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熱機関と効率

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第 9 章 剛体の運動 129

10.3 熱機関と効率

10.3 熱機関と効率 153

はじめ,圧力P0, 体積V0にあった系(状態A0)に,熱を加えて体積V1 まで膨張させたとしよう.この状態をA1とする.膨張の過程は等温過程と する.つぎに圧力一定で体積をV0まで減らしたとしよう(状態A2).次に 圧力を加えてA2を体積一定のまま,A0に戻す.

図10.6 等温,定圧,定積過程からなるサイクル

A0からA1 この過程は等温過程なので,Uの変化は0である.仕事fW はエネルギーの保存則から,外から加えた熱量に等しい.式(10.30) より,fW =nRTlog(V1/V0)である.一方,P0V0=nRTなので,

QA0A1 =fW =P0V0log(V1/V0) (10.51) となる.

A1からA2 A1での圧力P1P0V0=P1V1より,P0V0/V1である.よっ て仕事WfA1A2

WfA1A2 =P1(V0−V1) = P0V0(V0−V1)

V1 (10.52)

である.V0 < V1なので,仕事は負である.一方,A1での温度 はT =P0V0/nRであり,A2の温度T2は,状態方程式からT2 = (V0/V1)となる.よって,内部エネルギーの変化∆U は

∆U = 3nR 2

(V0−V1

V1

)

T = 3P0V0

2

(V0−V1

V1

)

(10.53) となる.仕事と内部エネルギーの変化の和が熱量にあたるので,

QA1A2= ∆U+fWA1A2= 5P0V0 2

(V0−V1 V1

)

(10.54) + 定 圧 熱 容 量 を となる.

使 う と QA1A2 = 5nR(T2 T)/2 で あ る .T = P0V0/nR, T0 = T ×(V0/V1)を用いること で,熱量を求めることもで きる.

A2からA0 体積の変化はないので,仕事は0である.温度はT2からT

10.3 熱機関と効率 155 表10.2 10.6における内部エネルギーの変化∆U,外部に対して行った仕事fW

外部から吸収した熱量Q.すべてP0V0を単位としている.

過程 ∆U Wf Q

A0A1 0 log(V1/V0) log(V1/V0) A1A2 3(V0−V1)

2V1

(V0−V1) V1

5(V0−V1) 2V1 A2A0

3(V1−V0) 2V1

0 3(V1−V0) 2V1

へと変化するので,内部エネルギーの変化∆U は

∆U = 3nR

2 ×(T−T0)

= 3P0V0

2

(V1−V0

V1

) (10.55)

である.エネルギーの保存則から QA2A0 = ∆U+ 0

= 3nR

2 ×(T−T2) = 3P0V0

2

(V1−V0

V1

)

(10.56) 以上を表にまとめると以下のようになる.内部エネルギー(2列目)と仕 事(3列目)の和は,エネルギーの保存則より熱量(最後の列)に等しい.

また,サイクルは最初の状態に戻ってくるので,内部エネルギーの変化を 加える(2列目の要素の和をとる)と0になる.

このようにサイクルは熱を与えて,仕事をさせる機関である.このよう な機関を熱機関とよぶ.車のエンジンは典型的な熱機関である.

効率 サイクルを動かすには外から熱を加えて,系に仕事をさせる.1サ イクルで元に戻るとすると,内部エネルギーの変化はないので,エネルギー の保存則より

(加えた熱量)(放出された熱量)=(外部に行った力学的な仕事)(10.57) が成り立つ.加えた熱量が燃料を与えたことになるので,効率η

η= 外部に行った力学的な仕事

加えた熱量 (10.58) で定義する.

図10.6の等温,定圧,定積過程からなるサイクルでは,与えた熱量は,

等温過程と定積過程での熱量の和 P0V0

(

log(V1/V0) + 3(V1−V0) 2V1

)

(10.59)

で外部にした仕事は等温過程と定圧過程に行った P0V0

(

log(V1/V0) (V1−V0) V1

)

(10.60) なので,

η= log(V1/V0) (V1V1V0) log(V1/V0) + 3(V2V1V0)

1

(10.61) となる.

例題10.5 等温,定圧,定積過程からなるサイクルの効率

V1V0に近いとき,log(V1/V0)≒(V1−V0)/V1+×(V1−V0)2 2V12 近似できる.このとき,式(10.61)はいくらになるか.

∆ = (V1−V0)/V1とおくと,分母は 5

2∆ + ∆2

2 ,分子は

2

2 となる.こ れよりη∆/5である.

+

2 2 5

2∆ + 22 = ∆ 5 + ∆/2 分子の∆/2は5に比べて小 さいとして無視する近似を した.

なお,温度で書くと

η= 1 5

„ 1 T2

T

«

(10.62) である.

カルノーサイクル 図10.6の等温,定圧,定積過程からなるサイクルよ りも効率のよい熱機関の例として,カルノーサイクルがある.これは以下 の4つの過程からなる(図10.7).

過程I) 圧力と体積がそれぞれP0, V0,温度T0の気体を等温過程で 膨張 させP1, V1とする.膨張なのでV1> V0である.

過程II) 断熱過程でさらに膨張させP2, V2に変える.V2> V1である.体 積が増えているので,外に仕事をしている.断熱過程なので,この 仕事を行った分,内部エネルギーは減少している.この温度をT2と する.

過程III) 温度T2のまま,すなわち等温過程で,P3, V3に変化させる.

過程IV) 断熱過程でP0, V0に戻す.

過程I),過程III)はおなじみの等温過程である.過程II)の断熱過程は一 見難しそうであるが,断熱過程なので,熱の出入りがないこと,よってエ ネルギーの保存則より

(外部に行った仕事)+(内部エネルギーの変化分)= 0 (10.63) を考えれば,外に行った仕事は,内部エネルギーの変化CV (T0−T)にマ イナスをつけたものだとわかる.

10.3 熱機関と効率 157

図10.7 P−V 図で描いたカルノーサイクル

表10.3 カルノーサイクルにおける内部エネルギーの変化∆U,外部に対して行っ た仕事Wf,外部から吸収した熱量Q

過程 ∆U Wf Q

I) 0 nRTlog(V1/V0) nRTlog(V1/V0) II) CV(T0−T) CV(T−T0) 0

III) 0 nRT0log(V2/V3) nRT0log(V2/V3) IV) CV(T −T0) CV(T0−T) 0

P0V0=nRT, P2V2 =nRT0を使って,カルノーサイクルでの内部エネ ルギーの変化,仕事,熱量をまとめると表10.3のようになる.

カルノーサイクルの熱効率を求めてみよう.温度Tで吸収した熱量は過 程I)における

QI =nRTlog(V1/V0) (10.64) である.一方,全サイクルで行った仕事は,

Wf=nRTlog(V1/V0)−nRT0log(V2/V3) (10.65) である.

仕事をもう少し簡単に書き直してみよう.断熱過程ではP Vγ =一定 で あった(式(10.37)).これは状態方程式P =nRT /V より,

T Vγ1=一定 (10.66)

となる.そこで過程II)の前後で

T V1γ1=T0V2γ1 (10.67) 過程IV)の前後で

T V0γ1=T0V3γ1 (10.68)

が成り立つ.この2つを割り算して,

(V1/V0)γ1= (V2/V3)γ1

V1 V0

= V2 V3

(10.69) となる.結局,

fW =nR(T−T0) log(V1/V0) (10.70) であることがわかる.なお,温度T0の等温過程で放出した熱量Q0は,エ ネルギーの保存則より

Q0=Q−Wf=nRT0log(V1/V0) (10.71) +放出した熱Qはエアコン となる.

を議論する際に大切である. 以上より,カルノーサイクルの効率は

ηカルノー= Wf

Q = T−T0

T = 1 T0

T (10.72)

となる.カルノーサイクルの効率は,高温熱源と低温熱源の温度T, T0の みで決まり,温度差が大きいほど,効率がよいことがわかる.

ヒートポンプ カルノーサイクルは,高温のときに熱をもらい,仕事を して,低温のとき仕事をされて,熱を放出する.これを逆回転させると,低 温のとき,仕事を行い,熱を吸収し,高温時に熱を放出して,仕事をされ ることになる.熱を加えて外部に仕事をするのではなく,外部から仕事をし て,熱を無理矢理放出させるのである.

この逆カルノーサイクルを使うと,低温から高温に熱を移すことができ てしまう.温度の低いところから高いところに熱を移動するのは不可能のよ うに思えるが,仕事を行うことでこのことを可能としているのである.こ の原理を利用したものが,ヒートポンプである.逆カルノーサイクルでは,

外部でなく内部に仕事をし,高温の熱源にQの熱を放出し,低温の熱源か らQ0の熱を奪い取る.

エアコンの効率 エアコンは,夏は外に比べて涼しい部屋から,無理矢 理熱を奪い取り,暑い外へと熱を運ぶ.冬は寒い外から無理矢理熱を奪い取 り,暖かい部屋に熱を運ぶ.まさにこの逆カルノーサイクルのように振る 舞っている.そこで,エアコンの電力と,部屋が涼しくなったり,暖かく なったりする関係を求めてみよう.

夏にエアコンを稼働して,逆カルノーサイクルで部屋の温度を下げたと する.部屋の温度をT0,外の温度をTとする.欲しいのは電力のする仕事 fWと部屋から奪う熱Q0の関係なので,式(10.72)のWf=η×Qを少々変

10.3 熱機関と効率 159

コラム 熱と電気

行った仕事よりもより高いエネルギーをもたらしてくれるヒートポンプ,初めて習うと「エネル ギーの保存則(熱力学の第1法則)に反している」と思いがちである.夢のようなヒートポンプであ るが,今では町にあふれている.エアコンの室外機だけではなく,飲料水の自動販売機にもこの技 術が使われいる.冷たい飲み物を冷たく保ち,暖かい(熱い)飲み物を熱く保つのにもヒートポン プを使うのである.ヒートポンプの原理は,カルノーサイクルの理論で19世紀に確立していたが,

このように日常生活に応用されたのは,20世紀後半である.20世紀後半になり,電気を利用した熱 機関が日常的に使われるようになった.

熱機関はフロンや代替フロンなどを用いたかなり大掛かりなものが一般的であるが,最近では,

ペルチェ効果を使い小型化が進んでいる.ペルチェ効果とは,電流を流すと熱の流れが生じるとい う現象で,コンピュータの中央演算素子(CPU)を冷やすのにも用いられる.

ペルチェ効果と逆の現象で,温度差のある金属では電圧が生じる.これはゼーベック効果とよば れ,温度の測定器などに応用されている.耳式体温計は,この効果を利用している.

形する必要がある.

Wf = η×Q=η×(Q0+fW)

Q0 = 1−η

η Wf= T0

T−T0 Wf (10.73) TT0の差が小さければ,エアコンは非常に効率よく部屋を冷やせる.

例題10.6 冷房の電力

部屋を27℃,外を37℃としよう.部屋の中の気体のエネルギーを1 J奪うには,エアコンはどれだけの仕事をする必要があるか.

Q0= 1[J],fW =ηQ0/(1−η) =Q0×(T−T0)/T0= 1×10/300 = 1/30[J]

となる.

次に冬場にエアコンを稼働したとしよう.外が寒く,内が暖かい状況で は,何もしなければ熱は逃げていく.ところが,仕事(これがエアコンの電

力にあたる)を行うことで,寒い外の熱を奪って外をさらに寒くし,部屋 +冬場のエアコンの室外機 から出てくる風は本当に冷た い.筆者は2月の寒い夕方,

温度計を室外機の前に置いて みた.室外機を動かす前は5

℃だったのが,エアコンを運 転させると室外機からでる冷 たい風で温度計は5分で−1

℃まで下がった.

をさらに暖かくすることができる.このときの効率は加えた仕事fWに対す る,熱量Qなので,

Q= 1

ηWf= T

T−T0 fW(>1) (10.74) となる.最後の不等式は必ず成立している.

電気ストーブは電力を熱に変えているだけなので,Wf=Qである.それ にくらべてエアコンは1/η =T /(T−T0)倍も効率がよい.不思議な気が するが,外は寒くても絶対零度よりははるかに高温なので,エネルギーに

満ちあふれているのである.

例題10.7 暖房の電力

外気温が7℃,室温が27℃で,部屋を1 J暖めるのに必要なエネル ギーを求めよ.

解) 20/300=2/30 J

演習問題10

A

1. 断熱過程

理想気体が状態A(TA, VA, PA)から状態B(TB, VB, PB)に断熱過程 で変化する場合を考える.

(a) 気体が外からされた仕事(WAB)を求めよ.

(b) 内部エネルギーの変化分(∆U)を求めよ.

(c) 温度300K、体積V0の単原子理想気体を8V0まで断熱膨張させ た後の気体の温度を求めよ.

2. 熱機関の効率,温度,仕事

以下では,カルノーサイクルを考える.

(a) 冷却器の温度が15C,効率が20%のカルノーサイクルを考え る.効率を80%にするためには、高温熱源の温度をどれだけ上 げればよいか?

(b) カルノーサイクルの効率を1/6とする.低温熱源の温度を45C だけ下げたとき、その効率は2倍にとなる.高温熱源および低 温熱源の温度を求めよ.

(c) 部屋を27C,外を37Cとしよう.部屋の中の気体のエネル ギーを1J奪うために必要な,エアコンの仕事を求めよ.

(d) 外気温が7C,室温が27Cの状況で,部屋を1 J暖めるのに 必要なエネルギーを求めよ.

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