(r0)dr0 (12.26) となる.
演習問題12
A 1. 水素原子における重力とクーロン力
水素原子のモデルとして,陽子のまわりを電子が回っていると考え る.その回転半径は0.5˚A= 5×10−11mである.このとき,クーロ ン力と重力の比を求めよ.ただし,陽子の質量Mp= 1.7×10−27kg, 電子の質量me= 9.1×10−31kgである.
2. 静電ポテンシャルと電場
(12.13)に(12.12)を代入してクーロンの法則を導け.
3. ポテンシャルと運動エネルギー
12.3 静電ポテンシャル 183 図のような位置A,B,Cに正の電気量Q(>0)の電荷が置かれてい
る.点ABCDは正方形を作り,その中心は原点Oである.正方形の 1辺の長さは2aで,点A, B, C, Dの座標は図のように与えられて いる.
電荷Qが距離Rだけ離れた位置につくる電場Eの大きさは E =k Q
R2
であり,無限遠での電位を0とおくと,この電荷Qがつくる電位Φ は
Φ=kQ R である.
(a) 原点Oにおける電場ベクトルを求めよ.
(b) 点Dにおける電場ベクトルを求めよ.
(c) 原点における電位を求めよ.
(d) 点Dにおける電位を求めよ.
(e) 自由に動くことのできる,質量m,電気量q(>0)の点電荷を,
原点にOにそっとおき,手を離した.すると点電荷は徐々に動 き出し,十分距離が離れた速度で一定の速さで運動した.その 速さと向きを答えよ.
A
B C
D
O
(a, a)
(-a,-a) (-a, a)
(a,-a)
13 ガウスの法則と導体
電荷qの点電荷を考える.この周りの電場はクーロンの法則(12.10)で簡 単に計算できる.複数の点電荷がつくる電場も同様に計算できる.では,逆 に与えられた電場から電荷の大きさとその位置を推測することができるで あろうか.答えはイエスである.これがガウスの法則と名付けられている.
13.1 ガウスの法則
電気量Qの点電荷を中心とした半径rの球を考えよう.この球面上の電 場はQ/4π0r2なので,球の表面積をかけるとQ/0となる.これは半径に 依存しない.
では球面でない場合はどうだろう? これを説明する前に立体角という概 念を説明する.
立体角 ある場所からものを眺めたとき,それがどれくらいの視野を占 めるかを定量的にあらわしたものが立体角である(図13.1).この立体角に
対応する平面の角がラジアンである.ラジアンは円弧の長さで定義された. +ラジアンについては,4.4 立体角は 節参照.
dω= cosθdS
r2 (13.1)
と定義される.dSは微小面積である.θは面の法線ベクトルと視線の方向 の角度を表す.cosθはどんなひねくれた方向を向いた面でも球面に射影す ることを意味する.どんなに大きな面積でも見る方向に沿っておかれてはあ
まり視野を妨げない.また,r2でわることは単位球に変換することを意味 月 と 太 陽 の 面 積 の 比 は 約 16000倍,距離は約400倍 なので,立体角がほとんど同 じである.そのため見た目の 大きさが変わらず,皆既日食 が起こる.
している.単位円の円周を積分すると2πになるように,立体角を積分する と4πになる.閉じた曲面の中にある点のまわりの立体角の合計は必ず4π
視野が4πということ.
である.
ガウスの法則の導出 点電荷の周りの任意の曲面を考え,その面での電 場を考える.面と電場は一般には垂直でない.ここでその垂直成分,Enを
考える(図13.2).nを曲面に垂直な単位ベクトルとすると, +閉じた曲面を考える場合,
nの向きは,面の内側から外 側に向かっているとする.
図13.1 立体角の定義
En=E·n (13.2)
が成り立つ.Enを曲面すべてに関して積分した値,
∫
EndS=
∫
E·ndS=
∫ Q 4π0
cosθ
r2 dS (13.3) は,cosθ/r2dSが立体角dωなので
∫
EndS= Q 4π0
∫
dω (13.4)
になる.
∫
dω= 4πなので,結局
∫
EndS= q 0
(13.5) が導かれる.
いま,点電荷1つを考えたが,ある閉曲面の中にN個の電荷,Q1,· · ·, QN が存在しても(閉曲面の中である限り,場所はばらばらでよい),重ね合わ せの原理から同じことがいえる.結局,
∫
EndS= Q 0
, Q=
∑N i=1
Qi (13.6)
となる.積分は,閉曲面上に関して行う.和は閉曲面内のすべての電荷に ついて行う.これがガウスの法則である.
点電荷の集まりでなく,連続的な電荷分布の場合はどうなるであろうか?
この場合,電荷密度ρを使って
∫
EndS=
∫ ρ 0
dV (13.7)
となる.